ビルライブ!サンシャイン!!〜School idol War〜   作:ブルー人

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とりあえず最初の事件はひと段落です。



第7話 イビルの企み

「フンッ……!ハッ!オラァアアアッッ!!」

 

ドラゴンフルボトルの力が備わったリュウヤの拳が次々にスタークの身体を射抜く。

 

「おぉ……!?」

 

スタークは連続で放たれるパンチに即座に両腕でガードすることで対応してみせるも、徐々に押されていることは明白だった。

 

生身の人間でありながら尋常ではない戦闘能力を秘めているリュウヤを見て、奴の口元から笑いが漏れる。

 

「きひっ……!くは……っ……ハハハハハッッ!!ハザードレベル2.2……2.3……!!」

 

「あぁ……!?」

 

拳を受けるごとに何かを測定するようにそう声を上げるスタークに怪訝な目を向けつつも連打は止めない。

 

「なにわけわかんねえこと……言ってんだぁ!!!!」

 

腰を思い切り捻り、大きく身体ごと回転させて勢いをつけた右手が弾丸のような速度で赤い身体に炸裂。スタークは衝撃を逃しきれずに数歩後退した。

 

「……2.6……!どんどん上がっていくな……おもしろい。今のところはお前が一番見込みあり……だな」

 

「さっきからウダウダウダウダ……!!」

 

体勢を立て直したリュウヤが地を蹴り、再度スタークへ特攻。

 

「うっせんだよッッ!!」

 

「ふう————」

 

深呼吸した後に呑気に構えた奴はリュウヤの放った一撃を————

 

「フンッッ!!」

 

「…………!?」

 

正面から受け切ってみせたのだ。

 

スタークの手の中に収まった自分の拳を見つめて信じられない、といった表情を浮かべるリュウヤ。

 

()()()の欠点は、調子に乗って攻撃の工夫を忘れることだな」

 

「あぁ……!?——ぐっ!?」

 

リュウヤの鳩尾(みぞおち)にパンチを一発、直後に蹴りを入れたスタークは足元に転がった彼を嘲笑うようにしゃがみ込む。

 

「ライダーシステムも装備してないお前が、オレに敵うわけないだろ?……今日はここまでだ」

 

「…………っ……!!待て……!!」

 

「じゃあな」

 

どこからともなく取り出した黒い拳銃から霧を発生させ、自らを包んだスタークは瞬く間に姿を消してしまった。

 

「……何なんだよ……いったい……!?」

 

 

◉◉◉

 

 

《タカ!》

 

《ガトリング!》

 

《ベストマッチ!!》

 

《Are you ready!?》

 

景色がスライドしていくなか、高速で飛び回る敵に対抗するべくボトルを取り替えるキリオ。

 

「ビルドアップ!!」

 

オレンジと灰色のボディが形成され、“コウモリ”の上空からの銃撃を避けながら装着。

 

《天空の暴れん坊!ホークガトリング!!》

 

《イェーイ!》

 

空中戦ならこのフォームがベストだ。

 

ガトリングフルボトルの成分を元に製作した“ホークガトリンガー”で遠距離攻撃にも対応できる。

 

「…………無駄な抵抗はやめろ」

 

「やめるかよ…………!!」

 

10(テン)20(トゥエンティ)!》

 

真上から突進してきたローグに向かって機関銃を乱射。奴が回避する“線”を追うもこちらの速度が追いついていない。

 

キリオは背中から伸びている“タカ”の翼を肥大化させ、ローグと同じ土俵————空へと舞い上がる。

 

「…………」

 

「落ちろ…………ッ!!」

 

黒い巨翼を目印にホークガトリンガーを発砲。天の川の如く夜空に弾丸の直線が描かれた。

 

しかしまるで当たらない。こちらの腕がどうこうというよりも向こうが速すぎる。

 

「無駄だ」

 

「……そう判断するのは————まだ早いぜ?」

 

全力で、“回転”。

 

10(テン)20(トゥエンティ)30(サーティ)!…………》

 

ホークガトリンガーのマガジンを回転させ、エネルギーを充填。

 

