ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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今回は門番とかのさわりです。
次回からはちょっと原作部分を省いて侵入をスムーズにできるようにしていきます。


『殿 - Bottom -』

『地獄蝶』のおかげで目的地には最短で到着した。

しかし、雰囲気の違いに辟易する。

もっと殺伐としたところだと思っていたがワイワイとした街並みだ。

 

「まぁ、こっちの知り合いは一人も居ないか……」

 

少しだけ、寂寥感が押し寄せる。

気にしなくてもいいのだろうが。

雑念を消さないと白哉さんと同じように、上に立つであろう死神との戦いで不覚を取るだろう。

 

「とりあえずはどこに?」

 

夜一さんに聞く前に黒崎が突っ込む。

そこに夜一さんが止めながら話してくれる。

単純に『瀞霊廷』の門番を打倒して入るというもの。

しかしリスクは伴う。

相手もそれ相応の実力も有るし、長引けば誰かが駆けつける。

其れで隊長が来たら本末転倒というものだ。

 

「俺が出て短期決戦という手も有りますが……」

 

そう言うと黒崎でやるという。

今回は黒崎の願いによって侵入しようとしている。

ならば先陣を切ったりする役目を引き受けるべきというわけだ。

 

「あいつが勝ったらなだれ込むか、相手の出方を少し伺うかですね」

 

いや、戦わずとも隊長格にコネクションが有れば問題なく入れる。

そいつに心当たりがあるからそれを使う予定だったようだ。

 

「もう遅いですけどね」

 

門が落ちてくる。

もしくはそういう術式か。

そこには巨漢がいた。

 

「あれが門番ですか?」

 

そう言うと夜一さんが頷く。

なんと三百年は通していないという男。

かなりの膂力が有るようだ。

 

黒崎との勝負のようだが一人ずつという話。

斧を振り下ろして岩の壁を作り上げてきた。

地獄耳のせいで策を立てられない。

 

「黒崎、斧をこっちに弾き飛ばせ!!」

 

策というよりは向こうの『武器使い』としてのプライドを刺激させる。

『武器使い』が自分の得意な武器を無くしたら戦う意欲は削がれるだろう。

 

「そんな繊細な事できねぇよ!!」

 

返答に溜息をつく。

相当威力の制御とかできないんだな。

相手には悪いが斧は壊れてしまうだろう。

 

「まぁ、予想通りだな」

 

数分のやり取りの後、刀の一撃で二個の斧を粉砕する。

相手は泣き始めた。

愛着のある物が壊れてしまったのだろう。

気持ちは非常にわかる。

 

「……順調にはいかないぞ」

 

門の向こうから戦いの間、動いていない気配が一つ。

門番が開けようとしている間に動く。

持ち上げきって固まる。

 

「やっぱりな!!」

 

門番の肩を斬り落とそうとする刀を受け止める。

斬り落とされてはいないがかなり危なかった。

速度が異様だ。

確実に白哉さんよりも速い。

 

「あらぁ、止められてしもたわ」

 

飄々とした顔だ。

門番の顔を見ると青ざめてすらいる。

この瞬間に悟ってしまった。

 

「あんたも隊長ってわけか」

 

薙刀を構えて相手を見据える。

その瞬間、刀を見失った。

 

「えっ!?」

 

素っ頓狂な声をあげると同時に黒崎と門番が吹き飛ばされる。

門番は肩を深々と斬られている。

黒崎は受け止めたが力づくで押し込んだようにも見受けられた。

突きの速度以外もとんでもないな。

 

「君、逃げ遅れたねぇ」

 

口元が歪んでいる。

笑みを見て威嚇の意味がある事を思い出した。

壁に視線を向けるとどうやら跳躍して越えられる高さ。

しかし隙を見つけるのもしんどい相手だろう。

 

「名前は?」

 

名前を聞いておかないとな。

自分を殺すような相手の名前を知ってから旅立ちたいからよ。

 

「護廷十三隊所属で三番隊隊長の市丸ギンや、よろしゅうな」

 

今まで見てきた中でも最速の突きが襲い掛かってくる。

肩口に触れた瞬間、体を捻って致命傷を避ける。

 

「剣道三倍段の枷」

 

此方も解放をして相対する。

三分の一の速度の突きになるのであれば回避も可能だ。

 

「へぇ……」

 

自分の体への違和感を解析でもしているのか。

うっすらとした笑顔を浮かべてこっちを見る。

 

「面白い事するやないの」

 

そう言った瞬間、突きの連打が襲い掛かる。

伸縮しているのだがその速度が段違い。

三分の一といっても油断や瞬きなど厳禁。

 

「はあっ!!」

 

全てを打ち払ってそのまま接近。

石突で攻撃を放つ。

 

「これは喰らったら危ない奴や」

 

ひょいと避けられる。

しかし間合いはこちらのものではある。

蹴りを腹部にめり込ませる。

 

