ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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今回で尸魂界編、終了です。
一部主人公がかかわる場所以外は原作に沿う形が多い分、かなりの駆け足で終わらせました。
二部主人公は流石にまともに体動かせないかと。


『収束 - convergence - 』

「逃げるのか!!」

 

更木が叫ぶが関係ない。

こっちは食い止めるのが仕事だ。

俺は四十六室の所へ向かう。

 

「待ちやがれ!!」

 

刀を振って建築物を切り裂く。

それはまずいと思ってあいつに対して『卍禁』を六連続で放つ。

その全てが直撃して何とか足止めできる。

 

「この騒動の後だったら続きしてやるよ!!」

 

そう叫んで速度を上げる。

卯ノ花隊長たちの霊圧感知を行って、向かっている方向を突き止める。

其れより先にたどり着くだろう。

 

「東仙たちはもう少しだが……」

 

ギンと雛森副隊長が一緒に居るというのが解せない。

ギンの奴、ずいぶんとえげつない事を考えているじゃないだろうな。

そう思うと、最短の道を使わないわけにはいかない。

 

「とは言っても空中に浮けばいいだけの話だけどな」

 

『破道』の五十八である『闐嵐』で自分を巻き上げる。

それから『吊星』を使って作った床を踏んで進んでいく。

本来は霊圧を伸ばすが今回は特に必要がない。

 

「東仙たちよりも先に入れたな」

 

遮蔽物がなければ当然こちらが速い。

それはもはや仕方のない事だ。

そして雛森副隊長が入っていく場所にギン以外の霊圧を感じる。

 

「まずいな……」

 

藍染の霊圧も有る。

あいつの事だから自ら手にかけるつもりだ。

できる事なら吉良や誰かと同士討ちになってくれるのが望ましかったのだろう。

理解しておけばあいつのやり方を計算できただろうに。

 

「憧れだけではその人物の全てを見通すなんてとてもとても」

 

するすると入っていく。

途中で血の臭いが有った。

 

「四十六室が全滅したか」

 

口元を歪める。

喜びを内心に秘めて霊圧のある場所に向かう。

わざわざ別の方向から奥に入っていくとはな。

 

「んっ?」

 

ギンが気配に気づくが遅い。

こっちはすでに鞘から抜いている。

 

「更木隊長との勝負を途中で投げ出したんか」

 

お互いが刀を打ちつけながら言う。

そして指を雛森副隊長に向ける。

 

「『鎖条鎖縛』」

 

近づこうとするのでそれを止める。

また、こちらに恨めしげな視線を送ってくるが無視をする。

 

「それは許容できないなぁ、藍染」

 

首をぐるりと向けて言う。

その視線の先には死んだと見せかけていた藍染がしっかりといた。

 

「ギン、刀を収めたまえ」

 

そう藍染が言うとギンが鞘に刀をなおす。

俺もそれに倣って鞘に収めておいた。

 

「雛森副隊長に後悔の念が無いように亡き者にしようとしてただろ」

 

それに対して同意の眼差しを送ってくる。

まぁ、それに対してはどうこういえない。

 

「お前は止まれなかった、それだけが真実だ」

 

俺も止めようとあの場所で待ち続けた。

あのわずかな時間のすれ違いが続きすぎた。

ありとあらゆる因縁を抱えていく形で。

 

「俺はお前を見捨てない、しかし……」

 

少しは痛い目を見てもらわないとな。

こっちも百年の間、会わずにこんな真似をされて少しは苛ついているんだ。

 

「分かっていますよ」

 

刀を抜いた状態で互いが近づく。

ただ、考えれば考えるほどここは面倒だな。

 

「まあ、外に引きずり出せばいいんだけどな」

 

指をクイと上げる。

それを合図に破道が発動。

俺の独自の破道だ。

 

「『鯨呑』」

 

鯨が藍染の足元から現れて呑み込む。

呑み込む事で動きを止める縛道のようにも見えるが、この膨大な霊圧で中から焼き尽くすというものだ。

 

「これで終わるわけないよな」

 

内部から藍染が平然と打ち破って出てきた。

流石に焼き尽くされてはいない。

少し服が焦げた程度か。

 

「いや、今の一撃で並の隊長なら終わっていますよ」

 

そう言って藍染は首を振る。

お前、そんな事言っているが今のは自分が『並の隊長』より優れていると言っているようなものだぞ。

 

「『豪脚乱蹄』」

 

俺が腕を下げると次は馬の蹄が雨霰の如く降り注ぐ。

藍染は刀で弾き続けるも徐々に腕が下がっていく。

その一瞬を縫う様に俺は踏み込んだ。

 

