すこしごちゃごちゃしていてすみません。
後書きで年輪の能力を書いておきます。
近々と言われること、十年も経った。
曳舟副隊長もあの時昇進の話を受けていて、隊長職の試験を受けることになった。
その結果、五年前に曳舟さんが隊長となり、ひよ里さんが副隊長になった。
今年、隊首試験を受ける事をひよ里さんに言うと、背中を叩かれた。
頑張ってこいというように。
そっちは約束を忘れてませんよね。
十何年も前の約束ですけど。
「なんだか、あたふたしていたのが嘘みたいだ」
あれから、飲みに行くことも有った。
酌をしてくれることもある。
心は開いてくれている節はあった。
しかしそれ以上の『傍に居ていい』男なのかを聞けてはいない。
信頼があるのは分かる。
背中を預けて連携してくれるところからそれは明白だ。
「隊長になったらきちんと聞こう」
あの約束をあの人が覚えていたら、二人で飲める。
それに渡したいものがある。
まだ藍染の『鏡花水月』を喰らってはいない。
平子さんと綱彌代さんには同じような手袋を渡した。
東仙は気の毒だが目をめしいているため、術には掛からない。
「制御もできるようになった」
刀を振るう。
卍解に目覚めて十年。
なかなか最初は難しかった。
それを切っ先に集中させたりなどの応用。
卍解の能力を霊圧の中に纏わせる。
そんな応用を行う。
「向かおう」
受けるのは十番隊の試験。
つい、五日ほど前に召還された際にそのように伝えた。
十一番隊の一騎打ちはできない。
あの青年が来るのならば、彼の場合は確実に十一番隊しか隊長になれない。
そうなると戦わないといけない。
彼の全力を仮に引き出せても、こっちが死ぬ。
死ななくても重傷は免れない。
「一番隊の隊舎はいつ見ても大きい」
圧倒される見た目。
しかしそれを押し留めて扉を叩く。
そして一拍置いて本日の来訪理由を述べる。
「四番隊副隊長、斑鳩です、本日の隊首試験の御用で参りました」
そう言うと扉が開く。
雀部副隊長が迎えてくださった。
そこに居たのは隊長格三名。
公平性を持たせるために選ばれた人。
六番隊の朽木隊長。
十二番隊の曳舟隊長。
十三番隊の浮竹隊長。
試験を行い、その後に話や適性を見ていただいたところ
『血の気は有るが基本は穏やか』
『自隊の隊士やそれ以外からも慕われている』
『業務熱心で努力家』
『稀にみる戦闘能力の高さ』
という分析で隊長の器はありと認定された。
「最後に見せてほしいのは卍解じゃが……」
そう言われるので刀を引き抜く。
だが驚くことが起こっていた。
それは……
「えっ?」
なんという事に『年輪』の大きさが変わっていたのだ。
一尺五寸しかなかった小刀は今や三尺。
卍解をすれば一と半分ほどの倍になる。。
つまり一尺五寸が四尺五寸。
十分すぎる間合いへと変貌を遂げる。
いや、『浅打』が二尺三寸ほどだった。
そこから八寸を失ったのが『年輪』。
そして五十年たった今『浅打』以上の長さとなった。
刃の厚みも変わっていた。
「始解の大きさが変わるとは……」
朽木隊長が驚く。
しかし、総隊長がその場を収める。
そして卍解を促した。
「いきます……『卍解』!!」
さらに長くなった刀。
しかしその刀の色を見た瞬間、曳舟隊長は笑いそうになっていた。
そう、卍解した時の刀の色は柿色なのだ。
挙句の果てには柄の色は茶色と赤の二色、まるで猿を表したかのような色合いだ。
心の在り方が卍解となる。
それならば納得だ、卍解に目覚める時よりも前から自分の心を占めているのはあの人だから。
「それでは能力をお見せしましょう」
そして用意していただいたものに向かって『年輪重歌』を振るう。
能力を見せるために言葉を紡ぐ。
「
それだけを言って引き抜き、刀を綺麗にして鞘へ納める。
能力の詳細を知っていただき、結果としては明日に就任式を行うとのこと。
それを聞いて四番隊隊舎へと帰っていく。
卯ノ花隊長にその旨を伝えると、微笑みが帰ってきた。
「私の元から巣立っていくのですね」
私の隊からの初めての隊長就任。
そう呟く。
かがむように言われたのでかがむ。
すると……
「五十年よく私の隊で頑張りました、二十年の支えに感謝いたします」
そう言って頭を撫でてくる。
普段の『八千流』ではなく、卯ノ花隊長として祝福される。
「今日はゆっくり休みなさい」
そう言われて業務後に眠る。
次の日に起きて一番隊の隊舎へと向かう。
一番乗りで来ていた。
総隊長からは「老いとるもんより速く動くと老けるぞ」と言われた。
隊長格、所属しているもの、全員がここに居る。
副隊長だと
雀部副隊長。
大前田、鳳橋さん。
平子さん、朽木さん。
愛川さん、矢胴丸さん。
拳西さん、久南さんは来れなかったみたいだ。
綱彌代副隊長、十一番隊は副隊長は現在空位のため不在。
ひよ里さんと
隊長では
山本総隊長。
四楓院隊長、
卯ノ花隊長、
朽木隊長、
京楽隊長、
一番乗りなのでじっと待っていた。
