次回からは原作時間軸の死神代行編から第2部を始めます。
「判決は待っていただきたい」
あれから大急ぎで四十六室へ向かう。
丁度裁判の途中だったようだ。
当然のように騒然とする。
「君のような男がここに来るな」
そう言って追い出そうとする。
しかし霊圧の差で弾かれる。
同席を図々しくもさせてもらった。
「今回の被害者及び虚化した隊長格は『処分』とする」
その言葉を聞いた瞬間、血の気が引いた。
被害者というならば寄り添うのが一つの手段だ。
それを普通に見捨てていこうとする判断。
「彼ら、もしくは彼女らの処分はいささか早計ではないですか」
浦原が顔を変えてこっちを見る。
四十六室への反論など前代未聞。
しかしだからと言って唯々諾々としてはいけない。
「被害が出るかもしれない、それに感染系統であればどう責任を取るのだね?」
被害については『蛆虫の巣』や牢屋がそれこそある。
そして感染かどうかなど判明もしていない。
むしろ全くそれらに対して調査もせずに殺そうとしている。
それが気に食わない。
「調査結果が出ても遅くはない、浦原の追放を行ってしまうと被害者の治療が可能である希望が失せる」
それに対して面倒そうな顔をこちらへ向ける。
嫌な確信を得た。
こいつらにとっては『どうでもいい』のだ。
治療とかそういったものではなく、単純に放棄をしておけばいい。
自分たちの生活圏が侵されなければいいのだから。
「治療がどうというよりも危険であり、ほかの隊士にどう説明する?」
相手がそう言っていると元柳斎殿と京楽隊長と更木隊長が来ていた。
俺を止められるようにという保険だろう。
用意周到な事だ。
「全員が攻撃を受けての発症であるというのは聞いていませんか、そして長い目で見たら治療は不可能ではない」
処分をするには惜しい。
貢献をどれほどしてきたのか。
合計八名の隊長格を失わせようなんて馬鹿げている。
「くどいぞ、隊長如きが」
しかし反論もなく冷たい言葉で打ち切られる。
そう言って全員処分の意向を言う。
その瞬間、こちらの怒りは臨界点を超えた。
ろくな調査もせず、危険の及ばないところで騒ぐ無能ども。
隊長如きよりこいつらが本当に偉いのか?
ただの老害にほかならないのではないか?
こいつらが我々護廷十三隊にとっては蝕む病原菌ではないのか?
「……そうか」
そして心の中で結論を出す。
実力行使しかもはやない。
平行線をたどる話し合いなど意味のないものだ。
こいつらは居ても居なくても何の意味もない。
鯉口を切り呼吸をする。
「やめんか!!」
今にも飛びかかろうとする俺を元柳斎殿が押さえつける。
さらにそこに更木が加わる徹底ぶり。
ふざけるな。
こんなもの受け入れられるか。
「逆らっちゃ駄目だってわからないの?」
京楽隊長が言ってくる。
自分の副官が斬られるような判断をくだされたというのに……。
歯軋りをしながら睨み付ける。
「悔しくはないのですか!!」
押さえつけられた状態で叫ぶ。
元柳斎殿と更木。
その二人を背負うかのごとく立ち上がろうとする。
「この野郎……!!」
更木が驚く。
力を振り絞って振りほどく。
刀を抜いた元柳斎殿が目の前に立ちはだかる。
「何のつもりですか?」
刀をこちらも抜いて睨み付ける。
四十六室に仇をなすなとでも?
