ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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今回はグリムジョーが出てきます。
モブの奴が増えた感じであってそいつらは茶渡と英にやられたという体で話が進んでいます。



『免疫 - Immunity - 』

あの免疫向上宣言の次の日。

ひよ里さんには朝から傍に座られてる状態。

それを見ている矢胴丸さんがきょとんとした顔をしている。

 

「醤油を取ってくれねえか?」

 

拳西さんが言うので手を伸ばす。

しかし当然震えている手ではうまくつかめずに倒してしまう。

 

「おいおい、何してんだよ」

 

拳西さんが呆れるように言って代わりに鳳橋さんに頼む。

しかし、この状況を分かっているからか苦笑いだった。

 

「お前、本当に百年離れるとだめになったな」

 

昔なら傍に居るだけじゃ、決してそうはならなかったのに。

拳西さんはそう言うが鳳橋さんは分かっている。

大事だった存在が傍から離れるとどうなるかを。

何故ならば近くで俺とひよ里さんを見てきたからだ。

 

「腑に落ちたんやけど……」

 

ひよ里が引っ張る形になるとはなぁ。

そう、矢胴丸さんが言っていた。

昔はこっちが押していったのに逆転している。

 

「何とかなるやろ」

 

矢胴丸さんがこっちを見ながらニヤニヤとしている。

平子は面白くないという顔をしている。

これは不可抗力。

計算ずくでこんな状況になったわけではない。

 

「迷惑かけます……」

 

そう言うとひよ里さんに叩かれる。

ギロリと睨んだままこっちを見てくる。

更に胸に指を突きつけて怒鳴る。

 

「迷惑なんて思わんわ、気遣うなや」

 

そう思うくらいなら、はよ元に戻れ。

そう言われてしまう。

力関係が変わったわけではない。

ただ積極性が逆転した。

その事実に平子を除く全員がくすくすと笑っていた。

 

「こんなに面倒な奴になるのは想像外やった」

 

そうは言って世話を焼いてくれるひよ里さん。

たった一日ではあるが荒療治。

その効果はあったようで赤面は多少なくなってきた。、

しかし鼓動は一向に落ち着かない。

 

「……むっ?」

 

俺は立ち上がって霊圧を探ると敵が来たのが分かる。

数はおよそ……

 

「八体か、予想よりは上を用意したな」

 

俺はそう言って頭を切り替えて反応が大きい奴に向かって行く。

ひよ里さんが追いかけてくる。

 

「極端なもんや」

 

すいません。

やはり任務と討伐の時は緊張やそういう意識が飛んでいくので……。

一つの霊圧が消滅。

これは虚の為、味方の被害はない。

そこに大きな霊圧が有る。

 

「茶渡も勝ったな」

 

どうやらあの修行が実を結んだようだ。

相手にとどめを刺してはいない。

あと一つは英くんに消されていた。

 

「あのでかい奴、成長しとるやんけ」

 

後ろから話しかけてくるひよ里さん。

速度を落とすわけにもいかないので親指を立てて合図を示す。

 

「死ね、女ぁ!!」

 

声が響く。

かなり接近していたようだ。

俺は道端で拾った石をその虚に投げる。

ビシビシと小気味いい音を立てて当たる。

 

「ああっ!?」

 

青筋を立てた表情でこっちを見る。

そして俺の前に来る。

……俺はこの霊圧に覚えがある。

 

「そこの死神よりは楽しませてやれるぜ」

 

相手は握り拳を作る。

その言葉を確かめるため。

こっちと距離を取って踏み込んでくる。

俺の顔面に向かって拳を突き出してくる。

それを掌でわしづかみにする。

 

「ぐっ……」

 

ぎりぎりと握っている拳から音が出る。

それを分かっているからこそ、相手は前蹴りで突き放しにかかる。

 

「あらよっと」

 

離したついでに、相手の蹴りの膝に飛び乗る。

そしてさらにそこから俺は跳躍する。

相手のこめかみにこちらの膝を叩き込む。

 

「くそが……」

 

膝をついた相手を見下ろす。

髪の毛を掴んで立ち上がらせる。

 

「来いよ」

 

手招きをして相手を挑発する。

相手はそれに乗って拳を繰り出す。

それに伴って足も動き始めた。

真っ直ぐに放たれる左拳。

右足の打点の高い蹴り。

曲がるように放たれる右拳。

打点の低い左の蹴り。

絶え間なく繋がっていく攻撃。

九つ目の肘打ちが頬を掠めると相手がニヤリと笑った。

 

「貰った!!」

 

突き上げる拳が腹にめり込む。

それを掴んで俺は跳躍する。

 

「かあっ!!」

 

回転をして延髄蹴りを相手に喰らわせる。

相手は手をつく形で倒れ込む。

それを見ながらこっちの体勢を整える。

 

「てめえ、いったい何者だ!?」

 

見た目で分かってくれないのかよ。

霊圧を噴き出しながら重い雰囲気を醸し出す。

 

「あの日の啖呵を忘れたのか?、『グリムジョー・ジャガージャック』」

 

睨み付けた瞬間、相手は俺の正体に気づく。

少し戸惑いが有った。

しかしすぐに立て直して蹴りを放ってくる。

 

「ふんっ」

 

掌で受け止めて後ろに跳躍。

その勢いを利用して返し技の踵落とし。

即座に片腕で防御をするが、それは無意味なものだ。

 

「なっ……!?」

 

鋭い蹴りが防御した腕を斬り飛ばし、顔と鼻に一本筋が入る。

その筋から鮮血がにじむ。

 

「てめえが相手なら黒崎一護との戦いは後でいい……」

 

鮮血を舐めとってにやりと顔を歪ませてくる。

片腕の状態から刀に手をかける。

しかし次の瞬間、その上に掌を置かれる。

 

「現世ではあかんで、グリムジョー」

 

ギンが止めていた。

なんやかんやで監視か何かしているのだろう。

非常に素晴らしい間の良さで止めに来る。

 

「それに命令違反やから藍染さんに怒られるよ」

 

『黒腔』が現れてそこに入っていく。

其れじゃあ、今度は決戦で会えたらええね。

振り向きざまにギンはそう呟いて去っていった。

因みに俺が蹴りで斬り飛ばしたグリムジョーの腕はきちんと回収されていた。

 

「圧倒的じゃねえか……」

 

黒崎君が呟いてくる。

あいつも隠し玉が有った。

まだそれ次第でどうなっていたか分からないさ。

こんな路地では刀も『浅打』でないと振り回しにくい。

 

「鍛えないとあれ以上がまだいるだろうな」

 

丁度近くにその適役が居るだろう。

悩んでいても時間が過ぎるだけ。

強さを求めるならば即断即決。

 

「予定はいつでも崩れると思った方が良いよ」

 

それだけ言って俺も帰っていく。

ひよ里さんが後ろから付いて来てくれる。

こっちも荒療治で平時から百年前の反応になるようにしなくてはいけない。

今までで一番難しい修行なのではないだろうか?

帰りの道中、脳裏にそんな事がよぎっていた。




結局力関係自体はさほど変わってません。
破面側は刀剣開放ナシならば徒手空拳でやり合ったとしても負けます。
勝ち筋は即解放からの最大技を繰り出すという惜しみない動き。

指摘などありましたらお願いします。

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