元々隊長だって知っているのって副隊長では、もう雀部と伊勢とやちると海燕ぐらいしかいないんですよね。
隊長ならほぼ六番隊と十番隊以外が知っていますけど。
大きな事件を全員に周知する。
朝焼けで来ていないのは後で他の奴らが伝えているだろう。
五番隊で解析してもらったが卯ノ花隊長をもってしても無理な状態であったこと。
そして義骸の可能性はない事が克明になったこと。
……元は刀だからあいつの霊圧がそのままあるから誤認するよな。
既に隊葬の為に口に綿を詰めて大事に扱っている。
雛森隊長は俯いていた。
誰がやったかは分からない。
「しかし災難だったな、雛森副隊長」
狛村が頭に手を置く。
そしてこちらに顔を向ける。
一瞬、こちらの顔を見て驚いている。
百年ぶりに見せる顔だもんな。
頭を下げているがお前も気づいているはずだ。
「一体誰がこのような凶行を……」
続いて東仙。
彼岸花を添える。
頭を下げて去っていく。
綱彌代も頭を下げてきていた。
一瞬、こちらの顔を見て驚いていたのは見逃せない。
そんなに驚く事か?
この二人もすでに分かっている。
「これはえげつない事しはるわぁ」
市丸が花を添えに来る。
こっちの顔を見ると一瞬、眉が悲しげになる。
しかし次の瞬間、雛森副隊長が動く。
刀を引き抜いて居合の要領で抜刀したのだ。
「うおっ!?」
花を切り裂かれてしまう。
市丸もおどけてはいるが不意打ちで肝が冷えたか?
「お前が……藍染隊長を!!」
こういった手合いは忠告か何かを鵜呑みにしているな。
頭にはそれでいっぱいという感じだ。
「『弾け』飛梅!!」
始解までしてしまった。
これはいよいよ危ない。
因みに能力についてはよく知っている。
市丸に対して火の玉を放とうとした瞬間に市丸の前に立つ。
「速く三番隊に戻ってくれ、収拾がつかなくなる」
ただでさえ、今の動きを見ていた吉良副隊長が驚いて前に出ている。
さらにその後ろには日番谷隊長。
大騒ぎにしかならない。
「どいてください、斑鳩副隊長」
こっちの背中を睨みながら言ってくる。
どいたら大騒ぎ。
挙句の果てには護廷十三隊同士の潰し合いだ。
「君こそ刀を引きなさい、雛森副隊長」
そんなことさせるわけにはいかない。
だから諭すように雛森副隊長に言う。
「……貴方ごとやりますよ!!」
しかしもはや聞く耳を持たない。
ただこのもの言いには少し苛ついてしまった。
「やってみろ」
そう言った瞬間、火の玉が当たる。
殆どが驚きの表情だが大した威力でもない。
「満足したか?」
平然とそこに立って問いかける。
流石に副隊長同士だから手傷を負わせられるとは思ったんだろう。
浅はかだな。
「私怨で暴れて藍染隊長が喜ぶのか?」
霊圧を飛ばして威圧する。
しかし怒りで煮えたぎっているのか、怯みはしない。
こいつは面倒だな……。
「貴方に何が分かるというの!?」
聞く耳持たず振り回してくる。
ひょいひょいと避けている。
この程度で副隊長か?