就任の主役が遅れてはみんなに迷惑をかけてしまう。
そして式が始まった。
「この度、十番隊隊長『
その内容に皆が頷く。
正直今の三番隊隊長、五番隊隊長、七番隊隊長、九番隊隊長、十一番隊隊長は速く変わるべきだと俺は思う。
能力的にも今の副隊長の方が高いだろうと俺は思っている。
「そのため、同日隊首会を行い新隊長の選任についてその旨を各隊の隊長に連絡
翌日、四番隊隊長卯ノ花烈の推薦から同隊の副隊長を召喚」
俺を呼び出して試験を受けるか否かの判断を聞いてきた。
当然頷き、卯ノ花隊長の推薦に応える意向を示した。
そして昨日、試験を受けたのだ。
「隊首試験の結果、能力的、また人格的に問題がないという結論から元四番隊副隊長、斑鳩傑を十番隊新隊長に任ずる」
そう言って任命の式は終わる。
皆がばらけるように、自分の隊舎へと戻っていった。
そして、これからはここが自分の場所となる。
そう思って十番隊の隊舎に足を踏み入れた。
「これから皆さんの隊長として、この度新しく就任しました斑鳩です」
その言葉にじろりと見まわす視線がある。
若い為、未熟と思っているのだろう。
だが、それでも皆を引っ張らなくてはいけない。
綱彌代副隊長に仕事の流れを聞く。
皆が真面目だから、仕事の滞りは無いようだ。
俺も頑張らないとな。
「斑鳩君、今日は早めに上がっていいわ」
綱彌代副隊長に言われる。
先輩だから、君付けで呼ばれる。
だが、ここは訂正しておかないと。
「斑鳩隊長でお願いします、綱彌代副隊長」
そう言って書類を手に取る。
隊長の調印が必要なものを優先的にやっていく。
それ以外は後で見ながら提出できるようにすればいい。
「はあっ……」
疲れから息を吐き、目頭を押さえる。
すると新しい書類が来た。
それは度肝を抜くようなものだった。
「東仙の奴、速すぎだよ……」
今日、就任したばかりなのにもう転籍届出している。
いや、筆跡の乾き具合から見てあいつ何年も前から用意していたな。
朝一に隊長印貰って届けに来たか。
「まあ、引き抜くつもりだったからいいけどな」
そう言って芽次隊長の隊舎まで赴く。
出迎えてくれたのは拳西さんだ。
隊首室に通してもらうが、その際に東仙も連れていく。
「失礼します」
こちらに席に座ったまま振り向く隊長。
仙人掌に水を上げていた。
「この度は転籍届で十番隊に九番隊の東仙第五席が来るという事なのですが……
隊長就任早々、こちらの有能な隊士を任せていただき感謝しております」
頭を下げて感謝の意を示す。
しかし、内心ではこう思っている。
速く拳西さんに席を譲れと。
老獪なだけで戦闘力は現副隊長の方が強い隊が多い。
人徳なんか後で付いてくる。
あんたらがお荷物になっていく時代が来るんだよ。
「うちの五席、潰すんじゃねえぜ」
笑顔で送り届けてくれた。
東仙はこれで十番隊の所属になる。
そして編隊で席次の整理をしなくてはいけない。
ただ在籍が長いだけの人は良くない。
顔色は窺わない。
護廷十三隊の一部隊として実力のある人々を評価したい。
「これからよろしくな、東仙」
そう言って十番隊に送り届ける。
そして、後日に席次の見直しを伝えた。
批判も有るだろうが、新体制になるのだ。
俺のやり方を皆に受け入れてもらう。
お昼休みに十二番隊者に赴いてひよ里さんを呼んでもらう。
薊の羽織に副官章が光る。
相変わらずせわしない動きをする人だな。
「なんの用や、斑鳩『隊長』」
笑顔で迎えてくれた。
そして拳を突き出してくる。
それに合わせるようにこちらも突き出す。
「ようやったな、おめでとさん」
誉め言葉をもらう。
頬が緩んでしまいそうになる。
しかし、それで終わりじゃない。
顔を引き締めて本題に入る。
「約束を覚えてくださっていますよね?」
二人きりで飲むというあの約束について投げかけてみる。
すると困ったような顔を向けてきた。
やはり……
「やっぱり二人きりってのは懸念ですか」
図星だったのか。
バツの悪そうな顔を浮かべている。
告白をされたから二人きりになるのを避けたいのは分かっている。
「ちゃんと仕事終わらせや、夜に十二番隊の隊舎の玄関で待っとくから」
しかし筋は通す人。
約束は守る。
それに急な接近をする事は無い。
警戒をする必要は無い。
ただ贈り物をする気はありますけどね。
「行きましょうか」
夜、十二番隊の隊舎の玄関で待っていてくれた。
横並びでその場所に向かう。
手をつないだら怒られる。
ひよ里さんがふらついて寄りかかるなんてこともない。
「いつもの場所と違うで?」
良いんですよ。
折角の隊長就任。
少しばかりの贅沢をしても文句は言われない。
それに、貴方も俺もそれほど金銭を湯水のように使う傾向じゃない。
今まで貯まっているはずですよ。
「少しだけ背伸びさせてください」
そう言って入っていく。
少しちらりと見えた影は京楽隊長のような気もするが……
隠れていた一つの影はきっと矢胴丸さんだ。
あの二人はやはりそういう関係なのだろうか?