「くっ!!」

 

斬撃が来ると思っていたのだろう。

刀で防御をしたその隙が狙い目。

胸倉を掴んで力一杯に投げ飛ばした。

 

「その体格からは想像がつきませんね…!?」

 

着地をした藍染へ間髪入れずに体当たりをする。

そのまま押し出されるように建物の外へと出ていった。

流石にギンも驚いたのか、こっちを見ている。

そして雛森副隊長がギンの隣にいた。

いや、すぐに去って行けよ。

 

「『円閘扇』で防がないとは、ずいぶんと甘く見られているな」

 

手招きをして向かってくるように挑発する。

この言葉に苦笑いをして藍染も答える。

 

「そんな時はまた別の動きをしていたでしょう?」

 

その言葉ににやりと笑って返答する。

当然そうするさ。

お前相手ならいくらでも張り巡らせる。

勝てる可能性をわずかにでも増やすためにな。

 

「雛森!!」

 

日番谷隊長が辿り着いた。

そして市丸と交戦はせずに雛森副隊長を回収。

止める必要もないと思ったのだろう。

 

「檜佐木副隊長が先頭で来たか」

 

霊圧で分かる。

日番谷隊長が渡して自分も戦列に加わろうとする。

 

「やめときや、日番谷隊長」

 

勝たれへんから。

それだけギンは呟いた。

 

「茶々が入ったが、始めるぞ」

 

踏み込んでいく。

突きを繰り出すがいなしてくるりと藍染は回転。

それを返すように斬撃が迫る。

 

「まだまだぬるい」

 

指でつまんで止める。

足払いで体勢を崩しにかかる。

 

「それは無理ですよ」

 

後ろに踏み込んで留まる。

そして掌をこちらに向けた。

 

「『飛竜撃賊震天雷砲(ひりゅうげきぞくしんてんらいほう)』」

 

その一撃に対して行動する。

胸の内側の袋をまさぐり、あるものを掴む。

それを握り締めた後に、腕を前に出して耐えきる。

 

「破道の九十六『一刀火葬』」

 

焼け焦げた義骸の一部。

ばらばらになっている指を投げつけて唱える。

それを見た藍染はごろりと後ろに転がる。

次の瞬間に火柱が上がる。

それも六本もだ。

 

「流石は義骸の作成技術はあの涅隊長を超えていると言われるほどの腕前……」

 

義骸を部位別に作るなんて赤子の手をひねる様なものですか。

そう呟いてきたのでこくりと頷く。

 

「まだまだいくぜ」

 

腕を二本投げる。

藍染がそれを避けるがそれにこちらが細工をする。

 

「『鎖条鎖縛』」

 

投げていた義骸の腕に巻き付けて引き寄せる。

そして後ろから藍染へ襲い掛からせる。

 

「『一刀火葬』」

 

投げていた義骸の腕が罅割れていく。

藍染が火柱を断空で防ごうとする。

壊されてでもなんとかする腹積もりか。

 

「甘いんだよ!!」

 

地面に叩きつける形で手前で火柱を噴き上げさせる。

更にここで追撃だ。

 

「『闐嵐』」

 

風が藍染を取り囲む。

炎を巻き込みながら徐々に大きく風の檻が出来上がる。

 

「『黒棺』!!」

 

藍染が重力でこちらが放っていた風も炎もまとめて押しつぶす。

そしてこちらを一歩後に引かせてきた。

 

「流石だと思いますよ、少なくともあの日から弱くなったというのに」

 

安定感を失っているという事が問題なのだ。

今の自分の上限は昔と同等。

下限はおおよそ副隊長ぐらいである。

本来、肉体の全盛期が今なので昔に比べて少し強くなっているはずだ。

心身の不調から来る枷が自分をその状態にはさせないのである。

 

「しかし私には逃れる術が有る」

 

そう言って藍染が取り出した紙の束。

俺はこれを知っている。

使えるのは一握りというとんでもない代物だ。

 

「禁術である『空間転移』を合法の上で可能とするものです」

 

ニヤリと悪い笑みを浮かべている。

俺か更木、山本総隊長に遭遇した時の奥の手というわけだ。

 

「しかし使えるのは隊長が備える霊圧の一定を超えているものに限る」

 

目の前で勢いよく広げていき、ギンと自分を囲んでいく。

そしてそのまま束が閉じていく。

東仙の気配は紙の束を取り出した時点で、場所を把握したのか向かっていた。

 

「『双極の丘』にあいつは行った」

 