こいつらに如何ほどの価値があるというのか。
「正義の二文字の為、止めねばならぬ」
神妙な面持ち。
しかしどこか悲しげに。
痛いほどお前の気持ちはわかると語り掛けるように。
「このような不当な内容で……正義とは何なのですか!!」
状況を全く分かっていない。
どんな事情がみんなに有ったかもわかっていない。
知ろうともしない。
こいつらはただ権力で成り立っているだけのでくの坊だ。
「お主一人が今思う世界を揺るがすような正義は悪にも等しいのじゃ」
許せ。
そう思いながら刀を振ってくる。
しかし殺せる一太刀。
俺はそれすらも今は冷静に見れてはいない。
「その刀の動きは『知ってる』」
だが知識が刀を受け止めさせる。
そのまま前蹴りで突き放す。
喉元を突き、そのまま裂いてやる。
その後にはこいつらを全て殺してくれる。
「お止めなさい」
体を動かして浦原が俺の前に立つ。
刀が手錠に刺さる。
そのまま地面に突き立てるように軌道を変える。
「気持ちは分かるッスよ」
でもそれをした貴方がどうなる。
今、大きな事態を混乱にさらに陥れてはならない。
壊れた手錠が地面に落ちていく。
「逃がさせてもらうッス」
いつの間にか来ていた『瞬神』四楓院夜一と共に去っていく。
握菱を担ぐ形でその速度では追う事もままならない。
俺が追いかける形となる。
こうなれば目的は四十六室への恨みを晴らす事ではない。
「『掴趾追雀』」
居場所を補足するが技術開発局に立ち寄る。
必要なものを全て抱えていく。
全員分の義骸。
今まで研究を進めたことによる『魂魄自殺』に対した特効薬。
『霊子体』を持たない義骸の試作品。
それらを袋に詰めて最速で浦原の元へと向かう。
「追いかけてきおったか」
四楓院隊長がこちらを向く。
しかし敵意の無さに警戒を解いた。
そしてこちらの抱えるものを見て頷く。
「頼むぞ」
俺が居なくなるのでは藍染の行動は本末転倒。
挙句の果てに能力の餌食だ。
あいつのいいようにされる危険性も有るだろう。
罪悪感であいつの動きも縛られる。
そういう所を予測して浦原も止めたのだろう。
「貴方はこれからどうするんですか?」
できる事ならばついてやりたい。
傍に居てあげたい。
でもそれをしては駄目になる。
設備も今の技術開発局にある。
そこで義骸の改良に努めてお前の研究に進歩を与えられる立場であり続ける。
「あの人を陰から支え続ける」
傍に居たい心さえ押し殺して。
これから先の生き方で、糧となり続ける道。
「……分かりました、お元気で」
そう言って去っていった。
捕縛ができなかったと言ってそのまま今日の事は終わる。
処分を与えようとしたみたいだが不問となった。
俺もまた浦原の犠牲者であるという事。
今までの貢献と零番隊の口添え。
それが原因である。
まあ、やろうとしたら本当に元柳斎殿と更木と卯ノ花隊長の三人が出てこないといけない。
「すまないな」
俺は頭を下げていた。
なぜならば十番隊隊長をやめるからだ。
あの人の居場所を守り抜く。
その為には今の地位では意味がない。
後任は綱彌代である。
「さて……と」
十二番隊の隊舎に来た。
マユリの隊長就任に対して副隊長になる旨を伝える。
二つ返事で良しと言ってくれた。
ありがとうと礼を言うと悪い笑顔を浮かべていた。
弱みを握ったとでも思っているのだろうか?
「世話になる」
それだけ告げると自分の思い出のあばら家に機材全てを持ち込む。
義骸を毎年あの『地下』に置く。
そこから門を開けば浦原の奴が回収できるだろう。
重要なのは全員分のものを用意して決して不具合が出ない状態を維持し続ける事だ。
それから百年……
現世に『ガーベラ』の花束を持ち、誕生日にありとあらゆる場所をさまよい続けた。
しかし旅禍の少年と出会うその年まで……
自分とあの人が出会う事は二度となかった。
決断としては『十二番隊副隊長となって、ひよ里の復帰までその場所を守り抜く』でした。
自分が現世に同行すると藍染からすると本末転倒。
そして残った方が更生させられる可能性があると踏んでいます。
設備や機材はこちらの方が充実しており、今後支援していく為の苦渋の決断です。
指摘などありましたらお願いします。