ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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今回は市丸登場です。
そして他の原作キャラも出してみました。


『ギン - Silver - 』

真夏が過ぎて、銀杏の木が色づくころ。

本日は新人隊士の配属日だ。

噂の天才児は予想通り、五番隊へと配属になる。

名前は『市丸ギン』か、覚えておこう。

此方は言っても普通の隊士ばかり。

適性を見抜いて適材適所に振り分ける。

もし、十番隊ではない隊の方が向くのであればそれが一番だ。

 

「ふむ……やはり例年通りか」

 

一人一人の顔や特性を聞き、考える。

思ったような人材はそういない。

二桁に上るぐらいが十番隊所属の継続。

隊とは言えない少なさ。

総勢七十二名。

しかしその粒たるや恐ろしいと皆が口々に語る。

十一番隊に勝るとも劣らぬ戦闘力を有し、それ以外においても一番隊にも負けぬ精鋭。

 

「大所帯もいいが、全員が水準を満たせていないと意味はない」

 

適性で伸び方も違う。

優しい場所や厳しい場所。

放任主義だったり、面倒を一から見る奴ら。

それで初めて開花する。

その前段階の種を朽ちらせるわけにはいかない。

 

「いい加減三桁になってほしいですね」

 

東仙が書類を見て言ってくる。

確かにそれは思う。

そうなった場合、真央霊術院の卒業生の次元が一つ上に至ったという事になる。

 

「自分の適性を知り、正しく自己評価できているという結論になるからな」

 

それに加えて能力の向上も有るだろう。

憧れてくるのは構わない。

しかしそれは己を理解していないという事につながることもある。

だからこそ、このように選抜していくのだ。

 

「玉石混交が悪いんじゃない」

 

だが純度は大事なもの。

石ではなく玉に変えていく。

そうすれば総合的に護廷十三隊の質の向上につながる。

 

「育っていくのを見るのは楽しいからな」

 

それだけ言って移籍の届を今回漏れた人数分引っ張り出す。

そして、書いて書いて書きまくる。

数百人から残れなかったものに対して最後に斬拳走鬼や性格における適正について記述しておく。

その箇所を伸ばしていけば成長していける。

其れで席官になってくれれば万々歳だ。

 

「『襲撃警報』!!、『襲撃警報』!!」

 

全員分、封筒に詰めていたころにけたたましい音が鳴り響く。

俺が出る事になった。

原因は『中級大虚』が出ているかららしい。

助っ人藍染が今回は来ている。

そして横にいるのは詩仁(うたにん)三席か。

藍染の後ろにいるのは……

 

「君が市丸君か?」

 

蛇のようなぬらりとした雰囲気。

掴ませまいとする空気。

張り付いたような笑みをこちらに向けてくる。

 

「そやけど、おじさんは?」

 

……おじさんって。

まぁ、もうそんな年か。

九十年も瀞霊廷にいるわけだからな。

 

「十番隊隊長、斑鳩傑だ、よろしくな」

 

そう言って頭をくしゃくしゃとなでる。

それをくすぐったそうに頭を振って逃れる。

すぐに藍染の方に向かって行った。

 

「すまんすまん」

 

笑いながらも藍染に向けている感情を探る。

懐いているというわけではない。

どちらかというとまるでご機嫌を伺っている。

寝首をかいてやろうかというような感じで。

 

「……居やがるな」

 

『中級大虚』が三体。

まずは俺が先に行く。

隙を見て斬りに行っていい。

 

「ハッ!!」

 

一閃。

相手がそれに気づくよりも先に。

足を切り裂いて機動力を奪う。

爪を振るってくる相手に指を向ける。

 

「縛道の六十一『六杖光牢(りくじょうこうろう)』」

 

詠唱破棄で動きを止める。

そのまま顔に向けて掌を向ける。

 

「破道の七十三『双蓮蒼火墜』」

 