「残念やねぇ」

 

後ろに下がったことで軽減された。

本来は間合いの優位が有るんだけど、この人相手にはない。

やりづらいなと思ってしまう。

 

「撤退した方が良いな」

 

そう言って懐に手を突っ込む。

何も無策で来ていない。

薙刀が通用しなかった場合の撤退方法も準備した。

 

「はっ!!」

 

片手で薙ぐように振るう。

それを余裕綽々でかわした次の瞬間。

 

「喰らえ!!」

 

目の前で煙玉とねずみ花火を見舞う。

そのわずかな硬直を逃すわけにはいかない。

相手のあの刃の速度を加味したら、全然余裕はない。

 

「間に合え!!」

 

地面に突き刺して、そのまま薙刀を棒高跳びの要領で使用する。

頑丈で壊れない、しなってその勢いのまま壁を飛び越える。

だが相手もそんな事はお見通し。

 

「そこや!!」

 

霊圧を察知して放ってくる突き。

その狙いは心臓。

それを体を捻って回避する。

速度に反応できた自分をほめてやりたい。

 

「がっ!!」

 

一本の線が横切る形で体に当たり、深い傷を負う。

血が雨のように落ちていく。

しかし、体は流魂街に傾いている。

 

「ぐはっ!!」

 

地面で受け身を取ったが衝撃が突き抜ける。

大きな怪我は負ったものの命は手に入れた。

ただ、門から遠ざかったところの為、そこそこ距離がある。

血を流しながら黒崎たちの霊圧が有る場所へ向かっていった。

 

.

.

 

「外出てまではやられへんなぁ……」

 

煙玉を用意してたとは思わなかった。

まぁ、侵入する以上は用意周到にしておくのが常套手段。

それに対して警戒してなかった此方の落ち度。

 

「総隊長に聞かれたら答えなあかんわ、困った困った」

 

額に手を置いて残念だと言って門から去っていく。

あの子らやったらもしかしたら、波乱を巻き起こせるかもしれない。

そんな淡い期待を内心に隠しながら平静を保っていた。

 

「おい、市丸」

 

斑鳩さんが声をかけてきはった。

百年前のあの日から黒い外套を被るようになった。

どうやらあれから体が冷え切ってしまったらしく常に寒いとか。

昔とは違う、少しかすれたような声。

ただし、じろりと見た瞬間睨んできた。

 

「お前…交戦したな」

 

旅禍を捕縛せんかったのがばれてしもうたいう事や。

それに頷くと微笑んでいる。

 

「目的は朽木ルキアの奪還だろう」

 

正面突破もだめなんだから経路はもう地下か上空しかないだろうな。

それだけいって手を振り、去っていった。

どこかに立ち寄る予定みたいだが……

 

「こっちも見てるところ考えたらこの門くぐりたいみたいな感じやなぁ」

 

相変わらず、あの人は何を考えてはるんや。

頭を掻きながら三番隊の隊舎に戻っていった。

 

.

.

 

「行け、海燕」

 

そう言って市丸が陣取っていた門を開ける。

自宅謹慎という名目で送り込む。

志波都三席には話を通している。

 

俺はそれに付き添う形で一緒に出た。

此方も『見回り』という理由を付けた。

出た先には門番の肩が半分斬り落とされそうなところで治療を施している女の子がいた。

 

「おい、お嬢ちゃん」

 

どいてくれ。

そう言うと驚いて離れる。

治療をしていたみたいだが、よく観察するとこの力は別物だろう。

 

「なんで、あんたが……」

 

重傷なんだから黙っていろ。

舌を噛んでしまう事になるぞ。

 

「すぐに終わる」

 

そう言って『回道』で腕を治す。

つなげられるように手術の糸と薬品を取り出す。

そこからは速度の勝負だった。

 

「凄い……」

 

見ていたお嬢ちゃんが驚いている。

こんなもの、朝飯前だ。

瞬く間に腕の出血を止めてつなげる。

その後に傷を塞ぐ事で見た目には何の問題もない元通りになった。

 

「血は失ったから、しばらくは安静にしておけ」

 

あと……

俺はお嬢ちゃんを指さす。

霊圧を探るとまだいるようだな。

 

「こいつらを助けてやってほしい」

 

その言葉に頷く。

いい面構えだな、信頼できる。

 

「じゃあ、後は上手くな」

 

そう言って海燕を送り出した。

俺は俺で朽木ルキアの牢獄へと向かって行くことにした。




第二部主人公の戦闘が雑魚虚を除いたら
恋次(限定有り)、白哉(限定なし)、ギン(限定なし)というえげつなさ。
まあ、ギンに関しては門番庇わなきゃよかったんですけどね…
海燕と英は次回に合流させます。

何かご指摘の点がありましたらよろしくお願いいたします。

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