40、50、60、70、80、90——————そして、

 

100(ワンハンドレッド)!フルバレット!!》

 

 

 

球状に出現した数式に囲まれたローグが動きを止める。この領域に入ったらその瞬間…………“的”同然だ。

 

「なに……!?」

 

「さあ、実験を始めようか。数撃ちゃ当たるってのは……本当なのかな?」

 

奴が退避しようとした直後に引き金を絞る。

 

360度に放たれた銃弾の雨霰がローグへと殺到し、回避不可能な状態へと陥った奴はなすすべなくその身に射撃を浴びることとなった。

 

「きゃあっ…………!?」

 

捉えた……!

 

このまま畳み掛ける。反撃の隙を与えるな。

 

「喰らえええええええええッッ!!」

 

「……!」

 

無理やり身体を捻ったローグは一発の銃弾を明後日の方向に放つ。

 

弾丸は大木を貫き、千切れた幹が横倒れになる瞬間が視界によぎった。

 

「はっ……!どこ狙って————」

 

 

 

 

 

 

 

「きゃあああああああっ!?」

 

構わず奴に攻撃しようとした直後、鮮烈な悲鳴が迸る。

 

倒れかけている木の真下に……一人の少女が尻餅をついていたのだ。

 

「なっ……千歌……!?」

 

高海千歌の姿を一瞥したキリオはすぐさまその場を離れて猛スピードで大木へと向かう。

 

「クソッ…………!!」

 

ホークガトリンガーを発砲し幹を木っ端微塵にしたのも束の間、破片の先に見えた黒い銃口がキリオと千歌を狙っていた。

 

《フルボトル!》

 

「油断したな……!!」

 

「うっ…………!!」

 

《スチームアタック!!》

 

発射された追尾弾頭が煌めき、不規則にうねりながらキリオ達のもとへ殺到。

 

「危ないッッ!!」

 

千歌に覆いかぶさるようにして弾丸から彼女を守る。

 

巨大な爆発が上がり、凄まじい衝撃に耐えながらも少女の身体を抱えて地面を転がった。

 

「がはっ…………!!」

 

さすがに直撃はまずかったか。変身が解除されたキリオはすぐさま起き上がると爆煙の向こう側を睨んだ。

 

 

 

 

「……逃げやがったか」

 

ガンガンと痛む頭部を抑えつつ後ろを振り向く。

 

「えっ……?キリオくん…………?」

 

「————最悪だ」

 

自分が仮面を被っていないことに少し遅れて気がついたキリオは、ぽかんとした面でこちらを見上げる千歌に青ざめた顔を向けた。

 

 

◉◉◉

 

 

結局、最高の盛り上がりを見せたライブは、最悪の幕引きを迎えてしまった。

 

怪我人は少なかったものの、人々に刻まれた恐怖が……スクールアイドルの築き上げてきた“平穏”を壊していく。

 

 

 

 

 

「ごめんなさい……っ……ごめんなさい……!!あたしが……皆さんを誘ったから……こんなことに……巻き込んで……ッ!!」

 

ユイは気絶した状態で発見され、そのまま病院へ搬送。

 

責任を感じているのか、彼女はリュウヤや千歌達にいくら励まされても涙を止めることはなかった。

 

「ユイちゃんのせいじゃないよ……」

 

「だって……!だってぇ……っ……!!」

 

「スマッシュが現れるなんて……誰も予想できませんもの」

 

「そうだぜ葛城。……氷室も、あんま気落とすなよ」

 

ユイの涙声を背に、キリオは病室の外で暗い廊下の床を見つめながら、ふと先ほどの戦闘のことを思い出していた。

 

「…………あのコウモリ男、俺の攻撃を受けた時————」

 

 

 

 

『きゃあっ!?』————と、確かに発した。

 

あの時は戦いに必死で気に留めていなかったが…………あいつの中身は女だったのか?