それだけ言って俺も向かう。

雛森副隊長は虎徹副隊長が辿り着いたので檜佐木副隊長が預けた。

卯ノ花隊長も一度怪我をした隊士たちを運ぶため、再度見回るらしい。

 

「……間に合わなかったか」

 

向かっている最中に朽木ルキアの霊圧と狛村の霊圧の減衰を感じ取った。

一瞬だったから二人とも存命であることは変わりない。

辿り着いたころには阿散井副隊長と黒崎君が重傷だった。

 

「全く……逃げるんじゃないよ」

 

このまま黒崎君を気絶させたままの方が良い。

『鏡花水月』の対策を彼は打ててはいないから。

刀で首筋を切り裂きに行くがギンが阻む。

鞘に一瞬で刀を収めてギンの髪の毛を掴む。

 

「ガキの割には……おいたが過ぎるなぁ!!」

 

膝蹴りを顔面に叩き込む。

放して次は腹部に鉄拳を叩き込む。

手応えが良かったのだろうか、一瞬だけギンの体が浮いた。

 

「やりはるなぁ」

 

腹を押さえているギン。

そんな状態に指を向けて縛道を放つ。

 

「『六杖光牢』」

 

体を囲んでいくがすぐに罅割れていく。

これはまさか……

 

「無理やでぇ」

 

ギンはあっという間に解放されてしまう。

そして逆襲で藍染がこちらに掌を向けている。

 

「『五龍転滅』」

 

大地が割れて俺の周りに龍が出てくる。

それに対してこちらも九十番台の破道で対抗する。

 

「『黒棺』」

 

『疑似重唱』で連続の発動。

それで竜が押しつぶされる。

 

「はっ!!」

 

居合の要領で藍染が斬撃を繰り出そうとする。

だがその一撃は刀を抜くことはできなかった。

 

「これはこれは……懐かしい顔ぶれだな」

 

四楓院元隊長と砕蜂隊長が抑え込む。

余裕を崩していない藍染。

だがこの二人の速度ではどうも動かせはしない。

気づけば全員に囲まれている状態で藍染の真後ろには東仙が居た。

 

「要、……そういう事か」

 

この土壇場で手のひらを返された。

しかしそれは予想していたのだろう。

 

「君はあの背中を見つけたのだな」

 

納得したような笑顔で全く動くような抵抗をしない。

だが次の瞬間、口元が歪んでいた。

 

「だが一手遅かった」

 

そう言うと四楓院元隊長と、砕蜂隊長が離れる。

東仙も飛びのくように去っていった。

 

「いや、それよりはこっちが一手速かったぞ」

 

その言葉に不思議そうになる藍染。

俺がギンの腹部を殴った拳に何かを握りこまなかったとでも?

すぐに俺の視線がギンにある事に気づく。

そして藍染とギンを囲むように反膜に閉ざされる。

 

「これは……!!」

 

絶対防御は外側に対してのもの。

だが内部ではどうなる?

ただ、籠に自分から入ったも同然。

 

「置き土産に喰らえよ、『一刀火葬』!!」

 

逃げ場のない一撃。

火柱は圧縮された形で四角柱に立ち昇る。

しかし、次の瞬間俺が目にしたのは……

 

「やはり、ギンが指摘した通りでしたね」

 

服を焼き焦がされただけの藍染であった。

皮膚からも煙は上がっているが大した威力ではなかった。

 

「貴方の霊圧がぶれてしまったんですよ」

 

そう言って、浮竹隊長の問いに答えて宙に浮かんでいく。

また、いずれ会う事になるだろう。

決着はつかなかった。

 

「お前はあの日に囚われている」

 

俺も人の事を言えた柄ではない。

あの日から掛け違えたものをどうにかするために動いた。

誰かが止めてやらないといけない。

 

「それをできるのはもはや片手で数えるだけだ」

 

そしてその中でかつて、藍染から信頼を勝ち取れたのは?

……きっと、俺だけだろう。

ならば俺が止めるべき役目だ。

 

「なんで東仙にはあの日の俺の背中が見つけられたのか、そしてなんでお前には見つけられなかったのか」

 

今度はその理由を教えてやる。

だから、その時までは互いに健やかでいよう。

そう、心で呟いて今回の騒動の収束に向かうのであった。




更木と戦い、藍染と戦うとかハードスケジュール。
一部主人公は浦原やマユリと比べて研究では義骸と義魂にかなり偏っています。
二人が万能型の分、特化型という感じです。
小説版の痣城みたいな方法で『一刀火葬』の連射をしました。

次回以降からようやく本作のヒロインの再登場が秒読みです。
指摘などありましたらお願いします。

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