ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

32 / 103
日常回です。
次回ぐらいからこの第一部を終わらせるような話に持っていく予定です。
その次は第二部の現世(原作時間軸)編を始めます。


『手解き - Coach -』

更木との交戦から数日後。

結局『化け物』づくりを着手する事になった。

楽しい戦いがもっとしたいという我侭ゆえだ。

俺と卯ノ花隊長は心に決めざるを得なかった。

いつかその日が来たのならば、この命を懸けてでも本来の奴を取り戻させると。

 

「あの野郎が規格外すぎて何回も作り直しなんだが…」

 

一回目はすぐに壊れた。

とは言っても、どれだけ封じたいのかを明確にしていなかったからだ。

基本的に考えると着脱が楽なものにした方が良い。

そして封じるのではなく……

 

「無限に喰らい続けるなんてことできるか、涅?」

 

困ったという顔で言うとくるりと振り向いてくる。

そして頭を傾けてすぐに答えを出してきた。

 

「ネムに使ったような暴走する器官を組み込めばいいだけだろ、君らしくもないネ」

 

あれでも怖いくらいなんだよな。

無理なら無理で諦めろって言えばいいだけかもしれないが。

そうは問屋が卸さない。

 

「研究者としては一度受け持ったものはこなしたい」

 

そう言って作業に取り掛かる。

『完璧』に興味はない。

『次』が無くなるのは嫌なのだ。

『克服』した『改良』であり続ければいい。

『完璧』にいつまでも届くことの無い苦しみすらも呑み込める。

そういった反発した姿こそが『研究者』である所以だ。

 

「君が考える事を放棄しそうになるくらいとはつくづく馬鹿げているガナ」

 

あいつ一人で並の隊長の数人分の戦力だ。

霊圧も桁外れに多い。

これが自分と同じならいいがそれ以上だろう。

 

「本当のあいつの力なら護廷十三隊の半分は壊滅させられるよ」

 

自分の時でもまだ隠れてる。

本人が命の危機を常に感じるほどのせめぎ合いであれば隠れた部分も解放されるだろう。

 

「まだ、こちらも卍解はしていないがそれでも肌で感じる」

 

自分が五倍から十倍の霊圧の斬撃を放つ。

それならば仕留められるとは思う。

だが思うだけだ。

確証はそこには決してない。

 

「お前も気を付けろよ」

 

むやみに戦う意欲を刺激したら痛い目を見る。

きっとそれは総隊長も例外ではない

特に頭脳面の搦め手なんてあいつにとっても経験がない。

興味を見せたら追い掛け回すだろう。

 

「最悪、俺の名前を出して逃げろ」

 

まだ、そっちの方が確実だ。

逃げ足が速いわけではないからな。

 

「そうさせてもらうヨ」

 

そう言って去っていく。

眠六號の教育だろう。

歪む前に止めているから知識面の伸びだけとなっている。

あいつのは偏っているからな。

 

「まあ、もって数分だろう」

 

その予想通り、蹴り出された。

その主はひよ里さんだ。

相変わらず、解剖などを教えようとしたのだろう。

血生臭い検体でも用意したか。

 

「今日は何をしようとしたんだ?」

 

呆れながら聞く。

すると腹をさすりながら答えてきた。

頬には手形がついている。

 

「生殖についての仕組みを教えようト……」

 

それはかなり繊細な部分だな。

年齢的にはまだ六か七。

速すぎる教育だろう。

 

「時期尚早すぎるぞ」

 

それだけ伝える。

これでも抑えておいたんだがと呟いていた。

あいつは際限を知らないところがあって困る。

自分の世界が確固としてある以上、無理な部分だ。

 

「詰め込み教育は歪みを生む、はやる気持ちも分かるが抑えろ」

 

夢を叶えてしまった以上、その先を熱望する。

だからこそ、一日でも早く力を付けさせたいのだろう。

しかし、その気持ちが無意味な知識や今を妨げる内容となっている。

 

「自衛手段はあるが始解も教えてやらないといけないんだからな」

 

そう言って眠六號の斬魄刀の能力を解析し始めていた。

自分の斬魄刀によく似た霊圧。

それが少なくとも確証を得るきっかけとなるだろう。

 

「君の卍解を知らないんだが……」

 

そう言ってくるマユリに人差し指を唇に当てて返す。

秘密だと言い聞かせるように。

その仕草にクスリと笑う。

 

「言ってくれると思ったがそれは機密という訳か」

 

そりゃあそうだろう。

お前に教えたら全て丸わかりになって駄目だ。

怖すぎて夜も寝られないよ。

 

「まあ、眠六號の奴が解明したらお前ならすぐに想像できるだろう」

 

それだけ言って研究を進めるのであった。

阿近の奴はひよ里さんに怒られていた。

好き嫌いをしているようだ。

 

「賑やかだな」

 

それだけ言って研究を打ち切って去っていく。

そして十番隊に戻って書類の片づけをしていく。

狛村も卍解がしたいという相談が有ったな。

まあ、手ほどきしてやろう。

 

「人材だけはどの隊にも負けない自信があるな」

 

