次回はほとんど原作通りに動きます。
今回から、ひよ里を積極的に出していきます。
「素晴らしい力を持ってマスネ」
そう言いながら有昭田さんは井上さんの能力を観察している。
あれから浦原商店の地下で修業を見てもらっている。
確実に藍染が欲する能力。
それが分かっているのだろうか?
「流石はといった所やな」
ひよ里さんがそう言って肘でつついてくる。
あの子達が素直なお陰ですよ。
ちなみに俺は体が固まってしまっている。
心臓の高鳴りが聞こえていないだろうか。
「貴方だって俺の要望には答えてくれていたじゃないですか」
疑う事もせずに真っ直ぐな目で俺を見ていた。
そこに嘘はないと信じて付いて来てくれた。
そして強くなれたからこそ今信用されている。
「昔を持ち出されるとむず痒いわ」
そう言ってひよ里さんは照れくさそうに頭を掻く。
その仕草に固い微笑みが漏れる。
茶渡君に関しては今の状態では組手式は難しい。
その為、鍛錬からの伸びで後日に組手の相手を用意する。
「今日はここに泊まるか」
ひよ里さんがそう言うと喜助が驚く。
まるで『どういった風の吹き回し』と聞きたそうだ。
「こっちも久々に積もる話が有るんや」
そうは言っていたが全くそんな事は無かった。
口実に泊まりたかっただけ。
何故なのだろうか?
疑問は尽きないまま、夜は明けた。
「ん……」
一昨日感じた霊圧は既に学校の方へ有った。
さて、顔でも拝みに行くか。
「つまらない人員よこしてたら笑えない」
そう言って立ち上がるとひよ里さんが着いてくる。
一緒に行くんですか?
「嫌なんか?」
そんな事、滅相もない。
二人で外に出る。
昔は隣り合って歩いていた。
しかし今は……
「何、後ろちんたら歩いとるねん!!」
遅いわけではない。
ただ三歩程後ろに俺が居るだけだ。
「隣り合ったらまともに歩けない」
話すことも本当は精一杯。
昨日ですらあのざま。
二人きりになるとさらに顕著になってしまう。
さらに手が触れた日には膝から崩れ落ちかねない。
百年の月日がこの人への耐性を無くしてしまった。
「昔ならこれじゃあ物足りないと思えた事でも、今なら満たされてしまう」
些細なことが幸せ。
それを再認識する。
「決して嫌ってわけじゃないんで本当に勘弁してください」
左腕と左足を同時に出しながら言う。
その変な姿に勘付いたのかくすくすしていた。
「しゃあない、勘弁したる」
そういって歩く速度を緩めてくれた。
数分もすれば学校へ到着。
霊圧が想定以上に多い。
「何かと勘違いしてるんじゃないだろうな……」
そう言って乗り込んでいく。
黒崎君の教室まで出向く。
そこで見た面子は……。
「せめてもう少しましな奴用意してくれない?」
朽木ルキア。
阿散井恋次。
班目一角。
綾瀬川弓親。
松本乱菊。
日番谷冬獅郎。
六名の顔が一様に固くなる。
「いきなり顔見て言う言葉ですか……」
呆れている阿散井。
だって副隊長が二人ってことはまだ海燕を入れる枠も有っただろ。
其れこそ普段仕事してない隊長を使うとか。
更木か京楽さんに声かけろよ。
「相手の実力を知ってなくても用心に越した事は無いんだよ」
その頭に叩き込んどけ。
そう言って阿散井の側頭部を小突く。
「そんなこと言うけどそこのチビ女が戦力にな…」
班目の言葉が中断される。
俺が腹部に蹴りを見舞ったからだ。
「お前みたいな三下がこの人に生意気な口きいて良いと思ってんのか?」
起き上がるが声と蹴りの威力に押されたのか。
素直に謝ってきた。
更木と同じように戦える。
そんな相手に小言で殺されては溜まった物じゃない。
賢明な判断で一歩引いていた。
「とにかくここにいる面子でなんとかしましょうねってわけか」
前回の尖兵たちとの実力で置き換えると正直厳しいだろう。
あれより上が居るし、未だに隠しているものが多い。