「誰かを思いやったり愛する心が有るから怒る!!」
突きを混ぜているが意味はない。
霊圧の差でわずかに弾かれている。
雛森副隊長の攻撃は俺には致命傷にならない。
「研究漬けの貴方なんてどうせ……誰かを愛したこともないくせに!!」
その瞬間、空気が凍った。
日番谷隊長が動いたからではない。
俺の雰囲気が変わったからだ。
「誰が……」
底冷えするような声だった。
周りの空気がこちらの霊圧のせいで寒気を催すほどに冷えていく。
そして次の瞬間……
「誰かを愛したこともないって?」
顔を向けていた。
ここ最近で思ったが随分と今の副隊長たちに舐められてるな。
無知は度し難い罪といっても良いかもしれない。
「あかんで、斑鳩さん」
市丸が諫める形で俺を押さえる。
それどころか俺の表情を見て危なさを感じ取ったのか。
狛村たちも刀を抜いている。
「すまないな、そこまで気を使わせるつもりではなかったんだが」
霊圧を収めて笑顔を浮かべる。
どこか無理をしたような笑みだが。
きっと今の俺の目は笑っていないのだろう。
「悪いが動くなよ、二人とも」
日番谷隊長に止められる。
いや、俺は避けてただけだよね?
「雛森もお前も牢屋で頭を冷やしてもらう」
なんで何も危害を加えていない俺までそうなるのか?
どう考えても雛森副隊長の方が酷かったけどな。
「悪いが今の俺は四番隊預かりだからな」
そういって手を後ろにして下がる。
卯ノ花隊長に言って相談してくれ。
もう、かしこまったり頭を下げたりする気は失せたから。
「お前みたいな若造の言葉を聞いてやる気はないよ」
その言葉に怒りを浮かべる日番谷隊長。
それ以上にこっちは怒りたい気持ちで一杯だよ。
「がらりと変えやがって……」
捕縛の為に近寄るが甘い。
相手の歩幅を見て動かないと意味ないぞ。
「むしろ昔の口調に戻しただけだ、お前らが知らない時の口調に」
其れこそ百年前のあの日の時のように。
さて……
「卯ノ花隊長、虎徹副隊長、ここに用事はないから戻りましょう」
それだけ言って四番隊へ戻る。
先頭に立つのは卯ノ花隊長。
その後ろに俺が居て手を縛られている。
そして見張っているのは虎徹副隊長。
「誰が犯人だと思いますか?」
戻っていく間に問いかけられる。
犯人は居ない。
どう考えても不自然極まりないからだ。
「藍染隊長の実力が頭一つ抜けているので勝てるのは山本総隊長、京楽隊長、更木隊長当たりに限られます」
卯ノ花隊長は隊首室にいた時点で白。
そして次の言葉で一気に迷宮入りしてしまう。
「ただ、不意打ちの一撃で藍染隊長を絶命させているのがおかしいです」
まず、無傷で勝つのが至難の業。
さらに付け加えるのであればあの用心深さの塊を相手に不意打ち。
そして絶命させる。
こんな無茶な条件を成し遂げられるやつは流石に居ない。
「義骸ではないなら相手が手傷も無しにやられますか?」
あそこにいた奴らが黒だとしたら傷一つもない。
あの市丸でもそれは無理だ。
最速の刃で心臓を貫く。
それに、こんな大事な場面で用心なく外へ出るような男でもない。
「何かおかしな事が既に起こっているという事ですね」
俺が予防を施した奴らを除いた全員が『鏡花水月』の術中。
其れでもなく違和感を感じる卯ノ花隊長は流石だ。
「旅禍は捕えて事情を聴くしかないでしょう」
あいつらに藍染隊長を殺せる技量が有るとは思えませんが。
そう言って牢屋へと向かう。
すると肩を掴まれる。
「開放いたしますので調査を始めなさい」
藍染隊長の不審な死に対して極限まで。
そこで護廷十三隊側で止める手が有れば掻い潜ったり交戦しても良い。
「人手が必要とあらば交渉しても構いませんよ」
其れならばもう決まっている。
必要ともいえる奴はあれから変わりはしない。
「それではその任務を快く承ります」
どの場所に行けばいいのか目星もついている。
そう言って釈放された俺はある男の霊圧を探りその方向へと向かうのだった。
幽閉される理由がまるでない件。
原作でのイヅルのポジションを取る形でしたが、大して効果がないという。
卯ノ花隊長にやられても副隊長に負けるほど実力は落ちていません。
何か指摘などありましたらお願いいたします。