とは言っても殆どダイジェストになっていく予定ですが。
「もう終わりか?」
そう言って倒れ込んでいる茶渡君を見下ろす。
起き上がってくるのは良いが足が震えている。
二人がどうなりたいのか。
もしくはどう在りたいのかが必然となる。
「誇れるものや思い出はいくつもの樹形図を形作る」
君たちが持つものは想いの強さに呼応して発展していく。
だからこそ理想形よりも根差したものを見つめ直すんだ。
「これが浦原さんも言っていた名伯楽……」
茶渡君が呟いている。
まだあれから一日。
しかし次の舞台まで足を踏み入れている。
それは彼等の成長度や素直さが生んでいるだけの話。
「攻撃がない井上さんには護る定義を教えて、君には敵を打倒することにおける心構えを説いた」
護るのは敵を倒すことも入る。
味方に異常な攻撃性を持った者が迫っていたり、防御を無視する力が居た場合どうするのか。
その時に守るのは盾だけが選択肢ではない。
刃もまた守る為の選択肢になる。
それ以外には攻撃を担当している奴も防御に回すようにと言った。
「まさかそっちは防御の力とは思わなかったがな」
硬度が普通に考えれば攻撃する腕にしては高い。
衝撃を吸収するにも大きい形。
其れならば防御としての力だろう。
「逆の腕で思いを起こせ」
その一言だけしか伝えなかった。
発現した理由を知らないのだから。
知っていたならば同じ状況で、次は違う気持ちで放つようにさせる。
その方が速く逆の腕の方も発現する可能性が高いからだ。
「息も切らさずに指導するなんて恐ろしいほどだ」
起き上がってきた茶渡君が呟く。
そんな事は無いぞ。
あの時に比べたらブレてはいる。
それに体力は昔に比べるとなくなってしまった気がする。
全盛期が今なのにな。
「ご飯の時間っすよ」
喜助が声をかけてくる。
それを合図に一度上に行って食事をする。
喜助がこっちを見てくる。
彼等の進捗が気になるのだろう。
「かなりいいものだ、しかしまだあの攻め込んできた奴と一対一になったら無理だろう」
奴らが全力でやれば卍解をしている隊長並み。
もしくはそれ以上かもしれない。
相性も有るからどうとも言えないけれどな。
「あくまで協力をしたうえで戦うのが基本になってしまう」
二人がかりでも何ら問題はない。
相手の実力差を埋めるのは人員や策。
千でも万でも策は必要。
どれかが当たって功を奏せばそれで良し。
「勘違いしちゃいけないんだよ」
ここからは喧嘩なんて生易しいものじゃない。
戦争そのもの。
負ければ死ぬのだ。
「そんな場面で戦いに陶酔してられるような余裕なんてない」
例外として更木だけはこちらの思いとは違って勝手にあの世界へ連れていかれる。
そして昨日は腕試しで成長ぶりに打ち震えてしまった。
藍染との戦いも互いに探り合いや阻止が目的の主だったので殺し合う事は無かった。
気合を入れなおして相手との勝負に挑む。
「今回は人員の差が顕著に出かねない」
其れも量だけでなく、質の部分においてもな。
一度遭遇したが『従属官』という傍に居るような奴らもいる。
そいつらが副隊長級であれば、複数用意されたら意味がない。
「あと、これは余談だがお前も知らない事実が有るんだ」
『崩玉』についての問題。
『隊長』の倍ほどの霊圧が有れば一時的に『完全覚醒』を促せるという事。
それを伝えると喜助はまたもや驚いた顔をする。
無論、すかさず写真に収めた。
「つまり向こうはいつでも最高の戦力を増強できると考えていいんっすね」
喜助の言葉に頷く。
流石にその親の存在を超えるものは生まれない。
しかしそれに準ずる実力は生まれてもおかしくは無いだろう。
「だからこそ総力戦で行くしかない」
