天元突破エヴァンゲリオン 作:らぢおえば
あからさまに描写不足だな〜という箇所は多分後々描写します。
父さんに捨てられて何年か経ったある日、僕は学校の帰り道に拾った自転車を漕ごうとして倒れた。
覚えているのはそこまでで、僕は気付いたら暗い穴の中に居た。
そしてそこで出会ったんだ、後に僕の誇りであり兄弟となる仲間たちに。
そして数多の出会いと別れを繰り返し元の場所へ、帰ってきた。
2015年5月某日第3新東京市
「....繋がらない..。何があったんだろう」
童顔にワイシャツ、スラックスという出で立ちの少年、碇シンジは公衆電話から流れてくる非常事態アナウンスに戸惑っていた。
「....ここで待っていたってしょうがない。歩こうかな」
人気の無い街に止まっている交通網。完全に孤立している彼は電車も何もないがとりあえず歩こうとしていた。
「....何とかなる、よね」
その一見投げやりに見える言葉には、しかし、幼げな顔つきからは想像も出来ない意思と力強さが込められていた。
風が吹いた。
「....!今のは、女の子?」
一瞬少年の目には青い髪と、紅い瞳をした映ったがまた瞬きする間に消えてしまった。
「....何だか、ニアに似ていた気がする」
かつての仲間であり、そして大事な友人であり、相棒の妻となった友人を彷彿とさせる。そんな雰囲気がした。
「....ニア、元気かな。シモンと上手くやっていると良いけど。折角僕が頑張ったんだし」
螺旋の力を失い消えようとした、シンジの相棒にとって最も大切な妻である彼女を救えた事はシンジにとって人生で最も誇らしい瞬間の一つである。
爆発。シンジにとってはかつて聞き慣れた。久しく聞いていなかった音に耳を塞ぐ。
「..爆発!一体どこから!」
経験からすぐに身体を動かせるように構えを取る。だが、シンジが胸に手を翳すも、そこには何もなく手は空を切る。
「....チッ。もう槍はないのに」
小さく舌打ちを打つシンジの瞳は、熱く熱く輝いている。
爆発音がする山の影から二機のVTOLがミサイルや機銃で攻撃を加えながら、その攻撃対象である白い仮面をつけた黒の巨人と共に姿を表した。
「..!あれは、ガンメンじゃないよね?」
シンジはちょっとやそっとの常識外では驚くことは無くなっていたが、久しく触れていなかった非日常に若干の困惑が見られる。
「..拙い、来た」
シンジが身構えながらその戦闘を見ていると白い仮面の巨人はジャンプしVTOLを踏み潰しながら向かってきた。
拙いとは思いつつ思った以上の素早さとVTOLの爆発に手で顔を覆うと、車のスキール音がした。
「お待たせ、乗って!」
青いスポーツカーと共に爆風からシンジを守るように現れた女性。
シンジ目を丸くするがその女性の声に抗うことなく頷きながら開けられたドアに乗り込む。
すぐにスポーツカーは急発進した。
すぐに爆発から離れると車の運転をする女性は口を開いた。
「ごねんなさいね、遅れちゃって。碇シンジ君ね、」
「....いえ、はじめまして。葛城さん」
「ミサト、でいいわよ」
「....はい、僕もシンジでいいです」
見かけより社交性があるのだろうか。ミサトは少年の返した言葉に思考を巡らせた。
溜めが多く、静かな喋り方はミサトが知っているとある少女を彷彿とさせるが、返ってきた言葉にはその少女にはない友好の色が見えた。
しかし、それ以降特にシンジから言葉が発されることはなく、ミサトも目的地に向かって車を走らせることに集中した。
「..!ミサト、さん。あの黒い巨人?から軍の飛行機が離れていきます」
「ちっ、あいつらN2を使うわけね。ちょっち衝撃が来るかもしれないからシンジ君も捕まってて!」
運転に集中し、人気のない道をスポーツカーで爆走していた分、爆心地から離れていた為ミサトとシンジが乗る車は爆風に多少煽られる程度で済んだ。
ミサトはN2爆雷の影響による通信障害が治ると、運転しながらどこかへと電話を掛けた。
「リツコ? 彼は保護したわ。カートレインを用意しといて、本部まで直通のやつ。そう、そっちでもモニターしてると思うけどすぐ着くわ。お願い」
N2爆雷に焼かれた巨人は、焼かれて傷付いたカラダを癒やすように留まっていた。
