プロローグ ウィッチ
夜、十九時四十八分。彼女は月明かりの下真っ黒で大きく、重鈍そうな扉を見つめていた。
今宵はどんな戦いが繰り広げられるだろうか、そして、去年と比べて私はどれだけ強くなれたのだろうか。
そんなことを考える自分は去年と変わりない。勝利を渇望する自分がいることもまた、変わりない。しかし、弱い自分はもうここにはいない。今ここにいるのは強く、気高く、そしてこの一年たくさんのことを学び、吸収した自分だった。
ここは普通よりやや大きめのゲームセンター、その名を『プレイファクトリー』と言い、彼女の縄張りの一つである。
彼女は扉の方向に黒くて硬いブーツを鳴らしながら歩くと、ゲームセンター内にあ一角にある重鈍そうな扉は左右に割れ、開く。
この扉は重そうに見えて実はものすごく軽く、ふつうの自動ドアと同じように開いてくれるのだ。
彼女が入ったのはある種のゲーム、しかし競技と言ってもいい。
というのも、このゲームは少々特殊で、自分自らが相手と殴り合い、倒し、そして鍵を手に入れる。そのようなゲームだった。
彼女は今宵共に拳を交える人数を気だけで確認、ほう、今宵の人数は七人といったところだろうか。
「ん?この気は.....まさか.....」
彼女は思わず口にしてしまうほどの気が、この空間にはあった。
一人、いや、二人いる。そのことを気だけで確認した彼女は外周を周り、二人の位置を確認した。
なるほど、別々の場所にいるということは知り合いではないということだろうか。
この気の弱さ、間違いなく新人、いや、もしかしたら初見かもしれないほど弱い気だ。
ということは実質的にこの場にいる人数は五人、今の二つ名を持った自分では余裕で勝てる、どこからかやってくる謎の自信はより一層彼女を興奮させた。
今までとの自分とは違う、それを実感させてくれるようだった。
そうこうしているうちに保持者が鍵を持ってやってきた。
保持者はまるでピアノを弾くように、可憐で、一切の無駄な動きなく鍵を台の上に配置していく。
今宵の鍵は三つ、それに対して今宵は七人、違う、五人もいる。これは激戦になるであろう。
さぁ、今宵はどんな戦いが巻き起こるのだろう。そして見ていろ、新人2人、そしてこれまで幾度となく拳を交えあった同志たちよ、この1年で強くなった私を見せてやる。
彼女の名は〔
またの名を〔ウィッチ〕と言った。