龍の手をもった私は生きていく   作:チョコ明太子味

1 / 2
正真正銘龍の手しかない主人公っていなかったと思っての投稿です。
主人公が女の子なのは龍の手にあまり仕事をさせないためです。

それではどうぞよろしくお願いします。


第一話

「はっ…………!はあっ……!」

 

 断続的に飛んでくる光の剣をできるだけ避けれるように努力しながら、限界を訴えるように早鐘をうつ心臓を押さえつける。

 

 もちろん、人間である私に銃弾のような速度で襲ってくる幅広の物体を軽々と避ける事などできるはずもない。

 すでに光の剣は私の脇を深くえぐりぬき、白がめだつ高校の制服は赤黒く染まっている。

 

 それなのに私が走っていられるのかと言うと――――。まあ痛いのとかにはもう慣れ切ってるし、そもそもそこらの女の子よりは少しだけ体が丈夫だから。

 

「おっとっと…………」

 

 気づけばすでに裏路地の突き当りにまで来たようだ。

 

「もうそろそろあきらめたほうが良いのではないのかね?」

 

「あはは。今まで見た堕天使の中でも一番冗談が下手だね」

 

 目の前にいる紳士のような口調でしゃべる男は、堕天使ってやつである。

 ものすご~く簡単に説明しちゃうと、この世界には人間の他に悪魔、堕天使、天使の四種族が存在して、それぞれ自分の世界で生活しているのだ。

 

 んで、私を今まさに殺そうとしてる堕天使達は神器ってやつが大好きらしい。

 そしてその神器が私の中にもあるんだから厄介な事きわまりない。

 

「しかし解せんな」

 

「はぁ、はあ。何が?」

 

 目の前の堕天使はここまで私を追い詰めたらあとは楽勝だとでも思っているのか、こちらに光の槍を向けたまま私に問いかけてきた。

 

 まあその通り。堕天使との距離は十メートルほどあるけど、私の身体能力ではその距離を瞬く間に詰めるという事はできない。

 でもまあ、すぐさま殺すという事をしてくれないというのはこちらにとっても幸運でもあるので、この隙にできるだけ息を整えることにしよう。

 

 あー、汗でべたべたする。

 無事に家に帰れたらお風呂に…………。あー、無理だ。この怪我じゃあゆっくり湯船につかるといったことはできそうにもない。

 

 もう!途端に腹が立ってきた!私が殴って殺せるなら目の前のこいつをすぐにでも殺してるのに!

 

「君のようなものにすでに同志が数人もやられているというのが納得できないのだ。君の神器では私より数段ランクが落ちる堕天使すら倒せないだろう」

 

「へえ、知りたいんだその理由。なら、おじさまにも教えてあげちゃおうかな」

 

 右手にはめられた籠手を掲げて、力をめいいっぱい入れる。

 

『Boost』

 

 無機質な音声が流れて、一度解けた倍化をもう一度かけなおす。

私の少し濁ったような藍色のこの神器の名前は龍の手っていう持ち主の持つ力を二倍にする力を持つ、正真正銘どこにでもある神器だ。

 

元になった竜が電気を放つ龍だったからなのか、私の龍の手は倍化するときに僅かに電気が走る…………けど、せいぜいがスタンガン以下の電圧だからこの場合特に意味はない。

 

つまり私の持ってる手札はこれで全部。

私の力では堕天使。それどころか人外すべてに立ち向かうのは不可能なのだ。

 

じゃあ、なぜ私がなんども堕天使を殺したことになってるかと言うと。

 

「まあ、こういうことなのさ!」

 

「が…………!な、に⁉」

 

 堕天使が、自分の腹を食い破った歪な剣を見て目を見開く。

 

「ば、ばかな⁉何も感じなかったはずだ!そもそも私の感知魔法を逃れることができるものがいるなど…………」

 

「あら、そういうタイプの堕天使だったんだ」

 

目を見開いて呻く堕天使は自らを突き刺した人物を見るべく、せいいっぱい首をひねろうとする。

しかし彼が下手人の姿を見る前に彼の体の生命力は尽き、堕天使は魔力へと分解されて剣の中に吸い込まれた。

 

