今回はゼットのバイクで神速で走り去る。
目元は涙で濡れている。泣いた。ああ、泣いたさ。
魔方陣から召喚されない悪魔。それがイッセー。前代未聞らしいですよ、奥さん。
おかげで涙が止まりません。
「魔力がないって、どういうことだよ! ちくしょう! こんなんでイッセーは爵位もらえるのか!?」
携帯悪魔機器で探りながら、イッセーを呼んだ人間のお家へ向かってゼットが運転するバイクで向かってつき進む。
学園から二十分の位置にあるアパート。ここの一室に依頼者がいるらしい。
デリバリーサービスなら、客にキレられてもおかしくない時間だよな。
普通は瞬間移動だ。ところが二十分以上客を待たせている。人間の商売なら店長に怒られるレベルだ。
その店長はイッセーに対して少しだけ困っていた様子だったけど。失望させたかな?
うーん、悪魔人生はムズいね。
コンコンとドアをノックする。
「こんばんは! 悪魔グレモリーさまの使いの者ですが、すみません! 召喚された方はこのお家ですよねぇ?」
イッセーはこれでいいはずだ思った。
ゼットはイッセーの後ろでくすくす笑ながら見ていた。
悪魔は契約したい人間にしか認知されない。イッセーが深夜こんなことしても、関係のない住民にとってみれば何事も起きていない。
いまの言葉も依頼者以外には感知されていないそうだ。悪魔のお仕事中は特殊な魔力が働くので、関係ない者には迷惑が及ばない。と、部長の説明より。
「だ、誰だ!?」
中から聞こえてきたのは、
「えーと、悪魔です。新人ですけど、なんか、お呼ばれされたんでここまで来ました」
「う、嘘つくな! 玄関を叩く悪魔なんかいるもんか! 悪魔はこのチラシの魔方陣から出てくるだろうが! いままでの召喚ではそうだったはずだぞ! それに僕が呼んだのは小猫ちゃんだ!」
そりゃそうだ。
そこに謝ります。ゴメンなさい。
イッセーも部長たちも予想外の出来事なんだよ。
「あ、すみません。俺、魔力がてんで足りないみたいで魔方陣から出現出来ないんですよ」
「ただの変態なんじゃないのか!」
その一言にカチンと頭にきた!
「変態じゃない! 俺だって、知るもんか! いけるなら魔方陣から出てみたいわ! 何が悲しくて深夜バイクで送られた気持ちわかるか!」
「逆ギレするなよ、ど変態!」
「ど変態!? ふざけんな! 俺は悪魔だっつーの!」
「帰れ!」
ドアを開けて、文句を言ってくる依頼者。
痩せ型の男だ。不健康そうだよ。
怒り心頭の男性だったが、イッセーの顔を見るなり表情を緩和させる。