とにかく、今回でいろいろな動きがあります。
原作に近い部分も有りますがよろしくお願いします。
俺と茶渡君は九番隊の方に着地していた。
ここはある意味きついな。
「迂回する道を取ろうと思うがどうする?」
俺は冷静に次の手を考える。
馬鹿正直に進めば、時間の短縮にはつながる。
しかし、いやな方向に転がると洒落にはならない。
「何故、あえて迂回の提案を?」
茶渡君も疑問に感じる。
塔が見えているのだから最短で行った方が明らかに良い。
「八番隊の隊長か十番隊の隊長とぶつかってしまうんだ」
そうなった場合が厳しい。
日番谷隊長も真面目で厳しいが、問題は京楽隊長だ。
あの人が本気になると俺は足元にも及ばないだろう。
「隊長までの席官ははっきり言って強弱はあるが隊長単体になると危険度が高いのが多い」
罪を許さないやつも多い。
うちの十三番隊と十二番隊があまり頓着がない。
今からだとかなり難しい。
全く見つからないようにというのが難しいからだ。
挙句の果てに、迂回の結果で十一番隊の方に出たら最悪だ。
「近いのはどっちなんだ?、海燕さん」
腕を回しながら茶渡君が言ってくる。
確かにそこが一番重要な所だな。
迂回するにも近道を望むのが性だ。
「そりゃあ八番隊だ」
六番隊から移送されているとはいえ、中心部や双極の丘に近い場所。
流石に外れに近くなったり、少し外向きになっている十番隊の方には建設されていない。
「じゃあ、そっちに行こう、一刻を争うのならば尚更」
安全に行くよりも危険を冒して早く到着する。
まあ、安全についても確実性を問われると首をかしげるだろうが。
「もしもの時は俺を置いて向かってくれよ」
其れだけ言って八番隊へ向かった。
相手の状態に一縷の希望を残して。
.
.
「さて……」
足を屈伸させて十二番隊の隊舎から出て行こうとする。
すると気配を感じる。
「どこへ行かれるのですか?」
眠六號がそこには居た。
心配しているのは分かる。
だが俺にはやらねばならぬことがある。
「貴方はあの日を今も悔いているのですね」
罪を犯すことになろうとも救おうとする姿。
それはあの日から起因するものではないかと言いたいのだろう。
無論その通りだ。
きっと誰が重罪人になろうとも救おうとする。
「お前はどうする?」
俺の言葉にびくりと身を震わせる。
行こうという気持ちはある。
だが、マユリの目をかいくぐって危険に晒しては後が怖い。
そう言った所か。
「マユリに聞いてくる」
お前の背中を後押ししてやる。
成長を促すのも親の役目。
「そうか……」
筆を置いて考えこむ。
正直に言えば反対なのだろう。
言葉や態度には出さないが大事なのはこいつも同じ。
まぁ、戦略に組み込んでえげつない事をしそうだから、こちらとしては肝を冷やしているが。
「君には『懐刀』が居るじゃないカ」
まあ、忍び込ませたのは二人だけどな。
十番隊と七番隊に一人ずつ。
今までの隊長時代の恩で声かけたら飛んでくる引退した面々も瀞霊廷の中に居るが。
「まあ、最後の砦としてここにあの子は残していくヨ」
戦闘能力はあの当時の俺の体を基礎として構築された肉体。
その戦闘力だけは何が有っても、覆しようのない強さ。
「間違いなく今の十二番隊最強の女性だからな」
膂力がまず段違い。
剣技も教えたがかなりの上達を見せた。
始解がマユリ寄りではなく自分寄りだったのは困ったが。
「残念だが眠六號には伝えてくる」
今回は待機の旨を伝えるとしゅんとしていた。
やる気はあったのだろう。
だが今はその時ではない。
「お前は最悪地下道で塔にいける筋を旅禍に伝えてくれ」
眠六號の真意を汲み取って伝える。
俺に罪を犯すことなどを伝えてきたが、こいつも内心はあの日を悔いているはずだ。
だからこそ旅禍を足掛かりにあの人の情報を手に入れようとしている。
「一番近いのは十一番隊か」
さて……死ぬ覚悟を久々に持たないとな。
首を鳴らして歩んでいく。
『天挺空羅』で呼びかけて気配のある方へ向かわせる。
「旅禍の奴がマユリの興味を引くような相手じゃないといいけどな」
あいつの事だから俺の管轄外の新人隊士とか改造しているだろう。
爆弾にするのとかやってたら、総隊長に怒られるだろう。
あんなことせずに俺の義骸を使えばいいのに。
「旅禍と班目三席が交戦か」
因みに話が脱線するが、霊圧感知ができるのにあの人を見つけられなかった理由は分かっていない。
予想としては霊圧を遮断する、俺が今着ているような外套を皆が着用しているということぐらいだ。
実力的にはムラが有るが旅禍の方が強い。
あくまで霊圧の査定だから戦いの内容を見たら更にわかる。
「もう一つは随分と逃げているがこれは綾瀬川五席が悪いな」
嬲ったりしているのならばその時点でダメ。
罪人なのだからそのまま心の憂いもなくやるべきだ。
殺すのであればな。
「さてさて……」
まず、防犯が無くて扉ががら空きなのはどうなの?
