ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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日常回です。
ちょこちょここういった話を投稿して、小説版の部分に入ればいいかなと思います。


『剣八 - Greatest - 』

四番隊の隊長の就任。

それに伴って八番隊の新しい隊長の発表。

人事再考の内容が伝えられる。

 

「長い間にここには世話になったな、マユリ」

 

荷物をまとめて十二番隊隊舎から出ていく。

装いは新しく隊長羽織を纏っている。

糊の利いた良い仕上がりのものだ。

 

「言っとくガ開発局の名誉室長だから来てもらう事はアルヨ」

 

クスクスと笑いながら言ってくるマユリ。

ひよ里さんに人事再考の際には副隊長から外していく方向性を伝えたらしい。

本人も検討中のようだ。

八番隊の副隊長とか空席だもんな。

 

「穴を開けたままなのは目覚めも寝つきも悪いダロウ」

 

ひよ里さんには今後、戦闘面での部分の指導は頼む事も有る。

しかしそれ以外ならば別にここでなくても構わない。

だから隊の異動をしてもかまわない。

マユリはそう言って試験官を揺らしていた。

 

「で……初めにここの掃除ってわけですか?」

 

俺は八番隊隊舎に掃除用具と割烹着を着込んだ状態で行く。

初仕事がまさかの他の隊舎の掃除。

伊勢副隊長が意外といった感じの顔をしていた。

 

「昔馴染みが就任するのに埃が積もっていたりしたら嫌でしょう」

 

せめて綺麗な状態で出迎えたい。

些細なお節介や気遣いでしかないが。

袖を捲って仕事に取り掛かる。

 

「矢胴丸さんだって来てからするでしょうけど手間を省いてあげないと」

 

なんせ百年以上も空白期間がある。

更には隊長なのだ。

昇格するという事は負担がその分増えるという事。

それを考えれば掃除をするより仕事を覚えた方が良い。

或いはその鈍ったものを取り返すために。

 

「……こうやって慕われているから、向こうからも手伝ってくれる人が来るんですね」

 

そう言う伊勢副隊長。

振り向くとひよ里さんが来ていた。

久南さんは向いていないし、こういうのが出来る拳西さんは隊長の為に来れない。

自分は既に終わらせているし手伝いに藍染と市丸が来ているから問題なし。

 

「まあ、こっちが来なくても掃除する気だったでしょ?」

 

人に言うけどわざわざここに来る必要もなかったのに。

矢胴丸さんのこと慕っているのはそっちだし。

俺達は同期とかの縁もあって仲がいいからだよ。

 

「さて、始めますか」

 

茶殻を畳にまぶして箒で掃く。

瓦版を使い息を窓に吹きかけて拭いていく。

水垢や細かな所も丁寧にしていく。

新築の隊舎と見間違うほどに綺麗になった。

そんな動きを見ていたひよ里さんと伊勢副隊長が驚いている。

 

「京楽隊長や他の男性隊士以上にこういう事できるんですね……」

 

百年間、この人の副隊長室を手入れしていたからな。

効率と清潔の度合いを考えて色々な方法や知識を蓄えたよ。

これでさっぱりした気持ちで執務に取り掛かれるだろう。

 

「いつ頃赴任するんですか?」

 

俺がそう聞くとまだまだ掛かるとのこと。

京楽隊長がまだ八番隊時代に持ってきたものの手続き。

それらの引継ぎが非常に長引いているかららしい。

因みに怠慢ではなく本当に忙しいから遅れているのであった。

 

「その間の書類仕事はこっちに回してくれて構わないから」

 

京楽さんも板挟みで苦労するだろうに。

少しは軽くしてあげないとな。

 

「また、余計なもんをしょい込みおって……」

 

ひよ里さんに溜息をつかれる。

だって、戻ってくる時に仕事溜まっていたら嫌でしょう?