相手の顔が吹き飛ぶ。

そのまま崩れ落ちていく。

止めは後でさしておこう。

煙がある中で後ろから来てる相手に親指を向ける。

 

「破道の四『白雷』」

 

肩口を射抜き、一瞬相手の動きが止まる。

そしてそのまま後ろを振り抜く最中で首筋に斬撃を放つ。

 

「……」

 

斬られたことに気づく事もなく首が落ちる。

その頭蓋を踏み砕いて最後の一体へと向かい、歩く。

 

「あああ……」

 

恐怖を表情に張り付けた虚。

こういう相手でも容赦はない。

むしろ……

 

「斬りやすくなって実に良い」

 

頭から切り裂いて真っ二つ。

左右に花が開くように地面へと倒れる。

ただ、美しさなどそこには皆無。

醜悪な存在における一つの終わりの形。

 

「最後はお前だな」

 

顔が吹き飛びながらも拳を振るってくる虚。

そいつに対してその腕を切り裂く。

ぼとりと音を立てて落ちていく腕。

蹴りを放ってくる足をまたもや斬り落とす。

血が出ているがお構いなし。

次はあるのかと少し待つ。

 

「ギ……イィ」

 

何もないのか。

ならお終いだ。

すっぱりと首を斬り落として『廃炎』で焼き切る。

 

「む……」

 

しかし僅かに霊圧を感じる。

そしてそれは徐々に大きくなる。

出所は……

 

「詩仁三席、その足元から離れろ!!」

 

俺が危険と感じて指示を飛ばす。

その言葉に対して相手が転がって避ける事もない。

緩慢な動きになってしまった。

 

「アガアアア!!」

 

それが致命的となったのだろう。

虚の叫び声が聞こえる。

地面を突き破るように勢いよく出てきたのだ。

そしてそのまま詩仁三席の首筋に噛みつく。

 

「えっ……!?」

 

油断していた詩仁三席の喉笛が噛みちぎられた。

鮮血が噴き出していく。

瞬く間に目から光が失われた。

 

「これは警報とは違いますね」

 

藍染も流石に間に合わなかった。

相手が奇襲してきたことに加え、『中級大虚』の想定としては速かったのだ。

これに言える事は……

 

「『最上級大虚』になりかけの奴が来たか、そして……」

 

すぐに切り裂きたいが俺は囲まれた。

とは言っても三体の虚。

刀を抜いて市丸に指示を飛ばす。

 

「市丸、藍染から離れるなよ」

 

死なれても困る。

種が芽吹くよりも速く朽ちてはならない。

 

「頼むぞ、藍染」

 

そう言うといつもの笑みをこちらに向ける。

そして優しい声色で返答してきた。

 

「当然応えて見せますよ」

 

そう言って相手に向かって斬りかかる。

相手も避けてはいるが遅い。

鬼道を使う必要も無しという判断だ。

 

「はっ!!」

 

相手の腕が斬り落とされる。

汗一つかかず、息を一つも乱さない。

始解も抜きで着実に追い詰める。

だが相手が背中を向けて一目散に走りだした。

勝てないと本能で察したのだろう。

 

「逃がしはしな……」

 

藍染も負けじと追いかける。

しかし、虚の目の前に黒い穴が出てきてしまった。

あれで逃げられてしまう。

射程から外れているから鬼道しかない。

そんな次の瞬間、市丸が刀を構える。

 

「『射殺せ』、『神槍』」

 

解号と共に藍染の頬の横を通り過ぎる。

そして虚の急所を貫いていた。

相手は崩れ落ちていく。

穴の中へ入る事もなく。

 

「ボクの手柄やんね?」

 

口角を上げる市丸。

こいつは驚かされたな。

伸縮速度から考えるとおそらく……

 

「尸魂界全土『最速』の斬魄刀か」

 

そう言って襲い掛かってくる攻撃を防ぐ。

そして前蹴りで突き放す。

仮面を付けてはいるがこいつらの強さはなかなかだ。

 

