ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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原作とは違う動きのようなよく似た動き。
本当はどっちにするか迷いました。


『懺悔 - Repentance - 』

ついにこの日が来てしまった。

阿散井恋次と朽木白哉がぶつかっていた。

救う意思はあっただろうがお互いそれを知らないゆえの衝突か。

軍配は朽木白哉に上がった。

どうやら『卍解』を習得していたが、相手の『卍解』にやられたという所か。

 

「あっちに構ってはいられない」

 

いつの間にか抜け出していた黒崎君の一団が徒党を組んでいる。

そこに更木の霊圧と『懐刀』。

さらには海燕の分まで。

 

「厄介だな」

 

黒崎君や隊長と『双極の丘』でぶつからせるわけにはいかない。

少し遅らせないと意味がなくなる。

調査も一応含まれているんでな。

 

「卯ノ花隊長には既に伝えていたから怪我人の治療などして向かっているだろう」

 

確実に逆賊はいる。

しかも四十六室の決定が右往左往している事から全滅しているかもしれない。

それができるのはただ一人。

そいつの相手は気を付ける様にだけ伝えた。

 

「あいつら、こっちの意思に関係なく動いているんですけど……」

 

五人が集まって動いている方向へ向かう。

そしてその方向に更木たちも向っている。

これは非常にまずい。

俺があいつを食い止めないと。

 

「おい、隊長格が雁首揃えて隠れてんじゃねえ!!」

 

その言葉から挑発をする更木。

それに触発されるように五人が屋根に立った。

俺は直進して屋根に上っていく。

その過程で更木が五対一とかを言い出した。

 

「何を勘違いしてやがるんだ、更木」

 

屋根を飛び越える。

全員の視線が俺に向いている。

 

「俺とお前の一対一に決まっているだろう」

 

そう言ってくるりと一回転して着地を決めた。

その言葉に気をよくしたのか笑みを浮かべる。

だがそこに水を差す奴が一人。

 

「ふざけんな、あんたに恩はあるがうちの隊長とやれる権利なんざあるかよ!!」

 

班目三席がそう言ってずんずんと歩いてくる。

その面めがけて前蹴りを放つ。

 

「やかましい、やるかやらねえかはその隊長が決める事だろ、ハゲ」

 

そのまま顔面を蹴りぬいて飛ばしていく。

立ったところを見ると問題は無いようだが膝が笑っている。

異存はないよな?

 

「東仙は四十六室の方へ、狛村は双極の丘へ行ってくれ」

 

その命令に副隊長はいらだちの顔を見せる。

確かに上下関係で言えば有り得ない光景だ。

しかし今呼ばれた二人は理解して動こうとする。

ただ、もたもたとして時間を稼いでいるというよりはこちらが気になるといった感じだ。

 

「……お前らにとって俺はそんなに頼りないか?」

 

その言葉に頷きはない。

しかし分かっている。

自分の肉体があの頃とかけ離れている事。

それが不安を感じさせている事。

 

「信じてくれ、必ずここで食い止める、合流するまでの話だけどな」

 

霊圧で示す。

今この時だけでもあの日のように。

こいつらを安心させられる力が有れば良い。

 

「分かりました……」

 

狛村がそう言って去っていく。

射場もそれに従う形で向かって行く。

 

「ご武運を……」

 

東仙も去っていく。

どこか声が震えていた。

綱彌代と檜佐木も同様に去っていった。

 

「で……どうする?」

 

更木に問いかける。

あいつらを追いかけるか。

はたまた俺と戦うか。

 

「決まってんだろ」

 

眼帯を外す更木。

まさか、副隊長相手に外すはずがないと思っていたのだろう。

ましてや相手は研究者揃いの十二番隊。

綾瀬川と班目が驚く。

 

「てめぇを倒して、あいつらを追いかける!!」

 

刀を抜いて更木が答えを返す。

良いだろう。

それができるほどの早期決着。

また消耗の無い戦いができるのならな。

 

