少し空鶴さんのキャラぶれてるかもしれませんが、理解のほどよろしくお願いします。
俺は六番隊の隊舎に赴いていた。
副隊長である阿散井くんが牢の前にいた。
「あっ、斑鳩副隊長」
頭を下げてくるが手で制す。
俺は視線を向けるが相手は背中を向けている。
「彼女が朽木隊士かな?」
一応人物の確認を行う。
その問いに阿散井副隊長が頷く。
「そうです」
なら問題ないな。
六番隊の中の危険人物だったら聞かれちゃまずい可能性も有ったし。
「じゃあ、伝えておくことが有るんだ」
牢の前に立ってみる。
すると相手もこちらを向く。
「先ほど旅禍の侵入に関して警報が鳴った」
これについては分かっているのだろう。
頷いて思い返しているようだ。
「門番の兕丹坊と交戦して勝利したが、その後市丸隊長と交戦」
阿散井副隊長も驚く。
確かに隊長に狙われると死を覚悟するだろうからな。
「しかし彼らは一人が残る形で逃げ切った」
そしてその一人もどうやら霊圧の感じから流魂街側。
全員が生き残るのは驚きだな。
そう言ったら阿散井副隊長は頷いていた。
「彼らの中に橙色の髪の少年がいたことをうちの四席が確認したが心当たりは?」
朽木隊士に声をかける。
俯いたのが見えたため、確信を得る。
その時、俺は自分の研究に勤しんでいたからな。
見ていなかったのである。
「あいつら、来やがったのか」
阿散井副隊長は心当たりがあるようだ。
そして背中を向ける。
「忙しくなりそうだな」
隊長招集もかかった。
徐々に本格化するのだろう。
お前さんはそれでいいのかい、阿散井副隊長?
「君、脱獄したくないか?」
唐突な提案に目を見開く。
阿散井副隊長も驚く。
「極刑も逃れて身を隠すんだ」
そんなとんでもない事を聞いた阿散井副隊長は黙っていられない。
いつの間にか抜刀して止める気満々の目で見ていた。
「覆せない四十六室の決まりに反論するつもりかよ、あんた」
反吐が出る場所の名前を出してきたな。
俺は護廷十三隊には恩はあるがあいつらには何もない。
今でも壊滅させたくてうずうずしているんだ。
ただ、行こうとしたら卯ノ花隊長と京楽隊長がいたからやめているけどな。
「四十六室の取り決めなんざ知ったことじゃない」
冷や汗をかいている阿散井副隊長。
多分今の俺の覗く顔はぞっとするような笑みだろう。
「根性無しは黙ってここからこの子を出すのを見届けていろ」
そう言って牢の格子を掴んだ。
すると刀が迫ってきた。
「『吼えろ』『蛇尾丸』!!」
それを掴んで睨み付ける。
俺のやる事に反論するというのか?
「朽木隊長相手にできなくても俺にはできるというのかい?」
刀を離して問いかける。
その問いに対する答えは随分と勇ましいものだった。
「隊長相手ならいざ知らず、あんたは同じ副隊長なんだ、止められるに決まっている」
しかし癇に障るものでもあった。
過去を知らないという事はこんなにも愚かしいのかと。
「随分と舐められたものだ」
痛い目を見てもらう。
『浅打』を抜く事もしない。
指先でクイクイと挑発の姿勢を取る。
「お前程度に刀は必要ない、小僧」
かかってこい。
霊圧を剥き出しにして迫っていく。
圧に当てられて冷や汗をかいている。
「くそっ!!」
力任せに振るってくる。
それを前に歩いていく。
当たってしまったが全然痛くもない。
「なっ!?」
弾かれているのを見て驚いている。
この程度で驚かれても困るな。
阿散井副隊長の懐に入っていく。
「ん?」
霊圧が近づいてくるのを察知する。
どうやら話し合いでも終わったのか?
