ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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100年前の同期が出てきます。
ヒロインは次回の予定です。


『第3部:造反大戦編』
『探索 -Treasure- 』


あの再会から次の日。

浦原が営む『浦原商店』に身を寄せていた。

流石に死神の服装はまずいという事で、浦原から俺の背丈に見合った作務衣を借りた。

掃除をして棚の整理。

店の雑用をしていると瞬く間に夕方。

この時間帯になれば子供たちが菓子を買いに来るらしい。

その言葉通り、すぐに一人の子供が店へと入ってきた。

 

「うわ、骸骨おじさんだ!!」

 

一目見るなりそう言って近づいてくる。

俺の顔をぺたぺた触ってくる。

骨の感触がほぼ直だから驚いている。

 

「お菓子買わないのかい?」

 

置いている場所を指さしてやる。

すると本来の目的を思い出したのだろう。

目につくものを籠の中に入れていく。

 

「えっと、会計は……」

 

小銭を貰って計算をしてお釣りを渡す。

手を振って子供が帰ろうとするからそれに対して手を振った。

無論、笑顔を忘れずに。

 

そしたら雪崩のように押し寄せてくる子供のお客さん。

それらを全員捌いているころには少しあたりも暗くなっていた。

 

「さて……探しに行くか」

 

そう言って立ち上がる。

店も終わりのようだし良いだろう。

 

「喜助、俺は今から外に出ていくからな」

 

二階に上がって喜助に言う。

研究をしているわけではないし、ごろりと寝転がっている。

人に任せてお前は何くつろいでんだ。

 

「……探すんですね」

 

そう聞いてきたから頷く。

頬をかいているが何か問題でも。

 

「今の貴方を見て気づきますかね?」

 

そんな事決まっているだろう。

お前は何を馬鹿な事を言っているんだ。

 

「気づくよ、あの人を甘く見すぎだぞ」

 

そう言って作務衣をはためかせて出ていく。

当然、あてはないのですたすたと歩く事しかない。

一応、浦原からは今日の給料という触れ込みで貰った。

年一に出る時に強運でそれなりの金は懐に舞い込んでいるんだけどな。

 

「しかし明るいな」

 

街中に灯りが有る。

それでなくても夜の目が利いている。

これでは昼間と同じくらいだ。

 

「これがコンビニエンスストアって奴か……」

 

じろりと見まわしてみる。

喜助の駄菓子屋とは違って手軽さが見受けられるな。

まあ、安い菓子を仕入れるにはあっちの方が向いているんだろうけど。

 

「んっ?」

 

雑誌の棚を見ると買わずに読んでいる人を見つけた。

後ろにはお菓子を入れた籠を持った人。

 

「あれはもしかして……!!」

 

近づいてガラスを叩く。

その音に驚いたのかこっちを見る。

髪形は変わっているし服装も違うが見つけたぞ。

 

「愛川さんと鳳橋さんだ!!」

 

入口の方へと駆けていく。

清算をしようとする二人を待ち伏せする。

 

.

.

 

「なんだったんだ、今の奴……」

 

いきなり物音がした方向を向いたらそこには異形が居た。

いや、虚とかで見慣れているが人型であれほどはめったなもんじゃないから驚く。

 

「骸骨みたいだけど眼だけは爛々と輝いていたね」

 

ローズがそう言ってコンビニを出ようとする。

そうするといきなり縛道が飛んできた。

 

「なっ!?」

 

俺とローズが避ける。

「『鎖条鎖縛』」の連発。

 

「いくらなんでもこいつはやばいぜ……」

 

街中だろうと関係なく喧嘩を売ってくる。

死神の中でも常識が欠如しているのか?

 

「きぇええええ!!」

 

奇声を上げての突進。

滅茶苦茶速いじゃねえか。

 

「ぐっ!!」

 

その一撃を回避する。

そして『天狗丸』を取り出して殴りにかかる。

しかしそれを片手で受け止めて俺を浮かせてきた。

 

「この膂力……!?」

 

そのまま地面を離れていく。

壁に向かって投げられた。

 

「ちっ!!」

 

その俺をローズが『金沙羅』で巻き取る。

一旦場所を変えないとな。

 

「ついてこれるなら来いよ」

 

そう言って二手に分かれて走り出す。

こっちを追いかけている。

強さから考えても、ただの死神ではない。

おそらくは戦闘狂だろう。

 

「ここまで来たら……」

 

しばらくは走っていた。

相手を引き離した。

そう思っていたが……

 

「随分と遅かったな」

 

上から声が聞こえる。

きらりと輝いている副官章。

『薊』の花。

十二番隊の副隊長。

 

「ひよ里の後釜が狂人かよ……」

 

そう言った瞬間、相手の顔が強張る。

まさか、知っているというのか?

 

「隙有り!!」

 

そう言って俺は再び逃げる。

ローズと合流できたが気配を感じない。

追いかけるのを諦めたのだろう。

 

「……あんな奴、何処かで見たことあるか?」

 

俺がローズに聞く。

首を傾げている。

どうやら思い当たる節はあるらしい。

 

「まあ、有り得ないと思うな」

 

首を振って否定するようなそぶり。

その仕草で俺もピンときた。

しかしかけ離れている。

 

「そうだよな、流石になぁ……」

 

笑いながら帰っていく。

報告するべきかどうかは確信がないため、行わない。

ひよ里の名前に対する反応を見ると本人のようにも思えるけどな。

 

.

