ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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今回は百年前の藍染をそそのかした相手についての話が有ります。
アンチ・ヘイトになるとは思いますし、不快感があると思います。
そのことについてはご了承願います。



『黒幕 - Perpetrators like victims -』

「……俺はなぜ路上に寝転がっているんだ?」

 

寝相とは言い難い。

ひよ里さん達と再会したはずだ。

その時に俺は倒れ込んでいる。

あの人がほったらかしにするだろうか?

いや、それは無い。

つまりは誰かが悪意を持って俺を運んだのだ。

 

「しかも『黒崎医院』の前とか滅茶苦茶迷惑じゃねえか」

 

行き倒れの患者にしか見えないよ。

とにかく立ち上がる。

すると丁度扉が開く。

 

「おはようございます」

 

そう言って俺が挨拶した。

しかし見た目は骸骨。

している事は家の前で寝そべり。

不審者丸出し。

 

「あんた、何やってんだよ……」

 

額に手を置きながら黒崎君が呆れていた。

俺がそれを言いたいよ。

知らないうちにここに移動しているんだからな。

 

「……つまり誰かにここまで運ばれたってわけですか」

 

そういう事。

こんなことする奴、一人しかいないけどね。

随分と悩んでいるようだな。

 

「悩むのは良いが友人に吐き出しなさい」

 

そうしないと破裂するぞ。

抑え込めば体に支障をきたす。

君はそんなに器用な方でもないだろう。

 

「相手の偵察が始まるからな」

 

小手調べは終わり。

ここからは気を抜けない。

 

「誰かに稽古つけるか」

 

指を鳴らしながら呟く。

ここから先は一人でも戦力が多い方が良い。

茶渡君あたりが良いな。

 

「あんた、人に教えられるのか?」

 

黒崎君が言ってくる。

失礼な。

今、隊長やっている二人の師匠だぞ。

 

「少なくとも並の奴よりは」

 

そう言って学校へと向かって行く。

平子真子に会わなくてはいけない。

本人が来ているか分からないが。

 

「……居やがったか」

 

窓側から黒崎君が合図をくれる。

それに合わせて動く。

連れていかれている。

時間を潰していくか。

 

.

.

 

夕方になったら門から出てくる。

ゆるりとした動きで、しかし力強く首根っこを掴む。

ぐえっと潰れた声を平子が出す。

 

「話が有るんだ、付き合ってくれるよな?」

 

有無を言わさない眼差しをこちらが向ける。

断わればどうなるか分かっているだろう。

あんた一人の穴なら何とかすれば埋められる。

 

「がっ……」

 

平子さんがぐぐっと頷く。

それならばと首の力を緩めて引きずるように運ぶ。

 

「ここならいいだろう」

 

誰もいない公園。

放してやるとこちらを見る。

あんたに話す機会があると思っているのか?

 

「こちらの質問にだけ答えろ」

 

まずは今日の俺の居場所。

これをやったのは……

 

「あの再会の場に居ないあんただ、そうだろ」

 

俺は睨み付けて言ってやる。

しれっと嘘をつく事も有るだろう。

ただ、それをやればどういった結果になるか。

其れの想像は難くはないはずだ。

 

「正直に答えた方が幸せだぞ」

 

俺の独自配合の自白薬を飲まされたくなければの話だけど。

廃人になる可能性の薬物の摂取なんて俺自身ならば嫌すぎる。

 

「そんなもん、俺は知らへんわ」

 

しらを切るか。

まあ、これは割かしどうでもいい事だ。

次の質問が本命だ。

 

「そうか、次の質問だ」

 

こっちの持つ緊張感で一気に張り詰める。

相手も冷や汗をかいている。

今から投げかけられる質問。

其れの返答如何によっては俺はお前を許さない。

無論、こちらの質問に対する答えには自白薬による強要も辞さない覚悟だ。

 

「藍染をあの夜の前に唆したのは……」

 

百年、考えに考えた。

いきなり市丸を連れた失踪。

其れになった理由は俺の零番隊就任。

じゃあ、あいつに誰がそれを伝えた?

俺は最速であの場所へ向かった。

……とは言っても一度隊舎に戻っての整理で十か二十分ほどは経過していただろう。

 

「あんただろう、平子真子」

 

明確に言えば焦らすように、こちらの零番隊の昇進をちらつかせたのだろう。

そして、断ったという部分だけをぼかした。

そう推測できる。

その結果が藍染の暴走。

 

「なんでワイが犯人みたいなことなっとんねん、思い違いも甚だしい!!」

 

平子は怒りを露わにする。

果たして本当に思い違いなのか?

自白薬を投与すればわかる事だ。

正直に言った方が自分の今後の人生を狂わせずに済むぞ。

 

「あいつが盗み聞きしてたとは思わへんかったんかい!!」

 

その線を百年の間に考えなかったとでも?

