隙あらば更木ぶち込みます。
次回もきっとまた日常回ですね。
あの虚の襲撃で三席が死んでから数か月、冬の雪がちらつくころ。
市丸が後続の三席となったとの知らせを聞いて満足した。
干し柿が好きとのことで祝いに差し入れた。
すると予想外だったのか、もごもごとした感じでありがとうと言ってきた。
「まあ、あの年頃はかわいいものだ」
眠六號しかり、阿近しかりな。
しかし、藍染に向けた眼差し。
あれは『憎悪』ともとれる。
あいつがまだ悪事を働いていたころにでも因縁が生まれたか。
「聞き出してみようか」
欠伸をして首を動かす。
コキコキと鳴るが気にしない。
最近、机に向かう事も多かったし。
「あれ、斑鳩さんやん」
散歩中のだんご屋に一人で市丸がいた。
お給金ももらっているみたいだな。
街行く様々な隊士が無礼な奴だと市丸を見る。
「おっ、うまそうだな」
そう言って隣に座りこむ。
同じものを頼む。
来る前にこいつと話をしないとな。
「なんでそんな若さで護廷十三隊に来た?」
こいつは頭が悪いわけではない。
何かしらの目的があるのだろう。
それが何かを探りたい。
「それは死神やったら辛い思いせんでええやん」
確かにそれは言えてる。
流魂街の治安の悪い所からここなら天と地の差がある。
だがそれだけではない。
「そうか、じゃあ……」
本題はここからだ。
はぐらかすのが上手いだろうから単刀直入に聞くか。
「藍染と何か確執があるか?」
そう聞くと僅かに目を開いた。
それに伴って殺気が漏れ出る。
そこに触れるんじゃないというように。
「有ったとしても言う義理があると思わんといて」
そうか。
でもまだまだ子供だな。
顔を変えてもバレている。
確執があるというのは確実に分かった。
「分かったら解決してやれるかもしれないんだけどな」
目を見開いて驚く。
嘘はついていない。
だが毅然とした態度でこちらを見返す。
「そうやったとしても言えへん」
藍染副隊長と仲がええから告げ口されたら僕が危ないやんか。
そう言って立ち上がる。
だが立ち上がった時に女物の髪紐がちらりと見える。
「もうその仕草で何となく察するよ」
それをそそくさと隠す市丸。
足早に去っていって詮索を逃れようとする。
去っていく姿を見てそう呟く。
「まあ、藍染と話が有るから行くわけで」
ギンを瞬く間に追い越していく。
そして、藍染を五番隊の四席に呼んでもらう。
すると、ゆったりとした足運びでこちらに来た。
「何か御用ですか?」
用が有るから来るんだろうが。
また眼の下に隈作ってるぞ。
ギンと平子隊長の板挟みでしんどいのか?
「息抜きがてら付き合えよ」
そう言って俺と藍染は十二番隊の裏手に回った。
大きな木の正体を探った結果、どうも春ではなく冬の季節に咲くもの。
それは雄大な姿のままそこに鎮座していた。
「これは壮観ですね」
桜の木が満開の状態で咲き誇っていた。
『寒桜』という種類の為、本来の季節よりも咲いている。
ひらひらと舞い落ちる花弁すら美しい。
「お前が困った時、辛いときはここに来たらいい」
お前の悩みも苦しみも分かち合ってやる。
お前もため込んでいることが多いだろうからな。
「ここは俺とお前の秘密の場所であり、約束の場所だ」
夜でも昼でも、休憩時ならばここで待っているぞ。
吐き出したい時に来るといい。
「はい」
そのわずかな言葉の中にも力が有った。
互いの信頼はあるのだろう。
背中を任せてくれるし、任せられる。
こいつが十番隊に居ないことが残念だ。
そう思いながら二人でしばらく桜を眺めていた。
.
.
「さ……義骸でも作るか」
あれから次の日。
新しい動きを俺はしていた。
自分に親しい、もしくは近しい人物の義骸の作成。
それを試みる。
男性であれど女性であれど限りなく精巧な内容。
今までの己の全てを注ぐような義骸。
背丈や体重などの採寸が肝となる為、誰かに頼んでみるか。
「夜一様の採寸をしてほしい?」
浦原と近い人物だからな。
二番隊隊舎に赴き、席官である砕蜂に頭を下げる。
なぜそのような真似をするのかと睨まれる。
敬愛するものを辱めるような真似をするのではないか?
