ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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今回は原作キャラ出ています。
考えたのですが時間軸的には200年前固定にして、現在が30年経過です。
次の話あたりで徐々に時間を流していこうと思います。



『出会 - Meet -』

四番隊副隊長としての日々はめまぐるしい。

あっという間にあれから三年が過ぎた。

卯ノ花隊長が有能なだけあって当然、その副官ともなればついて行かなくてはいけない。

回道の技術と瞬歩がさらに磨かれる。

ただでさえ上位の技術だったというのに。

 

「流石ですね……前任者より遥かにいい動きですよ」

 

そう言いながらこちらが七名治す間に十名を治していく。

こちらの倍ほどの速度で動いているわけではない。

回道の実力で傷が俺の倍ほどの速度で治っているのだ。

 

「もう、重傷者自体が少ないので書類に取り掛かりに行っていただいてもかまいませんよ、卯ノ花隊長」

 

そう言うとお言葉に甘えますと一言残して隊首室へと入っていった。

そして言葉通り、一人でこなしきる。

どうしようもないものなんて最早、死が間近というほどのものだ。

 

「しかし、さすがは唯一の医療部隊」

 

忙しさもひとしお。

ここが無くなれば、敵襲では甚大な被害となり得る。

その重要さをよく知らない奴らが馬鹿にしている。

主に戦闘集団である十一番隊。

彼らは戦いの中で傷つき、死んでもいいやと思っているから。

あとは優秀な人材が揃う一番隊。

その中でも低い席官が増長している場合によくある。

 

「全員、治療を終えましたね」

 

書類仕事が終わったのか。

束を持って隊首室から出てくる。

それを手渡してくる。

どうやら一番隊から十三番隊までの書類。

これを届ければいいのですね。

 

「そのまま、自由に動き回っていただいてもかまいませんよ」

 

十分、やってくださっているので事態が急転しても間に合います。

そう言われたのでぐるりと回る事にして先に十三番隊に届けに行く。

そう言えば最近噂になっている隊士がいると聞いたな。

確か名前は……

 

「あの人、四番隊に居なかったんですけど…」

 

浮竹隊長が病欠と聞いて溜息をつく。

多分入院病棟に居るのだろう。

代理の青年に渡しておく。

 

「頼んだよ」

 

今年、入隊してきた新顔。

おずおず頷いて取ってくる。

まだまだ初々しいものがあるな。

 

「分かりましたよ、斑鳩副隊長」

 

そう言われるとこそばゆい。

いつまで経っても慣れないものだなと思う。

 

次は十二番隊の隊舎。

勝手知ったるという事でするすると入っていく。

隊首室の扉を軽くたたく。

 

「入ってきぃ」

 

聞きなれたひよ里さんの声だ。

丁度隊首室に用事があったのだろう。

開けて書類を渡す。

内容はさっきの十三番隊の時にちらりと見えたが、この間の健康診断の結果だ。

浮竹隊長が軒並み悪かったのが目に入ってぞっとした。

 

「今年も全然、背が変わらんかったなぁ」

 

去っていく時に溜息でそんな言葉が聞こえる。

止まっているわけではないと思う。

ただ恐ろしい。

成長とは実力の上昇を示すとも言われている。

現在の実力でも上位席官。

もし、これ以上強くなったらとんでもないだろう。

 

十一番隊では拳西さんに渡す。

どうやら筋肉量で体重が少し増えたらしい。

逞しさが一段と増している。

 

十番隊では綱彌代副隊長に渡す。

奥さんだったが本家の方から分家の再建を頼まれているらしい。

今はそのために名前を名乗っていた。

 

九番隊では久南さんに渡す。

ご苦労ご苦労と言って豆大福を渡してきた。

何か苦笑いしている副隊長。

きっと抑えられる人材でも探しているのだろう。

丁度、十一番隊に居ますよ。

そう思いながら八番隊へ行く。

 

「肝臓の数値悪いんで、酒控えてください」

 

そう言って京楽隊長に渡す。

矢胴丸さんがくすくすと笑っていた。

これでしばらくは麦茶生活やな。

そう呟いたのが聞こえたのだろう。

とほほと言った顔をして肝臓の数値が記述されている箇所を見返していた。

 

七番隊に行く。

愛川さんはどうやら身長と体重が若干増えたらしい。

というより基本、皆健康体だよな。

見た目だけで言ったら確実に心配なのが後に控えているんだけど。

 

六番隊では朽木隊長に渡す。

見た目ほどではないが、年は召されている。

健康を常に維持していられるのか。

結果は全てが良好だった。

それとは対照的に副隊長はところどころ悪い結果があった。

 

五番隊に行く。

来たのは初顔の人間。

眼鏡をかけたいかにもな優男。

しかし、死線をくぐって来たからわかる。

こいつはどこか危うい奴だ。

初対面の相手だというのに脳が警鐘を鳴らしている。

 

「名前は?」

 

