申し訳ありません。
今回で70年なのであと30年ぐらいで第一章の主人公パート終ります。
現世編の主人公も考えております。
更木剣八の襲撃から、七年の時が経っていった。
もう所属して七十年。
古株ではあるがまだまだである。
初めは皆が更木を敬遠していたが、俺が戦ったというつながりで教育係に任命されて隊長としての心構えを教えていた。
常に斬り合いを望んでいたが煙に巻いていた。
理由は単純。
斬り合うとその余波で建物の倒壊があるからだ。
そんな事で総隊長の呼び出しは喰らいたくない。
挙句の果てに卯ノ花隊長に叱られる。
約束を破ったら確実に『八千流』状態の斬撃が待っている。
死にたがりでも拒否したくなる代物である。
「あいつを教えたことに比べたら新人のお前に四席の任務を教えるのは簡単だよ…」
新しく入ってきた隊士に溜息をつきながら呟く。
見た目は死神らしからぬ男だった。
しかしその愚直なまでの純粋さ。
それに惹かれて十番隊に指名をした。
新人隊士としては異例の四席への就任。
「教えていただけて感謝しております」
堅い奴だとは思う。
でもこいつは隊長になる未来がある。
東仙も涅も後に隊長格にはなるだろう。
綱彌代はきっと東仙の補佐に入るだろう。
「指名したら断わる事も出来たのになぜ来てくれたんだ?」
ここが護廷十三隊で一番厳しい隊なのは数年で有名になった。
主席卒業生ですら席官に入るのに時間がかかる。
もしくは移籍させられる。
だがその後に席官になった者が居る。
それゆえに『適性のある隊を見抜いている』と言われている。
「あの東仙が全幅の信頼を寄せておるのです、ならばそれだけで信頼に足るもの」
真面目な回答だ。
しかし望んでいた答えではない。
霊術院の学問で言えば『可』か『不可』にするような内容だ。
「お前さんは馬鹿か?」
俺の言葉にびくりと身を竦ませる。
少数精鋭を作ってきた男。
つまりはついてこれない厳しさが有ったという事実。
そんな俺に怒られることは恐怖である。
追従するため悪にもついて行きかねない。
そう言った理由で不穏分子に煽り立てられて『蛆虫の巣』に行かされて除籍も十分にあり得る。
「東仙が信頼しているからって理由で簡単に信頼するな、お前がきちんと俺を見て信頼に足る人物と認めろ」
その言葉に頷く。
俺は信頼を他の相手がしているから自分もというのは好きではない。
それにこいつは俺の見立てが確かならばいずれは隊長となり得る。
そんな時に己の目を信じ、副官や席次の任命を行う。
その予行練習でもある。
「今から自分で相手に対する評価を考える癖をつけておかないと苦労するぞ、狛村」
この男の名前は狛村左陣。
初めて見た時にどうしても欲しい人材だと感じた。
今まで指名はしてこなかった。
望む奴が来てそれを鍛え上げる。
そのやり方だったのだ。
つまり指名は異例ともいえる。
「これのような事を皆しているのですか?」
涅はともかく、東仙と綱彌代にはやらせている。
元々涅の場合は自分を信じ切っているから別の誰かの評価なんて当てにしていない。
「当然だ、有望な奴は例外を除いて行わせている」
と言ってもまだ三人目だ。
藍染の奴がこっちに来ていたら教えていたのに。
これから先、色々な奴がここに来るが、きっと俺の目線での有能は少ないだろう。
「例外というのは?」
興味深そうに聞いてくる。
気にはなるだろうが納得する奴だぞ。
「涅五席だ、あいつは自分の価値感が確固したものとして存在している」
確かに。
そう言いたげな顔をする。
まあ、話はこれくらいにしてやることをやらないとな。
「こっちの書類仕事が終わったら東仙と一緒に渡しに行ってくれ」
そう言って書類を取り出す。
仕事を放りだして、副隊長達には極力押し付けないのが俺なりのやり方。
ただ配布ぐらいは手伝ってもらって、各隊の隊士の顔を覚えてもらう。
そして俺が教育係になったにも関わらず、ろくにしないやつの穴埋めをさせられている。
卯ノ花隊長に怒って貰わないとあいつは駄目ではないかと思っている。
「十一番隊の後始末をやってくるから」
数時間後、終わった書類を各隊ごとに分けて穴をあけて糸で綴じておく。
そう言って十一番隊に行く。
血気盛んな奴らが多い。
俺を一目見ると喧嘩を売ってくる命知らずもいる。
「相変わらずの死にたがりだな」