そういう警戒感がにじみ出ている。
「精巧な義骸の作成の為だ、健康診断を最近受けたのであれば四番隊の方に向かうよ」
そう言うと四番隊へ行くように勧められる。
押すように隊舎から出された。
悪かったと言ってそのまま去っていく。
「すみません、卯ノ花隊長」
頭を下げて四番隊の隊首室へと招かれる。
健康診断の書類が欲しいと言ったら通してくれた。
複製で隊長格と鬼道衆の大鬼道長と副鬼道長の分をいただいた。
その後にお茶でもどうぞと言われたので向かい合って飲んでいた。
「あの子とは争わないようにしていますか?」
そう聞かれるがこちらからは極力近づかないようにはしていると回答した。
相手が見つけたら来るので近づかない方が明らかに得策です。
頬をかきながらそうですねと言われる。
「しかし、変な注文を技術開発局に頼もうとしてましたね」
大方、俺や卯ノ花隊長と戦えないから自分から枷をはめていくつもりなんでしょう。
そう言うと少し悲しい目をする。
仕方ないな。
「一年に一回ぐらいなら真面目に喧嘩して良いですかね?」
その提案に仕方ないという顔でしぶしぶ頷く。
其れでは……
「今から十番隊戻って支度します」
そう言って去っていく。
もう既に年の瀬。
今ぐらいしかないだろう。
健康診断結果の複製を全て隊首室の引き出しに直す。
「今から十一番隊に行ってくるが隊葬の準備をしておいてくれ」
東仙に伝える。
俺のただ事では無い霊圧に確信を得ているはずだ。
「ご武運を……」
それだけを聞いて十番隊から出る。
瀞霊廷を歩いていると全ての隊士が振り向く。
目当ての存在は十一番隊舎の玄関から出てきた。
「偶然だな」
何が偶然なものか。
遅かれ早かれ見つけていた。
「お前と戦っていいってあの人から許可が出た」
そう言うと顔が笑みの形へと歪む。
待ちわびたというように。
俺が指をさしてついて来いと示す。
「あぁ、どこへなりとも行かせてもらうぜ」
そう言って移動するのは森の中。
瀞霊廷でもろくに立ち入る奴もいないような場所。
そこで静かに刀を抜いた。
「かあっ!!」
振り向きざまに刀を振るう。
解号なしで始解状態にする。
それは予測の範囲だったか一歩踏み込んでくる。
こうなると肉に食い込むから面倒だ。
己の間合いを維持するために前蹴りで突き放しにいく。
「甘いぜ」
足を掴まれて投げられる。
着地をすると顎下から斬撃が迫る。
首を振って避けるが風圧が頬を切り裂く。
「お前もな!!」
そのお返しに突きを放つ。
一点に集中された一撃。
掌で刀を掴もうとするが面積がまるで違う。
「ちっ!!」
流石にそれは無理だったようでそれは掌を貫いていた。
喉笛までは至らないように首を捻っていた。
引き抜いて見合うように構える。
「今回は掴めると思ったが動きに磨きがかかってやがる」
手を開いたり閉じたりして笑みを浮かべながら言ってくる。
随分と嬉しそうだが……
「余裕を出していていいのか?」
それすらも隙だと見て斬りかかる。
悪いがこっちはそれのツボが押されるまで時間がかかるんだよ。
その前に決着をつけておきたいんだ。
「面白味がねえなあ!!」
刀を受け止めて再び踏み込んでくる。
そうかよ。
別に俺は面白いとは思えない。
「勝ちたいんだからな」
砂を蹴り上げて目潰しをする。
其れで一瞬、動きが止まる。
それに乗じて距離を取って手を前に翳す。
「本気の俺はこいつを使う」
詠唱破棄で六連射。
当然やるのは……
「破道の九十一『千手皎天汰炮』」
最大の破道をお見舞いする。
しかしそんな中突っ込んでくる。
意に介さないというように。
「仕方のない野郎だぜ」
そう言って突き進んでくる更木に向かって振り下ろす。
それを受け止めてくるが知ったことではない。
「片手で防げるわけないだろ」
力ずくでこちらが押し込む。
片膝をつきそうになる更木。
やはり片手とはいえ膂力が有るな。
「かあっ!!」
しかし、こちらも手を緩めはしない。
すかさず脇腹を蹴り上げる。
一瞬、その重さからか更木の体が浮く。
「ちっ……」
胸倉をつかんで頭突きを見舞う。
手を離せば、その分距離が遠くなる。
その瞬間に、体を捻って……
「切り裂いてやる!!」
回転切りを見舞う。
すると更木隊長は両手で刀を握り受け止める。
ついに一皮むけたか。
「普段とは違うがいいな、てめえに力負けしねえ」
そう言って踏み込んでくる。
今まで片手だったのにすぐに対応できると思うか?
