レフィーヤ・ウィリディスは中二病   作:ロベルト

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 初投稿です。何卒宜しくお願い致します。



頭の痛い女の子

『ウオオオオオオオォォォォォォ――!!』

 

 天地轟く雄叫びと共に、山羊のような角を持つモンスター『フォモール』は、一切の恐れ無く突進を敢行する。ブレのないその突進からは、モンスターの自信が見て取れた。

 

 ――これ我が必殺の一撃、故に迷い無し。

 

 その直線上に立つは一人の少女。先の尖った耳を持ち、山吹色の髪を靡かせ、モンスターの突進に対し微塵も臆さない。

 彼女は知っている。それをまともに受ければただでは済まぬと。

 

 だが――是非も無し。

 

 彼女はそれこそを望んでいる。

 

「フッ、フフフハハハハハ――ッ!! よい、実に見事だ。貴様の覚悟見せてもらったぞ、化外」

 

 少女――レフィーア・ウィリディスは高らかに笑う。嗤う。哂う。モンスターの見せた勇気を、覚悟を、そして、愚かさを。彼女はただひたすらにワラっているのだ。

 

「ならばこそ、私も全力で応えましょう」

 

 レフィーヤは左手で自身の蒼瞳を宿した右眼を隠す。それは余裕から来る行動なのか、まもなくモンスターの突進を受ける者の動きでは無かった。

 左手の人差し指と中指が開かれ、再び右眼が姿を現わす。

 

 その瞳の色は鮮やかな紅だった。

 

「レフィーヤ・ウィリディスが命ずる――フォモールよ、頭を垂れ我が名の下に跪くがいい!」

 

 しかし、フォモールは止まらない。止まる訳がない。

 そもそも彼女の右眼の能力は、色が変わるだけ(・・・・・・・)なのだから。そう、それだけ。別に動体視力が上がったり、目が合った相手を幻術に嵌めたり、行動の強制化を可能にするものではない。ただ単に、瞳の色が青から赤に変わるだけである。

 

 つまり――、

 

「バカな、ギアスが効かないだと!?」

 

 これらは全て彼女の妄想である。

 唯一現実なのは、フォモールがレフィーヤ目掛けて突進をしていることだけ。

 

 未だ不動のレフィーヤ。

 それも束の間、彼女は手に持つ杖を大地に突き刺し、腰にぶら下げた極東の刀(・・・・)に手を伸ばす。

 

「ならば切り捨てさせてもらいます、御免!」

 

 腰を低くし、居合の構えをとるレフィーヤ。

 

「我が心は不動。しかして自由にあらねばならぬ。剣術無双――あれ?」

 

 フォモールに斬りかかろうとした瞬間――フォモールが灰に還った。

 灰の向こう側には、フォモールを倒した張本人、アイズ・ヴァレンシュタイン――。

 

「あ、アイズさ――じゃなくて、アイズ! おのれ、余計な事をしてくれる」

 

「うぅ……。ご、ごめんね、レフィーヤ」

 

「あ、いや、別にそんなつもりじゃ――でもなくて。全くだ、侮られては困る。フォモール如きに後れを取るこのレフィーヤではない!」

 

そうアイズに強く言いつけ、レフィーヤはその場を後にした。

 

「うぅ、またやっちゃった。アイズさんに嫌われるぅ」

 

 

 

 

 

 

 

     †

 

 

 

 

 

 

 ダンジョン50階層。

 それは、広いダンジョン内にいくつか存在する安全地帯。その名の通り安全、つまりはモンスターが生まれないため、冒険者はこの安全階層にて野営を開く。

 オラリオ最大派閥の一角である【ロキ・ファミリア】とて、それは例外ではない。

 現在、彼らはこの50階層にて野営の準備をしている真っ最中だった。

 

 そんなことなどお構いなしに、会話をしている人影が二つ。しかし、その雰囲気はあまり穏やかではない。

 

「この愚か者!!」

 

 翡翠色の髪を持つエルフが怒声と共に杖を振りかざし、そのまま目の前の人物へと振り下ろす。

 

「あいたっ!」

 

 叩かれた少女は、涙目でたんこぶの出来た頭を撫でる。

 

「何も叩くことないじゃないですか、リヴェリア様ぁ!」

 

「ああ、そうだな。何も叩くことはなかった。貴様があんな行為に出なければな、レフィーヤ」

 

 あんな行為とは、先程の戦闘での事である。

 主に、無駄に格好つけていること。後衛でありながら、モンスターに突進の標的にされる程前に出ていたこと。この二つだ。

 