今回はありがたいけどさ。
更木の気配がないのでするすると進んでいく。
しかしそううまくはいかない。
「下らねえ十二番隊の副隊長様がここに何の用だ?」
ニタニタとした下卑た笑い。
隊舎の中に行ったら十一番隊の奴らに目をつけられた。
此方も手を上げて応えるが、無言というのが気に食わなかったらしい。
肩を怒らせてこっちに向かってきた。
「こんなもんつける資格がお前にあるのかよぉ!!」
副官章に手を伸ばす席官。
その腕を掴んで力を込めていく。
それはさながら万力の様に。
「お前らにこの副官章の重みは分からんよ」
外そうとしてきた相手の腕を圧し折る。
そして腹部に蹴りを入れてやる。
「通らせてもらうが……どうする?」
睨み付けて威圧をする。
外套の中にある眼光に気づくやつがどれほどいるか。
昔のように霊圧飛ばしで気絶はさせない。
旅禍までそうすると面倒だからな。
「ふざけんなよ!!」
刀を抜いて一世に斬りかかろうとする隊士や席官。
百年近くぶりにこの言葉を言う羽目になるとは想像してなかったがな。
「聞き分けないやつは度胸のある馬鹿、聞き分けた奴は理性的な馬鹿」
抜刀して一陣の風を吹かせる。
全員、一瞬反応が遅れて崩れ落ちる。
鞘に直して一言だけ言ってやる。
「峰打ちだ」
鮮血が飛ぶこともない。
昏倒させるだけの刀。
あれから百年、卯ノ花隊長は変わらず稽古をつけてくださっていた。
「おかげであの日から格段に色褪せる事もない」
『剛』だけではなく『柔』も身につけた。
自分の実力については下がっているだろうとは思う。
しかし、それすらも彼方に追いやったのはあの人を思えばこそ。
「もう近いな」
決着も付いた頃合だろう。
何故なら動いてはいない。
しかし霊圧の緩やかな減衰が見られる。
しかもそれが二つ。
重傷をお互いに負っているというのが分かる。
「よし、きちんと着いたな」
その言葉に振り向くのが旅禍だろう。
どこか海燕にも似た感じだな。
「気にするな、悪いようにはしないよ」
そう言って班目三席の方に座る。
気絶をしているようだからやりやすい。
こいつら死にたがりだから治療を嫌がる。
「そっちも傷口を治すからそこに居ろ」
あっという間に傷が塞がっていく。
まあ、この程度なら問題はない。
大量に血が流れているようなら四番隊の棟へ連れていく必要があるけれど。
「待たせたな」
旅禍は静かに待っていた。
それとも実力差で逃げられないと思ったのかな。
「まあ、その方がこっちも話が楽だ」
手をかざして治療をしていく。
霊圧の中に虚を感じる。
何かしら複雑な事情を持っているようだな。
「朽木ルキアが幽閉されている場所にお前らを案内しなくてはいけない」
その言葉に驚く。
やっぱり俺がこんな事を言ったら不思議か?
「なんで協力してくれんだよ」
まあ、おかしいだろうな。
海燕のように自分の部下でもないのに力を貸すだなんて。
一つだけ、理由をあげるのであれば…
「俺は納得していないからな、壊れてしまうならそれがいい」
四十六室の動きがおかしすぎるからだ。
異例尽くしの判決。
勾留期間の短縮。
この二つだけでもあそこがいくら駄目な組織でも、それ以上に胡散臭いと思えたのだ。
「身柄をこちらが先に確保をすれば処刑の取りやめは不可能ではない」
そして、無駄な戦いを避ける方法も俺は知っている。
地下の下水道を渡る事。
迷宮に近いあの場所で捕捉するのはある隊の席官や隊士を除き、不可能。
「連れの相手が終わったらすぐに向かおうか」
そう言っていたら花火が打ち上がる。
あっちに向かって行けばいいんだな。
「あんたもせいぜい気を付けるんだな……」
班目三席が俺に忠告をする。
更木に対して気を付けろって事か?
