『東仙要』
『綱彌代花匡』
『涅マユリ』
後の隊長格が普通に複数名所属。
豊作具合で言えば五番隊といい勝負かも。
「良いネ……」
試験管の中身を見ながらそんな事を呟いているのは涅。
あれから俺が誘ったのだ。
研究用の施設は十番隊が見回る中で使われていない拠点があった。
そこに構える事ではかどるようになった。
そして罪人扱いでは面倒なので席次を与えて自由に動けるようにした。
しかし、涅は魅力的な内容があればそちらに移るという事前の約束の元で動いている。
それ以外には二十席で涅五席の補佐に阿近を任命した。
「席次も見事に変えて老人たちを放逐するとかえげつないな、あんた」
口は生意気な奴だ。
しかし技術はかなりのもの。
そう言えば、引き抜いた時、浦原の奴が悔しがっていたな。
隊長のやりたい放題って意味なら俺はかなりやらかしてる。
「こっちは精鋭部隊を仕上げるんだよ、愛着とか年数とか知ったことじゃない」
戦闘力と人間性。
その二つで選んでいる。
故に東仙は第三席へと上がっている。
それ以外にも若くて行動力のあるやつらが、席官入りしている。
第四席は涅の予定だったが、あいつらしくもない「不吉な数字」という理由で辞めていた。
「それで誰もついてこなくなったとしてもカネ?」
その不安は無い。
少なくても今の改革で信頼を勝ち取っている部分もあるからだ。
それについてこなかったとしたら……
「その時は俺が隊長の器ではないという事だ」
そう言って試験管を揺らす。
今回不満を言ってきた、大して力もない古株の死神を出撃させる事を考えている。
目的としては虚の魂魄と死神の魂魄を集める。
藍染が作っていたものを再現するのが狙い。
あれが何を意味するのかを知るために。
「まあ、それも一つの価値観って奴だな」
そう言って一つのものを阿近が取り出す。
ああ、『眠計画』を単独で行っていた時の遺骸だな。
一旦、それらの魂魄研究の資料を涅に渡している。
そこから斬魄刀の構造との密接なつながりを解析しようとしている。
結構速い段階からあの場所に入っていたらしく、始解がまだできていなかった。
『対話』や『屈服』以外の方法で始解や卍解に至ろうとする。
そんな考えを持つのは、後にも先にもお前ぐらいだよ。
「ついてきたくないやつはどうなってもいい、特に牙をむくやつはな」
俺は決して新体制の確立に一切の容赦をしない。
俺らしい部隊を、俺の色に染め上げられた十番隊を作るのだ。
その背中を見て涅が笑う。
「魂魄の研究個体が大勢出そうダネ」
そこに着目していくのもお前らしい。
『血』の『入れ替え』を始める。
前隊長が残した組織としての『血』を抜いて俺の血を入れていく。
「元上位席官の魂魄が欲しいなら譲るぞ、俺も何人か確保させてもらうけどな」
阿近もにやりと口角をあげる。
研究の分野ではなんやかんやで気は合う。
それ以外はあまり二人とも興味なさげ。
食事も簡易的なものにしている。
「で、『眠計画』の進捗としてはみたてで、何號までが希望の個体性能に到達するまでの段階として必要だ?」
遺骸を見ながら問いかける。
現在が三號。
元々俺の試作段階を見ていたから、人の形に近づきつつはあった。
「当時より一つは若くなる」
俺はその返答を聞くと、書類を整理しながら頬をかいている。
やはり天才の力はすさまじい。
とはいえど、先に提案した大脳を核とした考え方や、細胞分裂を取り入れたからだ。
柔軟に相手の発想がよければ汲み取って行う。
それが涅のいい所でもある。
「それはいいがやはり、難航しつつあるのが現状だ」
こういった内容は倫理的にうるさい部分も出てくる。
それがばれないようにはこちらも対策をしている。
警戒しているからこそ、業務する場所に併設できない。
その弱みが遅延につながっている。
あとは、技術が高い奴を根こそぎは引き抜いていない。
浦原が根回しをしていて、四楓院隊長と卯ノ花隊長に俺が二番隊に行く場合の動向を監視させている。