極めて冷静な人間という事を装う。

相手がおかしなそぶりをしたら、こちらは鞘から刀を抜きかねない。

それほどの今まででも数少ないほどしか抱いたことの無い次元の警戒心と危機感。

此方の警戒心を刺激することもなく、書類をこのまま受け取ってくれればいいのだが……

 

藍染(あいぜん)惣右介(そうすけ)です」

 

此方が思うよりもすんなりと受け取ってくれる。

勘を信じてあまりにも警戒しすぎたのだろうか。

初対面の相手に流石に失礼だったな。

しかしここで緩めてしまう訳にはいかない。

ここは念を入れて少し仕掛けていく。

芝居じみた動きに見えないように、極力自然な形で転んでいく。

 

「そうか……っと!?」

 

その拍子に斬魄刀を掴む。

そのまま慌てるように僅かに刀を引き出す。

そして力を込めてその露出した刀の一部分が欠ける。

 

「大変申し訳ない事をしてしまった、すまない!!」

 

とんでもない事をしてしまった。

そのことで頭がいっぱいになってしまった。

俺は逃げるように足早に去っていった。

 

隊舎を出てから誰にも見えないところで袖をまさぐる。

その手のひらには欠片がきちんと残っていた。

欠けた瞬間に『曲光』で見えないようにした。

さらに誠心誠意謝り、罪悪感から逃げたという形を装った。

 

「悪いな、君を最大限警戒していることの表れだ」

 

願わくばこれが杞憂でありますように。

そう思ってそれを握り締めていた。

 

「戻ってまいりました」

 

卯ノ花隊長自身の診断結果が抜かれていなかった。

年齢欄の場所が誤植ではないですか?

そう言ったらあの微笑みで間違えていないと言われた。

威圧感があったのでそれ以上は追及しなかった。

 

「失礼します」

 

三番隊の隊舎に行く。

鳳橋さんが出迎えてくれる。

健康診断の結果を渡すと、例年通りの痩せ型認定らしい。

結構食事に気は使っているし、多少は増やすようにしているのにな。

そう呟いていた。

 

次の二番隊。

出迎えてくれたのは小さな女性だった。

 

(フォン)家の末っ子か」

 

その子に渡して去っていく。

おどおどとしているところを見るとまだまだ若い。

刑軍に入って間もない頃かな。

そう考えていると隊長格の霊圧を感じる。

これは並ではない。

動いているという事は逃げようとしているな。

貴族の話を聞いたことはあるが……

 

「この霊圧が四楓院(しほういん)家の姫君のものか」

 

この者は強いな。

二番隊も盤石の時代が訪れる。

護廷十三隊の安定に笑みを浮かべていた。

 

最後に一番隊へ届けに行く。

扉を叩き、隊舎に入れていただく。

まずは雀部(ささきべ)副隊長に声をかける。

 

「お疲れ様です」

 

自然と姿勢が正される。

一番隊だからではない。

この方が持つ熱量や佇まいがそうさせる。

 

ご苦労と一言述べて書類を受け取る。

そして、紅茶でもどうかと誘われたので、執務室へと入る。

 

紅茶を飲みながらふとした疑問がわいてくる。

霊圧も技量もすさまじい。

その方に目に見える箇所についた傷。

乾き具合と傷の形状から違う人物にそれぞれ一度ずつ、つけられたものと判別できる。

 

「総隊長、質問してもよろしいでしょうか」

 

くるりと振り向く。

霊圧を漏らして揶揄われる。

流石にもうそれで片膝つくほど軟じゃありませんよ。

 

「良かろう、何が聞きたい?」

 

その成長に気をよくしたのだろう。

僅かに眉が下がり微笑みを返していた。

髭で隠れてろくにわからないけれど。

 

「総隊長が護廷十三隊の頂点、それは常識外れの強さを有しているという事です」

 

その言葉は真実。

本気でそう思っている。

卯ノ花隊長より強いかはわからない。

ただ、お互いにとてつもない強さなのは事実。

 

「だからこそ、その総隊長の額に傷をつけた方を知りたいのです」

 

そう言うと雀部副隊長が睨む。

まるでそれは禁句だというように。

それを総隊長が制する。

若きものの興味にとやかく言ってはならないと。

 

「この一つの『ノ』の字については言えぬ」

 

これを言うと現在の護廷十三隊を揺るがすから。

その一言で遮られた。

しかし、と一拍置いて言葉を続ける

 

「もう一つの傷をつけたのは教えてやろう」

 

額の傷を撫でながら思い出にふけるように微笑む。

まるでそれが嬉しかったことのように。

 

「無論、お前さんが内緒にできるならな」

 

その言葉には確かな重みがあった。

信頼して話すのだと。

言葉だけの約束などするな。

ただの好奇心で聞くのなら許さないと。

 

「当然、このような秘密をおいそれとは話しません」

 

なんたってあの人の本性も皆には黙っている。

血に飢えた戦いの人。

『戦いこそ全て』と言っても差し支えない人。

その人と毎日の殺し合い。

そのような事すら黙っている。

 

「ここにおる長次郎こそが儂にもう一つの傷をつけた死神じゃ」

 