 血の一滴さえ残さず、完全に消滅したのだ。

 

「いててて」

 

「大丈夫ですか」

 

「ま、まあ。死にはしないかな」

 

 そう言って、えぐれた脇腹を出すべく制服をめくる。

 

「少し我慢してくださいね」

 

「おっけー、おっけー。ぐっとやっちゃって」

 

 堕天使を倒したその剣を私の傷口にあてがうと、私の傷口の肉が盛り上がるようにして傷をふさいで、奇麗な肌に戻してくれた。

 といっても取り繕っただけ。少し動くとその部分は引きつるようにひどく傷んだ。

 

 これは私を助けてくれたメイちゃんの神器の力。

 『生命吸収』の能力だ。

 他人の生命力を吸収し、自分の中にストックできる。

 生命力は自分の身体能力にブーストしたり、他人にこうして分け与えることができる。

 

 まあ、私はその譲渡を回復能力の増加程度にしか使ってないんだけど。

 

「これで堕天使は何人目ですか?」

 

「えっと…………八体くらい?ありがと、助かってるよメイちゃん」

 

「そのメイちゃんというのはやめてください…………。せめて僕のファーストネームのほうで呼んでください、我が主」

 

「その主ってのをやめてくれたら考えるけどね。――――考えるだけだけど」

 

 そうそう。この子の名前はベネット・メイシ―。

本人は女の子っぽいからってメイシ―、ないしメイとは呼んでほしくないみたいだけど私は呼んじゃう。だってそっちの方がかわいいからね。

 

 そのメイちゃんについて。

 なんとびっくりメイちゃんは元々は私の事を殺そうとした堕天使に従っていたエクソシストなんだよね。

 

 それがなんで主なんて呼び始めて私に懐いてるのかって言うと私にも分からない。

 まあ私にとっては益しかないのだから別にいいけれど。

 

 だって女の子っぽい名前だって気にしているくせに私より背は小さいし、こうして私の事を守ってくれるしね。

 

 え?体よく使ってるだけ?

 それの何が悪い。こちとら命を狙われとんじゃあー!

 

「じゃあ、主殿。生命力の吸収をお願いします」

 

「やーだ」

 

 あとはこうして無理やり私の事を強くしようとしないでほしいかな。

 そもそも他人の生命力の吸収なんて、生命吸収の持ち主のメイちゃんにしかできない離れ業で、私なんかがやると内側からパンクしちゃうんだってば。

 

「そんなこといわずに、ほらほら。おいしいですよ」

 

「おいしい訳あるか!」

 

 それでも分かってくれない辺り、メイちゃんは少し頭の残念な子なのかもしれない。というか、そうなのだろう。

 

 私は身の丈にあった望みを持つので精一杯な小市民なだけなんだけど。

 

「しかし、もう堕天使も八体目となるとグリゴリも本腰を入れてくるでしょうね」

 

「うーん、そうなのよねぇ…………。せめて私たちの住む町に龍系の神器を持った人が一人でもいれば、仕立て上げれるんだけど」

 

よくある龍系の神器である竜の手ではあるが、そもそも神器自体がそこらに転がってるものではない。

あくまでも神器の中でありきたり、と言う話なのである。

 

「まあ、その辺りの小細工は私がなんとかするから。もしそれが失敗してまた堕天使が来たらその時はお願い」

 

「分かりました」

 

何も考えずに堕天使が追い返されたのだから諦めよう!ってなってくれればよかったんだけどね。

 

 こんな日常がわたし、ウルフカットの似合う17歳の高校生野上ヒナのいつもである。

 あーあ。だれか堕天使とか悪魔とか天使とか、そういう面倒くさいものは全部殺してくれないかしら。

 

 

 

    ●

 

 

 

 竜の手。

 持ち主の力を倍にしてくれる能力変化型の神器。

 悪魔が使えば割と強力なパワーアップアイテムになるが、人間が使っても…………というわりと人間にとっては残念な神器である。

 

 そして私は男ではなく女の子だ。それも平均よりもやや下の運動能力の。

 よく考えてほしい。

 私の握力は24kg。50mは8秒ほどで走ることができる。

 小難しいことは考えず、単純にこれらの数値を倍になったものと置き換えてみよう。

 50mは4秒ほどで走り抜ける。確かに世界新記録だおめでとう。

 でも、そこらの悪魔ならこれくらいで移動できるよね!