そう言って霊圧で威圧する。
大昔に総隊長がやった時の様に。
そうすると呼吸が苦しいのか、地面に手をついたり転がっている奴が居る。
「おい、居るか?」
隊首室の扉を叩く。
結果は無反応。
溜息をついてしまう。
鍛錬場で汗を流しているのだろう。
「筆跡を真似るも何も書いているのを見たことないんだよ……」
代理人の印を押しながら俺がやっていく。
どいつもこいつもやらないから溜まる一方。
一回だけ草鹿副隊長に言ったらわかんないと一蹴された。
今はきっと十二番隊で曳舟隊長かひよ里さんのおやつを頬張っているのだろう。
「何故、隊長が他の隊の雑用をしないといけないんだ……」
夕餉になりそうな時間で終わらせる。
これをとりあえず色々な隊に渡しに行かないと。
いや……これくらいは流石に任せるか。
放っておくと後で色々な隊にしわ寄せがやってくる。
「そこの席官の君、頼みごとがあるんだけど……」
頬に大きな傷を負った奴が振り向く。
そしてこっちに来た。
いかり肩でいかにも喧嘩を売ろうとしているのが分かる。
「あぁん、何の用だ……!?」
腹部に蹴りを入れていた。
あまり軋轢を生みたくはないがいい加減にしろ。
悶絶している奴を見下ろして教えてやる、
「お前らは隊長を馬鹿にするがいつからそんなに偉くなったんだ?」
礼儀も知らん奴らだ。
髪の毛を掴んで持ち上げる。
あうあう言ってるので高く掲げる。
「何か言ってみろぉ!!」
床に叩きつける。
その騒ぎを聞きつけて十一番隊の奴らが集まる。
怒りが爆発している俺相手に勝てるとでも思っているのか。
「書類届けてこい!!」
そう言って突き出す。
それを見て鼻で笑って俺の手から叩き落す。
挙句の果てには踏みつけられた。
うん……うん…
「舐めているという事か」
完全に頭に来た俺は刀を抜きそうになる。
今まで更木の教育や書類の後始末で訪れてきた俺。
そんな時に必ずと言っていいほど、喧嘩を幾度となく売ってきたこいつらにも非がある。
「もう一度機会を与えてやる」
そう言って書類を再度かき集めて綺麗にする。
そしてもう一度最後の慈悲で書類を届けるように言い伝える。
すると急に腰を低くして持っていった。
強さを誇示して良いんだったらいくらでもしてやる。
生憎あの死合を覚えている奴は十一番隊の中にはもう居ない。
「さて……帰ろう」
後始末も終わったしこれであとは今日の仕事のまとめをして一献。
ひよ里さんでも誘うかな。
そんな事を考えていたら殺気を感じる。
「がら空きだぁ!!」
さっき言い渡した奴らが待ち伏せしていたようだ。
と言っても、人数は減ってる。
つまりは聞き分けた奴もあの中にはいた。
「聞き分けないやつは度胸のある馬鹿、聞き分けた奴は理性的な馬鹿」
相手の刀が折れて転がる。
それに握りしめていた掌の皮が破れて血が滴っている。
原因は霊圧の差。
「で……気は済んだか?」
呆れ顔で呟く。
これがただの賊なら首の一つでも斬り落としておくところだ。
隊士だからしないだけ。
更木隊長も別にそれほど部下の為には動かないだろ。
「渡しに行っていないのは十二と九と七か」
全部が同期の所属する隊。
頭を掻いて向かっていく。
七番隊から巡る形だ。
「愛川隊長はいませんか?」
扉を叩くと平隊士が出てくる。
敬語を使ってくる隊長にぎくしゃくとしている。
居ると小声で言ってくるので、頭を下げて礼を言って隊首室まで歩く。
扉を叩くと声が返ってくる。
「誰だ?」
それに対して名乗ると入っていいという。
扉の取っ手を捻り開けると相変わらずの武骨な部屋が出迎えてくれる。
欠伸をしながらこっちを見ている。
「天下の十番隊隊長が他隊の書類仕事とは泣けてくるぜ……」
苦笑いで返す。
誰か十一番隊で書類仕事できる奴が来たらいいんですけどね。
七年たっても未だにそういう類を一個もやっていないあいつに腹が立つ。
しかし、それを指摘したら戦えという。
こっちは卯ノ花隊長との約束があるから戦えない。
一度相談したが我慢の一言で済まされている。
つまり、渋々やっているのだ。
「速くまともな補佐官がつく事を祈りますよ」
それだけ言って七番隊の隊舎から出ていく。
あとはどこに行くのか聞かれたので九番隊と十二番隊と答えた。
十二番隊と聞いた時にくすくすと笑っていた。
なんか狙ってその部分を抜き取ったとか思ってません?
