ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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次回で第1部の「100年前」編終わりです。
現世編は横文字をバンバン使えるので多少はやりやすいかもしれないです。


『すれ違う心 - Pass By Mind -』

「どこ行きやがった……」

 

探してはいるが一向に見つかる気配がない。

霊圧感知から外れているのも有るのだろう。

実際本人を見たものはいない。

 

「ひよ里さんにも聞くか」

 

どうやら指輪の効果のおかげで『鏡花水月』からは逃れている。

因みに狛村も手甲に加工したものを忍ばせる形で予防済みだ。

 

「あいつはたぶん流魂街のはずれかもな」

 

団子を食いながら言う。

遠目で見ていたが魂魄の消失事件では明らかに藍染ではないやつだった。

其れなのに浦原は気づいていないらしい。

つまりは喰らった側だ。

マユリはそうあるように振舞った。

体の改造ですでに対策済みなのだ。

当然眠六號も例外ではない。

 

「シンジのアホも気づいとらんで」

 

それを聞いて溜息しか出ない。

あれだけ言ってきたのに、最後に無警戒。

最初から最後まで呆れた。

 

「緊急警報、緊急警報!!」

 

虚の出現が響き渡る。

九番隊が今は出ていっている状態。

こっちも藍染の捜索を行わないとな。

霊圧を感じ取れないように隠すとは味な真似をしてくれる。

 

「居ない……」

 

それから駆けずり回って瀞霊廷を調べた。

夜に差し掛かろうという所で一度捜索は取りやめる。

どたばたとした感じになっている。

九番隊の奴が助っ人を求めているようだ。

 

ひよ里さんがいる十二番隊へ向かっている。

浦原が出てもいい問題だ。

 

「準備はしておくか……」

 

胸騒ぎがしている。

すぐに今からでも行かないといけない。

何故に九番隊が助けを求めたのかを真剣に考える。

もしかしたら十名の先遣隊も被害にあったのかもしれない。

 

「えっ……!?」

 

遠い距離とはいえど拳西さんの霊圧が一瞬とはいえ消えた。

久南さんも同様。

途轍もない状況なのは百も承知、

すぐさま十二番隊の隊舎に赴く。

 

「ひよ里さんは!?」

 

眠六號が出てきたので食い気味に聞く。

浦原が居るので行ったのは自動的にひよ里さんと分かる。

何事かと顔を向ける隊士もいるが問題ではない。

 

「行ってしまいました」

 

それを聞いた瞬間飛んでいく。

今の俺はきっと誰も止められはしない。

もし居るのならば、それは『瞬神』四楓院夜一ただ一人。

 

霊圧が乱れる。

消えていた霊圧と思えば爆発的に上がったのだ。

そこには今まで実験で感じたことがない霊圧が有った。

これこそが虚と死神の混在する形。

それを確信してさらに速度を上げる。

 

「なんてことを……」

 

数瞬したら辿り着く。

この状況を見て呟く。

ひよ里さんが戦っていた。

虚化した拳西さんとだ。

傷はまだついていない。

その事実に一瞬安堵する。

 

「なぜ貴方がここに……!?」

 

驚いた顔で言ってくる藍染。

やっぱりこいつ、俺が零番隊に行くものとばかり思っていやがったな。

相当焦っていたのか、俺に聞く事もしないでこんな騒動を引き起こしやがった。

 

「藍染……俺は断ったんだぞ」

 

刀を抜いて止めるために動く。

ひよ里さんはまだ怪我を負っていない。

虚化する事は無いだろう。

 

「えっ……」

 

やはり、何かしら早とちりをしたな。

こいつの性格上、盗み聞きならば最後まで聞いているからその線はない。

だから誰かから伝えられて不安になったのだ。

 

「零番隊になるという事に興味がないのは分かっていたはずだ」

 

その後で待っている己の運命。

それを考えたら全然得にもなりはしない。

そしてお前にこんな行動をさせないために決断はしなかった。

 

「分からんわけやない……」

 

ひよ里さんが藍染に言う。

唯一、上司が零番隊に行った人。

そんな人だから藍染の気持ちが理解ができる。

 

「オオオオ!!」

 

そう言ったひよ里さんに拳を振るう拳西さん。

それに対して蹴りを入れて飛ばしていく。

俺の後ろに迫る久南さんの攻撃を刀で受け止める。

 

「虚化して膂力とかは上がっているが知能の立ち回りが無くて駄目だな」

 

獣相手にしているのと変わらない。

それも言い方は悪いが最上ではない。

更木ぐらいならば本能のままでも問題ないが。

 

「ウチもお前の気持ちに近い状態になりそうやった」

 

あいつが止めてくれて感謝はある。

信じているお前ならもっと楽に止まることもできる。

こいつの事を今でも信頼してるやろ?