「確かにお前はスキルのお陰で前衛と後衛、その二つの立ち回りが可能な稀有の才能を持っている。誰にでも出来る事ではない。むしろ、お前だけの持ち味と言っても過言ではないだろう」

 

「えへへ、リヴェリア様そんなに褒めても何も出ないですよ?」

 

「こいつ――!」

 

 拳を握り締め、怒りを露わにするリヴェリア。

 深呼吸をし、なんとか怒りを抑える。いちいちレフィーヤの言動に構っていては此方が疲れてしまう。

 

「だがレフィーヤ。先程の戦闘でお前に命じたのは後衛だ。前に出て戦えとは一言も――」

 

「その辺にしとけババア」

 

 突如背後から声が聞こえ、リヴェリアは咄嗟に振り返る。

 そこには尻尾生やし、獣耳をヒクヒクさせながらこちらに向かって歩いて来る狼人――ベート・ローガがいた。

 

 ベートの存在に気づいたレフィーヤは、表情をムッとさせ件のベートを睨み付ける。

 

「馬鹿には何言っても無駄なんだよ。馬鹿だからなァ」

 

「ふっ、何やらよく吠える犬がいると思いければ、貴様か狂犬」

 

「犬じゃねえ、狼だ!」

 

 互いを小馬鹿にしつつ、ジリジリと視線をぶつけ合うレフィーヤとベート。

 その光景に、はぁとため息を吐き左手で額に手を触れるリヴェリア。この二人のやり取りはいつも通りなので特に何も言わない。

 

「はん、まあいい。忠告はしたぜ、リヴェリア。誰に説教しようが構いやしねえが、その馬鹿と一緒にいるとテメェまで馬鹿になるぜ」

 

 話は済んだとばかりにベートはその場を立ち去る。

 

「はっ、神々ですら恐る我が内から発せられるエネルギーに畏怖したか、犬! フフフハハハハハハ――うわぁぁぁぁん!! リヴェリアざまぁ〜」

 

 ベートの姿が見えなくなった途端に、レフィーヤは泣きながらリヴェリアに抱きつく。

 

「ベートさんが! べーとさんがぁ!」

 

「はぁ、よしよし。怖かったな。ベートは口が悪いから気を付けろとあれほど言ったのに。安心しろ、アイツには私からキツイのを一発お見舞いしてやろう」

 

「ぐすっ、ほんとう?」

 

「ああ、本当だ。お前を泣かせるなら、たとえ相手がオッタルであろうとも私が倒してみせよう」

 

それを聞いた瞬間にレフィーヤは泣き止み、代わりに満面の笑みをリヴェリアに見せる。

 

「やったぁ! 約束ですよ、リヴェリア様?」

 

「ああ、約束だ」

 

 それを聞いて満足したのか、レフィーヤはリヴェリアから離れる。

 一瞬、名残惜しそうにリヴェリアの表情が暗くなるが、レフィーヤがそれに気づくことはなかった。

 

「――ざまみろベート。あ、私皆さんのお手伝いしてきますね!」

 

「そうだな。人手は多い方がいいだろう。お前も行くといい」

 

 最初のレフィーヤの呟きは聞こえなかったのか、リヴェリアは微笑みながらレフィーヤを送り出す。

 どうやらかなり機嫌がいいらしい。レフィーヤはスキップをしながら去って行った。

 

「可愛らしい奴め。もう少し抱いていたかったが、仕方あるまい。私も少しばかり手伝うとしよう」

 

そう言って、リヴェリアもキャンプへと足を運んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、説教してたんだった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインには悩みがある。

 誰しも一つや二つ、悩み事はあるものだ。それはオラリアにおいて、第一級冒険者である彼女とて変わらない。

 具体的にどんな悩みかと問われれば、それは人間関係だった。アイズはとある少女となかなか仲良くなれず、いつも思い悩んでいた。

 

 ――また、レフィーヤを怒らせちゃった。

 

「アーイーズー、どうしたの?」

 

 木に寄り掛かって座り、膝を抱き悩んでいると、自分を呼ぶ声が聞こえた。

 

 アイズを呼んだのはアマゾネスの少女、ティオナ・ヒュリテ。

 その後ろには双子の姉、ティオネ・ヒュリテの姿も見えた。

 

「ちょっと、悩んでて」

 

「悩み? さっき団長に呼ばれて説教されたこと?」

 

 ううん、と首を振る。

 その反応を見て、より一層わからなくなったのか、ティオナは首を傾げるばかりだ。

 

「はあ、どうせレフィーヤのことでしょ?」

 

 ティオネに当てられ、黙って頷く。

 それを聞いたティオナはそっかぁと納得の声を上げる。

 それ程までに、アイズとレフィーヤの関係は絶望的だった。

 

「……レフィーヤ、怖いから」

 

「えー!? レフィーヤなんか全然怖くないよー!」

 

「なんかあの子、アイズにだけとる態度が違うのよね。あとベート」

 

 別にレフィーヤがベート相手にどんな態度を取ろうがアイズにはどうでもいい事だったが、自分にだけ違うというのは聞き捨てならなかった。

 

 ――やっぱり私、嫌われてる?

