ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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今回で原作の処刑パートに進ませます。
そして次回以降は『懐刀』についても遠くで見守る形で出していきます。


『短縮 -Short Killing- 』

「がっ……」

 

掌を下げた瞬間に空から光が見えた。

回避する事も出来ずに直撃する。

そして、その後に音が鳴り響いた。

それだけでこの光の正体は分かっていた。

 

「まさか、雷を落とせるなんて……」

 

今までの隊長も危なかったが、市丸さんを超える速さの一撃。

文字通りに桁が違う。

 

「これの力がないと終わっていた」

 

三割減といえど、この威力。

これだけでこの人がどれだけこの力を練り上げてきたのか。

想像に難くない。

 

「回復してもらってはいたがあの一撃でまた開いてきた……」

 

本当は安静にして治さないといけない。

しかしこの事態でそんな余裕はありはしない。

その為、常に強行軍で進んできた。

 

「でも……やってやろうじゃねえか!!」

 

死にかけの体でどこまでやれるのか。

其れだけだ。

猪の様に突進をする。

 

それに対して掌で操作をする。

その動きに対応するように薙刀を避雷針のようにする。

 

「甘い」

 

そう言うと二度振り下ろす。

なるほど、連射もできるのか。

風の雰囲気が変わる。

そして地面で煌くものが見えた。

前へ一気に飛び込む。

 

「がっ!!」

 

足に落ちてしまう。

そのせいでつんのめった。

何とか立ち上がるが相手の視線を見る。

 

「奇妙な術で致命傷を逃れているようだな」

 

そう言うと突きを放ってくる。

雷を纏っている突き。

まださっきのように見切れない速度ではない。

 

「ふっ!!」

 

受け止めるとどこか、心が湧きたつ。

死にかけた体に活力が漲る。

相手の突きを受け流して肩口を狙う。

 

「無意味」

 

掌で雷を落とす。

しかし、ほんのわずかに見えた弱点を俺は突いて行く。

煌いた場所から飛びのくように離れる。

するとズバリその場所へと落ちていった。

 

「やはり『先行放電』を起こしている」

 

雷の性質。

それで空気の質が一瞬変わっている。

そのお陰で違和感に気づいたのだ。

 

「避けるとは……」

 

相手も面食らっているがその隙を逃しはしない。

がっちりと組みついて雷を落とせないようにする。

 

「よもや、私が刀の力に頼った未熟者とでも?」

 

だが頭突きをしてきて顎が跳ね上げられる。

僅かに生まれた隙間に拳を捻じ込まれて、回転力で弾き飛ばされた。

 

「ぐっ……」

 

距離を開かせたと思ったら一撃が飛んでくる。

鋭い刺突が頬を掠める。

それを弾くが相手もそれを承知で回転突きなども繰り出してくる。

 

「少しでも足掻こうとするのは認めよう、耐えたのも認めよう」

 

斬撃を繰り返しながら、徐々に押し込んでくる。

それを読もうとするが、踏み込まれてしまい距離を無くされる。

間合いの有利性はすでに無くなっている。

 

「しかし私の卍解はその程度で推し量れるものでは……」

 

いつの間にか傷が増えている。

レイピアの速度が近接では見抜けていない。

そして上に上げると同時に体が動けない。

体から流れた血と体を絞めあげる鎖状の霊圧が原因だった。

 

「断じてない!!」

 

その言葉と同時に極太の雷が降り注ぐ。

俺は雷に打たれたまま、塔から落ちていった。

流石にもはや限界だったのだろう。

傷はもはや完全に開き、血がまるで雨の様に降り注いでいくのだった。

 

.

.