目的地についたようで、カートレインに車を指定の位置へ付けたアナウンスが響く。
「....特務機関ネルフ?」
「そう。国連直属の非公開組織」
「....父のいるところ、ですね」
「まぁね。お父さんの仕事、知ってるの?」
「....立派な仕事だとは」
若干薄暗いトンネルの中でシンジとミサトが言葉を交わす。
シンジの言葉は平坦で飾り気の無いものではあるが、彼の態度や口調からして単に知らないだけなのだ、と推察したミサトは息苦しさなどを感じることはなく、シンジに対する印象というものを整理していた。
はっきりしていないようではっきりしている。大人しそうではあるが意思は感じる不思議な子だ、とミサトはシンジをそう評す。
「これから貴方のお父さんのところへ行くんだけどID、貰ってない?」
「....はい、これですね。どうぞ」
「ん、ありがと。これ、ちょっと読んどいて」
「....わかりました」
シンジはIDカードと来い、碇ゲンドウとのみ殴り書きがされた手紙をミサトに渡す。
それを見て若干顔を顰めるも、すぐに表情を笑みに形作るとようこそNERV江と書かれたパンフレットをシンジに渡す。
ちなみにだが、シンジはその殴り書きの手紙を何となくだが気に入っていた。
カートレインがトンネルを向けるとシンジの眼下には常識では考えられないような広いドーム系の空間が広がっていた。
「..ジオフロントだ、凄い」
「そう。これがあたしたちの秘密基地ネルフ本部。世界再建の要となる、人類の砦よ」
シンジはミサトの説明を聴いていたがそれよりも遠い遠いところにいる相棒にこの光景を見せてやりたい、と考えていた。
そんな彼の考える事を知り得ないミサトは今まで大人しかったシンジが年相応の表情を作った事に笑みを浮かべていた。
「ごめんリツコ、ちょっち迷っちゃいそうだから今から言うところまで来てくれない? そう、今駐車場出たとこなの。ご〜めん、今度一杯奢るわ」
ミサトは車を停めてシンジの案内をしようとしたが、冷静にまだ来て間もないNERV本部の案内は出来そうにないと思い、意地を張ることなく旧友の赤木リツコへと助けを求めた。
程なくして金髪に水着に白衣という一見際どい奇妙な出で立ちの女性、リツコがやって来た。
「葛城一尉、ご苦労様ね。私を案内に向かわせたのは頂けないけど、まぁ迷って無駄に時間を浪費するよりは懸命ね」
「アハハ、ごみんごみん」
「で、この子がマルドゥック機関の報告にあったサードチルドレンね」
「....碇シンジです」
「あら、ごめんなさい。私は赤木リツコ。よろしくね」
シンジにはリツコの言ってる事は理解できていなかったが自分を指しているのだろうと名前を名乗った。
「では後を頼む」
「10年ぶりの対面、か」
大きなモニターの映る部屋、そこには大勢の人間が詰めており、各所で声を上げてどこかしらに指示を出したりコンソールの操作をしていた。
その場所の最上段、髭をはやした男が白髪の男に後を頼むように告げると白髪の男は頷き、感慨深いといったように呟く。
「副指令、目標が再び移動を始めました!」
「よし、総員第一種戦闘配置」
聴こえてくる部下の声に意識を切り替えると白髪の男は指示を出す。
この時二人の男は気付いていなかった。
既に自分たちの駒であり計画のパーツとしていて見ていた少年は既に歯車としての機能は失っているとは。
そして知ることになるのだ。少年、碇シンジの背負ったものの大きさと気高さに。
ボートで移動しているシンジ、ミサト、リツコは会話をしていた。
と言っても主に話しているのは女性二人であった。
その会話を妨げない程度に第一種戦闘配置を知らせるアナウンスが放送されている。
「やっぱしね、もう戦自からNERVに指揮権は委託されてたか」
「勿論よ。私も今急ピッチで初号機のメンテナンスをしていたもの。といってもB型装備のまま冷却中よ」
「は〜、以前変わらずか。起動確率、何パーだっけ」
「0.000000001%。オーナインシステムとは何とも響きの良いことね」
「まぁ、ゼロでは無いわね。ゼロでは」
「あら、動かないとでも?」
「へーへー、アンタのは腕は信頼してるけどね」