尸魂界も現世も巻き込むように。
元隊長格であるあの人たちが複数人。
そして黒崎一護の父親である黒崎一心。
彼については名簿を調べたところに下の部分が同じ名前が有った。
それが本人であれば元死神だ。
彼の協力も当然必要になる。
「お前も鈍ってないか確認しておけよ」
黒崎君を鍛えただけで問題なしなんて思うな。
全力を常に出せるようにしておかないと危うい。
余裕で居る奴はこの戦いで死にかねない。
「学校の休みを利用しているが明日が終わったら日常生活も並行しておくんだぞ」
食事を終えて俺は食器を洗う。
その一連の動作が終わってから、茶渡君と井上さんにそれだけ言って地下に降りていく。
眠六號も今回は参加してもらう。
茶渡君と組手をしてもらおうというわけだ。
「あの……大丈夫なんですか?」
井上さんが聞いてくる。
まあ、女の子だしあまり井上さんと体格が変わらないから心配だろう。
だが、気にはしなくていい。
「あの子は俺が鍛え上げた女の子だ」
君や茶渡君が俺の教えを一日受けた程度で追い抜くことはできないよ。
……注意しておかないとな。
「死ぬ気でやらないと本当に死ぬぞ」
その言葉を皮切りに組手が始まる。
しかし結果はあっという間に現れた。
関節を何度も極めて茶渡君を転ばせる眠六號。
折っていい勝負ならもう腕が八度はやられている。
足も六度ほど折られている。
「力比べも上手くやらないと意味ないぞ」
重心を低く下げた状態で眠六號と組み合う。
しかし茶渡君は眠六號を動かす事が出来ていない。
「ぬんっ!!」
眠六號の力の入った言葉とともに茶渡君の体が浮き上がる。
怪力無双に相応しい。
そのまま茶渡君を後ろに投げて地面に頭を叩きつけた。
「もう少し頑張ってください」
少し不満げな眠六號。
組手だというのに攻撃は当たらない。
そして相手の得意分野でやり合っているのに常に優勢。
そうなると無理は無いだろう。
「むっ……」
そう言われて顔をしかめる茶渡君。
右腕から攻撃を放出する。
それを眠六號が回避。
その方向を先読みして、あえて未完成の左腕で攻撃をする。
「はあっ!!」
その一撃は右腕よりも強い。
未完成ながら大したものだ。
しかし……
「むむっ!!」
眠六號はその攻撃に対して拳を突き上げる。
その軌道と拳は正面衝突したが、茶渡君の攻撃はその衝突で僅かに上を向く。
するとそのまま棒立ちになる眠六號。
そのまま上を向いた茶渡君の攻撃は徐々に天井へと向かって行き……
「嘘……だろ?」
鼻先を掠めるか掠めないかで攻撃をかわした。
まさに紙一重。
茶渡君も驚愕で目を見開いていた。
「マユリ譲りの頭脳は恐ろしいな……」
そう言って割り込んで組手を終わらせた。
三席の肩書きとは思えないほどの戦闘力を見せつける形。
死ぬ気でやれとはここまで差があるなんて思わなかった。
「少し組手の相手を考える事にするよ、あともう一人井上さんには会わせる人が居る」
そう言って修行を一時的に切り上げる。
上に行くと一瞬霊圧を感じた。
これは死神の霊圧だ。
なんとか尸魂界も動き始めたな。
少しは追い風になってくれ。
縋るような気持ちを抱きながら空を見る。
そんな俺が目線を下げた先には、ひよ里さんが有昭田さんを連れてこちらに歩いていた。
「本当に間がいい人だ」
困った時は即参上。
まるでこちらの心を見透かしているような動き。
笑いながら俺は呟いていた。
次回には阿散井たちが出ます。
そしてグリムジョーも出せればと思います。
眠六號の身体能力の基礎が百年前の斑鳩なので茶渡を持ち上げています。
頭脳面の基礎がマユリとなっています。
指摘などありましたらお願いします。