正直興味は一つもわかない話し合いだ。
盗み聞きする価値も有りはしない。
「兄は私の隊舎で何をしているのだ?」
その言葉に阿散井副隊長越しに朽木隊長を見る。
手で押しのけて眼前に立つ。
「脱走させるだけだが問題でもあるのかい」
悪びれることなく言い放つ。
その言葉に驚愕するが、さすがは四大貴族。
あっという間に平静を取り戻した。
「それがどれほどの行為かわかったうえで言っているのか?」
その問いに対して頷く。
無論、分かりきっている。
奴らはやむを得ない事情も何も顧みない屑ども。
そんな奴らの言った言葉なんぞどうでもいい。
まだ、鸚鵡とかの方がよっぽどいいこと言うだろうよ。
「全てが異例尽くしの時点で怪しいと思わないのか?」
隊士の捕縛に隊長格の派遣。
極刑と『双極』の使用。
裁判を待たずに即日決定。
「俺が覚えているものでもまだましなものが有ったぞ」
あれでもまだくそみたいな内容ではあったが、判決や連行もしているからな。
いずれにしてもあいつらのういう事を呑み込むなんて俺はしない。
だから反逆する。
「それともくだらない貴族の心が邪魔をしているのか?」
そう言うと激昂したかのように刀を振るってくる。
それを何気なしに掴んでいた。
「私の心の何が分かる」
苦労しているような顔だな。
分かりたくもないね。
そんな迷った一閃を振るう相手の心など。
「分からない、しかし迷うくらいなら正直な己の心に従え」
後悔しないように動くんだな。
俺は追放処分を受けても構わないから救い出す。
もう二度と目の前で誰かを失わないために。
「掟なんぞに縛られても力なんて出せないぞ」
大笑いしながら去っていく。
殺気を漲らせているが知るか。
後ろからやられないように少しばかり早歩きをして離れた。
「今日はその滑稽さに免じて解放はしないが、警戒しておくんだな」
その気になれば全ての時間が侵入可能時間なんだ。
さて……
「これで移送したらそれこそ思惑通りなんだがな」
六番隊の隊舎に行くまでにそれなりの隊舎を旅禍たちは廻る必要がある。
通路の地下を経由すれば、場合によれば無傷で全員辿り着ける。
「しかし、慣れない挑発はするもんじゃない」
正直、彼らの心を逆立てたからいいものの、意固地になられたらと思う。
それに悪口なんて後輩相手に言いたくもない。
彼等には彼らなりの理由があるのだから。
「本心が含まれていたのも有るけどな」
兄貴であれば妹を救ってやってほしい。
そう言った倫理観などで揺らいだり、傷付くような伝統なんてないも同じ。
掃いて捨ててしまえ。
「……雨か」
頬を打つ水滴。
少しばかり心によぎる疑問。
こんな時、あなたなら何て言ってくれるかな?
『よく言った』と褒めてくれますか?
『好き勝手に言って』と叱ってくれますか?
「いけないよ、心を持て余してはいけない」
思い出の中にある顔を思い出してこみ上げてしまう。
伝いそうになるものをこらえて十二番隊の隊舎へ戻る。
.
.
「夜一さん、待たないのか?」
志波海燕という男、そしてその弟である岩鷲。
その二人とともに家に向かうという話だった。
だが、英の奴がまだ来ていない。
其れなのに夜一さんは皆に立ち上がるように言った。
「失礼な物言いじゃが、もう生きてはおらんじゃろう……」
ぽつりと呟くように言った。
そんな事は無いだろう。
俺はそう思って反論をしようとした。
「海燕が出てきた所はわしらと同じ門じゃった、その時点で察しろ」
だが次の夜一さんの言葉で完全に納得してしまった。
生きているのならばあの場所から出てきていたはず。
それに出てこなかったという事は……
「えっ?、俺達が出た時は居なかったぜ」
つまり、もう連れていかれたのか。
生き残っていると期待したいけど。
「雨が降ってきたぜ、兄貴」
ぽつりぽつりと降ってくる。
まるであいつに対する涙雨の様に。
数時間後に到着した所は大きな腕のオブジェが立った家。
そこで聞かされた夜一さんの作戦。
それは花火を打つ大砲から俺達を射出するという事。
その為には『鬼道』というか『霊圧』の制御の習得が必要。
「あやつが居たらわしら全員分賄うなど容易なんじゃがな……」
あやつと言われた人はきっと浦原さんが言っていた『斑鳩』という死神なんだろう。
どうやら年下のようだが……
「まあ、居ないやつを求めても仕方あるまい」
各々励めよ。
そう言って去っていく。
雨に濡れたからな、仕方ない。
猫は水嫌いなんだよな。
.
.
