ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

2 / 104
この度、BLEACH熱が再燃しまして書きたくなったので書きました。
主人公を初期から強キャラにするのが初めての試みです。
最終的な強さは上位ですが最強にはなれないという所でやっていきます。


『第1部:尸魂界過去編』
『邂逅 - First Contact -』


「これより卒業試験を始める」

 

その一言で俺の『真央霊術院』での卒業を認めるかどうかの試験が始まる。

先日の練習用の虚も討伐を完了させた。

 

「まさか学業課程を3年で終わらせるとは……」

 

六年かかると言われた学業課程を半分の期間で終わらせてきた。

血を絞り出すような努力。

誰ともあまり関わらなかったために実現した。

 

「ざわつくのもそれくらいにして始めるぞ」

 

そう言って、死神に重要とされる『斬拳走鬼』を見る。

まずは『斬』の試験。

相手は……

 

「山じいが行って来いなんて言うから来たけど男の子かぁ」

 

その飄々とした口ぶり。

そして真剣ではなく木刀の二刀。

眼光は冷たくこちらを見ていた。

 

「八番隊隊長……京楽春水殿が相手とは」

 

まさかこんな相手とやりあう事になるだなんて。

こちらもじろりと見て相手の間合いを図る。

そして踏み出して仕掛けた。

 

「甘いよ」

 

一方の木刀で逸らしてもう一方の木刀で打ち込んでくる。

回避をしてみるが髪の毛を風圧だけで切り裂く。

真っ向勝負じゃあだめだ。

少し悪いが……

 

「ふっ!!」

 

草履を顔面に飛ばす。

それと同時に駆けていく。

狙うのは一箇所のみ。

 

「足癖が悪いねぇ」

 

草履を払った隙をついて跳びあがる。

そして一方の木刀へ一撃を叩きつけた。

狙い通りだ。

二刀でなければ多少はやりやすいはず。

 

「ふんっ!!」

 

防いでいたとしても力任せ。

さらには跳びあがった勢い。

その結果、片方の木刀を圧し折って一刀同士となる。

 

「やってくれるじゃないの」

 

片手が痺れているのだろう。

目が笑っていない。

ここから気を引き締めるのだろうか。

 

「いくよ!!」

 

突きが放たれる。

反応ができる速度ではない。

喉では無く腹部へめり込んでいた。

さらに胴に横薙ぎの一撃。

横に吹っ飛んでいく自分を瞬歩で先回りをする。

 

「これでお終いだ」

 

呼吸に苦しんでいる自分をしり目に木刀を振り下ろす。

咄嗟に木刀で受ける。

すると、すこんと小気味のいい音を立てて木刀の先が地面に落下する。

つまりは刃物のようにこちらの木刀を切ったのだ。

凄まじい練度と実力がないと出来る芸当ではない。

 

「武器がない以上は続けられない」

 

そう言って木刀を地面に置く。

受けていた木刀がぱっかりと分かれている。

圧し折るよりも美しい。

相手が悪かったというように試験官も口を開いた。

 

「『斬』の試験を合格とする」

 

その言葉を聞くと京楽隊長は満足そうな笑みを浮かべる。

木刀を置いて一礼をする。

 

「君みたいな子は嬉しいね、待っているよ」

 

笠をかぶりなおして、掌を振りながら去っていく。

そして次の『拳』の試験へ。

 

「十一番隊の平隊士とやってもらう」

 

さっきに比べたらぬるい条件だ。

そう思って構える。

相手は瞬歩を使って背後に忍び寄る。

しかしそれは読んでいる。

 

「はっ!!」

 

前方へ転がっていく。

肘打ちが放たれていた。

こちらも同じく瞬歩で接近。

 

「しっ!!」

 

足を掴んでひっくり返す。

受け身を取ろうとするが片手を取り、馬乗りになる。

ここから逃れる手はほとんどない。

隊長や上位の席官ならば問題ないだろうが。

 

「これでお終いだ」

 

