次回以降は『虚圏』編です。
第一部から第二部のような時間の開きはありません。
「いい汗かいてんなぁ」
そう言って汗をぬぐう。
騒動から数日が過ぎた。
重傷者も少なかったお陰ですぐに開放された。
藍染とギンが抜けた分は全員で支えていく形でなんとかする。
「まあ、それは割かしどうでもいい」
俺は海燕に頼んで黒崎君や朽木ルキアとその縁深い人物、そして旅禍であった面子全員に集合をかけてもらった。
海燕の実家で話をすることになったので向かって行く。
「日の光を外套無しで浴びるのも百年ぶりだな」
ざわざわとする空気を感じる。
自分の姿をかつて知っているものからすれば奇異の対象。
しかしそれはどうでもいい。
「邪魔するぞ」
そう言って入っていく。
広間に出ると全員が既に揃っていた。
「わざわざ集まって貰ってありがとうな」
そう言って中心に座る。
昔に見たことが有る志波空鶴も驚いていた。
どいつもこいつも同じ反応するんだね。
「今回の事については謝ることが出てきた」
そう言うと全員がこちらに視線を向ける。
一体何を話そうというのか。
朽木ルキア奪還のために動いたりしていたのは分かられている。
どこに謝る要素が有ったのか全員が思案している。
「朽木ルキアが使用していた特殊な義骸はかつて俺の制作したものだ」
浦原の奴が改良をしなかったのだろう。
粗悪ではないしかなり神経を尖らせて作ったもの。
手を加える必要がないくらいの完成度が有ったのだろう。
「あれを使って『崩玉』を保護するのは藍染の目から反らすために必要なものだった」
結果としては実を結ぶ事は無かったけどな。
藍染があの日からこの道に進むのであれば最大限、秘匿を行う必要性が有った。
その結果、人型の義骸に埋め込むという手段を取っていた。
「その結果が朽木ルキアに埋め込まれて、藍染に目をつけられたというわけだ」
すまなかった。
そう言って俺は頭を下げる。
「でも使ったのは浦原さんだ、あんたが謝る事じゃ……」
黒崎君がそういうがそういうものではない。
使うにも作らなければそうはならないのだから。
まあ、浦原の事だから遅かれ早かれ制作できていたとは思うが。
「使用したのは浦原だが作成者は俺だ」
だから責任の一端は俺にもある。
それだけではなく藍染の目的も分かっていたわけだからな。
「箱のような形で保存しておけば朽木ルキアから抜き出す事もなかっただろう」
そこは完全に過ちだった。
人型にしておけばあまり気には止めないだろうと安直だった。
その結果、怖い思いをさせてしまったのだから。
「だがその人型で分からなくてもいずれ私が浦原を頼れば……」
まあ、そうなっても藍染には分かられていただろう。
藍染の知恵や洞察力は化け物じみている。
「藍染相手には上手くやり通す術は存在しない」
隙もなくやろうとして失敗した人を知っている。
正しく理解をして一人にしないように振舞うのが一番適している。
「これは今後俺が総隊長に進言する内容であり、藍染の目的だが…」
肝心な部分はぼやかして話す。
様々な種族の霊圧を統合したような万能の存在への進化。
それによって全ての死神に安寧をもたらそうとしている。
しかしその犠牲はとてつもなく大きなもので、受け入れられはしない。
「なんで藍染の心をあんたは分かるんだ?」
元々は同じ穴の狢だ。
理解者を得て変わった藍染。
それと同じように俺もあの人や周りの人のおかげで変わった。
もしそれがなければ、俺で既に裏切られていただろう。
「藍染は元々昔の事件を起こす前はこんなことをするつもりはなかった」
百年以上も前の藍染は元々真面目過ぎる男。
仕事も熱心で全ての要素が優秀。
当時でも一つとっても隊長格を超えていた。
「正しくお互いが分かり合えていたからこそ、目的を知ったうえで止まっていたのさ」
だがそれを早とちりで全て台無しにしてしまった。
藍染は罪悪感とそして何が有っても犠牲から目を背けないために。
悪人へと変わってしまった。
「不真面目で踏みにじれるならばのうのうと顔を出して俺から説教受けて止まれただろうよ」
馬鹿なくらいに真面目だった。
だからこそ最も過ちを知られたくないものに知られた時、奴はもはや諦めたのだ。
真っ当な道で光を浴びながら生きる道を。
「藍染もある意味被害者なんだ」
誰かにそそのかされたのだ。
まるで原初の人が蛇にささやかれたように。
自らの決断ができぬほどの疑心を煽られたが故に。
「まあ、それでも今回の事件とこれからの目的は見過ごしていいものではない」
止められる者が止める。