まあ、あいつに遭遇しなくても総隊長あたりに怒られるだろうな。
しかし、今の俺には関係ない。
「一護が多分俺が一番強いって言ってたからな、うちの隊長が狙うだろうよ」
彼の名前はそうなのか。
しかしまだ霊圧感知が下手だな、班目三席よ。
「一護君より強い霊圧が一つあったぞ」
今頃あいつはそっちに向かっているだろう。
相手には気の毒だとは思うけどな。
四番隊が押しかけながら向かっているのを感じる。
連れと合流した一護君が目を見合わせて悪だくみを考えたようだ。
「人質か」
予想通り、一人を捕まえて人質にとる。
しかし、十一番隊の男どもはやれるもんならやってみろと囃し立てていた。
「……お前ら、とことん屑だな」
十一番隊の奴等にそう言って三人とも抱えて飛んでいく。
屋根に着地後、相手に見つかる事もなく屋根伝いに走る。
どうやら外には出れたな。
「次の計画の前に体力だけは回復させておいた方が良い」
そう言って降ろす。
次の瞬間、霊圧の衝突を感じる。
この霊圧はよく知っている。
相手は誰かを探るのだった。
.
.
「くっ!!」
刀を受け止める。
おおよそ人の膂力とは思えない重さ。
市丸さんとは違う隊長。
獣が人になったような雰囲気を纏っている。
「はあっ!!」
鈴の音を聞いてさらに受け止める。
髪の先に着いた鈴が居場所を教えてくれている。
「それがお前の本気か!」
そう言って振るってくる。
開放の隙は与えられない。
いきなり出会った直後に刀を抜いて斬りかかられた。
「ちっ!!」
顔に向かって花火を投げる。
それを切り裂いたと同時に薙刀を握る手に力を込める。
「『剣道三倍段の枷』」
そう言って斬りかかる。
その受け止める力と膂力に確かな手応えが有った。
しかしこれでも勝てるのかは疑問形。
「中々面白い真似するじゃねえか」
ぞわぞわする笑顔。
戦いが好きなのだろう。
深呼吸をして睨み付ける。
「首だけになってもあんたを殺す」
相手の剣先に集中する。
鋭く殺意のみなぎる一撃。
背筋に冷たいものが通り過ぎる。
「があっ!!」
その一撃を掴む。
ぎりぎりと力を込めて動かぬようにする。
「かあっ!!」
そのまま引き、肩口に一撃を見舞う。
無防備なまま喰らった相手に、追撃で石突で顎を跳ね上げる。
「やるじゃねえか」
何食わぬ顔で前蹴りを放ってくる。
前蹴りを前進して受ける。
刀を離している。
それが襲い掛かってくるのを跳躍で回避。
「はぁはぁ……」
短時間なのに汗を流している。
この人が発している殺気。
そしてこちらの集中度合。
「今まで交戦した隊長の中で最も強い……」
じりじりと近づくその人の笑み。
こっちも負けてはいられない。
「しゃあ!!」
相手の刀に合わせて突きを放つ。
突きが相手の頬に掠る。
しかしそれを前進しながら振り切ってくる。
「なっ!?」
驚きながらも前蹴りで蹴り飛ばし、自分の腹に石突を打ちつける。
其れを支点にして地面に薙刀を突き立てて風車のように回る。
背中に回る形で回避に成功した。
「避けやがったか」
トントンと肩に刀を当てながら言ってくる。
そして眼帯に手を添えた。
「奇妙な術を使ってやがるとはいえ、たぶんそいつが無くても今のこっちより手前の方が上だって事は確実だ」
笑顔のまま眼帯を外していく。
あれは目が見えてなくてつけていたものではなかったのか?
「本気でやらせてもらうぜ」
眼帯が完全に外れて片眼が現れる。
霊圧が上昇していく。
まるで青天井かと思えるほどだ。
「楽しませろよ!!」
先ほどよりも速度が増していた。
勢いよく刀を振り下ろす。
その一撃を足に力を込めて踏ん張り、薙刀で力一杯受け止める。
「強い相手によく出会うな」
自分の不運か幸運かよく分からない縁に苦笑いをする。
まだ終わらない死闘に身を投じるのだった。
迷いまくる男とエンカウントする英。
三分の一+眼帯で優勢とれてますが、身構えすぎて体力の消費が凄い事になるという状況。
眼帯外しても三分の一なら、まだ優勢とれそうなんですが体力で対応が遅れていく感じです。
斑鳩が花太郎ポジではなく、花太郎を含めた四名で動く状態です。
次回は海燕と京楽をどう絡ませるかといった感じです。
何かしら指摘などありましたらお願いします。