エヴァだけ強くてニューゲーム 限定版アフター   作:拙作製造機

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ミサトは苗字が変わりました。そして、ユイに妹か姪のように扱われています。リョウジは……ゲンドウからすると愚痴を言い合える甥か義理の息子でしょうか。シンジの面倒を見てくれていた二人ですからね。申し訳なさ半分感謝半分でしょう。


二組の夫婦は仲良しです

「大分大きくなってきたわね」

「はい、おかげさまで。未だにこの状態には慣れませんけどね」

 

 その日、碇家のリビングにユイとミサトの姿があった。エヴァのコアにいたため、実年齢がミサトとそこまで変わりないユイは、その公式な年齢を告げると驚かれる程の美貌を保っている。

 対するミサトは、幾分若さを失ったものの、それでも三十後半が見えてきたとは思えぬ程の美しさを誇っていた。共に旦那の自慢の妻であり、シンジからしても十分綺麗な二人である。

 そんなミサトのお腹は、見るからに大きくなっていた。リョウジとの子が出来たのである。年齢もあるので早めにと思っていたのだが、早々狙い通りにはいかないのが命というもの。結婚して一年近く経ってようやく授かった命であった。

 

「あら、まだ大きくなるのよ? その内歩くのも億劫なぐらいに」

「聞いてますけど、ホント勘弁して欲しいです。でも、こうやってあたしも生まれてきたんだなぁって、そう思うと弱音を吐く事は出来ませんね」

「そうそう。で、リョウジ君も毎日やる?」

「ええ、飽きもせずに。毎朝毎晩、必ずお腹に耳を当ててきます」

「でしょうね。うちは恥ずかしかったのか、毎日一度だったけど、それでも必ず一度はしてたもの。リョウジ君ならそれぐらいが妥当かしら」

 

 シンジという繋がりから、ユイはミサトとリョウジを妹夫婦か姪夫婦のように思っていた。ゲンドウも口には中々出さないが、長きに渡りシンジの保護者をしていたミサトへは、感謝の念を抱いているようで、今など彼女の妊娠を夫であるリョウジと同等に喜んでいたぐらいだ。

 一方のミサト達も今の碇家は他人とは呼べない程には近くになっていた。シンジを通じて関わりを持ち、ゲンドウやユイから、先に夫婦となり子を持った経験などを聞いて自分達へ活かしてもいたほどに。

 

 更にこうして、休みの日にどちらかの家でお茶を飲みながら他愛ない話をするのも、今のミサトにとっては色々と助かる事だったのだ。

 どうしても妊娠中は気持ちが滅入る事や沈む事が増える。しかも彼女は酒好きであった事もあり、否応なくストレスが溜まってしまうのだ。そこにユイからの誘いが来た。夫には言えない愚痴や文句もあるでしょうと。同じ女として、更には妊娠を経験した者としてのユイの気遣いに感謝し、ミサトはこうして適度なストレス発散を可能にしていた。

 

「そういえば、今日ゲンドウさんは?」

「ゴルフ。冬月先生と二人でね」

「あらら、じゃご機嫌だったでしょう」

「ええ、朝早くにいそいそと出て行ったわ。いつもは私が起こさないと起きない癖にねぇ。リョウジ君は?」

「あいつはまだ寝てます。日向君や青葉君と飲んできたみたいで」

「あら、じゃあ朝帰り?」

「みたいです。あたしに酒の匂いを嗅がせないようにしたつもりなんでしょうけど……」

 

 朝目を覚ましたミサトがその事に気付いたのは、洗濯かごにあったリョウジのシャツ。そこから酒の匂いが漂っていたのだ。妊娠中は嗅覚が過敏になっているため、彼女はすぐに気付いてため息を吐いたと、そういう訳だ。

 

「口は気を付けても衣服は意外とね」

「そうなんです。ったく、詰めが甘いんだから……」

「ふふっ、でも可愛いじゃない。あの人ならきっと普通に帰宅するわ」

「あいつもそうですよ。今回は多分あの二人が言って気を付けたはず」

 

 ミサトの脳裏には、マコトとシゲルに匂いの事を言われてどうしたものかと考えるリョウジの姿が浮かんでいた。

 

「じゃ、リョウジ君はあの二人に感謝しないとね」

「まったくですよ」

「でも、こういうのってこっちが注意すると絶対こう言わない?」

 

 どこか悪戯っぽく笑うユイを見てミサトも何を言わんとしているかを察したのか、楽しそうに笑みを浮かべた。そして二人は互いの目を見て小さく頷く。

 

「「すまない。今度から気を付ける」」

 

 見事に揃った言葉に二人は笑顔を浮かべた。やはりどこの家も一緒かと、そう思って。

 

「なぁにが今度からよ。そもそもこっちがどうして怒ってるか分かってないのに、どうやって対策するの!」

「本当にその場凌ぎをやるのよね。いっそ素直に、どうして怒らせたか分からないので教えて欲しいぐらい言えばいいのに」

 