 

「流石は元柳斎殿の右腕……伊達じゃありませんね」

 

そう言って雀部副隊長を称賛する。

まさかあんな能力とは思っていなかった。

それ以外も高い水準。

苛烈なまでの忠誠心に隠れているが、実際の戦闘能力は隊長並み。

間違いなく今の副隊長とは一線を画す次元だ。

 

「当たり前じゃ、そしてわしもここでお主を倒して頭を冷やしてもらう」

 

杖が刀へと変わっていく。

百年以上前を思い出す。

あの時から微塵でも力が落ちているかどうか。

 

「冷やすも何もこっちは元々冷静ですよ!!」

 

刀を打ち付けあう。

火花は散って高い音を奏でる。

蹴りを繰り出しても腕で受け止めてくる。

 

「『万象一切灰燼と為せ』」

 

『流刃若火』の解号で遂にその全てをさらけ出す。

そして刀を雀部副隊長に向ける。

 

「長次郎、離れておれ」

 

その言葉に頷いて去っていく。

俺が待ってくれる保証は無いだろうに大胆だな。

 

「お主は敵対する眼前の存在に全てを注ぐことが有る」

 

じゃから長次郎をあそこで狙う訳が無い。

そういう確信が有ったからじゃ。

そう言われるとむず痒いな。

 

「じゃあ、始めましょうか」

 

こっちが瞬歩で詰める。

速度で上回れないようにする。

飲まれないようにするという意気込みだ。

 

「ぬっ!!」

 

それを受けるもこっちの太刀の間合いでうまくやれない。

こっちが届いても向こうは届かないのだから。

 

「『松明』」

 

炎で包み込んでいく。

しかしそれでどうこうなりはしない。

 

「かあ!!」

 

刀を振るって払い飛ばす。

そして踏み込んで斬撃を放つ。

髭に僅かに掠っていく。

 

「やるものじゃな」

 

そんな事いうか。

今の一瞬で髭程度で済ませたくせに。

 

「こんなことやってる場合じゃないですけどね」

 

調査が本来の目的。

其れだというのにここで足止めを喰らう。

 

「こっちは戦闘狂ではないのでここらでお暇させていただきますよ」

 

刀を向けて宣言する。

それは許さんというように攻撃してくる。

火を纏った斬撃。

 

「『撫切』」

 

それをあえて前に進んで受ける。

そのままこちらの刀で刺し貫きにいく。

 

「ぐっ……」

 

隙だらけの腹部に突き刺さる。

今の一撃で決めたという残心が良くない。

俺もまた普通ではない男だ。

 

かつて隊長だった男。

護廷十三隊の隊を一つ預かり、命を背負った。

そんな男が……

 

「そう簡単にやられるとでも?」

 

見た目で判断したのか?

あの山本元柳斎が。

 

「見くびった分は頭冷やしてもらいましょうか」

 

六連続の『禁』で動けなくする。

数分持つかどうか。

その間に逃げ切ってしまおう。

 

「ぬぐぐ……」

 

霊圧の差が滅茶苦茶にあるわけでもない。

飛び降りて英を回収しようとするも四番隊に連れていかれていた。

 

「これで散開したか」

 

後はもう一度朽木隊士の救出への突入。

それでいいとは思えない。

四十六室が何かを仕掛けてくるだろう。

 

「あの場所でも行くか……」

 

首を鳴らして向かって行く。

地下に有る浦原謹製の場所。

かなり広々とした場所。

身を隠すには十分だろう。

 

「先客がいたか……」

 

そこに居たのは四楓院隊長。

懐かしいものだな。

 

「お主……斑鳩か?」

 

その言葉に頷く。

すると近寄ってきた。

 

「なぜこのような姿に……」

 

嘆いている。

この姿になったのは自然な流れ。

食事をとれず、眠れなくなった己の心の弱さ。

 

「あの人や貴方達が安寧を手に入れているのか、満足な食事ができているか分からないのに貪れない」

 

そう思って禁じているといつの間にか精神が崩れていった。

そして体はあの人の誕生日以外の食事を拒んでしまった。

きっと探すための活力的に心が許したのだろう。

眠る事はかれこれ百年、あの夜からできてはいない。

 

「真面目じゃの」

 

