ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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今回でヒロイン、登場です。
しんみりさせようか、いつも通りの感じにしようかかなり悩みました。


『再会 -Second Contact-』

戻ったら子供で賑わっていた。

眠六號と自分で捌いていく。

すると昨日のようにあっという間に夜になった。

眠六號は食事ができるため、晩ご飯を食べてから出かける事にした。

 

「さて、行こうか」

 

そう言った瞬間、霊圧を感じる。

これは虚のものだ。

そしてその中でもひときわ大きいものが向こうに現れた。

 

「あっちに行こう」

 

そう言って一気に瞬歩で向かう。

眠六號はその速度に遅れていない。

自分の体が基盤になっているからだろう。

自分でも特別扱いにして手塩にかけすぎたんじゃないかと思っている。

 

「んっ?」

 

その方向に英くんが居るのを見かける。

彼もこの虚の霊圧を感じ取ったのか。

 

「あれが一番大きいんで」

 

そいつなら何かしらの情報を持っているはずだ。

英くんはそう言い切って視線を向こうへとむけている。

その眼は復讐者のそれだった。

彼の過去にも大きなものがのしかかっているのだろう。

 

「しかし、なんだろうな」

 

虚の中でも大きなもの。

この感覚は昔に感じている。

仮面が壊れた奴と同じようなもの。

 

「藍染の仕事の速さを褒めるしかない」

 

斥候にしてはかなりのもの。

この強さが最低基準なのか。

其れともこいつだけは特別な一体なのか。

 

「これはまさか要注意の人物がいたとは……」

 

そう言ってこちらを見る男性の虚。

人型として完成している。

しかし想定している霊圧よりは少ない。

こいつは中級大虚と見た。

 

「あんたに聞きたいことが有る」

 

英くんが薙刀を突きつけている。

彼の霊圧はさらに強くなっていた。

あれだけの死線をくぐったら仕方ないだろう。

 

「蟷螂みたいな虚を知らないか?」

 

それが仇の虚という訳か。

彼が漏らしていた殺気や殺意の正体が分かった。

 

「それは我が主であるノイトラ様の事か?」

 

相手も対戦の体勢を取る。

これは俺の出る幕ではないな。

 

「質問に質問で返すんじゃないぜ、有益な情報はありがたいけどな」

 

穂先が動いた。

そのまま踏み出して貫こうとする英くん。

それを回避しているが冷や汗をかいているのが分かる。

 

「お前らの本拠地に行けばいいって分かったんだからよ」

 

何年かかってでも終わらせてやる。

そう、英くんは言って笑顔を作る。

狂気に満ちた笑みで相手を見る。

其れだけで呑みきってしまった。

あの激戦が彼の実力を一つも二つも跳ね上げてしまった。

 

「名前は聞いておかないとな」

 

そう言うと英くんは相手の目の前から消えた。

俺は眼で追えているがあれは『瞬歩』だ。

 

「くっ!?」

 

背中からの斬撃を相手も回避する。

だがそれだけで手は止まらない。

英くんが突いてくるから、相手が跳躍でかわす。

そのまま地面に刃を突き立ててそのしなりと勢いを活かして飛び上がる。

 

「どりゃあ!!」

 

石突で叩いて相手を地面に叩きつける。

それを追いかけるようにして英くんは安全に着地。

 

「『白雷』!!」

 

英くんが指先から電撃を飛ばす。

見様見真似だし死神でもないやつの鬼道だ、大した代物ではない。

……とは言っても霊圧による一撃だ。

それが直撃してしまい、相手はさらに動きを止める。

 

「終りだな」

 

その俺の呟き通り、無防備な相手に斬撃を浴びせる。

絶命には至らないものの重傷。

肩から下半身にかけて大きく裂かれている。

心臓は特に問題はないがな。

 

「全く……無断とはいえ偵察命令失敗しとるやんかぁ」

 

『黒腔』と名付けている穴から出てきたのはギン。

するりと何気ない動きで相手を回収していく。

静かゆえに違和感がない。

 

「死なれたら困るさかい、ここいらでお暇させるわ」

 

向こうで一匹死んだんやけどね。

それだけ言って消えていった。

相変わらず元気そうで何よりだ。

藍染もギンがあの分ならば元気だろう。

 

「自分らの縄張りで何やってくれてんだ、コラ」

 

怒気を孕んだ声。

その声の方向に振り向けば懐かしい顔が二つ。

矢胴丸さんと拳西さん。

二人とも元気そうだな。

 

「くるで、拳西」

 

こっちが歩を進めたのを皮切りに始解をする。

だが、それでどうにかなるかな?

そう思った瞬間、新たな気配。

上から縛道が降り注ぐ。

 

「やらせません……」

 

そう言った眠六號が破道で相殺。

そしてそのまま、縛道を放ってきた相手に向かおうとする。

だがそれを手で制した。

 

「それはいらない」

 

そう言うと下がっていく眠六號。

英くんもいきなりの歓迎に臨戦態勢となる。

 

「誰も気づきはしないのか……」

 

寂寥感を胸に腕を前に出す。

しかしまだ新手が居た。

上から回転しながら斬撃を放ってくる。

 

「かあっ!!」

 

回転の中心を見抜いて真剣白刃取り。

その相手はこっちの顔を見るなり、顔をしかめている。

刀を離して一気に後ろに踏み込む。

するとその勢いで今度は前に突っ込んできて飛びあがる。

その勢いのまま、放たれた蹴りは見事に俺の顔を捉えて、背中から地面に飛び込ませた。

 

「お前……ふざけとんか、タケル!!」

 

一番会いたかった人はかつての輝きのまま、俺を一目で見抜いて見せた。

俺はその事実に微笑んで立ち上がる。

なっ、言っただろう、浦原。

この人にはこんな程度で変装のような効果は得られない。

確信が有ったんだ。

体は幾年、果てなく遠くに行ったとて。

心はお互いには離れてなんていないだろうって。

そして、それはやはり間違ってなんていなかった。

 

「やっぱりひよ里には分かってしまうか」

 

そう言って鳳橋さんと愛川さんが出てくる。

この二人は報告をしなかったんだな。

しておけば皆探って見抜いただろうに。

 

「あまりにもかけ離れているから、間違ってんじゃねえかと思っちまってよ」

 

愛川さんが頭を掻いてバツの悪そうな顔を浮かべている。

じとっとした目で眠六號が睨んでいるのだ。

頬を栗鼠のように膨らませている。

それだけ怒っているのだ。

怒りの感情表現は相変わらず子供じみている。

全員が笑っている。

元気でいる。

その事実に目頭が熱くなると同時に体に重みが来た。

瞼が下がり意識が薄れる。

 

「ああっ、やっと…」

 

『安心して眠れる』

そう呟いて地面に倒れ込んだ。




ひよ里以外、全員不審者と思ってしまうというオチ。
むしろ一目で見抜く時点でひよ里は何を持って判断したのか……
信頼関係の深さやよく観察していたとも言えますがね。
二部主人公の仇の虚が今回で判明しました。
まぁ、事あるごとに『蟷螂』って言ってたのであいつの刀剣開放の由来から、読み取られていたと思います。
何か指摘などありましたらお願いいたします。

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