出されたスープを流し込む、携帯食糧なんか長いこと見ていない、スープが何で作られているのかなんて気にするだけ野暮だ、スープの前は泥臭い匂いのする川魚を捕まえて食ったり、ジャブロー近隣の村の子供から塩を分けてもらって味付けに微細だが塩味が追加されたりもしたが、戦争の影響で塩の価格も高騰化して子供から貰えた塩もひと握り程度のもの、そして子供が利用されていると親が勘違いしたのか、その1回以降、その子供は見ていない。
少年がスープを飲みながらも「あん時に塩の味を覚えたから、さらに薄く感じるな」とぼやきながらも、それを聞いた青年は本国で食べた肉に思いを寄せていた、これが生き延びるという事なんだろうと自分を言い聞かせて魚らしき小さな具材を噛み締めては立ち上がり、かなり埃のかぶった通信機に耳を当てて来るはずもない本国からの連絡を待つ。
「来るわけねぇのに、よく続ける気になれるよな」と少年は嫌味っぽく呟くと髭ずらの男は少年を見て「来るさ、本国も地球に残った残党を探しているはずだ」と低い声で言い放つと食べ終えたのか立ち上がり、食器を洗いに外に出て行った。
髭ずらの男が出ていくと少年は呆れたように溜息をつき「よくやるよ、隊長もお前も、終戦宣言は全員で聞いただろうに」と呟くと、また機械いじりに戻って行った。
全員、こんな希望を捨てたような奴らでは無かったはずだ。機械をいじるリヒト・ダッジマンという少年は技術があるものの学徒兵として引っ張られ、その知識や技術を活かしきれずに戦争が終わり、髭ずらのシリング・シェロー隊長も元はマゼラアタック大隊を指揮する優れた隊長であったが、連邦MSの出現や地上戦に特化したMSの出現により、存在価値は薄れ、今では生き残っただけの人になってしまった。
そして、この青年グロム・ギプキスも宇宙戦線ではザクⅡの狙撃により12機のMSもどきや戦闘機を撃ち落としたが、地球での任務を完了させケウゲレンに乗り込み脱出するはずが連邦のMSにより妨害され、命からがら生き延びたが愛機のザクは大破、ヤブ医者による雑な手術により命しかない状態で、この2人…元は3人だったが、合流して今に至るという訳である。
戦場は常に自分たちの存在意義を奪い去る、だが、それすらも仕方ない、それが敗戦後を生き延びるという事なのだからとグロムは頭の中で何度も何度も呟いたセリフを重複させる、そうでもしてないと反応があるはずもない通信機との相手は辛いのだ。
そんな事を思っていると、通信機のノイズに割り込むかのように僅かだが声らしき物が聞こえて来た。
すかさず周波数を合わせようと機械を弄りながら熱心に耳を当てている様子に2人も気付いて近づいて来て、そのノイズ越しの声は段々と明白になっていき。
「きゅ……うじょ……求む……」
ざっ……ざっ……とノイズが邪魔をするが確かに女性の声が聞こえていた。