十合ほど打ち合う必要はあるだろう。
その間に痛手を負わせればいい。
「まだ、楽な気分さ」
刀を打ち付けあって火花が散る。
返しの刀で脳天を狙うがそれも反射的に防がれる。
殺気まみれだったか?
「やっぱり最高だぜ、お前は!!」
笑みを向けてくる姿に戦慄を覚える。
徐々にあの初めて襲撃してきた時に戻り始めている。
無意識のうちに制御していたのか。
頭に血が上る。
「コケにしやがったな!!」
怒りに任せた一振りで刀を弾き飛ばした。
苦い顔をするが甘い。
そのまま前蹴りで蹴り飛ばしてやった。
「脳天を切り裂けばそれで終わりだ、しかし俺の気が済まない」
痛みを極限まで与え続けてやる。
唸りを上げた拳が顔面に当たる感触だ。
返り血が頬に当たる。
「くっ!!」
痛みで拳の勢いが鈍る。
脇腹に刀が刺さっていたのだ。
この野郎が……
「やられるわけねえだろうが!!」
引き抜いてそのまま目の前に立つ。
回道で治すのも惜しい。
さて……
「目の前が煌き始めたか……」
屈辱はあった。
僅かに優勢を取れていたのは己の認識の甘さでしかない。
ここからが本当の戦い。
それが久々に細胞一つ一つに刻まれたものを呼び覚ます。
それは戦いへの歓喜。
あの人との鍛錬で身に着いたもの。
「いくぜ!!」
相手の切り裂く速度に対する反応が変わったのが自分でもわかる。
所詮、俺もあの人やお前と同じ世界の住人。
ただ罪人ではないだけ。
「かっ!!」
受け止める事はしない。
肩口を斬られていく感覚。
それを意に介さずただ突き進む。
「死ね!!」
突きを繰り出す。
それは頬を切り裂く程度に留まる。
でもこれで終わらせはしない。
「耳を貰う!!」
上に斬りあげていく。
その速度よりも速く動いてきた。
その為、髪の毛の一部分しか斬れてはいない。
「喰らいな!!」
脳天を切り裂こうと振り下ろす更木。
悪いがそいつはまともに受けはしない。
一気に体を反らして回転する。
その結果は腕を片方斬り落とされるほどの攻撃を見舞われる事となる。
「しかし無意味」
片腕を掴んで回道で回復させて片手の手術で引っ付ける。
流石に二回も同じ場所に傷をつけられたくはないからな。
しかも同じ相手には特に。
「器用なもんだな」
言ってろ。
煌きは増していくばかり。
表情筋も何年振りか緩み始めてきた。
あのような笑みになるために準備を始めたのだ。
「お前も同じようにしてやる」
そう言って駆けていく。
顔に向かって繰り出される刃を歯で受け止める。
そのまま腕を蹴り上げてそのまま振り抜いた腕を無防備に晒す。
「しゃあ!!」
腕に向かって振り下ろすと、手応えは有れど前に進んでいたこと。
骨が太いこと。
そう言った要素が混ざり合い、斬り落とせはしなかった。
「まだだ!!」
はらわたを切り裂く。
手応えは有れど意気軒高。
ますますやる気になっている。
「こっちの番だ!!」
もう一方の肩に向かって袈裟切りを放ってくる。
それを喰らったまま、足を切り裂く。
負けじと相手も足に突き刺してきた。
またもや血生臭い戦いへとなっていく。
「もう次で終わりにしてやる」
あの笑みを向けながら更木に言う。
すると了承したように笑みを返してきた。
「こちらの言葉だぜ」
そこからの動きは鏡合わせのようだった。
体を捻っていく。
熱の籠った呼気を吐き出す。
殺気を刃に乗せていく。
「こいつで終わりだ!!」
両者同時に斬撃を放つ体勢になる。
首筋を更木が。
「キィエエエエエエッ!!」
脳天を俺が。
互いに殺す一太刀を今まさに繰り出そうとした瞬間。
「いい加減にせんか、わっぱども」
怒りを孕んだ声が響く。
その言葉を最後に意識が無くなった。
二人とも目が覚めたのは数時間後。
『流刃若火』の一撃で疲労困憊だった俺達は気絶。
おまけに火傷も有ったらしい。
溜息をついて三度目の戦いも決着がつかなかったことを思うのであった。
ギンとの関係は悪くはない。
しかし、藍染と親しい分警戒されてしまう。
というより、できるだけ仲良くしたくても藍染を警戒する奴らが多すぎて駄目という。
更木との戦績が三戦やって決着がろくについてないのが多いです。
鬼道を使えば優位なのでしょうが、普通に突っ込んでくるから面倒極まりない。
結局あの笑顔出してしまうので、更木は最高の相手である。
何か指摘などが有りましたらお願いします。