こちらの眼差しを信じたのだろう。

傷をつけた死神について話してくれる。

それを聞いた瞬間、雀部副隊長が申し訳なさそうな顔をする。

普段の穏やかな人からは想像もつかない。

 

「儂の門下に入らず独力でその力を高めた、そしてその卍解で傷をつけたのじゃ」

 

素晴らしいものだと。

そう言いた気ではあるが、あくまで冷静に。

ただ、卍解を使えるなんて……

隊長になってもおかしくない人だ。

 

「雀部副隊長は隊長の打診をことごとく断り続けたという事でしょうか」

 

そう言うと頷かれた。

きっと、この人は生涯をかけて忠誠を誓っている。

その苛烈なまでの思い。

それを高々若輩の自分が推し量ろうなど甘すぎる。

 

「素晴らしいお方ですね」

 

そう言って立ち上がる。

他言はしない。

それを伝えて胸に秘める。

 

「さて……」

 

去っていく中で『蛆虫の巣』に目を向ける。

主立った人物が金髪の男に変わっていた。

そいつが引っ張る相手を一人一人見ていく。

 

その中に異彩を放つものがいた。

青い髪と白い肌。

不敵な笑みを浮かべている男。

 

彼を中に入れていく瞬間。

瞬歩で忍びこむ。

帯刀していてはいけないらしい。

 

「これが中身か」

 

その言葉に振り向く。

こちらは微笑んでいた。

この不敵な笑みを浮かべている男が求めていた人物だと。

直感で分かっていた。

 

「四番隊の副隊長さんが侵入してくるんっすか?」

 

驚きと非難の眼差し。

言いたいことは非常にわかる。

だが、俺はずっと人材を求めていた。

絵空事を実現できる者を。

 

「興味のある人物がいれば見たいのが常ではないか」

 

そんな事を言っていると気配を感じる。

拳を振るってくる。

それをひらりと避けて後ろ回し蹴り。

『白打』が弱い副隊長って柄でもない。

きっとおおよそ望むものをすべて持って生まれたのだから。

 

「あらら……刀無しでこの強さとは」

 

伸びてしまった人を見て驚いている。

それを見ていた青髪の男は……

 

「実に良い健康体だネ」

 

ぎょろりと視線が舐めるように上下する。

それは全てを見透かそうとする好奇心。

霊圧まで測れるのだろうか?

こちらとしてもその頭脳に非常に興味がある。

 

(くろつち)さん、行きましょう」

 

しかしそれを遮る。

まあ、仕事熱心なのだろうな。

だが引き下がるような男ではないぞ。

 

「で……なんで中にまだいるんッスか?」

 

涅を連行した後、戻ってきた男に溜息をつかれる。

まあ、お前の名前を聞きそびれたからな。

俺だって別に仕事の邪魔をしたいわけじゃあないさ。

 

「名前を教えてもらっていないからな」

 

それもそうだったッスね。

そう言って息を吸い込む。

 

「僕は浦原(うらはら)喜助(きすけ)と言います」

 

連行は仕事の代理みたいなものですけどね。

まだ若輩者でして。

そう言って頭を掻く。

よく言うよな、こいつ。

こちらが三十年近い先輩ではあるがお前もそこそこ年齢が高いだろ。

 

「お前もなんだか匂いがするよ」

 

研究者の匂いがな。

今度話したい事が出来て感動しているよ。

そう思い、去っていく。

去り際に袖をかいでいたがそういう意味ではないぞ。

 

「ただいま、戻りました」

 

そう言って業務を継続。

急患が入る事もなく、今日の業務も終了。

夜の鍛錬が待っている。

それまでに畳の上に『年輪』を置いて深呼吸をする。

しばらくすると初老の紳士が現れる。

刀を構えて俺の目の前にいた。

『具象化』に成功していた。

 

「お前の『本当』を見せてくれ」

 

それを『屈服』させてさらなる高みへ俺は立つ。

そう言って立ち上がる。

俺の眼差しに微笑みを返す。

 

「その熱量を叩きつけて見せろ」

 

そう思って表へ出る。

刀を打ち付けあう。

元は自分の刀だから互いに軌道なんてわかりきっている。

だが上下関係をはっきりさせてやる。

 

「この機会にはっきりとな!!」

 

結論だけ先に言うと無理だった。

強いとかではなく時間の問題。

非番の日にしっかりとやらないと難しい。

 

「絶対に卍解を教えてもらうからな」

 

そう言って鞘に収めて夜の鍛錬へと向かって行った。




原作チートの藍染の『鏡花水月』を、自分の危険信号という勘を信じ、偶然を装い掴むことで無効化。
その際に僅かに砕いて欠片まで奪うという事前対策もばっちりです。
絵空事を実現可能の人材ことマユリ様降臨です。
浦原に砕蜂、名前だけですが夜一。

指摘事項ありましたらお願いします。

感想について確認したところ、本遍の文章では本能とは書いていなかったのですが、後書きで本能と記述しており誤解を招いていました。
その為、後書きと本遍の内容を少々変更しております。

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