「勇ましい言葉な事で」

 

此方は両手で構える。

そして次の瞬間、互いに踏み込む。

一撃で息絶える鋭さ。

一撃で決まる重さ。

その要素を持ちえた斬撃を俺も更木も繰り出す。

 

「ちっ!!」

 

刀越しに互いの視線がぶつかる。

火花を散らしながら押し込む。

それを嫌って弾かれるように一歩下がる。

 

「逃がすかよ!!」

 

突きを繰り出す。

それを見てから更木は突っ込む。

やはりそれこそがお前の在り方だよな。

 

「喰らいな!!」

 

喉元を突いてくる更木。

その一撃に身を屈め、側頭部に喰らいながら顎に対して切り上げる。

それを横にずれて頬を掠める。

更木の頬に十字の傷が出来上がった。

 

「楽しいなぁ!!」

 

大きな声で叫ぶ更木。

それに対して笑顔で返す。

 

「いつものように静かなおまえの方が良いな」

 

そして俺は髪の毛を掻き上げる。

そこには横一文字の傷がある。

 

「この傷が疼いて仕方ねえよ」

 

そう言うと更木は睨むような笑みで、同じようにうっすらと残る傷跡をなぞる。

そして、大きな声で言い放ってきた。

 

「疼くのがてめぇだけだと思うんじゃねえよ!!」

 

再度、火花が散る刀の交差。

切り傷は些細なものではあるが徐々について行く。

それは俺だけではなく更木も同様。

 

見届けようとしているのか、視線が有る。

だがそれは驚きも含まれているような感じだ。

 

「ふっ!!!」

 

力を振り絞り、更木の刀を大きく弾き飛ばす。

そして体勢を崩れさせると同時にこっちの足を引っかける。

その一連の動きで更木に大きな隙を作らせた。

 

「かあっ!!」

 

突き刺す一撃。

それをどうにかするために更木はなんと地面にあえて頭突きをする。

その反動で倒立をしてから体勢を整えた。

 

「隙だらけだなぁ!!」

 

更木が切り裂いてくる。

脇腹に当たりそうになるが跳躍する。

腕に乗る形で回避。

 

「見た目が少し変わりやがった……」

 

更木はそう言っているが徐々に感じている。

枯れていた体がみずみずしくなっていく。

細胞が打ち震えている。

 

「つくづく根っこでは同類なんだと思えるよ」

 

切欠はあの人が死を予感させる卍解を使用したこと。

俺との今までの鍛錬でもやらなかったことをしてきたのはきっと予感が有ったのだろう。

あの日の強さを取り戻していく予感が。

そして現在全盛期を迎えたがゆえに、それに上乗せされる強さについても。

その足掛かりを作ったのだ。

 

「お前との戦いで自分をわずかでも取り戻そうか」

 

こっちから踏み込んでいく。

一瞬、刀の煌きが通り過ぎる。

正体は更木が振ってきた横薙ぎの一閃。

 

「それは無意味」

 

かわしたわけではない。

完全な空振り。

その隙を逃すわけがない。

 

「かあっ!!」

 

こっちが脇腹を切り裂く。

その返しで刃が襲い掛かる。

 

「しゃあ!!」

 

相手の雄たけびと共に肩が切り裂かれる。

さっきまでは掠り傷だらけだった。

しかし、わずかな時間でも目を離せば状況は一変。

互いが血しぶきを舞わせながら切り結んでいく。

 

「けぇえええええ!!」

 

俺は目の前の存在が煌くご馳走に見え始めていた。

百年前の自分が徐々に戻っている。

後はぶれの無い霊圧が有ればほぼ完璧だ。

 

「かああああ!!!」

 

その顔を見てさらに力を増す更木。

その目に映る俺の顔は凄惨そのもの。

『戦いこそ全て』というような笑み。

 

「しゃああっ!!」

 

羽織に血が滴る。

そんな中、ようやく朽木ルキアの霊圧が動き始めた。

そろそろ潮時だな。

 

.