 そこから盛り上がる女二人の会話。それをシンジは自室で聞いていた。その手元には受験勉強用の過去問題集がある。彼は先を見据えての受験勉強の真っ最中だったのだ。

 

「……僕はアスカ達にこう言われないようにしよう」

 

 ドアの向こうから聞こえてくる内容を教訓とし、シンジは二つの意味で勉強をする事となる。そんなある日の午前中の一幕であった。

 

 

 

 とある日の夕方、ゲンドウの部屋を一人の客人が訪れていた。二人の間には小さなテーブルと一本の日本酒の瓶と二つのグラスが置かれている。

 

「それでですね、あいつが事ある毎にこう言うんです。あたしにはこの子がついてるんだからって。あれ、ズルくないですかね?」

「分かるぞ、リョウジ君。私もかつて似た事を言われたものだ。アナタはこの子が大切じゃないんですかとな。妊娠中の妻に多数決は無条件降伏と同じだ。というか、そもそも妊婦程家庭において無敵の存在はいない」

 

 共に少し赤ら顔で話すゲンドウとリョウジ。ユイはミサトを連れて女だけの箱根旅行へ行っており、自炊が面倒なリョウジは適当な材料と酒を持って碇家を訪れたのだ。

 今、キッチンでシンジが夕食を支度している頃だろう。時折聞こえてくる包丁の音などをBGMに、二人の男は安いあたりめをつまみに酒を飲んで愚痴っていた。

 

「泣く子と地頭には勝てないって言いますけど、今だと泣く子と妊婦には勝てないですな」

「……私は妊婦でなくても勝てる気がしない」

「おや、そうなんですか?」

「一応聞いておくが、君はどうやって妻に勝つ?」

「まぁ、成功率は半分を切りますがね。要するに有耶無耶にするってやつです」

「…………そういう事か」

 

 リョウジが若干怪しい手つきをした事でゲンドウもその手口を理解した。そして、それは今のゲンドウには中々難しい手段であった。

 ユイがいない間、彼は赤木ナオコと娘のリツコの二人を愛人としていたためだ。未だにユイはその事を怒っていて、サルベージが成功してから夫婦の営みはあって月一度。下手をすれば三か月無しにされる事もザラであった。

 

「……もしかして、ユイさんは未だに?」

「ああ。自らのせいだから何も言えん」

「あれは、きっとリっちゃんの母親だけならここまで長引かなかったと俺は思いますよ。ユイさんの一番の怒った部分は娘のリっちゃんだと」

「…………やはりそうだろうか」

「ええ。なのでゲンドウさん、ここは男らしくぶつかってみては? ミサトから聞きましたけど、ユイさん、もう一人子供を、しかも出来れば女の子が欲しいらしいじゃないですか」

 

 リョウジの問いかけに静かに頷くゲンドウ。体は未だに若々しいユイ。そのため、十分第二子も産む事は可能だった。先程挙げた営みの決行日は、大抵その可能性が高い日である。

 

「そこでゲンドウさんが男らしくユイさんを抑え付けましょう。何も力付くとか無理矢理じゃありません。きっとアレはユイさん主導になってますよね? ……なら、今度はゲンドウさんから誘うんです。俺も今度は最初から父をやってみせる。お前と立派に親をしたいんだ。これで行きましょう!」

「……そう、だな。時には男としてガツンと行動するべきか!」

「その調子です! さ、一杯どうぞっ!」

「ああっ!」

 

 互いにグラスへ酒を注いでは呷る二人。酔いと共にテンションと声量も上がり、シンジが夕食を作った時には既に出来上がっていた。

 嫌な予感をひしひしと感じながらドアを開けたシンジが見たものは、赤ら顔で妻の愚痴というか自慢というかを言い合う二人の男の姿。それを見てシンジは思う。こんな風になりたくないと。

 

「父さん、加持さんもご飯出来たからリビングに。というか、お酒臭いしイカ臭いから換気してよ! ほら、どいて!」

 

 文句を言いながら窓を開けるシンジだが、その一方でこうも思うのだ。いつか、自分もこの二人とこんな風な事を言い合えるようになりたいとも。そんなある日の一幕であった。

 

 

 

 その日は、ミサトとリョウジの結婚記念日だった。夜はどこかで外食―――かと思いきや、何と二人は碇家にいた。テーブルの向かい側に座るゲンドウとユイはどこか不思議そうにしていた。当然だろう。彼らは目の前の二人の仲人をした。だから今日が二人にとって大事な日であると知っているのだ。

 

「その、今日はどうして?」

「実は、俺達もシンジ君に招待されまして」

「シンジに?」

「そうなんです。その、あたしがこれじゃあ、お店とかには行き辛いんじゃないかって」

「……かなり目立ってきたな」

「もうとっくの前に安定期に入ってますもの。当然よ」

「そ、そうか」

 

