チート臭いかもしれませんが明確な弱点はあるという事で一つ。
「むっ?」
速度が上がった。
そう相手は思っているはずだ。
しかし……
「もう後ろにいるぞ」
頭を掴む。
それに気づき振り向くが遅い。
蹴りを入れて相手との距離を取る。
「私より速いのか?」
冷静に分析にしている。
そっちより速いとは思いませんよ。
「言ったはずですよ、本気だってね」
こっちが薙刀を振るう。
此方の本気の実力を詳らかにすること。
そしてこの違和感を掴むこと。
それが最優先だと思いますよ。
「むっ……」
刀で受け止めて距離を維持。
此方に主導権を渡すまいと動いている。
「これは仕方あるまい」
口に手を当てる。
そして大きな声でしゃべり始める。
「『こちら六番隊隊長、
ここで名前が分かる。
なるほど朽木さんのお兄さんか。
じゃあ、この状況は連れ戻そうとしているのか。
……でも修羅場だったからいい感じではないよな。
「『私の限定解除の許可を』」
黒崎の方は後でなんとかする。
そう言いたげだな。
「『そうか、三分かかるのか、分かった頼む』」
それだけ言うと顔をこちらへ向けて再度刀を振る。
受け止めた最中に黒崎の霊圧の上昇を感じ取る。
なんだ、この上昇の幅は!?
風のように押し寄せているじゃないか。
「俺はお前に負ける気がしねぇ!!」
そう言って阿散井さんを追い詰める黒崎。
だがそこに白哉さんが動く。
刀を腕力でへし折るという離れ業。
「なっ!?」
速度が有ったし確認は出来ていた。
しかしそれ以上に驚いたのは細腕の中にあった腕力。
黒崎も唖然として動けていない。
「
あっという間の連撃で貫かれる。
どうやら死神の危うい部分を狙われたようだ。
まだこの人たちの抑えた速度にも劣るとは『死神』でも駆け出しか。
潜在能力はいい線には行くが、まだまだなのだろう。
立ち上がろうとする黒崎をあえて朽木さんが冷たい言葉で突き放す。
命にかかわるからこそだろう。
しかしまだ全ては終えていない。
「さ……行くぞ」
本気の白哉さん。
段違いの速度で襲い掛かってくる。
それを回避するが風圧が押し寄せてくるほどだ。
「反応はできるが危ういぜ」
相手の刀を受け流して脛を狙う。
それに気づき後ろへ下がる。
その瞬間に深く踏み込んで突きを繰り出した。
「残念だったな」
その一撃を受け止めて距離を詰めてくる。
しかしこれならば……
「避けてられる」
此方が一撃をかわして奇策を用いる。
これで一泡吹かせてやれる。
「ふんっ!!」
地面に突き刺してそれを軸に蹴りを放つ。
読めなかったのか腹に喰らって後退をする。
「ぐっ…」
膝をついた相手に石突での一撃を喰らわせる。
顎を跳ね上げられた白哉さんはこちらに指を向ける。
「『白雷』」
それを避けるが後ろのブロック塀が崩れた。
なんて威力なんだよ。
「なるほど、兄の実力とその薙刀の力について把握した」
そう言って刀を振り心を整える。
視線が常にこちらに向いている以上、こちらも相手をよく見ていないといけない。
「実力は恋次と同等ほどと見た、その若さで大したものだと感心しよう」
まず、阿散井さんの実力が高いのは把握できた。
其れと同格というのもかなり嬉しい。
練磨の甲斐が有ったというもの。
「次にその薙刀だが特筆すべきは……こちらの実力を三分の一にするという事だ」
体の違和感からそこまで見抜いたか。
まだこちらの実力だと勘違いしてくれていたら焦燥感を煽れただろうに。
「ご名答です」
俺の能力は自分の実力を三倍にするのではなく相手に本来の実力の三倍を要求する能力。
しかし条件がある。
それは単純に『刃がついた武器を手に持っているかどうか』。
投げたりしたら解除されるのである。
「つまり鬼道でやれば勝ち筋は十分にあるという事だ」
そうは言うがどうする?
刀を鞘に収めないと意味がない。
そこまでは把握できてないはずだ。
「だが使わぬ、兄には敬意を表してやる」
そう言って霊圧を引き上げる。
息を吸い、呟く声が聞こえる。
「『散れ』」
その言葉を聞いた瞬間、朽木さんが青ざめる。
此方に視線を向けていた。
必死ともとれるものだ、逃げてほしいのだろう。
「『
その瞬間、目に煌いたのは花弁のような刀。
確かに刀身の無いものであれば効果的に攻撃が可能だ。
「でも、それで怯むとでも思ったか!!」
一気に駆け抜ける。
完全に無作為であればまだしも、こういうものは操作をしているはず。
ならば傷つかない安全地帯が存在している。
「見抜いてきたか……」
前に進む間に皮膚が斬られているのは分かる。
血も流れているし、痛みが駆け抜ける事を拒絶していこうとする。
しかしあの場で棒立ちになる事を考えれば浅いだろう。
「喰らえ!!」
花弁を操作するが間に合っていない。
貫いた感覚。
その防御が解けた時に肩を貫かれた姿で立っていた。
「血にまみれようと攻撃してくるか」
今の一撃の引換に喰らったのは軽くはない。
肉を斬らせてもそれよりわずかに多いかどうか。
「しかし見抜かれた以上、若さによる成長を加味すればのうのうとしておれぬ」
目を細めて刀を持つ。
その眼を見た朽木さんは青ざめたまま目を見開いて恐怖に満ちた顔になっている。
阿散井さんも冷や汗をかいていた。
「誇るが良い、この私の『卍解』を見る事を」
そう言うと地面に溶けるように刀が消えた。
そして景色さえも変わる。
この間に黒崎は石田が運んでいった。
まぁ、流れ弾が来る可能性があるからな。
「『卍解』、『
巨大な刀身に囲まれている。
だがそれ以上に舞う刃の量が段違いだ。
その威容に体が竦む。
「はあっ!!」
それを弾き返して刀を振る。
その一撃に対して動かない。
花弁の盾が何倍もの量で押し返す。
「覚悟せよ」
視界が覆われる。
真っ白な景色になってしまった。
天ももはや見えない。
「終りだ、『
その言葉を皮切りに一斉に刀が降り注ぐ。
薙刀を回して前に進み続ける。
背中をいくら切り刻まれようとも。
「うおおおお!!」
刀の雨霰が止んだ時。
相手は背を向けていた。
その姿に腹立たしさを感じた。
「待……て」
朽木さんもついて行っていた。
俺の声に振り向く。
それに対して踏み出そうとする。
しかし……
「えっ?」
倒れ込んで体が動く事は無かった。
目の前で朽木さんが連れていかれるのを見届ける事しかできなかった。
能力のおかげで副隊長は基本、卍解ができないと負け。
もしくは『刀』じゃない始解でなんとかしないといけない。
例で言うと大前田の奴とか、乱菊の『灰猫』です。
指摘などありましたらお願いします。