仕事は真面目にやるとは言ってもそこは汲み取ってあげないと。

 

「まあ、気持ちは分からんでもないか」

 

同じ立場だったらそう言うのは率先してしまう。

自分達の方が分かっているっていうのもあるからだ。

そう言ってひよ里さんは納得した。

 

「それにやらなくていい量ではないので……」

 

絶対に八番隊の奴とか多い。

何故ならば京楽隊長の実力や人望が凄いからだ。

普段の姿を加味しても頼られている。

その為、書類の数も段違いである。

それを捌く伊勢副隊長の手腕のおかげで今まであからさまにはならなかったが。

 

「一番隊と八番隊で混ざったら最悪やな」

 

そう考えたら何処かに渡した方が危険度減るわ。

想像して冷や汗をかいたのだろうか。

ひよ里さんは額を拭って呟いていた。

 

「とにかく待ち続けましょう」

 

それだけ言って別々に隊舎へと戻る。

そんな感じで書類仕事や治療に勤しんでいると、頭を抱えるような事を痣城が言い始めた。

無駄を嫌っていたので本来戻るはずが、無罪になってしまった事で戻らずに四番隊に居る。

 

「十一番隊に行ってくる」

 

その目的はよく分かる。

『剣八』としての役目を更木と立ち会う事で決定するのだ。

または戦いへの意欲でも生まれたか。

 

「待てよ、立会人で付いていくから」

 

そう言って十一番隊へ赴く。

幸いにも更木は居た。

俺達二名がただならぬ雰囲気と覚悟を持ち入ってきた。

その時点で臨戦態勢だったのだろう。

即座に十一番隊の奴らを両脇へと追いやって戦いの場を作る。

 

「悪いが、更木……二人がかりじゃないからな」

 

今日は痣城の戦いの付き添いだ。

そう言うと構わないという顔で笑みを浮かべる更木。

次の瞬間、十一番隊の空気が沸騰するような熱気に包まれる。

それは戦闘の熱量を意味する。

そして最高ともいえる二人ゆえに瞬く間にこんな場面となった。

 

「『呑め』、『野晒』」

 

片や大斧の如く刀。

それを軽々と抱える膂力は流石である。

 

「『空より落ちて地に馴染み実るはいずれの夢なりや』、『雨露石榴』」

 

片や始解となる事でさらに殺傷力のあがった奇特な刀。

普通の大きさ程度というのが嫌な雰囲気を醸し出す。

 

「はあっ!!」

 

先に仕掛けるのは痣城。

更木も受け止めて火花が散る。

それを皮切りに剣戟が始まる。

見ているだけでも殺気と熱気が飛び交って汗が滲む。

隊士達は飲まれたような反応になっている。

 

「はっ!!」

 

痣城の突きをかわす更木。

さっきから主導権を渡すまいと果敢に攻撃をしている。

更木も仕掛けるが呼吸を一拍置くなどされて自分の間合いで戦えていない。

このままいけば檻に閉じ込められてしまう。

『理性』の檻に。

理詰めの戦いは雁字搦めにする。

縛られたような感覚で戦わなければならない。

それを最も嫌う男が更木だ。

 

「があっ!!」

 

大振りの力任せな一撃。

その風圧で痣城の死覇装が切れる。

ただ、距離は取られて痣城が放つ返しの斬撃が更木の脇腹を切り裂いていた。

 

「『黒棺』」

 

鬼道を悠々と使う痣城。

重力で押しつぶしに行く。

それでも更木は歯を食い縛って堂々と足を踏み出した。

更には徐々に腕を上げていく。

 

「しゃらくせぇ!!」

 

振り下ろしの一撃と自身の霊圧。

ただ、それだけで平然と立て直す更木。

その隙を突かない痣城ではない。

 

自身の最大の斬撃を放つだけの時間が欲しかった。

いわば只の目晦まし。

きっと、本能で察知したのだろう。

悪戯に長引かせる事が更木へ勝機を生むだろうと。

ならば早々と決めるほかない。

 

「はああっ!!」

 

気合の乗った一閃を痣城が放つ。

それは更木を頭から真っ二つにしようと迫っていく。

しかし斬撃が通りすぎた後に見た光景はあまりにも恐ろしいものだった。

 

「今のは効いたぜ」

 

平然と更木が血を流しながら笑っているのだ。

推測としては、筋肉と骨が普通の相手に比べて異常なほどに固かった事がこの戦いの命運を分けた。

頭蓋に罅が入っても筋肉を断ち切っても更木は意に介さない。

それどころか仕返しの一撃の構えである。

何故ならば内臓にまで達しておらず脳髄へ深刻な損傷を今の斬撃で与えられていないから。

 

「これが現代の『剣八』か、恐れ入ったものだ……」

 