「あいつが目の上のたん瘤だ」
電気刺激を三號に与える。
脳髄の成長を保存液の中で促進するにはこれが効果的だ。
細胞分裂が行われていく。
しかしこの行為にも限界があるのだ。
特殊器官が必要になる。
その器官は細胞分裂の限界を常に突破させるために普通の運用ではない。
暴走が通常運転となる形で動かす。
「これが出来れば飛躍的に効率が上がる」
俺も涅も骨子的なものは見えつつある。
だがどこまでの暴走が適切なのか。
そこの微調整を今後の三號以降行う。
五號までには終わる見込みだ。
「ああ、待ち遠しいネ、全死神の夢が実現する足音が聞こえてくるヨ」
涅は笑みを浮かべている。
俺も似たような笑みだろう。
俺の夢でもあった『被魂魄死神』。
『無』から作り出すという絵空事、夢物語。
それが論文からの結論で実現できると知った時、どれだけの喜びに打ち震えたか。
そしてその研究が飛躍的に伸びる出会い。
「難航しているがいずれは必ず叶える」
それだけ言うと、涅と阿近を研究所に忍ばせている状態で業務に戻る。
二人の地位や席次としては普通に問題ない。
仕事は特別なものを与えている。
そのように伝えているから、誰も口を出さない。
「書類も溜まっていないからすらすら終わるな」
自分の業務を終えると、次は東仙と綱彌代を道場まで呼ぶ。
二人が来て道場へ入ったことを知ると結界を張る。
鬼道で隠れるのは藍染もできたこと。
何故、ここまで厳重にしたのかと言うと、二人に卍解を覚えてもらうためだ。
両者ともすでに始解は習得済。
誰でも使えるというわけではないがいずれは自分の元を巣立っていく。
隊長になる時の必須項目。
「じゃあ、『屈服』だが……」
綱彌代の具象化した刀を見てその存在を呼んでみる。
すると近寄り頭を下げてくる。
自分より強いと分かるものへは『服従』の態度をとる場合もある
「自分が強いと教えこむ事だ」
東仙が自分の刀を具象化させる。
緑色の髪の少女。
手には東仙の斬魄刀が握られている。
「お前らがこいつらと今から戦うんだ、そして屈服させろ」
そうすれば卍解に近づく。
それを伝えて巻き添えを食わないように東仙から距離を取った。
綱彌代の方も始める。
.
.
「いくぞ!!」
私は先に分銅を回す。
始解をした後の斬魄刀の形がみんなと違う。
それにひどく落胆をしたことがあった。
だが、それを見た時に彼女と斑鳩さんは喜んでくれた。
お前の戦い方に合っているし他と違うからこその強みもあると。
よく似合うし、他と違うのは貴方が刀以外の形状の使い方について先陣を切ってあげる役目が生まれたのよ。
その言葉が自信につながった。
「お前を屈服させる、『
腕に鎖を巻きつかせる。
そして引っ張って間合いを詰めていく。
そのまま腕を切り裂く。
『八重鎖鎌』が『薄刃蟷螂』の正体。
攻防一体の動き。
他とは違う間合い。
長所を上げればいくつもある。
「次はこっちの番!!」
薄刃蟷螂が分銅を放ってくる。
恐ろしいのは回避すること。
回避した後の変幻自在の動き。
惑わされてしまうと相手に優位に立たれてしまう。
「くっ!!」
音が回避をすると耳に残る形で聞こえてくる。
風を切って通りすぎた後。
その時が無防備になる一瞬。
首が絞められることも想定内だ。
「かっ!!」
鎖と分銅が来ないように間合いを詰めて斬りに行く。
それを回避しようとする『薄刃蟷螂』。
分かってはいないようだ。
刀だけで屈服させる必要はない。
「これで止める、『五柱鉄貫』」
縛道で五体を封じてそのまま切り裂く。
深々と切り裂いたのちに前蹴りを叩き込む。
全てを使う事を教わった。
「死神が使える全ての手段を含めて強さだ、『薄刃蟷螂』」
薄刃蟷螂が後ずさりをしていく。
蹴りの感触から防いではいないことが分かる。
「君より私は強いよ」
耳が刀の振るう音を捉える。
その一撃を防いで言い放つ。