そう言って淡々と顔を殴打する。

反撃の隙も与えない。

意識を無くすまで叩き続ける。

 

「そこまで!!」

 

しばらくして試験官が止めに入る。

相手は気絶をしていて鼻の骨が折れており、歯も数本折れている。

圧倒的な勝ち方とは言える。

 

「……『拳』の試験を合格とする」

 

平隊士に対して敬意なく平然と殴打。

暴力性があると思われたのかもしれない。

少し訝し気な目線を向けていた。

 

「次の『走』は『鬼事』を行い、いくらの時間を逃げ切れたかで判断する」

 

そう言って隠密機動第五分隊の裏廷隊の方が出てくる。

隠密機動の面子にかけても捕まえると気合が入っている。

そして始まる『走』の試験。

 

「ふっ!!」

 

一瞬で間合いを詰められる。

瞬歩がキレキレだ。

しかし京楽隊長に比べれば、怖さはない。

 

「ひゃっ!!」

 

前転跳躍で逃れる。

着地をして瞬歩で間合いを開く。

相手の方が無駄がない。

 

「だが……」

 

こっちも易々と掴まりたくはない。

相手の周りを瞬歩をしてくるくると旋回する。

相手はじりじりと詰めてくる。

 

「しっ!!」

 

痺れを切らして手を伸ばしてくる。

その腕を影にして動く。

伸ばした腕からさらに外側へ。

逆の腕で捕まえるには隙が大きい。

それは逃げるには十分。

 

「ちっ!!」

 

距離が離れた瞬間、こちらに向かって動いてくる。

それもさっきよりも速く。

それを利用していく。

 

「はっ!!」

 

相手の股を抜いていく。

そして相手は反転する。

しかし、速度を出しすぎていたので……

 

「がっ!?」

 

ブチリと腱が切れる音がしてしゃがみ込む。

急停止によって足に負荷をかけすぎたこと。

瞬歩を使おうとしたら尚更だ。

作戦勝ちという事だ。

 

「『走』の試験を合格とする」

 

試験官が苦笑いをしていた。

まさかこのような結末になるとは思っていなかったのだろう。

気合の空回りというわけだ。

次の試験は『鬼』。

最も得意とする部門。

護廷十三隊の現役隊士にも負けないほどの自信がある。

 

「この木人へ己が思う最大の破道と縛道を詠唱して唱えよ」

 

目の前に出された立派な木人。

それに向かって放つ。

隊士よりは気が楽だな。

思う存分やらせてもらおう。

 

「ちなみに此度の卒業試験で最も優れた方は何番台を?」

 

聞いてみたかったのだ。

度肝を抜くために。

すると試験官は口を開く。

 

「破道と縛道を共に四十番台を放っていた」

 

現役の席官並みか。

大した方もいたものだ。

ならばそれ以上を見せないと。

 

「始めよ」

 

その言葉と同時に木人へ指先を向ける。

詠唱破棄ができるのだ。

それもそこそこのものを。

それこそが己の才。

度肝を抜く見世物の幕開けだ。

 

「縛道の三十九『円閘扇(えんこうせん)』!!」

 

目の前に円形の盾を繰り出す。

一気にどよめく。

詠唱破棄の三十番台。

力の減衰は見られずとの判断。

詠唱ありきで四十番台ならば破格の動きである。

 

「すみません、詠唱してなかったのでもう一度やり直しますね」

 

そう言って詠唱による最大の縛道を放つ。

指先に力を込め、言葉に力を乗せる。

 

「雷鳴の馬車 糸車の間隙 光もて此を六に別つ 縛道の六十一『六杖光牢(りくじょうこうろう)』!!」

 

六つの帯状の光が胴を囲うように突き刺さり動きを奪う

格好をつけて詠唱破棄をしていたのではないという証明。

十番以上離れた強力なもの。

きっと隊長格ならばこれ以上の事は出来る。

だが、胸を張ってもいいはずだ。

 

「次……破道をやってもらおう」

 