「一対一なんて意地を張ってもだめだぞ」
限定解除の許可も申請しておけ。
奴らの実力的に五分の一にしていると痛い目を見る。
「あんたは限定解除してないのかよ」
俺に班目が言ってくる。
あれも元は十二番隊の管理。
其れすなわち……
「俺の刻印は自分で勝手に付けて解除できる」
其れに手加減なんて別に刻印抜きで出来るから。
だから大して意味はない。
「頑張ってくれよ」
俺はそう言って手を振って去っていく。
其れにひよ里さんが付いて来ていた。
「実力的にはちょっと困るなぁ」
ひよ里さんが頭を掻いて言ってくる。
全くその通りですよ。
……まだ、伊勢副隊長とか大前田副隊長じゃないだけ良いんですけど。
「非戦闘が居ないだけ良いんですが、限定刻印解除してないと負けますよ」
だからそこの後始末にも動かないとな。
面倒なもんだ。
「相手が本腰入れる前から戦力差があるってのは危ない」
東仙と狛村、もしくは綱彌代の三人のうち一人が来てくれたなら良かったのに。
溜息がこみ上げる。
「相手が未知数やのに、出し惜しみはあかんで」
眠六號は俺達が手塩にかけた存在。
正直副隊長並みの力はある。
斬魄刀を使用すれば十分なほどだ。
「後進の育成にもう少し力を入れればよかったな」
後悔をしても遅い。
襲撃に関しては、実力が劣る様なら二人がかりでもなんでもいいから叩き潰す。
あくまで任務遂行を優先する。
十一番隊の悪い癖が出ないように祈る。
「しゃあないから力は貸したる」
ひよ里さんに背中をポンポンと叩かれる。
すると俺は跳ね上がるような動きをしてしまった。
それを見てひよ里さんはくすくすと笑っている。
昔に比べたらひどすぎるのだ。
「こんなんで昔のようにウチと背中合わせで戦えるんかい」
きっと大丈夫です。
強がりでそう言いたかった。
しかしそれは言えなかった。
任務優先だと自分で言っておきながら、それに執着してはならない。
「それをしないといけないような大群が来たらいいんですけどね」
勇気を出して強がりを言えばよかったと思いながら呟いた。
それなら任務の都合上、背中合わせで戦う事ができる。
上手くいかなくても徐々に合わせていくのを思案できる。
「……苦労しとるな、お前」
しかし、俺のそんな気持ちを汲んでいるのか溜息をつくひよ里さん。
そして何かを決心したように頬を叩く。
こっちに指を突きつけてきた。
「免疫を百年前の状態にさせたるわ、ドアホ」
覚悟してもらうで。
ひよ里さんがそう呟いて隣に歩み寄ってくる。
こちらに向かって手を伸ばしてきた。
それに対して俺がおずおずとしているとひよ里さんに握られた。
「まずはここからや」
心臓が高鳴る。
かつてならば自分から抱え込んだというのに。
手が震えているのが自分でもわかる。
それを逃すまいとひよ里さんに強く握られてしまう。
「こっちも恥ずかしいんやからな、感謝せえ」
ひよ里さんがそう言うとぐいぐい引っ張られる。
ひよ里さんの顔が少し赤くなっているのが分かる。
しかし、それを指摘するのは野暮だ。
俺だってきっと真っ赤に染まっているだろう。
「頑張らないとな」
そう呟いて高鳴りを鎮めさせる。
その思いを抱くと同時に霊圧の揺らぎを感じた。
きっと相手の動きが有ったのだろう。
こんなに矢継ぎ早に攻め込めるほどの人員。
やってくれるな、藍染。
「また、追い返してやらないと」
そう言った瞬間、前につんのめりそうになる。
体の平衡感覚を崩してしまったか。
頑張ってついて行かないと。
俺は幸せを感じながら、免疫の向上を絶対にしてやると心に決めるのであった。
百年、逢わなかったことで免疫を向上しないとろくに二人組で戦えない。
話し合いとかも難しいと完全にポンコツに。
昔のように居られたら手を繋いだりとかもなかったので、役得といえば役得ですね。
指摘などありましたらお願いします。