そう言って開けた場所へと一緒に行く。

始解の時点で大きな一撃だった。

もし卍解を開放するとそれ以上なのは確実。

建物の倒壊は逃れられないだろうと判断した。

因みにその時の一撃については、面食らったが霊圧の差が有ったおかげで無傷で済んだ。

 

「良いですか?」

 

伺いを立ててくる狛村。

律儀な男だ。

何も言わず来たらいいのに。

 

「良いよ、来い」

 

刀を抜いて息を吸う。

そしてこちらを見据えて踏み込んで叫ぶ。

 

「轟け『天譴』!!」

 

刀を振り下ろすと同時に巨大な一撃が放たれる。

動きと連携している。

隙が多いのが弱点だな。

 

「受け止めるのはしんどいから……」

 

左右に回避すればいい。

その後は横薙ぎの場合ならば飛び込んでいく。

後ろに下がった方が確実だが、そうではない相手を生み出すのも仕事だ。

 

「はあっ!!」

 

予想通りの横薙ぎ。

動きが基礎に忠実だった東仙とは違って攻撃が基礎に忠実すぎる。

搦め手ぐらいは用意してほしい。

 

「ふんっ!!」

 

直進、刀が触れる刹那。

体を仰向けのまま屈めていく。

背中が地面につくかどうか言うような形。

そしてそのまま体勢を起こす。

 

「なっ!?」

 

予想外の動きに驚く狛村。

こんな程度で驚くなよ。

 

「これくらいの事できるのはまだいるからな」

 

そう言って蹴りを見舞う。

具象化まであと少し。

もう半分出かかっているようなものだ。

 

「もっと心を静かに刀に向けてやってみろ」

 

そう言うと深呼吸をする。

徐々に霊圧が斬魄刀と同調している。

そして肌に打ち付ける威圧感。

 

「しっ!!」

 

斜めに振り下ろす。

それを転がるように回避をする。

しかし腕から上が見えていた。

この調子でいい。

 

「もっと深く意識を潜らせろ」

 

再度、深呼吸をする。

穏やかな清流を思わせる霊圧に変わる。

しかし、それは別の存在へ変質していく。

まるで火山の底。

その場所に溜まる溶岩のようだ。

それが沸々と湧き上がる。

 

「おおおおっ!!」

 

爆発させるような咆哮とともに繰り出された一撃。

それは頑強な鎧を纏った存在。

速度は緩やかだがどれほどの威力なのか。

それを確かめてみる事にする。

 

「ぐあっ!?」

 

想像はしていたが質量が段違いな一撃。

それは予想を超えて俺を大きく吹き飛ばしていく。

五尺ほど飛んでいき、木に叩きつけられて静止した。

 

「威力あるなぁ……」

 

羽織を叩いて戻っていく。

流石に気まずいのか汗を垂らしている。

どうやら感覚は掴めたようだな。

 

「ここから斬魄刀を屈服させれば卍解はお前のものになる」

 

そう言って親指を立ててやる。

このお墨付きに安堵の表情をする。

しかし、さっきの一撃がやはり気になるらしい。

 

「あの、お怪我は……」

 

背中の方も特に問題はない。

喰らってはいるが霊圧の差で耐えられるものになっている。

これが卍解していたら痛がっていただろうが。

 

「あれでやられるほど軟ならお前らの隊長なんて務まらんよ」

 

笑って言ってやる。

不安に感じる必要なんてない。

そう知らしめるためにも。

 

「この恩に報いるためにも、必ずしや卍解を習得いたします」

 

真面目か。

まあ、それは嬉しい限りだ。

精進してくれればそのまま隊長にも推薦しやすい。

 

「いずれ巣立っても問題ないように頑張れ」

 

俺が卯ノ花隊長から巣立っていったように。

ただ、重荷に感じる時があるかもしれない

しかし、そう気負わないように次の世代のお前らが躍動できる下地を作る。

それが今の俺にできる役目だ。

 

「義理堅いお前からすれば巣立つ気はないのだろうが、永遠の強さなんて俺には考えられないからな」

 

狛村はその言葉に衝撃を受けている。

あの方や元柳斎殿がおかしいだけ。

千年近くも強さに大きな下降なしとは恐ろしい。

 

「お前らが師と仰ぐ俺を超えてくれたとき、きっと俺は滂沱の涙を流すだろう」

 

たとえそれが決闘による死の間際でも。

次の世代に渡せる。

役目を果たして逝ける事。

それはなんと幸せな事か。

 

「その時まで生き続けてやる」

 

だから先に死ぬなよ。

それだけ言ってくるりと見回す。

霊圧が二つあるのは分かっている。

 

「分かったか、綱彌代に東仙」

 

そう言ったら二人が現れる。

少し恥ずかしい事を聞いたとでも言うように。

 

「盗み聞きはあまりいい趣味とは言えないな」

 

笑いながら言うと苦笑いで返す。

こういった空気こそが良いものだ。

人材に恵まれていると再認識できる瞬間であった。




狛村さんがきっと『人化の術』が悪い事だと認識しそうな回。
あとはマユリの教育があまりにも早熟すぎるという。
抑え役が居なかったら歪みの塊が生まれてしまうので戦々恐々です。

指摘などありましたらお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。