短い話で一旦区切って次の予定からは一気に原作時間軸に近づけていきます。
更木の書類処理に苦言を呈してはや三年。
どうやら新しく入った綾瀬川とか平隊士でもましな奴が分担して行っているようだ。
もう、まったくと言っていいほど十一番隊の隊舎には行っていない。
あいつに挑まれるのもしんどい。
書類押し付けられるのもしんどい。
「しかしどうしたものか……」
『眠計画』の根幹の魂。
それをどうにかしようとするにはまだ時間がかかる。
今の時点では獣の魂魄を削り取って注入する形だった。
自分たちも魂魄を手探りで作ってみたが歪。
獣はともかく人の魂魄が非常に難しい。
ちなみに死体からは意味がない。
義骸の中に注入してもその魂魄が合わずに消失。
上手く行くかと思えば、形作ることが難しくどろどろの流動体。
「これでは凍結もやむなしダヨ……」
あの涅ですら溜息をつく次元。
球状にするところまでは思いついた。
しかしそれもできていない。
無から生成だけでも骨が折れる。
「俺達の魂魄を削るか、もしくは……」
曳舟隊長の開発を待つ。
それが一番安全。
「まず魂魄の仕組みを再度論文を見直して確認しよう」
それが嫌なら人の魂魄を自分たちで作る。
停滞は致命的だけど、仕方ない。
「まあ、こればかりは天才のワタシでも未知の領域の重なりダ」
珍しく弱音を吐く。
歯軋りや頭を掻くのもあいつらしくないと思いながら見ていた。
「息抜いてくるわ、お前も少し休んでおけよ」
首を鳴らし、研究所から出る。
阿近も今日は十番隊の隊舎で休んでいる。
子供の時点で不眠不休に勤しませるわけにはいかない。
「しかし、どうしたものかね」
髪の毛を掻いて嘆く。
論文に穴はないのは本当は分かっている。
なのにすがるように言ってしまった。
技術力がまだ追いつかないのだ。
「いや、それとも柔軟性が足りないのか?」
何気ないものから得る事が有るはず。
自分では無理でも誰かの声や振る舞いを見てみよう。
「大丈夫かいな、そんな唸るような声出して」
目の前にひよ里さんがいたのにも気づかぬ体たらく。
そんなにうんうんと言っていたのだろうか。
恥ずかしいなと思い頬をかく。
「ちょっと悩み事で……迷惑かけてすみません、大丈夫です」
こっちを心配してくれたのだろう。
嬉しい限りだ。
「そんな事
手を叩いてしょうがないというような顔をする。
そして、十二番隊の隊舎までついてくるように言われる。
「ええから座り」
座ることを促される。
そんなに力なさそうだったか?
「昼くっとらんやろ?」
その言葉に頷く。
するとすぐに厨房へと入っていく。
あっという間にいい匂いが広がる。
一体何をやっているか気になった。
揚げ物をしているのは分かる。
にんにくやしょうゆの香り。
ぶつ切りの鶏肉。
つまり、唐揚げを作っていたのか。
しかしすでに油きりの器にいくつか盛られている。
それをなぜ出さないのだろうか?
じっと見てしまう。
その視線に気づいたひよ里さんが苦笑いしている。
「そんなに見られたらやりにくいわ」
お気になさらずと言っている、再び凝視。
ここに閃きのきっかけがあるかもしれない。
流石に苛ついたのか溜息をつく。
「これは『二度揚げ』っていう技術や、一回上げて衣にうまさ閉じ込めて二回目はじっくり通すってやつやな」
その言葉に閃きを得る。
しかし食事の方が大事だ。
これは曳舟さんから教わったんやで。
そう言って盛り付けていく。
「いただきます」
手を合わせて、唐揚げを頬張る。
肉汁が口に溢れる。
油が体に沁みる。
気が付けばご飯を三膳食べてしまっていた。
よく食べる姿に微笑んでくれていたからいいが、少しは遠慮すればよかったと後悔。
おいしすぎるのも困りものだ。
「ごちそうさまでした」
手を合わせ礼を言う。
皿をすぐに持っていく。
それについて行くように茶碗を持っていく。
「ようけ食うてくれる方が気分ええわ」
そう言って食器を洗ってくれる。
頭を下げてそのまま研究所へと戻っていった。
「さて…試してみるか」
流動したものを固めるのに容器が必要だ。
それを一つで賄おうとしていた。
その結果、魂魄の強度次第で容器が崩れる。
一度球状の空のものを作り、それを覆う形でもう一つ。
それで一気に強度の向上を図ることができる。
対費用効果から考えなかった方法だ。
さらにやり方も霊圧で固めたものを包むのではなく注射器で注ぎ込む形へ変更。
くまなく入り込むこと、そして自身の霊圧を安定した状態で加えることで固められる。
「ただ、これは量産できないよな……」
間違いなく、自分たちの研究成果が一点物だからできる方法。
普及させる場合にはこれを改良する必要がある。
曳舟隊長はきっとそちら側になるだろう。
貢献度もそうなるとこっちよりは上になる。
「まぁ、良いか」
名誉以上に自分たちの願いがある。
其れが叶うのであればそれ以外は特にどうでもいい。
「良くはないダロウ」
強度を上げるという事は現在の個体では不可能。
つまり一つ上げることになる。
六號にはなるが、仮にいい技術が生まれればそれもだめ。
結果は当初予定のまま計画は進行する。
「だが、誰かの知恵を借りて完成を遅れさせるのと、
自らの技術の粋を集めて一度は完成させるならどちらが本望だ?」
そう言うと返答は間髪入れずに来た。
そうなるように仕向ける意地悪な質問だ。
「自分たちの努力の結晶が優先だ、誰かの知恵には興味ない」
そう言って義骸の作成を取り組む。
零番隊に目をつけられても断ればいい。
一世一代の夢の完成。
それを確実に近づけた時の俺達の顔は太陽のような煌きが宿っていた。
次回からは曳舟さんの義魂からの零番隊への昇進を書いていこうと思います。
つまりこの第一部は長引かなければ十話もないです。
何かしら、指摘などありましたがお願いします。