少し割り振りに困った結果、こんな感じになりました。
「で……何やってるんだよ、黒崎」
砲弾作りのための鍛錬中。
元々『霊力』については虚相手に薙刀を振るう時からやってきたこと。
綺麗な丸を象っているのは確認できた。
俺に次いでは井上さんや石田。
茶渡が不安定ながらもできている。
しかし、黒崎は形を成していない。
「いや、力入れて出しているんだけどよ……」
門番の人たちからも結構な言われようだ。
それだけ酷いのだろう。
「これは力じゃなくて集中するんだよ」
手を添えて深呼吸して目を瞑る。
すると綺麗な球体のに飛びこんだように俺が中にいる。
「黒い丸の中心に向かって飛び込むイメージだ」
それがお前にも通じればの話だけどな。
なんせ力任せにやろうとしすぎて変になっている事は指摘した。
「分かったよ…」
そう言って受け取って深呼吸をする。
其れから数時間も経たない間に制御を行えるようになった。
その時に緊張を緩めたから空鶴さんにどやされていたけど。
因みに同罪で俺も拳骨を喰らった。
「ともあれこれで準備は整ったってわけか」
そうは言うが相手の動きそのものが読めていない。
そんな中、海燕さんの持っている携帯電話のようなものが震えた。
「はい……やっぱりそうですか」
いくつか話し込んだのち、渋い顔になっていた。
時間的な事だろうか?
「今日で残り十四日、懺罪宮に送られたってわけだ」
結構猶予があるとは思えないとのこと。
もう、焦っているようにも捉えられるが明日を侵入決行にしようと海燕さんが提案。
それに夜一さんが頷く形で取り決められた。
翌日の早朝、皆が台座に集まる。
岩鷲さんも来るようで、味方が合計八人。
内部にもいるようだが割愛しよう。
「それじゃあ行きますか」
そう言って皆が砲弾に霊力を込める。
それを見て空鶴さんが詠唱を始める。
その後に打ち出されたがトラブルが発生。
黒崎の霊力が抑えられず、また岩鷲さんが緊張と集中力の途切れで詠唱を失敗。
「固くします!!」
もうこうなったら衝撃に備えておく。
その為に最大限の霊力を込めていく。
ぶつかっていき突き抜けてはいくが、解けていく。
一時的に留まっているが渦が巻き始めている。
「手を繋いで離れてはならんぞ!!」
夜一さんが言うが遅い。
まずは黒崎と岩鷲さんが。
石田と井上さんが。
茶渡、海燕さん、俺、夜一さんが単独で落ちていく。
掴める距離に全員いなくなるってなんだよと思いながら。
「くっ!!」
着地を試みようとした途端、ふわりとしたものが目の前に現れた。
受け止められて何の問題もなく着地。
どこかは分からないが見回してみる。
「あれが目印だな」
見上げると一際高い塔がそこにはあった。
そこに行くための道のりを考える。
迂回して相手に見つからないようにしていたいが……
「そうも言ってられないか」
いつの間にか巨漢の男が視認できる距離にいた。
感じとしては並じゃない。
しかし、隊長ほどの威圧感がない。
「副隊長と見た」
逃げられそうにもない。
気配を感じさせないほどの速度で動いていたと仮定した。
見た目以上の俊敏さを持っているだろう。
「『剣道三倍段の枷』」
初めから全開で相手をする。
これが終わればすぐに移動をしていこう。
「まさかこの俺様の前に旅禍が出るとはな」
そうは言うが隙をあえて出している。
こういうのは油断しているところをきっちり仕留めるのだ。
警戒して損はない。
「俺様の名前は大前田希千代、本名はもっと長いんだがあえて略式で名乗るぜ」
そしてこっちの目を見て生半可ではよくないと思ったのか。
息を吸って力強く目を光らせる。
「打っ潰せ『
その言葉と同時に刀は変化する。
棘突き鉄球と刀からはかけ離れたものになってしまった。
これではこちらも真価を発揮できない。
「真っ向勝負ってわけかい!!」
そう言って相手に接近して斬撃を繰り出す。
それを向こうは横に回避して鉄球を投擲。
「はっ!!」
相手が回避した後にこちらが薙刀を地面に指して軸に回る。
其れで攻撃を回避すると懐が丸見えだ。
鉄球を引き寄せるのが間に合っていない。
「ふん!!」
デコピンで霊力をはじき出す。
それを喰らったのか、顔を押さえそうになる。
その隙に回転蹴りを腹に叩き込んだ。
「ぐえ!!」
モロに当たったからか相手が悶絶をする。
……もしかして、この人戦闘経験があまりないのか?
それとも、やる気がないのか?
一番嫌なのは実力がないという可能性だが。
「そんな体勢、ふざけているんじゃないですか」
低くなった体勢にサッカーボールキックをお見舞いしようとする。
すると一瞬のうちに目の前から消える。
そして一撃を振り下ろされる。
「うおっ!?」
薙刀で受け止めるが力任せの一撃に後退させられる。
相手の気配が後ろから感じ取れるので前に飛び込んだ。
地面が陥没する一撃を繰り出される。
「やっぱり速いな」
想定内の速度ではある。
見た目での判断なんて当てにはならない。
「負ける気はないけどな」
薙刀の振りおろしを相手が回避する。
それを見越して石突を相手に向けて突く。
横に回避していくが其れは悪手。
「範囲の読み違いは禁物です」
横に薙いで脇腹に直撃。
そのまま連続で切り上げを喰らわせる。
「うぐっ……」
相手がよろめいた隙に顎に石突で一撃。
その一撃が聞いたのか膝をつく。
それを見計らって相手の背中に回る。
「終りにしてやる!!」
相手を馬に見立てて上に乗る。
そして首に腕を巻き付けていく。
最大の力を薙刀が発揮できないのならば徒手空拳で。
「落ちやがれ!!」
相手の体重を利用してきつくきつく締めあげていく。
相手はもがくが無意味。
徐々に抵抗しなくなっていき……
「終りだ」
絞めあげていた腕を緩めて降りる。
そして死神の服装を奪って……ぶかぶかだな。
「仕方ない」
怪我が治った方が良いだろうしな。
見える場所に放り出しておく。
そして駆け寄った相手を気絶させて奪おう。
「なっ、大前田副隊長!?」
驚いた男性隊士を狙う。
背中に回り、相手の首を絞めあげて落とす。
背丈が自分と同じぐらいの為、きっちりと着れた。
「さて、どっちに行こうかな」
奪還のための潜入に一歩近づいたという実感を持って歩み始めるのであった。
ふわりとしたものの正体は『吊星』です。
夜一さんと海燕は自前で出来るので六人分を斑鳩が同時に展開しています。
捕捉に関しては『技術開発局』のおかげで出来ています。
次回は英をどのルートに行かせるかですね、一番隊に行っても三番隊に行っても厳しいのは変わりませんが。
指摘などありましたらお願いします。