皮肉を交えながらミサトとリツコは会話していた。
同じボートに乗るシンジには会話の内容はちんぷんかんぷんであったが。
巨大な腕。シンジは決して明るくないその空間の中でそれを見つけると懐かしそうに目を細めた。
ボートは目的地についたようでつけられる。
三人はボートから降りる。
暗闇の中何も見えないはずのシンジは降りた先から感じる鼓動に胸が騒ぐ。
「今明かりを点けるわ」
リツコのその言葉と共に点けられる照明。
急激に光に晒され、閉じた目を開いた次の瞬間シンジは鼓動の正体に合点がいき、懐かしさを感じた。
「..!久しぶり、かな。リリン。随分と大きくなったね」
現れた紫の巨人の顔。
それに対し、小さな声で呟かれたシンジの言葉を聞き取れた者はその場に居なかった。
目の前のかつてシンジが駆使したガンメンによく似た汎用人型決戦兵器以外に。
リツコはシンジの口が動いていたことはわかったが幾分距離があり、声も小さかった為何を言っているかまではわかっていなかった。
きっと、突然現れた目の前の汎用人型決戦兵器、エヴァンゲリオンに驚いたのだろうとあたりをつけた。
リツコの読みは細部は違っていたものの的を得たものであった。
「人の作り出した究極の凡用人型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン。その初号機よ。建造は極秘裏に行われたの」
大きさは全然違う、ガンメンでもなさそうだ。でもこの感じは同じだ。
シンジはかつて仲間と共に駆使したガンメンである、リリンと名付けた機体の事を思い出していた。
「....これを父が」
「そうだ」
シンジは声がした、その方向を見上げる。エヴァンゲリオンと呼ばれたその巨人の後ろに彼は立っていた。
「久しぶりだな」
「....」
サングラスをしている男性、シンジの父親である碇ゲンドウは平坦に、しかし圧を持った言葉で息子に声をかけた。
シンジは、口を閉じたままだ。
「ふっ、出撃」
「出撃? 零号機は凍結中....初号機を使われるつもりですか!?」
「他に道はないわ」
「ちょっと、レイはまだ怪我が....パイロットはどうするの」
「今さっき貴女が届けたわね」
「リツコ、冗談でしょ」
「碇シンジくん」
「....はい」
シンジは困惑していた。ゲンドウ、ミサト、リツコの会話に置いてけぼりを食らっていたからである。
ゲンドウから声をかけられるもすぐにシンジは目の前の懐かしい顔と向き合っていた。
声をかけられた為反応した次第である。
「あなたが乗るのよ」
「..!」
「ねぇ、ちょっと待ってよ。レイですらエヴァとのシンクロに7ヶ月掛かったんでしょ? 今来たばかりのこの子に出来るとでも?」
「座ってればいいわ。それ以上は望みません」
「しかし、」
「....父さん」
シンジは会話を切るように自らの父へ声をかけた。
言い争いをしていたミサトとリツコはシンジの透き通った。しかし、小さくない声に気付くと口を閉じ、シンジを見た。
「なんだ、シンジ」
「....何故僕を呼んだの?」
「お前の考えている通りだ」
「....直接口にして欲しい」
「お前をエヴァに乗せるためだ」
「....じゃあ、そのエヴァに乗って、外にいた黒い巨人と戦えと?」
「そうだ」
その言葉を聞き、シンジはゲンドウに向けていた視線を下げる。
俯いたシンジの顔は、見えない。
ミサトとリツコは、ゲンドウと違いその空気の違いを感じ取っていた。
気まずさや悲壮さ、そういったものではない。
もっと異様で、何故だか胸は早い鼓動を打っている気がした。
その空気の発生源は、目の前で俯く少年だった。
声を掛けられなかったまま、数瞬が過ぎ、考え込むように俯いていたシンジは顔を上げた。
熱い熱い、輝くような。見るものを惹き寄せる瞳だった。
その瞳を宿した目は父へと向けられていた。
ミサトとリツコは驚いた。表情は然程変わらない。
しかし、目だけは。目だけは二人にとって先程までとは見違えていた。
「..父さん。直接その目で言ってほしい」
「何?」
ゲンドウは怪訝そうに聞き返す。
「..直接、その目で。サングラスを取って僕の目を見て言って欲しい」
