ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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今回はまったり日常回です。
次回にはあるキャラを出していくようにします。


『花の名前 - Flower Name -』

 

「長らく世話になったネ」

 

そう言って去っていくマユリ。

と言っても二つ隣の隊である。

あの後『技術開発局』を浦原が設立。

その際の交渉で『自分が死ねば思いのまま』と言って、マユリを引き抜いた。

予想通り、阿近も引き抜かれた。

眠六號はひよ里さんに頭を下げてお願いした。

自分も顔を出すことはありますが、世話をお願いします。

そう言ったらまかせろと胸を叩いていた。

 

「後任も考えておかないとな」

 

そう言いながら手を振って見送る。

眠六號がこちらをちらちらとみてきて心苦しかった。

会いに行くから気にするな。

 

.

.

 

其れから数日後。

人事について考えていた。

五席には加勢浜を据えよう。

それ以外には阿近の後釜、眠六號の後釜も必要だ。

 

「未次と蛾羅か……」

 

少数精鋭である以上はすぐ後釜の候補は決まる。

実力以外の部分。

それらを加味して選び抜く。

人事を張り出してすぐに任命。

 

「次は……」

 

そうは言うが暇を持て余してしまうのを克明に感じる。

実際、今までマユリたちといた時間が無くなるから早く書類が片付く。

鍛錬でもするか。

そう考えて隊舎を出る。

すると丁度ひよ里さんが来ようとしていた。

 

「涅の事で聞きたいことあるんやがええか?」

 

どうやら想像通りで反りが合わない。

俺も『敬え』とは言ったが聞く耳持たず。

最悪研究情報をすべて破壊してやろうかと言ったときは、さすがに反応を示した。

まぁ、あいつの事だから呼びの情報を確保しているだろう。

 

「あいつがまるで食事をせえへん、なんか好物とかないんか?」

 

あいつ……相変わらずだな。

俺の誘いに頷くのも三回に一回はあるかないかだ。

食事の時間すら研究に当てているところはある。

浦原もそれに近い。

あいつらの考えが時折理解できない。

両方充実させてこそ楽しみがあるのに。

 

「しいて言うなら秋刀魚ですかね」

 

そう言うと溜息をついた。

時期が過ぎているのだ。

 

「それ以外には?」

 

あまり頓着がないからなぁ……。

気が向いた時だけしか食ってないし。

忍耐を要する。

阿近についてはどうなのか?

 

「あいつは面倒見とるわ」

 

憎まれ口は叩くけどそんなもんはガキの言葉。

無理やりにでも言う事を聞かせられる。

そうは言うがあいつの礼儀も教育したはずなのにな。

少し厳しく言っておくべきか。

 

「歯も磨かんかったり好き嫌いあって残すんや」

 

それに比べたら眠六號はまだ良い子や。

好き嫌いはないし良く手伝う。

お前もそれなりに顔出すから助かるのはあるけどな。

 

「あいつにはそれなりに叩き込みましたからね」

 

可愛がった自覚はある。

しかし甘くなりすぎない程度に。

失礼にならないように礼儀を教え込んでいる。

それでも子供らしさは抜けていないが。

 

「そう言えば気になったけど、よたよた歩きながらついてくるんやが、刀なんてあの子持ってたか?」

 

それを聞いて背筋に冷たいものが落ちる。

あいつには自身を守れるようにある物を作った。

しかしそれは……

 

「零番隊が聞けば卒倒しそうなものだがな」

 

小さな声で呟いた。

自分と涅の斬魄刀の欠片を使った。

それを金属や鬼道で打ち直した完全に違法の斬魄刀。

それは何が起こるかわからない。

 

「一応自衛手段は持たせてあげないと」

 

いつまで自分が見てやれるか。

それを考えた時、禁忌に近い方法を思い浮かべた。

結局、自分はそういう存在である。

大事な人物の為ならば鬼にでも悪魔にでもなる。

 

「それもそうか」

 

そのやり方に頷いて納得をする。

それはそうと浦原はどうだろうか?