.

 

「あの男は隊長をなんや思うとるんじゃ!!」

 

後ろを走りながら、鉄佐衛門が吼える。

無理もない。

しかしあのお方と儂との間柄を知ったらそうは言わんだろう。

 

「鉄左衛門よ、腹を立てるでない」

 

鉄左衛門を諫める。

大きな声を出して走っては体力の消費が有る。

そういうものは極力減らさねばならん。

 

「斑鳩副隊長に儂は大いなる恩義があるのだ」

 

死神のイロハを教えてくれた。

姿で怪訝な顔をするものを諫め、堂々とした振る舞いをさせてくれた。

若輩の自分には過ぎた席次。

更には『卍解』の習得。

 

「ならば返すが道理」

 

百年前の自分を恥じた。

あれだけしてもらっておきながら何一つできぬ自分。

そんな恥知らずがどの面下げられようか。

それから戒めの笠をかぶった。

 

「そう言っても相手は『あの』十二番隊の副隊長です」

 

とんでもない片棒を担がされそうになってるんじゃないか。

そう、鉄左衛門が忠告する、

確かに藍染の調査という事は何かしらそこに付随するものは有る。

 

「だが馬鹿騒ぎになろうともそれはそれで良いではないか」

 

既に波乱だらけなのだからな。

そう言って歩を進めていく。

あの日のような高揚感がそこにはあった。

 

.

.

 

「東仙隊長?」

 

あれから俺は東仙隊長と一緒に走っていた。

綱彌代三席が前を走っている。

東仙隊長の速度が遅いのだ。

まるで何か悩みを抱いているような顔をしている。

 

「……すまない」

 

いきなり飛び出したのは謝罪の言葉だった。

そして東仙隊長は完全に止まってしまった。

 

「私は尸魂界を裏切るつもりだったんだ」

 

 

「君ならわかるだろう……」

 

綱彌代三席がその言葉に頷く。

一体どういう事なのだろう。

 

「理解もできていた、あの人がいなくなれば私が憧れた人が壊れるという事は」

 

東仙隊長が憧れていた?

斑鳩副隊長に?

有り得ないと思いながら話を聞く。

気になったが『あの人』とは何者なのか。

 

「憧れた人はもういないのならばここにいる意味もないと思った」

 

今いる斑鳩副隊長ではなく、過去では憧れた。

今や、その面影もないという事なのだろう。

燃え尽きた心で悪を成してしまおうと投げやりだったのかもしれない。

 

「しかし過ちだったよ」

 

自嘲するような笑みに哀しみを覚える。

それほどまでに自分のしようとしていたことに後悔しているのだろう。

だが未然に止まれただけよかったのかもしれない。

そう呟いて表情を引き締めていた。

 

「私があの日に何もできなかったことを棚に上げて逃げていただけだ」

 

強く拳を握る。

そこには自分への憤りやそれ以外の感情が混ざり合っているようだった。

 

「背中で感じた、私のやるべきことを」

 

今から成すことが償いだ。

そう呟いて速度を上げる。

徐々に俺や綱彌代三席を追い抜いて先頭に立った。

 

「最悪の事態に備えておいてくれ」

 

霊圧の感知をするように東仙隊長は言ってくる。

言われたように行うとおかしさに気づく。

雛森と市丸隊長が動いている。

そして吉良と乱菊さんが交戦。

一刻を争う事態になりつつあった。




どっちにするか迷ったという前書きの意味は東仙の動きです。
ここで裏切りを止めるか、裏切ってから市丸みたいな動きで最後に切り裂くか。
ここで止めておいた方が良いと思ったのは、普通に虚化されると本作の東仙では蟷螂被りが発生するからです。

何かしら指摘が有りましたらお願いします。

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