ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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短い話となっております。
後二話で早足ですが現世編に行かせます。


『悪夢の足音 - Nightmare Tap Dance-』

狛村の鍛錬に付き合い、卍解に目覚めて数年。

浦原が隊長に就任して早九年。

最初の時に比べるとひよ里さんとの仲も良くはなっていた。

しかし、相変わらずのだらしなさのようで世話を焼くらしい。

 

「はあ、羨ましい…」

 

黒いモヤモヤした感覚がある。

どうやらこういったものは『嫉妬』、もしくは『ジェラシー』というらしい。

この数年で西洋の言葉を覚えた。

『ぎやまん』は『ガラス』。

『会議』は『ミーティング』。

『情報』の事は『データ』。

色についても、化合物においても置き換えられた。

初めは戸惑ったが今となっては慣れでこなしやすくなった実感はある。

 

「身長の方は数センチ成長しているな、眠六號」

 

体重も平均的な成長。

10歳になったことで早熟な教育も受け入れる。

そのお陰で身体の構造や薬品についても博識になった。

 

「段々大人になっている気がします」

 

急ぐ必要はないんだぞ。

そう思いながら薬品の整理をする。

すると気配を感じた。

本来ならばあり得るわけの無い霊圧。

 

急いで隊舎へと向かう。

阿近と浦原に謝りながら、ひよ里さんがいる副官室へと真っ先に向かう。

すると何事かとこちらを見てくる。

 

「今から着替える時に一体なんや、せわしない」

 

霊圧を感知するように促す。

訝しんでいたが数瞬したらその意味を理解した。

そして俺と同じように急いで出る。

白衣に着替える事を忘れているのだろう。

服が乱れる。

 

「流石に着替えを整えましょう」

 

顔が赤い状態で言うと、察したのか。

分かったと一言言って副官室に入る。

数分後、身だしなみをきちんと整えてきた。

 

「どっちに行ってる?」

 

十番隊の隊舎の方に向かっていた。

しかし方向を変えてこちらに向かっている。

別に一番隊の方へ向かっているのは四名。

用事は何なのか。

 

「おやおや、二人とも気づいたのかい」

 

鉢合わせてしまった。

やはり気配と霊圧は間違えようがない。

曳舟さんだった。

しかし九年で少しふくよかになった気がする。

霊王の格で行動しているから食いだめみたいにして体力を蓄えているのだろう。

 

「お久し振りです」

 

そう言って頭を下げる。

横にいるひよ里さんもそれに倣う。

 

「まぁ、元気そうな顔見れただけでも良かったよ」

 

そう言ってひよ里さんの頭を撫でる。

これから合流して話すこともあるからさ。

そう言うと一番隊に向かって行く。

 

「一体何やろな?」

 

それは分かりませんよ。

そう言って肩をすくめる。

そして十番隊舎に戻る事を一度技術開発へと戻って片付けてから言う。

 

「来た理由は何だった?」

 

戻った後、東仙に聞く。

すると何かしら五名同時に来たらしい。

その後に元柳斎殿に会いに行くと言って去っていった。

 

「そうか……」

 

まさかとは思うが来たんじゃないだろうな。

来なくていい事柄だというのに。

 

「『全隊長に告ぐ』」

 

一番隊の隊舎に集合とのこと。

全員が何事かと思い、出ていく。

卯ノ花隊長が十一番隊の方に来たのは更木隊長を引っ張る為だろう。

あいつもあの人のいう事は素直に聞くからな。

 

「入れ」

 

入るとそこには九年ぶりに見る零番隊の面々。

相変わらずと言った状態だ。

見た目が変わっているのは曳舟さんぐらいのものだ。

それでも最初は平子隊長も分かっていなかったようだが。

 

「この度は重要な話が有ってここへ来たのだ」

 

兵主部さんが膝を叩いて言ってくる。

そして皆に座るように促す。

座ると一拍置いて口を開く。

 

「十番隊隊長である斑鳩傑を零番隊として迎え入れたい」

 

やはり来てしまったか。

予想が当たってしまい、内心はため息が出る。

名誉な事である。

しかしその先の年齢などを加味した結果、どうあがいても次に待っている結果も想定ができる。

そしてそれこそが藍染を面倒な方向にもっていきかねない可能性。

 

「名誉なことではありますがお断りします」

 

その可能性は全て摘み取る。

決意を持って毅然と断わる言葉を口にする。

その言葉に驚きを隠さない面子。

一番隊隊長と四番隊隊長は流石とも言うべきか。

まあ、一度断わっている相手を知っている世代もいるみたいだが。

 

「刳屋敷剣八も断ったと聞いておりますので、前例がある以上は無理強いはできないでしょう」

 

そう言ったら相手も頷く。

戦闘力での任命。

其れすなわち最後の砦という意味合いだ。

それ以外にもじろりと二枚屋さんが見ている。

俺の行いが筒抜けなのかもしれない。

 

「桐生からの推薦も有ったんだけどなぁ……」

 

頭を掻いて麒麟寺さんが言う。

発明の類も進言されていたのか。

それならば確かに納得できる。

あらゆる意味での『元祖』を担っていると言われても差し支えはない。

 

しかし、あの人からの推薦が有ろうとそれは無理な事。

むしろ断ると分かったうえで持ってきたとしか思えない。

案の定、にやりとした表情だ。

ひよ里さんを取ると分かっていたのだろう。

 

「では今回は諦めよう」

 

そう和尚さんが言って去っていく。

これにて集合したのは解散。

同期のみんなが勿体ないといった顔をしていた。

浦原は生暖かい眼差しで微笑んでいた。

そして卯ノ花隊長も頷いていた。

更木は獰猛な笑みで喜びを表していた。

 

仕事が終わった時、藍染が居るであろう五番隊の隊舎へと向かった。

あいつにだけは伝えなくては。

勘違いで先走らぬように。

 

「なんで来たんや?」

 

平子さんが出てくる。

あいつを呼んでもらうか。

 

「藍染と話したいんだが居ますか?」

 

それを言うと額に掌を置いている。

残念だというような感じだ。

 

「あの話の後、しばらくしてから藍染は出掛けたわ」

 

顔が青ざめてしまったのがわかる。

それは非常に困ったな。

あの話が隊長から聞いた隊士たちの間で噂として出回る前に伝えなければいけないというのに。

一体どこに消えたのだろう。

 

「市丸三席は?」

 

市丸ならば藍染の居場所を聞いているかもしれない。

そう思って呼び掛ける。

しかし返答は無情なものだった。

 

「市丸も一緒に行っておらんで」

 

嫌な予感が背中を伝う。

何故なのだろうか。

その疑問だけが頭の中に渦巻いていく。

すぐにあいつを見つけ出さなければいけない。

そうしないと幸せが終わってしまう。

そんな気がして仕方ないのだった。




零番隊の勧誘は断れるのが小説版で分かっているので使いました。
よく考えたら
『最速で虚化の構造を解明、滅却師との関連性を見抜く』
『崩玉を藍染に次ぐ速さで作成(のちに破棄)』 『眠計画を共同で行う』 
『義魂を開発(大衆に行き渡らないから曳舟式が採用)』 『偽造斬魄刀の鋳造』
この功績だけ見たら戦闘力以外も化け物じみてた件。

指摘などありましたらお願いします。

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