ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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小説版に入っていく感じの話です。
次回はちょっと大きな部分を書ければと思います。
リアルで忙しく、遅くなりました



『変革 - Change Team - 』

隊長就任から数か月が過ぎた。

もうそろそろ一年に差し掛かろうという頃。

書類仕事の整理も終わって八番隊での新隊長の受け入れ態勢が整った。

その迎えに俺とひよ里さんがあがったのである。

 

「しかし、感慨深いものがありますね」

 

昔馴染みの人達と仕事ができる。

あの日々が戻ってきたようにも感じるのだ。

少し欠けてしまったものもあるがそれはそれである。

欠けている以上に得たものの方が大きいやもしれない。

 

「勝手知っとる隊やからな」

 

そう、ひよ里さんが言って志波家の屋敷へと向かう。

そこに併設された施設の長なのだ。

成年の男性隊士たちの御用達らしい。

春画などを取り扱っているのだろう。

生憎、買う気が起きないので店先の店員から呼んでもらっていた。

 

「こういうの嫌やねんな」

 

ひよ里さんが言ってくるのは頷く。

解剖図より生々しくて刺激が強すぎる……。

医学目的ではない形で裸体を絵にするからこそなのか。

こんな状態ならば本物を直視した場合どうなるんだとも思いますが。

 

「仲良しが揃って迎えかいな」

 

矢胴丸さんが隊長羽織を着て出てくる。

ゆっくりと歩いて瀞霊廷へと向かう。

 

「土産も持ってきたけどどうもむず痒いわ」

 

昔馴染みが多すぎて困る。

矢胴丸さんがそう言うのも無理もない。

隊長がほぼ同期なのだから。

新規の隊長の顔なんて朽木、日番谷ぐらい。

それ以外は昇進だからな。

 

「とにかく隊舎は綺麗になっているんで気にしないでください」

 

そして新しく副隊長の任命をお願いしますね。

それだけ仕事の内容なので言い渡す。

そう言うと口角をあげて矢胴丸さんは副隊長を考え始めた。

 

「まあ、一択やけどな」

 

矢胴丸さんはしばらく考えていたが首をひねって笑いながら呟いた。

その眼はひよ里さんを見ていた。

 

「ひよ里さえよかったら八番隊に来ぉへんか?」

 

矢胴丸さんのその呼びかけに頷くひよ里さん。

こんな展開の予想は出来ていた。

そう決まれば矢胴丸さんは俺を顎で指す。

 

「速く十二番隊から荷物持ってきて」

 

悲しい事にそれに唯々諾々と従う俺。

同期の女性陣には非常に弱いのは変わりなし。

ささっとまとめて用意する。

その結果数分も経たない間にひよ里さんの荷物は八番隊の副官室に置かれる。

副官章を付けてこれで『八番隊副隊長』であるひよ里さんの誕生である。

 

そして四番隊に戻ろうとする俺に矢胴丸さんから手渡さられる。

どうやらお土産のようだ。

俺はお辞儀をして去って行く。

 

本当に懐かしい。

風が吹いて頬を撫でる。

息を吸い込むと清涼感が肺を満たす。

黒崎君と出会う前まではため息と寂寥感が募るばかりだった。

彼と関わってから俺にとっては素晴らしい日々が続いている。

 

「仕事頑張りますか」

 

腕を捲って肩を回して気合を入れる。

しかしそんな事が吹き飛ぶ報告があった。

 

「変革を四十六室が受け入れた……!?」

 

京楽総隊長から伝えられた無い様に俺は驚愕した。

被害自体を軽く抑えられたお陰で早まった復興。

それによって緊急網とは五割ほど復旧している。

そんな中どうやら今までの腐敗部分を斬り捨てていく決断をしたようだ。

或いは辞席をするものも続出したらしい。

そこで若い者が議長となって新しい風を吹き込むように方針を変えた。

其れで搬入の手続きの更なる簡略化の提案。

そして、まだ提案の段階ではあるがこれには四十六室の変化を確かに感じた。

 

「霊術院の四回生を見習いとして採用とはな」

 

昔ほどの見抜く眼力があれば良いのだが。

僅かな不安がよぎる。

ましてや四回生となれば伸びしろも段違いだ。

 

「愛着がわくような隊とは思えないが万が一が有って不幸な事になるからな」

 

自身の適性とは違う隊への所属。

それが一番俺の嫌な事だった。

転籍こそあれどある程度の力があった上で行っている。

長期に居させてもいいのだが、適した場所に居ないと伸び率も変わってしまう

 

「とにかく門戸を広々とさせるつもりはないという事だけは伝えておこう」

 