料理を頼み、普段とは違い二人で徳利を分け合う。
雰囲気と言うのもあるがやはりどこかそわそわとする。
香を焚いているのか清々しい匂いがする。
向かい合わせに座っているがきっと俺の顔は紅い。
酒が入っていないにもかかわらず。
「ひよ里さん」
懐に手を突っ込んで目的のものを取り出す。
青い箱だ。
「なんや?」
こっちに目を戻す。
普段見ないお品書きに夢中だ。
俺も人の事が言えないけれど。
そこはそれ。
俺は箱机に置く。
「これ、受け取ってもらえませんか?」
そして綺麗な箱を差し出す。
それを手に取り、開ける。
中身を見て驚いていた。
それは銀色の指輪。
宝石は淡い緑。
現世の柑橘類を思わせる色のものを施している。
誕生石という文化を取り入れた結果だ。
「愛している事は変わりません」
指輪をまじまじと見ている。
わざわざこんなものを用意しなくても……
そう言った感じだ。
「まだ、恋人に相応しくないかもしれません」
実際、傍に居てもいいとは言ってくれていない。
それを言わないのは照れているからか。
もしくはまだそれほどの男ではないのか。
分かるはずもない心の問いかけだ。
「ですから相応しい男になるまでは『中指』に付けていてもらえませんか?」
薬指は恋人が付ける個所。
それでない場所で贈り物を付けていてほしい。
それにこれは隠された意味がきちんとある。
「なんでや?」
疑問に思ったのか。
首をかしげて聞いてくるひよ里さん。
当然、すらすらと理由を思い浮かべて告げる。
「指輪はつける位置で意味が変わります、中指だと『邪気を祓う』という意味になります」
悪い事から逃れられるように。
おこがましい心だが、自分以外に『悪い虫』が寄り付かないように。
「願掛けみたいなもんか、それやったらええわ」
そう言うと根元までつけて行く。
基本的に片手で振り回して、とどめの唐竹割りが両手持ち。
指輪が邪魔にはならないだろう。
.
.
あれから十年もたった。
あいつのいく先に見回りしてた女性隊士がおるのを見たこともある。
声をかけられても、鼻の下を伸ばさんとおった。
あいつは真面目やなと思った。
しかし後日、女性隊士に乱暴を働いたと聞いた。
あいつが何でそんな真似をと思い、怒るために赴いた。
すると真相はそう言った強姦とかではなく、拳を顔面に叩き込んでいたという意味の乱暴だった。
それについては当然怒った。
鍛えた体が泣いとるぞと。
女を殴るための強さなんていらんやろ。
そう言うと絞り出すような声で原因を言ってきた。
その女性隊士が告白してきたけれども、うちが好きやから断った。
すると本性を現したかのように「うちに想われてないくせにうちみたいな女っ気の欠片もない奴を好いてる可哀想な奴」と言われたらしい。
それでうちが「女っ気の欠片もない」と馬鹿にされたから頭に血が上って殴ったと。
内面を見もしないで人を貶めるのも腹が立つ。
うちがどれだけ素晴らしいか欠片も分かってないくせに。
そう言ったのだ。
こいつにそんな思いをさせてしまったんかと、うちも心に重さを感じる。
ただ、同時に嬉しくも有った。
自分の為に怒ってくれたという事が。
流石に殴るのはやりすぎだが。
これが真子やローズならうまいこと流したり諫めるで済んだのだろうが。
それを諫めてからというもの、女性を殴る事は無くなっていた。
いや、普段から優しく断っていて殴る真似はしない。
ただ、相手がうちを貶めたからだ。
その一件で『斑鳩副隊長は猿柿副隊長に惚れている』と言うのが噂になって、こっちにも飛び火してきたのが難点だったが。
そして今日。
忘れていなかった約束を果たそうと一緒に飲む。
居酒屋かと思うと、個室もいつもとは違う雰囲気の場所だった。
どちらかと言うと長い人たちが使うような場所。
京楽さんや浮竹さんが使うような感じや。
「えっ……」
指輪を見た瞬間、息を呑む。
こいつ、せっかちすぎやろ。
こんなもん、恋人を通り越しとるやんけ。
うちへの思いの大きさなんか知らんけどホンマに……。