これは確信。
半身で常にかわすように。
「これを知ってから言いなさい!!」
そう言うと霊圧が上がっていく。
まさかそれが……
「これがあなたの卍解よ」
卍解がどれほどの大きさか僅かにたてられた物音から推測をする。
大きい鎌が霊圧の形状から察する事が出来る。
「鎖鎌がまた随分と様変わりしたな」
風が割かれていく。
範囲が始解の時に比べて段違いだ。
「ふんっ!!」
『薄刃蟷螂』が振り回しているのだろう。
皮膚が風だけで斬られる。
質量と速度の二つが合わさって生まれている一撃。
風が目を打つ。
光がこの目には映されない。
しかし、反射行動は別。
「ぬっ!?」
目を打たれた刺激で涙が出そうになる。
それに前かがみになって顔を押さえてしまう。
「終りだ!!」
『薄刃蟷螂』が叫ぶ。
その一撃が迫ってくる中、刀を咄嗟に出そうとする。
しかし思い直さないといけない。
この目的が何だったか?
それは、相手を屈服させることだ。
自分の理屈から考えてみる。
ここの答えは決して刀で受け止める事ではない。
「おおおおっ!!」
刀を鞘に戻して立ち向かう。
無詠唱で『円閘扇』を使って防御を固める。
腕を交差して踏ん張りを利かせる。
盾がみしみしと音を立てて砕ける。
骨を断ち切る様に腕に食い込む一撃。
血も流れ、痛みに悶絶しそうになる。
「何故私を鞘に戻した?」
大鎌の一撃が迫る時、あのまま受け止めても無意味だと悟った。
そしてこれは君を屈服させるための戦い。
だからこそ……
「始めの打ち合いは君への理解を示した、しかし今の場面で君を頼る事は、私の心が君に対して屈服する事の証明だ」
大鎌が前後に引かれ、私の腕を断ち切ろうとする。
大鎌が私の体に食い込んでいるのあれば逆に好機だ。
「腕が頑丈で助かった」
私は跳躍をする。
地面から離れた状態で前後に揺する。
勢いは徐々について行く。
「ここから勝つのが私だ」
前後運動をして勢いのついた体を上空に舞い上がらせる。
こうなってしまうと大きな鎌では私に一撃を加えることはできない。
狙うのは腹部。
「とりゃ!!」
槍のように一直線に相手へ向かっていく。
相手は回避が難しい。
ここでの行動がこのまま勝敗につながる。
「むっ!!」
大きな鎌が離れるのを感じる。
よし、これならば勝ちが見える。
相手が後ろに下がったかどうかで追い詰められる。
「くらうわけないでしょ!!」
『薄刃蟷螂』が後ろに飛びのいた。
それは無駄な真似だ。
私が縛道を使えば捉えられる。
軌道の変化なんて造作もない。
「『吊星』」
足場が下に現れる。
本来は受け止めたりするのに使うものだ。
しかし、これで着地して反動を使えば幾らでも技の変化をさせられる。
「えっ…!?」
蹴りが肘での一撃に変化したのだ。
驚愕の声も納得だろう。
回転しながら放つ一撃。
それは毒針のように鋭く、それは鋼のように固く。
防御が間に合っていない『薄刃蟷螂』の頭部に直撃する。
「きゃっ!?」
『薄刃蟷螂』が地面に落ちていく。
跳躍をしていたから背中から着地する形となっただろう。
勢いがついていたからか、何度か地面を跳ねる。
しかしここで攻撃の手を緩めはしない。
「私の勝ちだ、『薄刃蟷螂』」
止めが刺されていなければ安心してはいけない。
無論、殺す気がないなら見逃してもいいのだろうけど。
馬乗りとなり、首に手を当てて呟く。
その姿が目に入ったことで『薄刃蟷螂』がため息をつく。
「ええ、貴方の勝利」
その言葉を聞いて上から退く。
そう言って起き上がってくる。
霊圧も変化していく。
始解の状態へ戻しているようだ。
「貴方に卍解を教えるわ」
その言葉を言うと一旦具象化が解ける。
流石に斬魄刀と言えども疲れたようだ。
斑鳩さんが近づいて私の腕を治す。
私の頭に手を乗せている、
微笑んでいるのが見えてなくても分かる。
『おめでとう』と言われた。
祝福に満足感を得たまま座り込んでいった。
.