そうは言うが俯いている。

俺はあの人が元気でいるかどうかだけが気になっている。

 

「ひよ里さんは元気にしていますか?」

 

それに対して無言。

自分で確かめろという事か。

それとも……

 

「聞かない方が良かったj

 

それだけ言って座り込む。

黒崎君が『卍解』を手に入れようとしている。

けじめか何か朽木白哉自身からの果し合いだ。

 

「懐かしいものだが三日を超えての運用は未知数ですよね?」

 

確かあれで浦原は『卍解』を習得して隊長になった。

緊急なものとしては選択肢としては問題ない。

これで具象化まで至っていれば俺が何とかしてやれたが。

 

「かなりばらけていますから、一点を押さえられたら駄目という事は無いですよ」

 

四番隊に薙刀使い。

七番隊に大男。

九番隊に滅却師。

そして動き回っているのは海燕と岩鷲君。

後は『懐刀』と人間の霊圧。

十番隊に既にもう一人の『懐刀』は戻っていた。

 

「流石にこっちの調査の邪魔になりそうなら味方側でも交戦しないといけないんで辛いんですけどね」

 

隊長が承認してくれていても副隊長が嫌がっていたら意味がない。

其れで亀裂を入れてしまったら問題だからな。

 

「ちょっと体休めます」

 

大の字になって深呼吸をする。

眠気は来ない。

おかしなもんだ。

あの日から会えずじまいだった面子の一人が元気だったというのに。

 

「温泉があるぞ」

 

浦原が作った温泉か。

貴方が絶対に揶揄ってくるからお断りだ。

その後でなら入らせて貰う。

そう言って黒崎君を見る。

 

「しかし粗削りだな」

 

霊圧を見る限りは隊長格並み。

更木の悪癖故に勝った形のようだが。

上昇幅はかなりのもの。

潜在能力の高さが魅力という訳か。

 

「何とかなったらいいが……」

 

それだけ言って刀を抜く。

有る予感を感じている。

その予感を裏切れない。

素振りを始めた。

 

「修行の邪魔になるからやめてくれよ」

 

黒崎君に言われた。

どうやら風切り音が耳障りだったようだ。

後は霊圧を常に感じているのが嫌だったんだろう。

 

「分かったよ」

 

精神統一を始める。

頭の中で刀を打ち付けあう。

相手は当然のごとく更木を選択。

 

気が付いたら一日が終わっていた。

手汗はびっしょり。

相も変わらず想像の中でも化け物じみて強い。

風呂に入ってさっぱりさせる。

山本総隊長に斬られた傷が癒えていく。

 

「んっ……?」

 

気配を感じる。

これは阿散井か。

 

「あんた誰だ?」

 

あっ、この姿を見せるのは初めてだったか。

こほんと咳払いをした。

 

「斑鳩だ、阿散井副隊長」

 

そう言うと驚いた顔になる。

全然想像した姿とは違っていたのだろう。

もしくはこの体に驚愕したか。

 

「お前がここに来たって事はよくない知らせを持ってきたってわけだ」

 

それは図星だったらしい。

どうやらさらに刑までの時間が短縮。

なんと……

 

「急がないといけないな」

 

そう言って出ていく。

その間に話を聞く。

雛森副隊長の脱走。

市丸と日番谷隊長の小競り合い。

 

「『天挺空羅』」

 

其れで全員と通信を取る。

集合先は決まってはいない。

しかし、調査上東仙と狛村は二人集まってほしい。

 

「気を引き締めていこうか」

 

頬を叩き、闘志を燃やしていく。

きっと、その先にある悲しい動機。

止まれなかった馬鹿真面目な男の慟哭を聞くだろう。

約束を違えはしない。

これからどんな悪事に手を染めようと……

 

「俺はお前を見捨てない」




二部主人公のゾンビタイム終了。
もとい、長次郎の輝く時間終了。
四楓院夜一と再会。
変貌してしまった理由を細かくしました。

指摘などありましたらお願いします。

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