宇宙世紀0080 連邦軍とジオン軍に終戦協定が結ばれ、戦争は終わったかのように思えた
戦争はどうして終わったのか、そう、ジオンが負けたからだ
これは終戦ではなく、敗戦なのだ
ジオンが国として認められても、それは連邦の支配によって成り立っている偽物の独立に過ぎないのだ
敗戦した国の人間の運命は歴史の図書館に記載されてないだけで、悲惨なものばかりだ
捕らえられ、尋問という名の終わらない暴力の末に死に至る場合、そうでなくても牢獄に入れられ終身刑か判決を待つもの、様々だか、その全てが現実になろうといている恐怖に震えながら、連邦から逃れなくてはならないという逃亡者達もいる
しかし、この現実よりは遥かにお気楽な現実だ
ここは、ジャブロー基地周辺の密林、俺たちはここで銃を握り、息を潜めている
逃げ遅れた、いや見捨てられたと言うべきジオン兵は思ったより多く居るのだ
弾薬や食料、もちろんMSの支援なんかも受けられるはずもない無力な残党
しかし、連邦はジオンに恨みがある、だから俺たちはいつ見つかるか分からない恐怖に震えながら生き延びるしかないのだ
とある奴は極度の緊張状態を紛らわすために衛生兵の袋に入っていたクスリへと走り、中毒症状で無残に死んだ者
「ジオン軍万歳!ドズル・ザビ様万歳!」と叫んで行方が分からなくなったもの、いろんな奴を見てきた
だが、俺は違った
俺は対MS用ランチャーを構えながら自分の生きがいを感じていた
ここに来てからというもの45機というジムやガンダムをこのランチャーで葬って来た
仕掛けていた罠の地雷を踏んでバランスを崩したジムのコックピットを破壊したときの爽快感はある意味、麻薬よりも強いものがあると錯覚してしまう程に俺を魅了していた
自分の軍が優位だというのを、自分達の強さと錯覚している馬鹿どもが、悠々としているコックピットをグシャリと潰すあの感覚
最高のエクスタシーを感じずにはいられない
そして、また一機、警戒もせずに歩くジムのコックピットに向かってランチャーを放つと、自分の治りかけていた傷口がランチャーの反動で開く痛みを感じた
「やぶ医者が、適当な処置しやがって・・・ま、ノルマは達成したし今日は良いか」
青年はまるでゲームをしているかのようにそうぼやいて、ランチャーを担いで倒れたジムのコックピットに近づき、何か回収出来るものがないかを確認して、その場を後にした
傷口が開かないように密林を進んでき、小さな洞窟の入り口に設置された鉄の扉に向かって「俺だ」と言うと「入れ」と渋い声が響いて扉が開いた
「どんな様子だった」と入ってすぐに髭ずらの男に渋い声で聞かれた
「変わりないさ」と青年が答えると、髭ずらの男は「・・・そうか」と言って、火にかけていた鍋の中身をゆっくりとかき混ぜた
「リヒト、ランチャーのスコープの調子が悪い、見てくれないか」
青年は奥で機械いじりをしている少年に話しかけると、リヒトと言われた少年は振り向き「いいぞ、貸してくれ」と言って青年は少年にランチャーを手渡すと、少年はすぐにばらして故障部分を取り換えて「これでどうだ?」とスコープを青年に手渡す
「あぁ、いい具合だ、ありがとう」と青年が言うと、少年は「おう」と小さく答えてまた機械いじりに戻ろうとしたが、髭ずらの男が「もう飯だ、手を洗ってこい」と少年に言うとしぶしぶ少年は手を軽く洗い、自分のスープの入った皿を受け取った
「救援は今日も無しか、無線は何か入ったか?」
スープを食べながら、髭ずらの男がリヒトにそう聞くが「いいや、なんの来ないな」と返答する
ジオンが戦争に負けて二年が経とうとしている今、救援も本国からの連絡もない
これが俺たちの現実だった