「『中級大虚』が二体と『最上級大虚』が一体」

 

今回死んだ者が居るから、隊葬の準備があるな。

其れなら速くしないといけない、藍染と市丸に顔を向ける。

相手の攻撃を軽やかにかわしながら。

 

「先にその亡骸を持って瀞霊廷に帰ってろ」

 

その言葉に頷いて帰っていく。

助けはいらない。

あいつらを巻き込まない自信も俺にはない。

熱くなると周りは見えないからだ。

 

「何のつもりかしら?」

 

相手が驚いた顔でこっちを見る。

三人に三人で相手にすると思ったんだろう。

悪いな、それは無い。

 

「初陣のガキ、抱えて戦うほど酔狂でもないんでな」

 

そう言って構える。

本気でやらせてもらうぜ。

あんたも『最上級大虚』の中でもかなり強い方だろう?

 

「それもそうね」

 

そう言って同胞の仇か、素早い動きで迫ってくる。

山羊の見た目か。

上位は元からそういった何かしら生物に近い形になるのだろう。

 

「ふんっ!!」

 

刀で防いで前蹴りを放つ。

相手がその足に乗る形で回避しようとしてくる。

そうはさせまいと残る片足で跳躍をする。

 

「甘いでヤンス!!」

 

もう一人が体全体を浴びせかけるようにのしかかって来ようとする。

その体を腕を伸ばし両腕を掴むことでつっかえ棒のようにして難を逃れる。

そしてそれを三人目の虚に向かって放り投げる。

すると口から液体を吐き出し、滑らせることで地面に怪我無く着地をした。

 

「このペッシェとドンドチャッカが貴様がネリエル様を斬ろうとする野望を阻止してくれる!!」

 

クワガタのような虚とカエルのような虚。

なかなかに厄介だな。

普通にばらばらの三体なら余裕で倒せる。

しかし連携が取れる三体となれば一気にその討伐の難度は増す。

本気で行くのは良い判断だっただろう。

 

「それでも負ける気は微塵もしないがな」

 

そう言って相手に照準を定める。

そして刀を向けて一言放つ。

 

「逃げるなら止めないぜ」

 

襲撃警報の数を討伐したのは事実。

急な襲撃による報告数の上下は有れど、殲滅の要素はない。

詩仁三席の仇はすでにとったのだし。

 

「お前ら、そこまで好戦的な部類じゃないだろ?」

 

そう言うと普段は抜いては来ない虚の斬魄刀が抜かれる。

ネリエルは槍のようなものを腰から。

ドンドチャッカは口からこん棒。

そしてペッシェは……

 

「はっ!!」

 

股間から霊子状になった珍しい剣を抜く。

出すところは様々だが、今まででは一番驚かされた。

 

「少なくとも無念の分はやらねばならない」

 

そう言って槍を突き出す。

仕方あるまい。

 

「ただでやられるつもりはない」

 

俺が正義などというおごりはない。

戦いなんて始めた時点でどちらも悪なのだ。

勝った方が己の我儘を貫き通せるだけ。

 

「喰らうでヤンス!!」

 

こん棒を振り回してくるドンドチャッカ。

回避そのものは簡単だ。

しかし風圧が凄い。

掠ればそれだけで痛手を負いかねない。

 

「だから……」

 

掌で受け止める。

相手は驚くがそれに対して睨み付ける。

 

「この程度で驚いていたら体がもたないぞ」

 

そう言ってこん棒ごとドンドチャッカをペッシェに向かって投げる。

そしてペッシェを牽制。

これでネリエルに専念できる。

 

「こいつらに無駄な血を流させたいか?」

 

意地悪な質問だと知りつつ聞いてやる。

相手も馬鹿ではない。

実力の差を確認はできたはず。

退かせても問題はない。

 

「分かったわ、これ以上は無益」

 

黒い穴……黒腔と呼ぼう。

それに導かれるように踏み入っていく。

 

「後ろから斬りかかるような真似はしないのね」

 