 

「無論信頼は揺らいでいません…」

 

過ちは濯ぐことができる。

それをできるほどの頭脳の持ち主はいる。

俺や浦原、マユリの三名。

そして……

 

「お前の頭なら戻せるはずや」

 

藍染自身も分かっているはずだ。

やからアホな真似はやめろ。

そういって手を差し出す。

その手を藍染はおずおずとしながら取ろうとしていた。

俺はそれに頷いている。

この問題は解決する。

 

「下らないこと吹き込むな」

 

そう思っていた矢先の出来事だった。

後ろからひよ里さんを切り裂く男がいた。

油断はあったかもしれない。

悔やんでも悔やみきれない感情が押し寄せる。

 

「まだ……居たんか」

 

倒れ伏していくひよ里さん。

受け止めて抱え込む。

そいつを睨むとそこにはよく見知った顔だった。

何故ならば俺が後釜に任命した隊士だったのだから。

 

「私の指示から外れてしまうとは……」

 

俯きながら言ってくる藍染。

俺かひよ里さんあたりから断ったという話を聞けばすぐにでも止まれた。

そしてすぐに行動をやめさえすれば拳西さんと久南さん。

ひよ里さんの三名に危害を加えずに済んだのだから。

それ以上に独断専行する奴らが多かったのだろう。

 

「なっ!?」

 

愛川さんが到着していた。

俺がひよ里さんを抱えているところから危ないのは悟っている。

 

「くっ!!」

 

虚化した拳西さんが攻撃をしてくる。

それを体に当たらないように回避する。

『虚閃』は鬼道で相殺。

もし一撃でもくらえば、もれなく仲間入りだ。

 

「くっ!!」

 

光線で愛川さんがやられた。

鳳橋さんが虚化した久南さんに蹴られて飛んでいく。

刀を振ってくる席官は平子さんが蹴散らす。

 

「埒があかない」

 

抱えたままの状態で刀を振ってもそれほど馴染めない。

峰打ちとはいかないが雑多な奴らの足止めをする。

 

「うぅ……」

 

ひよ里さんがびくりと体を震わせる。

来てしまったか……。

分かってはいたが悲しい。

抱えていた腕から降ろす。

 

「……アアアア!!!」

 

虚化したひよ里さんが斬りかかってくる。

それを受け止める。

手を蹴り飛ばして距離を取る。

刀を遠ざけるのが一番重要だ。

 

「む……」

 

避ける最中に何かに躓いた。

その正体は虚化しそうになっている平子隊長を除いた隊長格だった。

切り付けた相手の中には三席や五席もいる。

流石にこのまま相手してはいられない。

その為、少し縛道を使わせてもらう。

 

「縛道の九十九『禁』」

 

最大の縛道を使い、六人纏めて留める。

霊圧の差で動けない。

これで問題はない。

 

「どういう状況っすか……これ」

 

浦原も驚いている。

そんな顔はどうでもいいから好転させる策を今すぐ思いつけ。

こっちは怒りで頭がぐつぐつと煮えているんだ。

 

「あんたも同じようにしてやる」

 

ニヤニヤとしながら近づいてくる隊士。

その顔を見ると怒りが臨界点を超える。

ただただ同意しただけで重大さに気づかない最低な奴ら。

大方、藍染が責任を取るとでも思っていたのだろう。

 

「待……」

 

藍染が止めるが聞いてはいない。

不意打ちで隊長格を虚化させて舞い上がっているのがわかる。

俺の心を読まないで愚か極まりない。

そんな奴らに言うのはたった一言。

 

「死ね」

 

無情な死刑宣告。

修羅の如く、切り刻む。

首筋に一閃で一人。

唐竹割りでさらに一人。

胴から上下に分かれる様に切り裂いて三人目。

 

「ひっ……」

 

突きを放ってくるが無意味。

刀が体に触れる前に俺の突きが放たれる。

衝突した結果、相手の斬魄刀が砕けてしまう。

五席から八席の席官数名が成すすべなくやられる。

 

「この程度であの人を切り裂いたのかぁ!!」

 

逆鱗に触れた奴らに容赦なき制裁を。

気づいた時には虚化したみんな、ギンと藍染、浦原と握菱以外は倒れ伏していた。

返り血を浴びた俺を見て冷や汗をかいている。

 

「私は……もう止まれない……」

 

青ざめた顔で藍染は去っていく。

あの予想外が重なった反応から、やはり誰かがお前をそそのかしたのだろう。

俺が現れた時、明らかに動揺していたからな。

追いかけるのもあるがひよ里さん達の方が今は重要だ。

 

「運ぶぞ」

 

そういうが浦原は首を振る。

もうそんなに時間がないのか。

しかしこれを打開する策なんて禁術ぐらいではないのか?

そう思っていると禁術を使って空間転移と時間停止を行っていた。

何かしら思惑が有ったのか、俺を蚊帳の外にして。

その後、瀞霊廷へ戻った。

霊圧の変動から察するに、治療を必死に施してはいたが無理だったのだろう。

十二番隊の隊舎に向かう途中で、捕縛されて連行されていくのを見てしまう。

俺は必死に浦原を庇おうと四十六室へと向かうのであった。




藍染は斑鳩が居なくなるのではと唆されたことによる焦燥から、歯車を狂わせてしまったという感じです。
ひよ里は曳舟さんが去るという経験をしているので説得を試みようとしましたが、空気読めないやつがやらかした模様。
この場合は実行した藍染が悪なのか、唆した相手が悪なのかという感じですね。
理不尽なこと言いだしたら零番隊から招集受けるほど功績と強さを持った斑鳩かもしれませんが。

何かしらの指摘などありましたらお願いします。

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