心外だな。
「六車隊長はいませんか?」
そう言ってると久南さんが来る。
そして手元を見て溜息をつく。
きっとお土産があると思ったのだろう。
仕事が終わってないのに差し入れはしませんよ。
「今度休みの時にでも持ってきますよ」
黄粉を振ったあんこのおはぎをね。
それを聞いていたのか拳西さんが久南さんを後ろから小突く。
「全く、隊長相手にねだってんじゃねえよ」
書類届けに来たんだろ?
そう言ってきたので渡すと同じように苦笑い。
平隊士から今に至るまで書類仕事で届けたりがある。
貧乏くじを引いてしまったのかもしれない。
「お前の事だから次に届けんのはひよ里の所だろ」
そう聞かれて頷く。
久南さんが笑う。
役得を平然ととっている。
あからさますぎるのだろう。
でも、そんなものでしょう?
「じゃあ、行ってきます」
手を振って去っていく。
そして十二番隊の隊舎につくと鼓動の高鳴りを抑えながら扉を叩く。
出てきたのは曳舟さんだ。
顔を見るとくすくすと笑っている。
皆、同じ反応するよな。
しかし、通りすぎる時に臭いを感じる。
それは研究をした薬品のような臭い。
「曳舟さん、何か研究していますか?」
単刀直入に聞く。
だがこれは自分もその類と告白するようなもの。
普段の生活上では決して嗅ぐことの無い臭いなのだから。
「ああ……『仮の魂』の定義さ」
一人でその命題に行きつくとは……
この人も裏の顔としては優れた科学者だったのか。
止めておいた方がいいのは確実。
何故ならば、現在その存在はないもの。
それを開発してしまうと『零番隊』から声がかかってしまう。
そうなるとひよ里さんが悲しむことになる。
あの人の悲しむ顔を見たくないのが理由だ。
だが止められはしない。
個人が努力した結果を踏みにじる。
それが曳舟さんのものだと知ればひよ里さんは烈火の如く怒るだろう。
嫌われるのも苦しいものだ。
「心配してくれるのは良いけどねえ……」
顔に出ていたのだろう。
そしてこっちに向き直して厳しい顔になる。
「そっちの方がよっぽど危ない研究してるような気がするんだけど?」
お互い、同類の臭いには敏感だ。
上手くいってしまうと、人造死神を山ほど作れる方法が確立される。
それはある意味、八代目剣八と同じようなもの。
「こんなの一回成功したらもうそこで終わりですよ」
まあ、大量に作る必要はない。
『眠計画』は終わらない計画として動かされる。
それだけのための危険な研究。
理想の土台が一つ生まれればそれでおしまい、お蔵入り。
「そっちの方もあまり根詰めないでください」
それだけ言って、副官室へと向かう。
曳舟隊長に書類を渡すのも忘れずに。
扉を叩くと声が聞こえる。
「入れや」
そう言われたので、静かに扉を開けて入る。
書類の整理をしていたのだろう。
「後始末に追われて書類仕事せなあかん隊長なんて聞いた事あらへんで」
これで終いやと呟いて整理を終える。
その言葉に苦笑いになってしまう。
そして仕事を互いに終えているからか、盃を二人分出す。
酒まで出てきた。
ここまであって意味がわからないぼんくらではない。
「一杯付き合えや」
注がれた盃を渡される。
それを傾けて味わうように飲んでいく。
その合間に目を細めてこっちをひよ里さんは見てきた。
「ウチに隠し事してへんか?」
その声色に僅かに身を震わせる。
寂しげな感じではあった。
しかしそれ以上に怒りを込めた低い声。
「身を竦ませるような動きしたなぁ……隠すなや」
急かすように膝を叩いている。
どういった事を勘づいているのか。
それが一番重要だ。
それ以外の事で襤褸を出すわけにはいかない。
「まず、どの部分が隠している内容があると思ったんですか?」
できるだけ冷静に受け答えをする。
身を竦ませるとそれだけで看破されそうだからだ。
「まずは研究してるって前に言ってたけど……」
じろじろと見ながら一拍置く。
『崩玉』の事が来るのだろうか?
それとも『眠計画』か?
