一瞬で心まで掴み取られる感覚に陷る。
なんだ、この感じ。圧倒的な実力差のある相手に睨まれたような………。
彼女は青い双眸を細め、少しだけ口元を微笑ませた。
俺に向けたもの?
バカな。俺と彼女の接点なんてないじゃないか。
そう思ったとき、俺はふいに夢の出来事を思い出していた。
夢の最後、紅色の髪をした誰かが俺に話しかける。
やさしく、そして冷酷な存在感を放っていた人影。
それと彼女が重なってみえたとき、すでに彼女は視界から消えていた。
「おっぱい揉みてぇなぁ!」
号泣する松田を抱き寄せ、俺たちはエッチなDVD鑑賞会最後の作品を視聴していた。
学校から帰宅して、無駄に高いテンションのままエロDVD鑑賞をはじめたわけだが、枚数を重ねていくうちに興奮が冷めていき、「なぜ俺たちには彼女ごいないのだろうか?」
と真剣に思い出し、逆に泣けてきてしまった。
松田なんね三作品前あたりから涙が止まっていない。
元浜に至ってはクールに装ってはいるが、メガネの奥で涙を溢れさせていた。
三十分前に小声で「………俺、 女の子に体育館裏に呼ばれたんだ………。生まれて初めてかつあげされたよ………」と呟き、危うく俺も泣き出すところだった。
エロDVDで鬱になる俺ら三人は何なんだろうか。
いや、知れている。
モテない男子高校生三人組だ。
ちくしょう。今頃、同じ年代の男が女子イチャイチャしていると思うとこの世界を恨みたくなる。
そんなことを思いながら最後の作品を見終えると、すでに空は暗かった。
時計を見たら、もう夜中の十時だ。親に松田の家で過ごすことを伝えてあるが、これ以上お邪魔しているとマジで心配されるし、明日の通学にも支障をきたす。
「さて、そろそろ帰るか」
俺の言葉を切っ掛けに全員がその場で背伸びして、別れの準備を行った。
「じゃあな」
玄関で松田と別れると、俺と元浜は歩き出す。
「いい夜だ。こんなにいい夜だもんな。そりゃ、エロDVDも見たくもなる」