振り向いてこちらに言ってくる。

そんな事してその中に入ったら大惨事だろうが。

それに……

 

「敵意を持ったり狂った虚でもない限り、報告以上の数の排除はしたくない」

 

調和や均衡が崩れると困るからな。

俺が戦う姿から戦闘狂なり思ったのだろうがそれは特定の場面でしかありえない。

それ以外でもし戦う事が有るのであればそれはきっと怒髪天の時ぐらいだ。

 

「貴方への見解を改める事にするわ」

 

そう言って黒腔の中へ消えていく。

これで一応すべては終わり。

この後には隊葬もある。

きっと平子さんに言われるだろう。

 

「まあ……それは仕方ないか」

 

毒性が強いはずの虚の一撃でも、死に至らしめられた場合は虚化は進まない。

今日は思わぬ収穫があったと思おう。

つまり死なない程度で毒性のある虚の一撃を与えた場合、生体の死神でも可能性はある。

 

「虚の魂魄によって鋳造された小刀でも作れば、確実にこの問題点は払拭されてしまう」

 

徐々に危うい部分の欠片だけが積み重なる。

知らなくても良い事なのに。

予防をするにも常に致命傷を負わない様にしろなんて突拍子もない呼びかけが有るだろうか?

 

「あいつも今回で分かっちまったはずだ」

 

今、説得と長年の付き合いで昔のような悪だくみは完全に止まっている。

しかしあいつに悪い事してやるという虫が出る内容はできることならば全て包み隠しておきたい。

知らなければ計画の立て方でも時間は掛かる。

その間に説得にかかればいいからだ。

奴の頭脳の規格外の度合いはよく知っている。

あいつにものを教える時に不満があるのならば、それは僅かな説明で全部を掴むほどの理解力だ。

 

「帰ってからまた話をしよう」

 

少し憂鬱な気持ちで地獄蝶を持って瀞霊廷へと帰る。

既に隊葬の準備は終えていた。

報告はその後という事で速やかに静粛に行われた。

 

「お前がおってなんで死ななあかんねん」

 

隊葬を終えてから平子隊長に聞かれる。

俺がいるから死者が全くないなんて思わないでほしい。

三席自身の反応が遅れたのも含めてだ。

 

「奇襲にまで対応できるほど俺も万能ではないです」

 

大方、藍染の言い分も聞き流していたかもしれない。

もしくは藍染が隊葬の手筈を整えて報告がなかったのかもな。

市丸に関しては初任務で隊士の死を間近で見たのだ。

責めるのは酷であり、お門違いも甚だしいだろう。

後であいつを慰めてやらないとな。

 

「付け加えるならば、相手は討伐対象外で『最上級大虚』になりかけていた『中級大虚』です」

 

それを聞くと驚きの顔でこっちを見る。

市丸がそれの止めを刺したのもすでに知っているだろう。

個人的には次の三席があいつでもいいんじゃないかと正直思うほどだ。

あいつは確実に隊長になれる器。

平隊士の扱いをするのはあまりに惜しい。

 

「つまり、すでに三席で対応する内容ではなくなっていた」

 

そう言ってこっちから物申したいことがある。

この人に関しては言っておくべきことだ。

 

「監視は役に立っているんですか?」

 

それを言うとバツの悪そうな顔になる。

つまり藍染が悪事を働いていないという事だ。

安心したよ。

 

「あと、市丸の処遇は今回の功績も加味してあげてくださいね」

 

それだけ言って、手を振りながら俺は十番隊隊舎に戻っていった。




破面ではないネリエルたち三人組の登場です。
実力だけならば勝てますがその差を連携で補ってくるので、それなりに厄介という事です。
ギンの三席への道のりが前の三席の戦死によるものが原因という形に変更しました。
原作とは違い、真っ当な理由での抜擢です。

次回はひよ里の時の様に藍染との秘密の場所ができる予定です。

何か指摘などありましたらお願いいたします。
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