そんな事を言いながら整備を続けていく瀞霊廷。

徐々に回復しながら悪しき部分は捨てられて変革していく。

こんなもので良かったのだ。

こんな日常で本当に。

 

「ただ……そんな世界にあなたが居ないのは寂しいですね」

 

空を見上げてため息交じりの言葉。

やはり恋愛感情とは別に特別なものを抱いていたのだろう。

憧れや師弟愛なのだろう。

いずれも鼻で笑われてしまう内容ではあるが。

 

「貴方が作り上げた四番隊を貴方が居た時よりも素晴らしいものにして見せます」

 

誓います。

ただ、もはやそれしか貴方を越えたという証を作る事が出来ないから。

 

「で……君が学院長になったのね」

 

五番隊三席だった者が足を失ってそこから真央霊術院の学院長へとなった。

書類仕事が非常に優秀だったのは覚えている。

雛森副隊長と藍染に次ぐほどだった。

 

「まさか一番先に来た隊長が貴方とは……」

 

そう言いながら頭を掻いている。

吉良君の様な同期は来てくれたらしい。

こっちも暇を持て余す事があるからな。

 

「その足も君が髪の毛一本提供してくれれば素晴らしいものを渡せたのに」

 

俺が肩を竦めて言ってやる。

すると彼は口をとがらせて言葉を返してきた。

 

「滅茶苦茶高い金取るんでしょう?」

 

戦傷の為、無償でやってもいいんだよ。

それにこういう時に技術をつぎ込むことで飛躍的に向上するんだ。

俺がそう言うと彼は損をしたという顔になっていた。

今からでも遅くないよとだけ言っておく。

 

「考えておきます」

 

そう言いながら今回の制度の説明会によこせる人材について聞かれる。

こういうのは初めは優しくて話し上手な奴が適任だ。

だったら彼女しかいないだろう。

 

「交渉してみるけど期待はしないでね」

 

俺はそう言って真央霊術院から出ていく。

仲が悪いわけではないけど不安はある。

あの子に一回とんでもない事言われているからな。

話し合いで痛い目に合いそう。

 

「とにかく五番隊隊舎に行くか」

 

そして瀞霊廷へと戻った俺はすぐに五番隊隊舎へと向かう。

入った後に俺は目当ての人物は副官室に居るという事を聞く。

扉を叩き、返答を待つ。

一拍置いて礼儀正しく優しい声で開けて良いと返事をもらった。

 

「雛森副隊長に頼みがあってね」

 

俺はそう言って頭を下げる。

雛森副隊長は何事かと思い、背筋を普段以上に伸ばして真剣に聞いている。

単刀直入に言った方が速いだろうと思い、俺は本題に入った。

 

「霊術院の四回生以降を見習いとして採用するという新制度が近々生まれる」

 

それを聞いて驚く雛森副隊長。

今回の被害の人数を考えれば特例としての実施もやむを得ない。

今後これが標準になり得るだろう。

 

「その制度について説明を行い、なおかつ安心させられそうな人材は君だ」

 

同期の学院長の為にも力になってやってくれ。

俺はそう言って顔をあげる。

卒業生で才色兼備を地で行く君。

そんな存在が懇切丁寧に説明を行えばすんなりいくだろう。

まずは初めに好印象を抱かせないとろくなことにはならない。

 

「実績で言えばあなたやそれこそ京楽隊長の方が……」

 

雛森副隊長がそう言うが俺は手で制する。

確実に委縮されるのが分かる。

こういうのは実績面が大きすぎても良くはない。

 

「無罪になったとはいえ、あいつは出せないからな」

 

俺は溜息をついてしまう。

こういう場合の最適な人材は間違いなく藍染だ。

しかし罪を犯したのが悪評に繋がってしまい、出しづらくなってしまったのである。

 

「無罪を勝ち取る活躍したとしても難しいんですね……」

 

雛森副隊長の言葉に俺は頷く。

あと、何年かしてからようやく出せる。

それまでは公の場には極力出さずに、仕事を全うしてもらう。

 

「とにかく、新制度の内容が固まって説明会の日程が決まり次第連携するから頼むよ」

 

再度、俺は頭を下げる。

その姿勢に雛森副隊長も頷いて、引き受けてくれた。

五番隊隊舎から出て首を回す。

これから変わっていく世界。

それに明るい展望があると信じて深呼吸をして足を踏み出した。




原作より建物と人材の被害は大きくない。
しかし復興が速いが人材と緊急の際における整備が必要。
その為、結果的には小説版の制度等を使用という形です。

指摘等ありましたらお願いいたします。

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