 

ボイスチェンジャーの類でも使用しているのだろう。声はくぐもっていて性別は判別できない——そのせいで自然と男だと決めつけていたが。

 

「……とりあえず一つ手がかり……か」

 

「キリオくん」

 

背後から聞き覚えのある声がかかり、反射的に振り向く。

 

真剣にこちらへ視線を注いでいるのは————数分前にキリオが変身を解除する瞬間を目撃した、千歌だ。

 

「どうかしたか?」

 

「……この状況で、とぼけるつもりじゃないよね?」

 

かつてないほどに千歌はまっすぐな瞳を向けてきた。

 

…………隠し通すのは失敗した。取り繕える望みもない。

 

「はあ…………みんなには言うなよ」

 

「……!どういうことなの……!?どうして……いつから仮面ライダーに————!」

 

「あのな千歌」

 

一歩近づいて顔を合わせる。千歌とこちらの目線が重なり、やがてキリオが口を開いた。

 

「俺がどうしてこのことを黙っていたのか……今回の件も含めてよく考えろ」

 

「……!」

 

「だが言うならば……俺は教師だからだ。教師が生徒を守るために戦うのはダメか?」

 

「それは……————そうじゃなくて!!」

 

咄嗟に人差し指を立てて「ここは病院だぞ」と言った後、キリオは身体の向きを直して皆がいる病室の中へと入った。

 

「今回の事件は非常に残念なことになってしまったが……はっきり言って俺達にはどうすることもできない」

 

「そう……ですね。Aqoursの皆さんは、できるだけ早くに東都へ戻った方がいいかと思います。怪物達が何を狙っているのかはわかりませんが……」

 

ミカの言葉を聞いて何かを悟ったのか、ダイヤが険しい表情を見せる。

 

「……スクールアイドルという文化の崩壊を狙っているのでは?」

 

「えっ……?」

 

「確かに……その可能性もあり得るな」

 

「それは……どうして?」

 

「政治の時間に教えてもらったでしょ?果南ったら……授業中に居眠りしてるから」

 

現在の冷戦状態を取り持っているのは“スクールアイドル”という平和的象徴。国民が求めるものを“争い”から遠ざけるための、いわば戦争防止装置。

 

しかし何者かがスマッシュという“兵器”を国へ忍ばせることによって、各国はお互いに疑心暗鬼の状態となる。そうなればもはやスクールアイドルという存在は意味を成さなくなる。

 

スタークや“コウモリ”……奴らがどこに所属しているのかさえわかれば、多少は()()()()()なるのだろうが……。

 

「つまり“スマッシュを操ってる誰か”は……戦争を起こそうとしてるの?」

 

「なんと極悪非道な……!」

 

「許せないずら……!!」

 

「今は現状維持を目指すしかないな。……負けるなよスクールアイドル、今のお前達は国を背負っているに等しい」

 

キリオの言葉に頷く千歌達。

 

酷なお願いかもしれないが、表の舞台でそれができるのは彼女達だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……ひぅ……っ……うぅ……」

 

重苦しい雰囲気のままAqoursのメンバー達が部屋を出た後も、すすり泣く声が病室を満たしていた。

 

「…………じゃ、俺そろそろ帰るから」

 

「う、うん……ありがとう万丈くん」

 

泣きじゃくるユイを胸に抱きつつ、リュウヤへ会釈する。

 

「……あっ……これ返すの忘れてた……。ていうか結局あいつ何だったんだ……?」

 

上着のポケットの中に腕を突っ込んだ彼が出入り口前に立ち止まったのを怪訝な目で見やった。

 

「え?」

 

「あ、いやっ!なんでもない…………じゃあな!葛城が落ち着いたら、一応連絡くれ」

 

「うん」

 

パタン、と静かに部屋の扉が閉まる。

 

ミカとユイ。二人きりになった部屋のなかで聞こえるのは————やはり、“声”だけ。

 

 

 

 

 

「う……っ……ひっく……!!うぅう……!————ぶはっ……ははっ……!!」

 

 




結構早くに正体バレちゃいましたね。
しかしまだまだ謎が深まるばかり。

頃合いを見て北都でのエピソードも書きたいです。だいぶ先になりそうですけど……。

完結後に何かしらの続編はいりますか?いりませんか?

  • 後日談として日常もの
  • シリアス調のもの
  • 両方
  • 別にいらない。

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