するとあの言葉を覚えていたことを言う。
時間が経てばこいつもうちみたいな奴から手を引く。
本気で思ってたのに。
「……」
実力も精神力も優しさも本当は申し分ないほどできてる。
それを認めないのはうちが弱い女やから。
傍に居ていいと言ってしまうときっとみんなとの関係が壊れる。
それが怖い。
でも、それはこいつも一緒。
それを恐れていながら想いを貫いた。
「うちはあんたが思ってるほどええ女ちゃうで」
逃げてあんたの心を弄ぶようなことをしてた。
きっとこれから汚い事とか覚えていく。
お前が惚れてる今のうちはいつの日かおらんようになるねん。
そう言うと微笑んでいた。
そして向こうが口を開く。
「それはこっちも一緒です」
隠し事が有るんやろうな。
打ち明けたくないようなものもあるやろ。
「まだ中指やからな、ごめんやけど待ってて」
これは恋人として認めないという意味ではない。
あれこれ理由をつけて逃げて自分は変わってこなかった。
相手が想いを貫くのならこっちもそれに応えられるような女に変わる。
もう相手の気持ちから理由をつけて逃げはしない。
いずれ時が来て自分が相手に相応しいと思える女になったら、その時改めて薬指に付けよう。
そんな中、口を開いてきた。
.
.
待っててくれと言うならば待ち続けよう。
自分の真っ直ぐな想いが伝わった喜びがそこにはある。
だが、それで縛りたくはない。
この人に好かれたいのは事実。
しかし、自分よりも素敵な人が現れた時。
きっと胸は張り裂けるだろう。
狂おしい心に呑まれるだろう。
それでも正直に言ってほしい。
独占したいのが欲として確かにある。
ただ、俺が望む本当の願いはそれではない。
「貴方が幸せになってくれるなら、貴方をその人が幸せにするのなら、俺は押し留めますから」
貴方が幸せでいてくれることこそが本懐。
そう言うとそんな奴があんたのほかに居ったらの話やで。
そう返されてしまった。
「まだ、飲みましょうか」
そう言って二人して食事を楽しむ。
そう言えばみんなと飲んだ時に言われたが酔いつぶれたことがない。
ひよ里さんは昔に一回あったが、あれから強くなった。
紅い顔を見せる事もなく呑み込んでいく。
「満足やな」
二人して結構な値段にはなったがここは誘った手前、自分が出す。
そして出る時に声をかけられる。
「あれれ、傑君にひよ里ちゃんじゃないの」
やっぱり京楽隊長だったか。
俺達を見て意味深な笑みを浮かべる。
そして一人納得したように頷いている。
「邪推するなや」
矢胴丸さんが釘をさす。
それを見て肩をすくめている。
まるで何の話だというように。
「隣やったから結構筒抜けやったけどね」
そう言われて二人そろって真赤になる。
それを見て京楽隊長が笑っている。
「「できれば口外しないでください……」」
恥ずかしさのあまり、消え入りそうな声で二人そろって頭を下げていた。
そんな俺達を見て矢胴丸さんは頬をかく。
「せえへんよ、あんたらを冷かしたらあかんことぐらいわかるわ」
帰るで。
そう言って京楽隊長の腕を引いて八番隊の隊舎へと戻っていった。
「背伸びせんかったらもっと多くにばれてたかもな」
そう言われる。
それを防ぐためだったんですけどね。
胸をなでおろして二人とも呼吸を落ち着かせる。
「ほんなら、うちらも帰ろか」
その言葉に頷く。
二人とも足取りをしっかりとさせる。
想いが届いたこと。
変わろうと決意したこと。
それを忘れないように踏みしめていた。
ひよ里は今の関係を大事にしたいから傑の告白から逃げてました。
しかし、十年以上たっても一向にぶれない。
自分以外をまるで見ていない。
そこから自分が踏み出していく決意、恐れない事を知りました。
『年輪』の能力
経年が一定に達した時、刀の霊圧、長さ、刃の厚みが増加する。
一度達したら次はその倍の年数を要する。
つまり始解の段階で長年持てば持つほど、とんでもない強さに変貌します。
指摘などありましたらお願いします。