「限りなく真っ黒なことしてるんやないかと思ってるんや、例えばそうやな…」
顎に手を当てている。
いずれかではなく両方の事を知っているのか?
もしくは別の内容を含めているのだろうか?
「なんか子供を実験で作ってるやろ」
『眠計画』の事か。
何故、それがばれているのだろうか?
「リサが覗いてみたらガキを筒状のものに入れてたらしいな」
出所は矢胴丸さんか。
それはまだ完成形でもない。
「それは『あるもの』を生成する技術を応用した、『無』から『死神』を作り出す計画ですよ、その上で俺の肉体強度と協力者の血液情報から作られた存在」
あるものとは『仮の器』の事。
自分たちが現世でも、人に見える形で動けるようにするもの。
今までは存在を分かられず、怪現象として片づけられたことが多かった。
稀に見える人間がいた時には意思疎通も可能だった。
今後はそれが常時行えるようになるのだ。
「人造の存在ってわけか、滅茶苦茶やな」
呆れたようにひよ里さんが言う。
まさかこんなとんでもないものだとは思っていなかったのだろう。
「軽蔑しますか?」
少し怖がりながらも問う。
貴方に蔑みの目を向けられる恐怖。
それはきっと更木に後ろから斬りかかられる以上に恐ろしい。
「いや、軽蔑以前にその途中やとしてもとんでもない事やろ、軽く怖いわ」
研究者でもない人でも無茶苦茶と分かる計画。
さらにそれを形にしていこうとしている。
夢を叶えるために尽力しているとはいえ、はた目から見ると恐ろしいものだ。。
「きっとこの計画は全死神の夢でしょうね、叶えば激震が走る、できれば他言無用でお願いします」
それだけ言う。
頭を掻いて了承してくれるひよ里さん。
だが、これだけで追及は終わらない。
「あとはお前がくれたこの指輪やけど、何かしとるか?」
霊圧を感じたらしい。
仕方あるまい。
それに気づいたのであれば、全てを伝えなくてはいけない。
「当時警戒していた隊士の刀の破片を埋め込んでいます」
その能力を無効化するために手に付けられるものにしています。
それを言うと普通の指輪じゃないことに溜息をついていた。
「直接攻撃系じゃないってわけか」
直接攻撃系であった場合、ひよ里さんにはあまり意味はない。
副隊長に並の隊士が太刀打ちはできないはずだ。
しかしそうではなく特殊な能力。
それを危惧したわけだ。
「何せ始解の時点での警戒ですから解放されるとひとたまりもないです」
おおよそあいつの性格と心から考えると思い浮かべるのは……
『精神操作』や『誤認』に近いもの。
理解されないからこそ、相手が理解するように心を操る。
もしくは行動を正しいと思わせてしまうもの。
最悪な形は『催眠』だ。
万能性が高すぎる。
敵に回したくもないし、味方なら心強い。
「その刀に触れる事が予防策ってわけやな」
それに触れるわけにはいかないから指輪や手袋にした。
その説明の時にピンと来たのか。
あの時の綱彌代への贈り物は単純な予防だと。
「で、これは特別で予防はついでってわけやってんな」
そう言ってから自分から言ってしまった失策。
特別なものと認めてしまった。
それゆえに意識してしまう。
その感情をごまかすように頭を掻いていた。
「まあ、危険から遠ざけたいからそれを組み込んだんです」
企みなんて微塵も有りはしない。
あるのならば鬼道なり悪いものを組み込む。
それこそ『掴趾追雀』で居場所を常に特定したりなんてな。
「思いやりってわけか」
そう言って指輪を撫でる。
その通りですとも。
「お前が企んでうちを不幸にすることはない、信じていいんやな」
信じてほしい。
貴方を不幸にしてしまう企みならば破却する。
貴方を苦しめる考えなど持ちたくもない。
「まあ、それで終わりや」
飲むのを続けるで。
徳利を差し出してきた時に見た顔は微笑みがあった。
それに応えるように盃を差し出す。
注がれた酒を嬉しさとともに飲み干していった。
願わくば不幸などこの人に降りかかりませんように。
その思いが頭の中で渦巻いていた。
ひよ里にばれたのは別に害なしでお咎めはありませんでした。
多分キャラ・ヘイトの成分が今後の話で入ってきます。
不快な気持ちにさせてしまう事もあるかもしれませんが、その点はご容赦いただければと思います。お手数をおかけして申し訳ございません。
この話の投稿後にはタグ付けを行っておきます。
指摘などありましたらよろしくお願いします。