気になって聞いてみる。

すると歯軋りをしていた。

どうもだらしない男だというのが印象だと言う。

寝起きのまま来るし、隊士に尊敬されようとするそぶりもない。

流石に隊長としての示しは見せてほしいものだ。

ただ『蛆虫の巣』での素手で止めたのには驚いたらしい。

あれは素手での制圧が可能な奴しかできない役職だからな。

あの細腕の中にもしっかり白打の基礎が詰め込まれているというわけだ。

 

「ほんまに曳舟隊長の後やから、尚更やで」

 

溜息をつく。

疲れているのがわかる。

こうなったら一日入れ替わってみるか。

無論、ひよ里さんの方は綱彌代や東仙の助けが有ったらいいだろう。

そう言った思いやりから提案をする。

 

「断らせてもらうわ」

 

手を振って笑う。

まだ浦原たちの相手をしている方が楽なのだろう。

確かに精神的にも全力出して擦り減りそうだもんな。

 

「そっちが手伝いに来た方がよっぽどましや」

 

それだけ言って去っていこうとする。

俺は俺で研究に予定を変えて後について行く。

一応『技術開発局』に出入り可能な者として涅と眠六號と阿近が認めている。

 

「なんでついてくるねん」

 

気配が常に後ろにあるから気づいてしまう。

仕方ないですね。

ちょっとあっちの方に研究材料を置かせてもらったからね。

『眠計画』以降は義骸の研究と義魂の技術に傾倒している。

全てを先駆けて行動ができるのは過去の経験や研究成果に基づくもの。

 

過去の研究結果では毒性の強い虚の魂魄が混ざると崩壊する。

ならば崩壊前に人型の義骸に収めた場合、崩壊は止められるのではないか?

 

それ以降は義骸に霊子体を持たせて精巧に作っていく。

『眠計画』で眠に使ったものは粋を集めた。

しかし、それ並のものを連続して作成する事に今後なり得る。

 

また、一つの欲望が鎌首をもたげているのは言うまでもない。

霊子体を全く持たない義骸を作れたならば?

それはありとあらゆる器になり得るのではないだろうか。

 

「さて……と」

 

ひよ里さんと別れて、十二番隊舎に併設された技術開発局。

そこに認証を行って入っていく。

白衣は特大のものを羽織って、自身の研究成果を置いた一角へ向かう。

 

「おいおい、なんやかんやでよく来るな」

 

阿近が笑いながら言ってくる。

足を引っかける。

それだけで迷惑をかけるなというこっちの意図を汲み取ったのだろう。

ばつの悪そうな顔を浮かべていた。

 

「副局長、俺の残骸はどこに置いておいたんです」

 

ぐるりと見てきてマユリが睨んでくる。

指差す方向にはあるにはあった。

 

「余所余所しく呼ぶな、キミとワタシの仲だろう」

 

悪い、悪い。

どうしてもこういった場所だと礼儀を重んじて呼んでしまう事が多い。

浦原の事も隊長と呼ばずに局長って呼んで笑われたからな。

 

「それに残骸とは言うが、今のワタシでは至れないほどの完成度を作ってよく言えるネ」

 

お前の頭の中はどうなっているのか気になるよ。

そう言われると悪い気はしない。

しかしお前や浦原は万能だ。

それだけの柔軟性は持ち合わせてはいない。

 

「正直、お前と協力できたからこそあれ以上の完成度を持って眠六號はできたんだぞ」

 

俺一人ではとてもではないが難しかった。

結局その過ぎたる技術と同じ水準までどれだけの年月を要するかは想像できない。

 

「悪い気はしないがネ」

 

何故、浦原を嫌うのに俺は嫌わないのか。

それが気になって聞いてみた。

そうするとくすくすと笑いながら答えてくれた。

 

「例えだが犬が猫に負けていようと、気には止めないダロウ?」

 

俺は別の存在という認識か。

確かに負けてもそれほど悔しくは無いだろう。

 

「しかし、犬が犬に負けるのは耐えきれないものダ」

 

ある意味認めてはいる。

だからこそ悔しがる顔を見てみたい。

一泡吹かせてやりたい。

研究成果で上回ってみたい。

それが根底にあるのだろう。

それ故に不摂生ともとれる無茶をしているのだとしたら恐ろしい執念だ。

 

「気持ちはわかるが体に不調をきたした場合の損失を天秤にかけろ」

 

それだけ言って義骸を持っていく。

そして先日に狩った虚と、亡くなった別の隊の隊士の魂魄とを混ぜ込む。

結果としては確かに形状の記憶はできる。

成功と言っても差し支えはないかもしれない。

しかし生体による実験ではないので確証としては不十分。

証拠を残さないように『廃炎』で燃やし尽くしておく。

不十分とは言ったがこれはかつての封印した研究で確証を得るための反芻でしかない。

誰か同じ考えを持った者が居て、現実に不慮の事故で起こった際の対処を知っておくため。

 