.

 

「狂人扱いはひどいな」

 

やはり分かって貰えないのだろうか。

まあ、いきなり斬りかかったのには大義名分がある。

義骸の性能に不具合がない事を確認したかった。

そしてもう一つは……

 

「現世の生活で腕が落ちていないかどうかを知りたかった」

 

藍染の行動を止めるためには人員が居る。

其れも信頼のおける人員だ。

その点においては同期の面子は問題ない。

 

「明日もふとした偶然で会えるかもしれないな」

 

そう言って帰路につく。

そのまま眠る事もなく研究物を探す。

殆どは取るに足らないものだ。

携帯用の義骸もできる内容のもの。

肉体情報を登録しておけば瞬時に造成すればいい。

 

「腕が鈍ったんじゃないのか?」

 

少しばかり訝しむ。

本命がないのは驚きだ。

もう少しあるとばかり思ったんだけどな。

 

「まあ、後はゆっくりしておこう」

 

起こしても悪いしな。

朝日が差し込むまでは息を殺していよう。

あと数時間。

そう思い、過ごしているといつの間にか朝焼けが見えた。

 

「おはようございます」

 

握菱が声をかけてくる。

浦原はまだ起きないのか。

軒先の掃除をするから箒と塵取りを借りる。

 

「四楓院さん、どこに行ってたんですか?」

 

黒猫が横切って店の中へ入っていく。

何も語る事がなかった。

おおよそこの人が行くところに基準は無いだろう。

気ままにうろついたといった所だ。

 

「水を撒いて完了だな」

 

そして子供たちがこの時間でお菓子を買いに来る。

今日は学校が休みだったのか?

まあ、それはどうでもいい。

顔をペタペタと触られている。

正直くすぐったい。

そんな事を考えていると声が聞こえる。

 

「随分と楽しそうにしてますね」

 

眠六號が死神の格好のまま、目の前に立っていた。

浦原に頼んで作務衣を貰うように伝える。

 

「分かりました」

 

そう言って、起きていた浦原に伝えに行く。

姿を知った浦原が驚いていたので写真をすかさず撮る。

これをすぐにマユリに送信した。

するとすぐに返信が来た。

内容は『こういう顔を間近で見たかった』とのことだった。

 

「さ……出かけるか」

 

この時間は子供も来ないらしい。

ならば探索しなくては。

彼等は確か学生だったはず。

ならば学校に行ってみよう。

 

「お前はここで留守番をしていなさい」

 

眠六號にそう言うが首を横に振る。

一緒に連れて行けという事なのだろう。

ひよ里さんにはこいつも会いたいだろうからな。

そういう気持ちを考えると仕方あるまい。

 

「分かった、じゃあついてきなさい」

 

そう言うとぐっと力を入れる。

やる気に漲っているという感じだ。

 

「とは言っても気が遠くなるかもしれないぞ」

 

ただ、建物一つ入るだけだからね。

それから後は必死に探すだけだよ。

 

「構いません」

 

眠六號が真剣な眼差しになる。

ならばもう行くしかないな。

 

「で、黒崎君たちの霊圧は……」

 

ずっと彼は抑えてないのか。

すぐに感知できてしまう。

 

「侵入、侵入」

 

そう言って辿り着いた学校の壁をよじ登って入る。

動きやすい恰好をしている男女などを見るが、目的地に向かう。

 

「ここか」

 

教室に入ってみる。

全員の奇異の視線が刺さる。

しかし俺はそれを気にする事は無かった。

何故ならそこに一人、かつての同期が居たからだ。

 

「平子……真子」

 

その顔は相変わらずへらへらとしたものだった。

呼ばれて、平子さんが此方を向く。

その瞬間、射貫くような眼差しとなった。

 

「お前……何者や?」

 

だがその横にいる眠六號を見た瞬間、顔を和らげる。

ニヤリとした顔になって近づいていた。

 

「えらい別嬪さんやん、なんであんな奴と一緒に居るんや?」

 

その平子さんに対して一歩も引かずに少しだけ不機嫌な顔になる。

これは気づいてくれなかったことに対する怒り。

この子の気持ちはよく分かっている。

 

「お忘れですか?、眠六號です」

 

そう言われた瞬間、平子さんは目を見開く。

まさかあの子供がこうなるとは想像がつかなかっただろう。

それだけ年月が過ぎたというわけだ。

 

「で……ひよ里さんはお元気でしょうか?」

 

眠六號が聞いていく。

それに対してどうでもいいという風な顔をする。

此方からすれば重要な部分なんだけどな。

 

「あいつは呆れるほど元気やで」

 

せやからわいとお茶でも飲まへんか?

そう言ったが眠六號はそっけなく断る。

 

「今から探しに行くんで」

 

俺がそう言って去っていく。

その後ろに眠六號が付いて来ていた。

本当ならば待っておくのがいい。

 

「しかし、居候だからな」

 

手伝わないと意味がない。

それだけ言って浦原商店へと戻るのであった。




いきなり襲い掛かったけど、理由はあります。
そして追加で眠六號も来訪。
作務衣着て下駄帽子のスタイルで街を闊歩する二人。
斑鳩なんて場合によっては職質待ったなしの風貌。

何か指摘などが有りましたらお願いします。

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