 

 握力は48kg。わー、高校生男子の平均くらいだー。やったー。

 

 ゴンッ、と机をぶったたく。ふざけんな。

 これでどうしろっていうんだ。

 

 自分の体を竜の物と交換する?

 あれは意思のある神器限定の契約みたいなもので、私の遺物みたいな神器では無理なのー。

 

「だ、大丈夫?ヒナちゃん」

 

「え?あ、ああ。大丈夫。大丈夫だよー」

 

 気づけば、教室の半分くらいの目がこちらに向いていた。

 なんとか愛想笑いでごまかすと、溜息を吐いた。

 

「なにか嫌な事でもあったの?」

 

「いや、なんでもないのよ?ちょっと昨日みた悪夢を思い出しちゃっただけ」

 

 あまり名前の憶えていないクラスメイトと会話をする。

 あと数日もすればなんとかクラス内にいる人たちの名前は覚えることができるだろうが、いかんせんクラス替えをしてから2日目の今日だ。

 

「よかったら、私とお弁当食べる?」

 

「え、いいの⁉ヒナさんと食べれるなんて…………」

 

「そんな大げさな」

 

 彼女の言葉をあしらいながらカバンからお弁当を出す。

 すると、一緒にお弁当を食べようとした彼女とは違う少女が私に声をかけてきた。

 

「あ、あの。ヒナさん。教室の外でベネットさんが」

 

「え、そうなの?あー、ごめん今日はお弁当を囲めないみたい」

 

「ううん⁉べつにいいよ。はやく王子様の所に行ってあげなよ」

 

 王子様?

 彼女に背を押されるようにして教室から出ると、そこには手元に総菜パンのはいった袋をぶら下げたメイちゃんが立っていた。

 

「主様。こんにちは」

 

「はいはいこんにちは。――――歩きながらでいいんだけど、君の事私の王子様って言ってる人たちがいるんだけど、知ってた?」

 

「まあ、はい。何度かクラスメイトにもそのことでからかわれたことが」

 

「まじか」

 

 思わず口調が砕けるほどに動揺してしまう。

 なんてことだ。この事を知らなかったのは私だけだというのか。

 というか、なぜ知らなかったんだ私⁉そこまで気を抜いてたつもりはなかったのに!

 

 ま、まあ。確かにメイちゃんは外国人だし金髪だし髪は整ってるし。

 王子様と言われても納得はできる。

 しかし、メイちゃんが王子様ってことは私はお姫様ということで。

 

「うう、むず痒い」

 

 そうやって、一人もだえる私を気遣う様子もなく。

 メイちゃんはなんてことの内容に口を開いた。

 

「そういえば、昨日グリゴリに繋がっているエクソシスト部隊に飛ばしていた使い魔が情報を拾ってきました」

 

「お?どんな情報?」

 

「神器の持ち主は別の町に逃げた可能性が大。だそうです」

 

「そ、上手くいってよかった」

 

わざわざこれまで連携をとるようなことをあちらがしてくる前に隙を見せて撃退していてよかった。

私の姿はグリゴリにはばれていなかったようだ。

 

「参考までに何をしたか教えてもらってもいいですか?」

 

「えーっとね。…………あー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり秘密♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ●

 

『昨日未明。〇〇市で皮膚のはげた人間の腕のようなものが見つかりました。警察は残りの遺体の存在を調べると同時に、犯人を近くの工場で自殺をした青年と断定しました。被害者、被疑者共に身元の断定はできていない模様です。では――――明日のお天気のコーナーです!――――』

 




ヒナ 16歳 高校二年生 身長164cm

メイちゃん 15歳 高校一年生 身長156cm

大体こんな感じで想像してください。

あと劇中で堕天使の目の前で無駄に倍化したのは堕天使の気を引くためです。
次回はメイちゃん視点でのお話になると思います。
そのあとは原作を交えながら流していく感じで。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。