 

 ティオナは怖くないと言っているし、ティオネの発言を聞く限り、そう捉えるしかなかった。

 

「あ、レフィーヤだ!」

 

 ティオナの声にパッと顔を上げる。すると、上機嫌にスキップをしながら移動するレフィーヤの姿が見えた。

 

「あら、機嫌良さそうね」

 

 どうやらティオネも同じ感想を抱いたらしい。

 

「ねー、アイズ。直接レフィーヤに聞いてみたら?」

 

「そうね、それがいいかも」

 

「ちょ、ちょっと二人とも……」

 

「おーい、レフィーヤー!!」

 

 アイズの制止を意に介さず、ティオナはレフィーヤを呼ぶ。

 ティオナに呼ばれ、こちらに気づいたレフィーヤが、ぐるんと直角に曲がってこっちに向かって来る。スキップで。

 

 ――今の、どうやったんだろう?

 

「あ、ティオナさん、ティオネさん――はっ! アイズぅ!?」

 

 自分を見た途端に明らかに表情を変えるレフィーヤに、アイズは意気消沈する。

 

「レフィーヤ、機嫌良さそうだったけど、どうしたの?」

 

「ふふん、実はですねティオネさん、さっきリヴェリア様とある約束をしたんですよ」

 

「約束?」

 

「ええ! なんと、リヴェリア様がベートを一発殴るんです! ざまぁ見やがれってんですよ! ふふ、これより下るは裁きの一撃。おお神よ! 全能たる永遠の王よ! あの愚かな狼に鉄槌を!」

 

 レフィーヤの言葉を聞いた三人は、またベートと喧嘩したなと同じ結論に至る。

 

「ふーん。あ、そうだレフィーヤ!レフィーヤって、アイズのことどう思ってるの?」

 

 ティオナの問いにピタリと動きを止めるレフィーヤ。

 レフィーヤの答えを聞きたくないあまり、本来はこの場から逃げたいというのがアイズの本心。しかし、自分の事をどう思っているのか知りたいという欲求が勝った。

 

「ど、どどどどうって――」

 

「嫌いなの?」

 

「き、嫌いじゃないですよ!」

 

「じゃあ好き?」

 

「す、すすすき!? な、なに言わせるんですかティオナさんっ!」

 

 激しく動揺するレフィーヤ。

 こんなレフィーヤは滅多に見られないので、可笑しかったのかティオネは口を押さえて笑いを堪えていた。

 

「ええー! べつに普通のこと聞いてるだけじゃん! でさ、結局どうなの? アイズのこと好き? 嫌い?」

 

 ジリジリとレフィーヤに近づくティオナ。

 逃げるように視線をずらしたレフィーヤとアイズ目が合う。

 今まで黙っていたがこれはチャンス。このチャンスを逃がさないよう、アイズは意を決して問う。

 

「私のこと、嫌い?」

 

 レフィーヤの顔が赤くなる。

 それを見たアイズは、

 

 ――あ、怒っちゃった?

 

「うわぁぁぁぁー!!」

 

 奇声と共にレフィーヤは逃げ出した。

 速い。恐ろしく速い。全力のベートと同等、あるいはそれ以上に。

 

「あー、あれは重症ね」

 

「よかったね、アイズ。レフィーヤ、アイズのこと嫌いじゃないって」

 

 ティオナの言葉に疑問符を浮かべる。

 はて、今のやり取りで何がわかったのだろうか。

 

「でも、逃げられちゃった。やっぱり、嫌われてる?」

 

「……こっちも重症ね」

 

「これは前途多難ですなぁ」

 

 やれやれと首を振るヒュリテ姉妹にアイズは首を傾げる。

 アイズがレフィーヤと仲良くなれるのは、いつになるだろうか。

 

 ――がんばら、なくちゃ。

 

 どうやら、そう遠くないかもしれない。

 

 

 

 

 




 ステイタスなどは後々公開いたします。
 目の色が変わるのもスキルです。

 いや、どんなスキルやねん。

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