藍染の行為が成就した時に失うものはきっと大きなもの。
大量の『魂魄』と『重霊地』。
現世において地図からまるきり消えるだろう。
「君達の場所に虚や例が非常に多く出ると自覚しているならば他人事じゃないからな」
これらが出るというのは『重霊地』の可能性があるからだ。
そして藍染はこの間に化け物のような強さになる。
その強くなった力で排除にかかれば地獄絵図の完成だ。
「その被害を無くすために居る事は否定しないが絶対を保証してやれない」
万全の態勢を整えてもそれで防げるか否かと聞かれた時、俺は否と答える。
規格外の存在が居るだけでその思惑は崩れるからだ。
「帰る前に驚かせて悪いが、今後はそう言った巻き込まれ方もあり得るというのを覚えておいてくれ」
まあ、一度戻って手続するだろうがゆっくりしてから来るといい。
それだけ言って十二番隊の隊舎に戻っていく。
「あんな大きなのを活けないでくれませんか?」
阿近に言われて副官室の前に置いていた花瓶から花を少々抜いていく。
大きな花瓶に『365本』の薔薇を活けていたのだ。
雛森副隊長があんなことを言うからこそ心に正直に花瓶に活けてしまったのだ。
「おい、マユリ」
マユリに後ろから話しかける。
百年前と同じ呼び名。
この時点で察したのか、何かを投げ渡してくる。
「現世での研究成果を盗んできてくれたまえヨ、あの男に会うつもりなのだろう?」
こいつはまた無理難題を……
浦原を相手に仕掛けてへそを曲げられたらどうするんだ。
「あの旅禍たちは浦原の手引きで来ているだろうからな、奴らは重要な情報を提供してくれたよ」
しかし、それでも少し興味はある。
浦原の研究が一目見た程度で出来るようなものならば報告の意味も有りはしないが。
まあ、浦原の事だから本命はうまく隠すだろう。
「しばらくの間は阿近を補佐に頑張ってくれ」
そう言って駆けだしていく。
地獄蝶を人数分用意しておいた。
『死神』しか無理なものを品種改良した十二番隊独自の代物だ。
初めて彼らの居場所を補足した時にもこいつを使用している。
「待ってくれ!!」
全員が門に入ろうとするのを止める。
地獄蝶を渡すと同時に入っていく。
「あんたも来るのか?」
黒崎君が驚いた顔をしている。
当たり前だろう。
浦原にも話を聞かないといけないからな。
「十二番隊は任せておいたからな」
俺一人が抜けたところで駄目になる部隊ではない。
それに息抜きぐらいしてもいいんだよ。
百年間、不眠で年一の食事の奴なんだぜ。
「じゃあ、行くか」
そう言って踏み込んでいく。
前を走るのは四楓院元隊長。
すいすいと進んでいくが座標がおかしい。
「四楓院さん、このままだと空に放り出されますよ」
しかし聞く耳を持たない。
そのまま進んでいくと……
「やっぱりな」
上空へ放り出されていた。
そして落下をしていくが、その間にあるものが迫るのを感じるので回避する。
布が黒崎君たちを巻き取って球になる。
それを棍棒で打ち返そうとする馬鹿が居るので……
「失せてろ」
横っ面を殴って飛ばしておく。
まあ、この程度でやられるような馬鹿じゃねえだろう。
「さて……」
前に立って受け止めようとする。
しかし後ろから現れた気配に球ごと抱き留められそうになった。
「おおっと!!」
流石にそれは危ないので回避。
無事、その気配の主はなんとか球を受け止めた。
「握菱『元』大鬼道長か、驚いたよ」
名前を呼ぶと握菱さんは目を見開いた。
流石に分かられたか?
そんな事を考えていると、ある男が球の上に乗る。
すると全員が整列したような状態で解けていく。
「相変わらず面白いものを作ってるんだな、喜助」
後ろから忍び寄ると振り向く。
一瞬、顔は強張ったがへらっとした顔に戻る。
「一体、貴方の身に何が有ったんすか?」
そうは言うが分かっているんじゃないのか?
とにかく沢山聞きたい事もあるし、沢山言いたい事はある。
しかし、絞り出せた一言は……
「有難う」
感謝の思いだった。
僅か五文字の言葉にどれだけの心が詰まっているのか。
それを汲み取れないほどの男ではない。
「こちらこそ」
そう返して頭を下げてきた。
再会はあまりにもあっけなく。
しかし大きな意味を持つ邂逅になり得る。
そんな予感が胸をよぎっていた。
ジン太を初対面で殴りとばすという野蛮な振る舞い。
といってもあれを受け止めずに打ってしまおうとするあいつがおかしいかもしれませんが。
浦原と再会しましたが、ヒロインはまだ少し先になりそうです。
指摘などありましたらお願いします。