そう言ってきたのでこちらも呼吸を吐き出して力を込める。

得意な破道。

これでもう一度度肝を抜く。

ここは様子を見ずに詠唱でいいだろう。

 

「『君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ』」

 

詠唱の時点で息を呑む音が聞こえる。

これこそが一番得意な破道にして最大のもの。

木人に向かって放つ。

 

「『蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ』、破道の七十三『双蓮蒼火墜(そうれんそうかつい)』!!」

 

両の手のひらから蒼い爆炎が木人に向かって炸裂する。

木人がその一撃で半身が破壊される。

こちらの破道が終わるころに見えたのは首以外が塵となり無残になった姿だった。

 

「『鬼』の試験、合格だ…」

 

試験官の顔色が悪かった。

これで全ての課程が終了。

最後の七十番台で疲れがどっと押し寄せる。

戦いではろくに使えそうにない。

まだまだ錬磨しなくてはな。

 

「後日、結果を送る」

 

その言葉を最後に試験場から出る。

ふらついてしまったせいで女性とぶつかった。

丁度、卒業試験を終えたところだったのだろう。

 

「お前、どこ見て歩いとんねん、このハゲ!!」

 

尻餅をついてしまった人がこちらを睨んで言ってくる。

申し訳ないと思い、手を差し出す。

それを掴んでくる手は小さい。

 

「すみません、卒業試験での緊張がどっと出てきて」

 

俺の手を支えにして、立ち上がった女性に頭を下げる。

背丈が自分の腰ほどしかないが大人な感じがする。

どうやら年上のようだ。

 

「貧弱やのう、お前」

 

はあっとため息をついて呆れられる。

しかしこちらをじろりと見た後、にやりと笑ってくる。

 

「お前がさては噂の天才君か?」

 

余りそう思われるのは癪なのだが頷く。

するとますます笑みを強くする。

 

「大方ええかっこしよ思て無茶したな」

 

ずばり当たっている。

図星だった俺は少し恥ずかしさから頬をかく。

 

「まあ、それはええわ、名前教えてもらおか」

 

ずいっと顔を近づけてくる。

少し驚いてしまう。

しかし落ち着かせて名前を名乗る。

 

斑鳩(いかるが)(たける)です、よろしくお願いします」

 

頭を下げて名乗る。

自分よりも先輩なはずだ。

礼節足りた存在でないといけない。

敬わないといけない。

 

「名は体を表すって奴やな、お前の三年先輩の猿柿(さるがき)ひよ()や」

 

そんな姿を見て感心した猿柿先輩が名乗る。

そして先輩が手を差し出してくるのでこちらも握る。

小さな手に似合わずタコや血豆がある。

『浅打』を何度も何度も振って努力をしてきた人の掌だ。

 

「お前も卒業試験に合格しとったら、ウチと同じ護廷十三隊かもしれんな」

 

先輩は死神を志望しているのだろう。

体は女性と比べても小柄の部類に入る。

推測するに、きっとそれを活かした動きなどが上手なのだろう。

先輩として敬わないといけないな。

 

「お前の事もビシバシ鍛えたるからな、覚悟しとき」

 

猿柿先輩はそう言うと元気一杯に駆けていく。

心臓の鼓動が少しばかり落ち着かない心。

卒業前にあれだけ女性に接近されたこともない。

つまり女性に全くと言っていいほど免疫がないのだ。

 

「勉強の虫になればいいってわけではなかったな」

 

護廷十三隊に入れたら多くの人と関わっていこう。

それも男女などの性別を問わず多くの話をしよう。

そう思って家路へ着くのであった。




今作のヒロイン登場です。
主人公が十分天才的な才能を見せていますが、原作ではこの後ギンがそれ以上の成績で卒業したりなどあるのであくまでその立ち位置にしています。
次回は護廷十三隊での引き取り先を決める予定です。
ちなみに原作や小説で死ぬキャラが生存するのでそのしわ寄せを受ける奴が当然います。

指摘などありましたらお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。