「痛いな……」
あの斬撃の痕から血が流れる。
抑えて止血をしてるがそれでどうこうなりはしない。
雨が当たり体が冷えてくる。
「ん?」
視線を上げてみると特徴的なオブジェが見える。
そこに向かって歩いてゆく。
まるで誘蛾灯に引き寄せられる蛾のように。
ゆらりゆらりとおぼつかない足取りで。
「着いたか……」
扉に向かって行くと二人の気配。
睨みつけるようにして相手を探す。
「侵入者よ、何用かな?」
雨宿りをさせてもらいたいんだけどな。
くるくると薙刀を回して息を吸い込む。
「ここで一休みをしたいんだ」
その言葉が終わると同時に雷が轟く。
相手が偉丈夫であることは理解できた。
そして普通に通るには苦労する相手であるという事も。
「そして瀞霊廷へ侵入を試みる」
だから家に入れてくれ。
そう言って進む。
相手は何か思う所があるのか。
「もしかして夜一様と関係が?」
その言葉に頷く。
すると相手は表情を崩した。
「それならばすぐに言ってくれればよかったのに、もう始まっておりますぞ」
招き入れられる。
しかし、ここで緊張の糸が切れたこと。
そして出血量が多かったこと。
それが原因で倒れ込む。
「……おかしいな、眠るつもりはないのに。」
腕に力を込めるも上手く入らない。
歯を食いしばり、立ち上がるもよろけている。
「手を貸しましょうか?」
親切心から言ってくれているが首を振る。
せめてこれはやらせてほしい。
「くっ……」
緊張が一度切れたせいで痛みが一気に来た。
脂汗を流しながら一段一段下がっていく。
最後の段のころには歯を食いしばって声を発さないようにしていた。
「とんでもない精神力の持ち主だ……」
後ろで付いてきている人たちがそう言っていると気配を感じる。
此方が立ち止まるとふすま越しに声をかけてきた。
「お前、何者だ?」
女の人の声だった。
それに対して俺は答える。
「英雄喜です、人間で瀞霊廷侵入をしようとしています」
そう言うと襖を開ける。
そしてこちらの傷を見た瞬間に拳骨を喰らった。
頭が揺れる。
「治療してやるからこっちに来やがれ!!」
耳を引っ張られて引きずられる。
両掌を傷跡に当てると徐々に塞がっていく。
暖かい感じが広がっていくのが感じ取れる。
「まずは傷は塞いだが開かないわけじゃねえ」
針を取り出すと麻酔も無しに縫い合わせ始める。
ジンジンと痛むが問題ない。
そして包帯を取り出す。
「がっちりと固めて、しかし動きに支障が出ないように……」
包帯でかなりきつく巻かれてる。
しかし動く分には問題はない。
「よし、これで終いだ!!」
そう言って背中を叩く。
息が一瞬詰まる。
そして顔を近づけられる。
「痛そうにしかめてた面構えがいいもんになったじゃねえか」
笑った顔に少しどきりとした。
綺麗な人だというのに今更気づいたのもあるが。
「ありがとうございました」
頭を下げて階段を下りた別の部屋に行く。
その場所には見知った五人がいた。
まあ、見知らぬ二人も居たのだが。
「皆、遅れてごめん」
頭を下げて声を発すると全員が驚いたような顔でこっちを見てくる。
夜一さんがすたすたとやってきて頭を下げるような姿勢を取ってきた。
「こちらこそ死んだものとして扱ってすまんかった」
まあ、仕方ないでしょ。
相手は隊長なんだ。
俺を待っていたらそれこそ目的の達成ができないかもしれない。
「女の人が治療してくれました」
大丈夫だとジェスチャーをすると驚いた顔をする。
そして首をかしげた。
「空鶴の奴が?、どんな風の吹き回しじゃ」
そんな事を言ってると男の人。
死神の服装をしていない方の人が鼻を擦る。
「流石に重傷の来訪者を追い返す人じゃないですから」
そう言うと夜一さんが頷く。
流石にそこまでひどい人ではないと知っているのだろう。
「とりあえず侵入するための説明を行うとするかの」
『霊圧』の制御を行いそれを球状に固めて砲弾にする。
その中に今回の侵入組が居る状態。
それで内部に入った後は固まって行動という所か。
「隊長相手には逃げ込み決めた方が良いですか?」
これが一番の懸念材料。
全員を相手にしてたら時間と体力が足りない。
まず、根本的に実力も厳しいだろう。
「正直、それが一番得策じゃろ」
無駄、もしくは無謀な戦いならば避けよ。
今回の目的は合戦ではなく奪還。
それをはき違える事の無いように釘を刺される。
「とりあえず、修練を始めますか」
そう言って俺は首を鳴らす。
そして、水晶を手に取るのであった。
とにかく、全員合流で鍛錬開始です。
次回はすぐに侵入に入っていこうと思います。
理由としては殆ど原作に近い流れになりそうなので。
指摘などありましたらお願いします。