「あとはこれだな」

 

滅却師の死体を持ち上げる。

虚たちとの交戦で命を落とした存在。

どうやらおかしなもので虚の魂魄をその体に注いだ結果、崩壊していった。

まるで猛毒に侵されたとでもいうように。

これをもとに仮説を立てて論文を作ろう。

 

「そしてもう一つ」

 

霊圧を凝固させる装置で保管していたものがある。

この機械は自分が作ったもの。

当然、機材費は自分持ちである。

 

「人間の魂魄と滅却師の光の矢で『死神』と『虚』に対して『相反』するものが生成可能だろう」

 

魂葬する前の人間から手に入れた魂魄。

それと混ぜ合わせていく。

『義魂』に近い概念の為、それほど新技術でもない。

抗体を持った薬の開発の完成を考える。

そうすぐにはできないだろう。

この研究成果によって生まれたものは持っておく必要がある。

先ほどの崩壊に死神側が直面した場合に止めるカギになり得るからだ。

 

「さて……」

 

研究が一段落すると日付表をちらりと横目で見る。

無論、ここは十二番隊なので自分の名前は一つもない。

目当はひよ里さんがいる日の確認である。

『室長』に任命されているため、それなりに研究に詳しくなっていっている。

 

「ふむ、八月の一日は休みか」

 

そう言って微笑んでしまう。

それならば十二番隊の隊舎にいるだろう。

その動きに合わせてこっちも動いてみるか。

 

.

.

 

そして一週間後の八月一日。

俺は似合わない花束を持っていた。

誕生日への贈り物である。

当然、ほかの贈り物も用意はしている。

鶴の装飾を施した簪である。

亀でも良かったがこちらの方が似合うだろうと思って買ってきた。

 

「すみません、十番隊の斑鳩です」

 

なぜかかしこまった喋り方で十二番隊舎の前に立っている。

それで開けてくれたのは眠六號だった。

 

「綺麗なお花ですね」

 

そう言って花束を見てくる。

現世に行って今日の花として買ったんだ。

初めて横文字を知った。

『ガーベラ』という花らしい。

 

「猿柿副隊長は居るだろうか?」

 

それだけ伝えると副官室の前まで連れてこられる。

廊下を渡っている間にくすくすと笑い声が聞こえたが気にしない。

だが、隠れたつもりで笑っていた浦原を見逃すつもりはない。

 

「入ってきぃ」

 

そう言われて扉の取っ手を捻って入っていく。

目の前に花束を持った男が居たら驚くだろう。

その顔がとても印象的だった。

 

「これ、あの…その…」

 

顔が赤い状態になって渡そうしている。

言葉もしどろもどろ。

それを見て、肩を震わせている。

これは怒りで震えているのではない。

笑いをこらえるのに必死なのだ。

 

「有難うな」

 

しかし笑うのは失礼。

そう感じたのだろう、すぐに顔を引き締める。

そう言って花束から一輪抜いて、花瓶に生ける。

それ以外の花は立てかけるようにしていた。

 

それだけではないと贈り物を渡す。

その中身を見て額に手を当てる。

困った時の仕草だ。

好意とはいえ、高価な贈り物や飾り過ぎているものをあまり好まない。

今回の簪も高いと分かってしまったのだろう。

 

「似合うと思ったんです」

 

その言葉に苦笑い。

仕方ないというように結んでいた髪ひもを外し、髪の毛を下ろして後ろで三つ編みを作る。

そして最後に買ってきた簪で留める。

 

「どや、似合うか?」

 

手を叩いて賞賛する。

するといつの間に入ってきていたのか。

眠六號も一緒になって手を叩いていた。

微笑ましい一つの時間が過ぎていく。

もっとこの時間が続くようにと心から願うのであった。




原作ではなかったおしゃれな部分を追加。
眠六號が普通に懐きやすいという感じです。
そして、原作では一心や真咲を救った技術に関して、浦原がやっている内容を先取り。
見返したりしてると、『先駆け』としては確実に零番隊に呼ばれるだけの内容をしているんですよね。
ただ、露見しない方が良い内容ばかりだったり場合によっては投獄ものなんですが。

指摘などありましたらお願いいたします。

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