でもそれならば言い分はある。

 

「じゃあ、あの日に限ってあんたはあいつが盗み聞きしている事を感知できなかったと言うのか」

 

普段はあれだけ警戒していたくせに?

あの日だけそうなるなんて都合が良すぎる。

 

「そんな中途半端な警戒なんてくだらないものだろう」

 

徹底していなかったという事だ。

それともなんだ。

あれだけ俺が言うから警戒心を解いたとでも?

ずいぶん楽で陳腐な言いわけだな。

 

「それに隊長だけが集まるような会議に、盗み聞きをするような人が藍染だけなわけないでしょ」

 

藍染が聞くというのならば、矢胴丸さんも絶対に聞いていたはずだ。

それにあいつの性格上、断るところまで聞いてから去っている。

わざわざ自分から不安材料を増やすような振る舞いをしない。

 

「ぐぐぐ……」

 

こっちの指摘に平子は声を詰まらせる。

反論は受け付ける。

しかし黙秘は意味がない。

ちゃちな嘘も当然。

 

「自白を強制的にさせれば済む話を、温情をかけているようなものだ」

 

認めても許すとは限らないけど。

さて……どうする。

 

「そうやったとしてなんやねん!!」

 

平子がついに認めた。

だが開き直っている節がある。

こいつは……

 

「確かに『あいつ、零番隊か』とか『心変わりも有り得るよな』とか呟いたけど、それだけで……」

 

全く分かっていないな。

俺は百年前にあんたに言ったはずだ。

 

「『裏切るのはそう言った言葉や行動が引き金になる』」

 

それを忘れて藍染を疑心暗鬼にさせた。

その結果が十名以上を巻き込んだ大事件。

そして煽っていながら被害者の顔をし続けていたというわけだ。

 

「あんたのせいで皆が色々なものを失ったわけだ」

 

尸魂界という居場所は共通だが……

 

四楓院さんは名誉と弟と慕ってくれていた妹分。

鳳橋さんは自分を叱咤激励してくれる古参の副隊長。

愛川さんや久南さんと拳西さんは慕ってくれた部下。

矢胴丸さんはかわいい後輩とそれなりに信頼していた上司。

喜助は隊長職と開発機材や環境。

ひよ里さんは可愛がっていた子供やなんやかんやでに気に入っていた環境。

有昭田さんと鉄斎も部下や職を失った。

俺は隊長職、あの日の強さと肉体、そしてひよ里さん。

 

「ワイも失っているんやぞ」

 

自業自得の分際で何をほざいてる。

お前が何かやっていたのか。

のうのうといたんじゃないのか。

 

「開発は喜助に任せて情報収集はやっていたのか?」

 

ここに嘘は含まれてはいない。

ただ、その土台は俺が作った。

藍染の動向の監視とかする術がないとは思えない。

 

「いや、それは夜一さんが……」

 

斬るぞ。

このど畜生が。

お前はなんにもしてなかったんじゃねえか。

 

「偽りで仲間意識を強くしただけか」

 

藍染を敵にして、自分の理解の無さを棚に上げていた。

皆にそう信じ込ませていけば、自分を被害者にできるからだ。

 

「あんたにとっても特別な存在だったんだろうとは思う」

 

ひよ里さんに対す眼が他の女性に向けるものとは、少し違うとは思っていた。

きっと矢胴丸さんの言っていた意気地なしはあんたなんだろうよ。

 

「あの人と俺が出会えなかったのを酒の肴にでもしていたのか?」

 

だとしたら相当趣味が悪いけどな。

流石のマユリや喜助もそんな事はしないぞ。

 

「俺は断言できる、あの夜で一番得をしたのは……」

 

隊長職と開発局局長になれたマユリでもなく、俺の昇進を止められた藍染でもない。

想い人と恋敵を離し我がものにできる機会を手に入れたお前だと。

元々お前は仕事熱心でもないからな。

 

「廃人になるほどに濃い自白薬飲ませて、どれだけお前が外道か皆に知ってもらうのも悪くないな」

 

それだけ言って、軽蔑の眼差しを向けて去っていく。

きっと喜助は気づいていたが瓦解させないための優しさだ。

それに甘えてさんざんやってきた末路を知るがいい。




タイトルの英文は『被害者のような加害者』を英訳したものです。
平子が藍染をそそのかした犯人でした。
原作以上に『皆に謝らないといけませんね』な状態です。
本人は頭いいくせにそれを言ったらどうなるかを予測できてなかったようです。
ひとえに理解してなかったで良いんですけど。

平子ファンの方には大変、申し訳ありませんが今回はこのような形になっています。
何かしら指摘などが有りましたらお願いします。
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