痣城も驚嘆と呆れを同居させたような顔で呟く。

時間にして数分にも満たない戦い。

しかしそれは更木の特性故。

長引かせる事が不利になるのであればこの動きは正しい。

 

「お終いだな!!」

 

更木の放った横凪ぎの斬撃は痣城へ見事に当たる。

肋骨が折れる音。

筋繊維が断ち切られる音。

そして飛んでいく血飛沫がその一撃の恐ろしさを物語る。

地面を跳ねて転がり、俺の目の前で止まる。

痣城は反応せず、気絶しているのが見受けられた。

 

「とにかく治療しないとな」

 

二人ともを治療する。

死ななかったのはお互いの実力の高さの証明だ。

そんな事を思っていると刀の一閃が煌く。

 

「おっと」

 

後ろに飛んで回避する。

更木がまだ足りないというようにこちらを見ていた。

こっちは準備も何もしていないんだけどな。

 

「今はやらないから収めろ」

 

やるんだったらそれなりに整える。

こいつの為の付き添いだからな。

それにどちらかといえば斬り合うよりも話したいことがある。

 

「今日の夜、話が有るから開けておけ」

 

俺は痣城を連れて隊舎へと帰っていく。

あの人の最後について話さなければいけない。

そして仕事を終えて夜になった。

素面で話すため酒を持つことはない。

 

「邪魔するぞ」

 

十一番隊隊舎に入り込み、縁側で月を見ている更木の横に座る。

お互いに刀を持たずに息を一つ吐く。

すると更木が口を開いた。

 

「あの人の話だろ?」

 

その問いに俺は頷く。

あの人の命を懸けた継承の成功。

それを感じ取っていた。

そう呟いたうえで俺は『卯ノ花八千流』として最後はどういった顔だったのかを問う。

 

「笑顔だったよ」

 

全てやり遂げたみたいな顔をしてた。

死んでほしくはなかったがな。

更木の悔しそうな顔を見ると胸が締め付けられる。

俺とて役目を知っていたとはいえ死んでほしくはなかったのだから。

 

「思い残すこと無くというのは流石だよ」

 

その後についても話さないといけない。

相手の滅却師によって屍となり敵対した事。

俺が二回目の死を与えた事。

そして……

 

「あの人を戻せただろうがあえてあの人を眠らせる事を選んだ」

 

その俺の言葉を聞き、胸倉を掴む更木。

その気持ちが分からないわけではない。

だが俺は理由を述べなくてはいけない。

何も考えずに決定したわけではないから。

 

「話は前後するがいくらなんでも簡単にやられると思うか?」

 

俺の言葉を聞いて更木が硬直する。

確かにそうだと思ったのだろう。

万全の卯ノ花八千流が負けるなど微塵も思っていないのだから。

 

「俺が追い続けたあの人が、お前が憧れたあの人が万全なら今頃俺はここに居ない」

 

俺の胸倉から手を離す更木。

歯をきしらせて無念だという顔になる更木。

一つの結論を導き出したのだろう。

 

「あの人はもはや抜け殻となっていた、強さもまるっきりお前の戦いで置いてきたように」

 

狛村を圧倒できても俺に遠く及ばなかった。

その時点でお前が幻滅するところまで強さは落ちていただろう。

だからこそ生き返らせたくなかった。

何より役目を終えて満足して逝った。

なのにこちらの身勝手な想いで留め続けるというのは流石に心が痛むというもの。

 

「当然、そんな真似した滅却師は殺してやったよ」

 

己の怒りを剥き出しにて無残にな。

今回の戦いはどれほど相手は逆鱗に触れたのか。

そう考えると本当に胸糞が悪い相手だった。

 

「あの人の墓は四番隊の裏に建てたから、時間が出来たら参りに来てくれ」

 

俺はそう言って縁側から立ち上がる。

そして手をひらひらと振りながらゆっくりと四番隊へと帰っていった。

月が俺達を見ている。

目を瞑れば月光が瞼に入り込む。

瞼の裏にはあの人の笑顔や戦いの時の顔が浮かんでいるのだった。




小説版では藍染いわく『最初から始解使えば勝てる可能性があった』らしいので、こういった結果に。
強化前更木の為、強化後であれば足掻いても勝てないのですが……。
リアルが忙しいので投稿ペースがかなり落ちる事も有ります。

また、ご指摘等ありましたらお願いいたします。
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