 ゲンドウの言葉に小さく笑みを浮かべ、ミサトがそっとお腹を撫でる。リョウジはそれを横目にして微笑みを見せ、ユイは懐かしそうに笑みを浮かべた。

 

「そういえば、もうどちらか分かるはずだが……?」

「そうなんですけどね。ミサトが生まれるまで楽しみにしようと」

「それがいいわ。リョウジ君、両方の名前を考えておきなさい。一人っ子にするつもりじゃないでしょ?」

「ゆ、ユイさん。さすがに年子は無理です」

「大丈夫よ。私達も協力するわ。ね、アナタ?」

 

 ユイの問いかけにゲンドウは虚を突かれた顔をするも、すぐに咳払いをして頷いて見せる。彼からしても、今やミサト達は赤の他人とは思えないのだ。そんな彼の反応に満足そうに頷き、ユイはミサト達へ顔を向ける。

 

「ね? だから産める内に産んでおきなさい」

「だそうだぞ、ミサト。どうする?」

「あたしが心配してるのは収入面なんだけど?」

 

 ぐうの音も出ない反論にリョウジが藪蛇だったという顔をして舌を出す。それに三人が笑った。すると、その笑い声を聞きながらシンジが大皿を持って現れた。

 

「楽しそうだね。何の話?」

「俺の甲斐性無しと笑ってたのさ」

「あー、何となく分かりました」

「あら、シンちゃんも言うようになったわね。で、それは何?」

「僕なりの結婚記念日のお祝い料理です。ミサトさん、お寿司ならもう大丈夫って聞いたんで」

 

 テーブルの上に置かれた皿には、いくつもの手まり寿司があった。魚介から果物に漬物など、色々なものをネタに握った手まり寿司だ。その見た目の華やかに四人が感嘆の声を漏らす。

 

「すっご~い。シンちゃん、これ一人で?」

「ええ。普通よりも念のためお酢を減らしてありますけどね。だから、もし何だったら父さん達はワサビを使って。それと、作るのは思ったよりも簡単ですよ。後でレシピ渡します」

「シンジ、出来れば母さんにも見せて。って、あら、いちごもあるのね」

「美味いのか?」

「そう思うなら食べてみてよ。まぁ、僕は最後をオススメするけど。各種最低でも人数分は用意してあるし」

「なら、早速頂こうかな。まずはマグロか」

「私はエビをもらうとするか」

「これ、サーモンかしら。綺麗ね」

「あっ、これ薄焼き玉子で包んである。ありがと、シンちゃん。最高に嬉しいわ」

「良かった。じゃ、僕も食べよっと」

 

 一口サイズという事もあり、ミサトも気持ち悪くなる事もなく、食事は楽しげに続いた。最初こそ大量にあった手まり寿司もあれよあれよと数を減らし、気付けば皿は綺麗になっていた。

 その後はお茶を飲みながら雑談―――のはずだったのだが、リョウジが咳払いをして周囲の視線を集める。すると、彼は懐からプレゼント包装の箱を取り出した。それだけで誰もがその意味を悟った。ミサトが驚きと嬉しさで瞳を潤ませる中、リョウジはそれをそっと彼女の前へ差し出す。

 

「また今年もこうやって君にプレゼント出来るのが嬉しいよ。それに、今年は近い内に俺へ大きなプレゼントをくれるから、少しだけ頑張ってみた。気に入ってくれるといいんだが……」

「もう、リョウジったら……気に入らない訳ないでしょ。ありがとう」

「そうか。今年はシンジ君の厚意でこういう形に出来たが、来年は三人だけでお祝いだ。シンジ君達には悪いが、これだけは譲れないんでね」

「いえ、そうしてあげてください。僕としても、毎年こんなのは疲れますから」

「こら、シンジ。もう少し言い方を考えろ」

「いいのよアナタ。ふふっ、良かったわねミサトちゃん。だけど、本当に三人かしら? 四人になってるかもしれないわよ?」

 

 ユイの言葉にミサトが顔を赤くし、リョウジは困ったように頬を掻いて視線を逸らす。そんな二人にシンジとゲンドウは苦笑し、ユイは楽しそうに笑う。こうしてこの日の夜は過ぎていく。

 後日、ミサトは元気な男の子を産んだ。女の子が生まれると予想していたマヤやマコト達へ、男の子が生まれると読んでいたゲンドウはこう告げた。

 

―――ああ見えて、彼は一途だったという事だ。

 

 余談ではあるが、ミサトが出産したのと入れ替わるようにユイが妊娠し、生まれた子が男の子だった事で、ゲンドウはその言葉を裏付ける事になったのだった。だからといってユイが完全に許す事もなかったが……。




次回は友人達を描写予定。……予定は未定(汗
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