ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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虚化制御回です。
一応主人公の吐血の条件と言うかどれほどの相手ならそんな状況になるのかを書いときました。
強化フラグなので問題は特にありません。


『制御 - Control - 』

あの虚化訓練から翌日。

結局危惧していたように黒崎君は不満を漏らしていた。

測定の装置を動かすが、それを数日動かせるから意味がないと言い始めた。

 

「仕方ないな」

 

こうなってはもう無理だろう。

そう思って目の前に行く。

 

「藍染との決戦は冬とか言うがあれは違ってくる」

 

事実、黒崎君の攻めが速い以上息切れを起こさない程度の数は量産しているだろう。

その中で成功した存在が出てくると最早俺の猶予なんて知らないと言わんばかりに来る。

しかもそれを可能に出来るほどの霊圧をあいつ自身が有している。

 

「だから早く欲しいのは俺も間違ってはいない、しかし……」

 

死ぬかもしれないよ。

其れでもいいならご自由に。

そう言ってやると握り拳を作る。

 

「このまま時間が過ぎて無理でしただったら結果なんざ変わらねえ!!」

 

それは間違っていない。

じゃあ始めるとするか。

全員に声をかける。

 

「とにかくけしかけた以上は責任持つから」

 

それだけ言って準備を整える。

始解の状態にして精神を集中させる。

檻と言うよりも籠。

そんなものに扉が付いたやつ。

目覚めた黒崎君がきっと中にいるんだろう。

 

「やってくる」

 

その一言だけ残して入っていく。

入った瞬間、飛びかかってきたのでそれに合わせて上段蹴りを見舞ってやった。

そんなの警戒してないとでも思ったか?

 

「ガアッ!!!」

 

腕を振るってくるがそれを取って関節技を極める。

仕事上、人体の構造を知っている。

その為、急所や苦しくなる箇所への攻撃は得意になった。

 

「ギィ!!」

 

腕を外すと蹴りを見舞ってくる。

それを掌で受け止めて後ろに飛ぶ。

衝撃を吸収。

もとい利用させてもらい、倍返しの強烈な一撃を叩き込んだ。

 

「ガッ……」

 

黒崎君が膝をつく。

そう易々と休ませはしない。

首相撲の形を取って膝蹴りを腹部に叩き込む。

 

「こっちも真剣だからな」

 

黒崎君の体が地面に触れてなかろうがお構いなし。

普通の黒崎君なら吐瀉物をまき散らしているかもしれない。

それ以外にも意識が飛ぶか腕が折れているか。

それほどきつい一撃を常に見舞っている。

 

「速く制御しないと本当に死ぬぞ」

 

刀を振るう事はさっきまでは無かった。

しかしここからは距離も有る。

鬼道も放っていく。

 

「勝てとは言わないぜ」

 

俺は『千手皎天汰炮』を放つ。

黒崎君が奔流に押し流されそうになるが力一杯腕を振るうことで薙ぎ払ってきた。

それなら次はこいつだ。

 

「『豪脚乱蹄』」

 

上から降り注ぐ豪雨のような攻撃。

それは刀を振るう事で黒崎君はやり過ごした。

しかし、まだ終わりじゃないぞ。

 

「『鯨呑』」

 

地面から現れた鯨が黒崎君を丸呑みにする。

それを力づくで穴を開ける。

黒崎君は体は焼けたものの脱出に成功する。

三連続を何とかやり過ごしたか。

 

「もっと来いよ」

 

俺は退屈だと心で思いながら、刀を振るう黒崎君の攻撃をいなし続ける。

あの人のような殺気もない。

まるで獣の動き。

同じ系統ならば更木がいい例だろう。

しかし迫力など全てがあいつに比べると劣る。

 

「はっ」

 

攻撃を鼻で笑いながら受けきる。

まだまだ完全な虚でもない。

だが伸び率は想定できた。

確かに戦力にはなり得る。

 

「今でおおよそ二十分ほどか……」

 

激しさを増す黒崎君の攻撃。

しかし、俺はそう簡単に息を切らす事はない。

悠々と喰らわないように動いている。

黒崎君には焦りはない。

いつかは当たるとでも思っているんだろうか。

 

「虚になったことで本能的な動きになっているもんな」

 

拳の放ち方も雑。

歩法も直線的。

徐々に洗練されて鋭くなってはいるが無意味。

 

「かああっ!!」

 

俺は気合を込めて黒崎君の正中線を打ち抜く。

崩れ落ちたところにさらに前蹴りで黒崎君を飛ばしていく。

此方は背中からもんどりうった黒崎君を見下ろしていた。

 

「まだか?」

 

早くしてくれないと困るな。

これにもきっと制限時間が有る。

それを越えたら完全な虚になってしまうだろう。

 

「そうなったら親御さんへ悲しい報告しねえとな」

 