「何を..」
ゲンドウは気付いた。
先程までの息子とは違う。
恐怖。ゲンドウは自分より一回り小さい、妻の面影を残したシンジの目と言葉に恐怖を感じた。
ミサトとリツコは何も言えなかった。
ただ、その行為がシンジにとって特別な行為であるということだけは理解出来た。
振動、シンジたちが居る地下深くまで衝撃が来る。
先の巨人、使徒によるものだ。
「くっ、使えないやつだ。冬月、レイを起こせ」
「使えるのか?」
「構わん」
「わかった」
短く言葉を交わす。
先の白髪の男、冬月コウゾウはゲンドウの指示に従った。
「....どうして、目を見れないの」
「....黙れ。言うことに従わないのなら帰れ」
ミサトとリツコにはゲンドウが小さく見えた。
しかし、逃げるのも無理も無いと思う。
それほどまでにシンジの視線は、力強かったのだから。
「レイ」
「はい」
「予備が使えない、もう一度だ」
「はい」
ゲンドウはレイと呼ばれた少女と言葉を交わす。
ゲンドウは先ほどまで荒れていた心が落ち着くようだった。
「初号機のシステムをレイに書き直して、再起動!」
「了解、現作業を中断、再起動に入ります!」
リツコが指示を出す。
すると、そこへレオタードのようなものを身に着けた包帯だらけの少女がストレッチャーで運ばれてきた。
「はぁ、はぁ、はぁ、うぅっ」
「..大丈夫ッ?」
この子は僕に対する父さん、いやあの男の....。
シンジが少女を抱き上げるともう一度大きな衝撃がその場を揺らす。
鉄骨が少年と少女の上に降り注ぐ、
「きゃぁっ、」
「危ない!」
ミサトが叫ぶが、その心配は要らなかった。
巨大な手、それが二人の上に覆いかぶさるように広がっておりそれが鉄骨から身を守ったのだ。
シンジはストレッチャーから態勢を崩した少女を抱きとめた。
「..そうか、こちらでも守ってくれるんだね。ありがとうリリン。いや、初号機、だったかな」
キラリと、初号機の目が光った気がする。
「聞こえてるか」
「逃げた貴方の態度は気に食わない」
「でももっと気に食わないのは」
「こんな傷だらけの女の子を意地張ったせいであてつけの為に引っ張り出させた僕の情けなさだ」
「勿論このエヴァンゲリオンには乗る」
「但し条件が1つ」
「碇ゲンドウ。貴方がこの女の子に謝ることだ」
「僕はグレン団、大グレン団副リーダー、盾のシンジ」
「絶対、あの巨人は斃してみせる」
「約束、忘れないでよ」
シンジは、レイを胸に抱きながら静かに、だが力強くゲンドウを見つめる。
ミサトもリツコも、そしてゲンドウはただ気圧されるのみであった。
言ってる言葉の意味はわからない。
突然豹変したように一気に言葉を吐き出す姿に、ただ圧倒されていた。
この子、さっきの....ニアに似た子。
こんな傷、一体どうしたら。
駄目だ、今はあの巨人を倒すことに集中しなきゃ。
「..大丈夫? 無理して声出さなくて良いよ」
「....アナタは?」
「..僕はシンジ。グレン団の」
「....グレンダンとは、何?」
「..そうだね、説明は後ででいいかな。今はあの巨人を倒さなきゃ」
「....アナタが使徒を? アナタは碇司令の息子」
「....そうなるかな、でも今はお話は後かな。君も身体の調子よくないでしょ」
そう言うとシンジは少女、綾波レイの体をストレッチャーに乗せた。
そして懐にしまっていたサングラスを取り出す。
兄さん、彼がそう呼ぶかつての団のリーダー。
彼の遺品であり、魂のマークにも描かれているそれはV字になっている派手なものでシンジに似合うようなものでは無かった。
だがそれは彼の魂なのだ。
受け継がれた、兄弟のしるしのひとつ。
それを掛けたシンジは告げた。
「......僕が乗りますッッ」
また頼むよ。こっちでも。
少年は一人初号機と、かつての愛機に向かって思いを馳せた。
「冷却終了」
「右腕の再固定、完了」
「ケージ内、全てドッキング位置」
「了解、停止信号プラグ、排出終了」
「了解、エントリープラグ挿入」
「脊髄連動システムを解放、接続準備」
「プラグ固定、終了」
「第一次接続開始」
「エントリープラグ、注水」
「....水、ですか? このままだと」