.
「二人ともお疲れ様だったな」
二人とも『屈服』に成功した。
見届けてはいたがやはり綱彌代の方が一日の長があった。
その分、さほどの苦戦もなく理解されていたから早くに済んだ。
「卍解が使いこなせるようになるまで制御に勤しまないといけない」
修行が十年かそれより速いのか。
その間に卍解を効率的に使う戦い方を見出していかないといけない。
「俺が実験体になって能力の詳細を確かめてやる」
自分が二人より強いという確信から出る言葉。
胸を貸してやる事で早く強くなっていく。
それが結果としては護廷十三隊の洗練につながる。
「祝うぞ、飲みに行こうか」
二人がそう言われて頷く。
業務に戻るけど微笑みが消えない。
あの二人が卍解を覚えたことが嬉しいのだ。
「珍しいほどの笑顔ダナ」
涅が戻ってきていた。
研究成果の書類を渡してきた。
どうやら三號が明日から活動限界の経過観察のようだ。
分裂速度は悪くはないがこちらの水準を下回っていく傾向にある。
大脳を回収していく前に多少は海馬に記憶単位や感じるものの学習を試みる。
「大脳に『経験』を作る事で体に引っ張らせる」
そして今後に役立つ方法を涅に伝える。
それが遺伝子情報の上書きだ。
大脳がお前の遺伝子情報からの作成。
しかし素体はどうするのか?
それは丈夫な肉体である俺から採取する。
その際に俺の体でありながら、遺伝子情報を涅に書き換える。
それによる一致で体と脳の相性をよくできるし、肉体強度が上がる。
「細胞分裂の方も順調に進むだろう」
体の強度が上がれば負担に耐えられる。
それで魂魄の流れを確認していけば、卍解への指標にはなるだろう。
「血液の提供か、それとももう少し皮膚や筋肉が必要か」
涅がその提案に乗ったというように執刀を始める。
麻酔も無しに皮膚と筋肉の一部分を斬り落とす。
回道で止血ができるから成せる方法だ。
躊躇がないお陰で無駄な痛みもない。
ここが並の研究者とは違う。
「役立ててくれよ」
そう言うと首をぐるんとこちらに向けてくる。
まるで梟かと思うほどの柔らかさだ。
「無論だヨ」
俺の皮膚と筋肉、血液を保存しながら口角を上げて言ってくる。
今後実施する四號の研究に必要な内容をまとめに行く。
「隊長の役得って本当にいいなぁ」
部下の成長。
研究の充実。
公私において非常に張りのある生活を送れている。
誰もいない隊首室で頬を緩ませるのだった。
オリジナル斬魄刀
『薄刃蟷螂』
所持者:東仙要
八重鎖鎌と言う鎖鎌の一種。
大きめなので斬りつけなどでも相手に相応の損傷は与えられる。
分銅などついているところを考えると檜佐木の『風死』に近い。
戦い方にいろいろ織り交ぜたりする教えの忠実さから原作から変わっている。
綱彌代は原作で東仙が持っていた『鈴虫』と『閻魔蟋蟀』なので割愛。
指摘などありましたらお願いします。