黒崎君が力を増した太い腕で組みついてくる。

それに対して俺は真っ向勝負で対抗。

逆に黒崎君の上に覆いかぶさる形で潰す。

 

「グルル…」

 

黒崎君の変貌が想定よりも速い。

虚に近い体の色へ変わっていく。

更にはところどころの皮膚も硬質化している。

まるで薄い鎧を纏うかのようだ。

 

「来るか」

 

そう言うと黒崎君が飛び上がる。

拳を振り下ろして俺に叩きつけてくる。

それを俺が回避する。

黒崎君は重々しい音を立てながら着地する。

力を込めながら黒崎君は次の動きに移行していた。

 

「連発してくるのか」

 

想定した以上にバネのような筋肉を有している。

黒崎君は再度そこから跳ねるように一撃。

其れも俺はかわす。

黒崎君が追うように一方の腕を伸ばしてくるが、俺がそれも軽やかに回避する。

 

「この攻防が何時まで続く?」

 

もう既に三十分は過ぎているだろう。

俺の集中力は途切れはしない。

だが、まったく状況に進展がない。

それでは俺も参ってくる。

 

「最長時間を聞いておけばよかった」

 

そこから討伐するかどうかの方針が決められた。

もしくはまだ大丈夫と認識できただろう。

 

「ちょっとばかり攻撃させすぎたな」

 

ここからはもう一度攻め込ませてもらう。

もう二度とお前に攻撃の番は廻らない。

 

「『黒棺』」

 

指を下に向けて放つ。

黒崎君は重さにつぶされそうになるが耐えた。

だがその一度で終わらない。

 

「『赤火砲』」

 

此方が六連続で火の玉を飛ばす。

それを黒崎君は尻尾で薙ぎはらうが只の目くらましに過ぎない。

 

「『五龍転滅』」

 

地面を割って龍が出てくる。

それが黒崎君に直撃していく。

目くらましからの反応が遅い。

 

「あれっ……?」

 

煙が晴れていく。

しっかりと立っているのが分かるが疑問を持つ。

今の一撃ってもしかしてぶれたか?

あんまり効いていないように見える。

しかしそれは間違いだったと煙が晴れた時に分かった。

 

「腕と腹部に背中にも被害が有るか」

 

全力で防いでいた。

威力が落ちていたわけではないようだ。

 

「これでどれほど経っているのかな」

 

そんな事を言うと尻尾が出てきた。

更に傷も癒えていく。

虚の再生能力まで持ち合わせているのか。

 

「いい加減にしろよ」

 

黒崎君に拳骨を浴びせる。

もう、この戦いに付き合いきれない。

あと少しで五十といった所だ。

 

「代わってもらうのも面倒になってきたよ」

 

初めは良い所で代わってもらう予定だった。

しかしもうここまで来たらそれもどうでもいい。

 

「完全な虚になるか制御する……、それまでさっきと同じようにするだけだ」

 

黒崎君に対して縛道を放つ。

『九曜縛』で黒崎君の中心から絡めとっていく。

 

「喰らえよ、『飛竜撃賊震天雷炮』」

 

此方が放つのは巨大な光線の一撃。

それを黒崎君は縛られているため、防ぐ事が出来ずに直撃する。

後ろに回ってさらに追撃。

 

「『双連蒼火墜』」

 

巨大な火柱が上がる。

黒崎君が崩れ落ち倒れ伏していく。

それでもまだ終わりじゃない。

徐々に黒崎君の体は回復している。

 

「ちっ……」

 

立ち上がると指先をこっちに向ける。

霊圧が指先に集まる。

なるほど、虚閃か。

 

「来いよ」

 

構えて受け止めようとする。

しかし次の瞬間、目を疑う光景が有った。

なんと徐々に背中が罅割れていく。

そこから新しい体が出てくる。

 

「まるで脱皮だな」

 

そう言うと虚化の制御に成功したのだろう。

黒崎君が素顔で前に立っていた。

そして疲労が極限にまで至ったのだろう。

地面にうつ伏せになった。

 

「一応ここからは向こうに渡すよ」

 

そう言って話は別の人に任せる。

俺は肩を回してコリをほぐす。

まだこれならば体に無茶をさせていないから吐血もない。

前回は今までのものが吐き出されたというわけだ。

線引きとしては自分を超えているか同等の相手との戦いが引き金になるだろう。

 

「お疲れさん」

 

ひよ里さんが座っている俺を見下ろしながら言ってくる。

労ってもらえるならやる価値はあった。

我ながら安い報酬で満足しているな。

そう思いはしたが笑顔で頷くのであった。




一護の虚化に危機に陥ったり負けるわけがないので一人で済ませました。
次回からは織姫の誘拐部分を整合性考えるかして実行させます。

指摘などありましたらお願いします。

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