「大丈夫よ。それはL.C.L。肺がL.C.Lで満たされれば、直接血液に酸素を取り込んでくれます。すぐに慣れるわ」
「....了解」
シンジは少し水が苦手であった。
「主電源接続」
「全回路、動力伝達問題なし」
「了解」
「第二次コンタクトに入ります」
「A10神経接続、異常なし」
「L.C.L転化率は正常」
「思考形態は、日本語を基礎原則としてフィックス」
「初期コンタクト、全て問題なし」
「双方向回線、開きます」
「シンクロ率....そんな!七十二.六%!?」
「すごい、という域を超えてるわね。でも良い誤算だわ」
「ハーモニクス、多少の誤差はありますが計算内。暴走、ありません」
「いけるわ」
「発進準備!」
この日のために訓練してきたのだろう。テキパキとエヴァンゲリオンを発進させるの準備が進められていく。
「発進準備!第一ロックボルト外せ!」
「形状確認!アンビリカルブリッジ、移動開始!」
「第二ロックボルト外せ!」
「第一拘束具、除去」
「第二拘束具を除去」
「一番から十五番までの、安全装置を解除」
「解除確認。現在、初号機の状況はフリー」
「外部電源、充電完了」
「外部電源接続、問題なし」
「了解、EVA初号機、射出口へ!」
コンソールを叩き指示を出す女性、伊吹マヤの号令により初号機が所定の位置へと進む。
「進路クリヤー、オールグリーン」
「発進準備完了!」
「了解、構いませんね?」
「もちろんだ。使徒を倒さぬ限り我々に未来は無い」
「碇。本当にこれで良いんだな?」
ゲンドウは答えない。
変わったサングラスを掛けている息子の顔を表情の読めない顔で見つめていた。
「シンジくん、流れでここまで来てしまったけどだいじょ、」
「大丈夫です。僕を、」
司令室、コンソールを叩いてた者も、整備室からモニターでコクピットを見る者を、この場でシンジの姿が見れる者は目が離せなかった。
変わったサングラスではない。
そのV字のサングラスの奥にある少年の、シンジのその目から目を離せなかったのだ。
それを見たものは生涯忘れることは無いだろう。
その名乗りを、異界で大グレン団副リーダーとして生き抜いたシンジの啖呵を。
「僕を誰だと思ってやがるッッッ!!!
アンタたちは知らないだろうが僕は大グレン団のシンジ!!!
流れ、だと!!!僕たちグレン団は何時だって流れに流されるだなんて事はして来なかった!!!
エヴァンゲリオンに乗るのだって僕が決めた事だ!!!
一度決めたらやり通す!!!
とっとと僕を出せ!!!」
言ってることは分からなかった。
腕を組みモニターの中心を強く強く見つめるサングラスを掛けたシンジは、NERV職員の目にはただ意味不明な叫び声を上げる男児ではなく、
男を見た。
それは男の父親も例外ではなかった。
「....解ったわ!エヴァンゲリオン、発進!」
この世界での大グレン団シンジの初陣である。
「シモーーン、ごはんができました〜」
「おーし、今いくよニア〜」
そこは静かな場所だ。
小さい一軒家に夫婦が住んでいる。
「うおー、今日も美味そうだなニア。頂きます」
「ふふっ、たーんと召しあがれ」
幸せな家庭、そんな言葉を体現したような光景であった。
「そういえばニア、聞きたいことがあるんだけどさ
「なぁに? シモン」
「アレから暫く経つけどさ....その、体は大丈夫か?
いやわかってるんだ。色々ニアともあーー、進んだし、毎日健康そうだなってのは。それにアイツが何とかしてくれたのを信じてない訳じゃない。でも、」
「んっ」
ニアは、シモンの口を、己の口で塞ぐ。
「むっぷふあぁ。いきなりだな!
....あぁそうだよな。信じねぇと」
「ふふっ、そうですよ。シンジ、だけに」
ほんのりと顔を赤くしたニアはそう告げると何だそりゃ!とシモンは笑い声を上げる。
いつの間にかシモンの肩によじ登っていた、ブタモグラのブータも嬉しそうに鳴き声を上げる。
なぁシンジ。俺たち幸せだぜ。お前のお陰だありがとう。
ねぇシンジ。私たち幸せです。貴方のお陰よありがとう。
ブーブヒブ。ブヒーヒブブヒ。ブヒブーブヒブヒヒブ。
やだ、うちのシンジくんコミュ障?(会話よりも独り言のほうがイキイキしてる)