次回からは二部主人公で虚圏編へ行く流れを作ります。
朽木ルキア奪還編ほどのゾンビにはならないかと思います。
撤退命令が出された次の日。
俺は『浦原商店』で開発を行っていた。
「結局、向こうからは撤退命令が言われたのに除外されてましたね」
喜助がそう言ってくる。
眠六號はマユリの要請でどうしてもというので帰った。
それ以外は更木と朽木隊長が連れて帰った。
俺は開発局に通じているため、総隊長に喜助とともに開発に勤しむように言われた。
「まあ、ありがたいばかりだよ」
正直、お前ひとりに任せてこっちが戻ってもできる事はほとんどない。
戦闘面においてもほとんど推測ができる。
今の隊長でも下位であればそれほど苦戦を強いられることは無いだろう。
「速く彼らが虚圏に乗り込めるようにしておかないとな」
黒崎君たちが乗り込もうとしているのは分かっている。
茶渡君たちも新たな力に目覚めたり地力が上がっているだろう。
そう言いながら、片手間に彼らの毛髪を調べる。
この遺伝子情報から、万が一に備えた準備をしておかないと。
「しかし、手際がいいですね」
そりゃあ、良い刺激と弛緩と緊張の成せる技だ。
今まで逆に張り詰めすぎた結果、効率が悪くなっていた節も有るだろう。
あの人が近くに居ると知った今、一層自己管理ができている。
「当然、この開発にも問題はある」
相手の霊圧の探知をするように、道筋を作っていく。
しかし、虚圏の仕組みが分からない以上は通るための『門』を作る術が見えない。
つまりは片道切符になってしまう。
藍染のように行き来する術が判明していたらよかったのだが。
「涅さんが赴いたら解決するんでしょうけどね」
それは有り得る。
しかしあいつを実験で行かせるなんて言語道断。
黒崎君たちが危機の時の援軍として動く分は構わないだろう。
「総隊長が整えるだろう」
もしくは未知の存在に心躍らせて向かうかもな。
俺は藍染との戦いに駆け付けるために空座町に留まっておく。
要請が来ても無理だと言おう。
「正直藍染さん以外は貴方に勝てる人材はいないでしょ」
それはどうだか。
あいつが俺に限って封じる事に長けた奴を作り出していればどうなる事やら。
上位には斬られているから出血多量とかでも無理だからな。
「絶対なんて言葉は無い」
それを己の心に刻むようにつぶやく。
恐らくだが相手のあの状態はこちらの『始解』ですらないだろう。
いうなれば『浅打』の状態だ。
『刀剣開放』に『解号』が有るのであれば当然その先。
こちらの『卍解』に類するものが有るはずだ。
もしくは独自進化した先が。
「あの人たちが居てくれれば百人力だけどな」
微笑んで取り掛かっていく。
座標部分は完成が近い。
そして歪みを作って『黒腔』を生成する動き。
それを閉じないように固定。
「この様子なら一週間もかからないな」
これが虚圏から空座町だったら半日もかからないだろう。
それが情報量の差だ。
それに開発している奴が居たらその開発を分捕ってしまえば済む話。
その後で改良すればいい話だからな。
「その後に『転界結柱』だったか、その柱の製造をするよ」
その柱を四の地点に建てる事、そしてそれらを結ぶことで転送する事ができる。
それによって作られた複製の空座町で迎え撃つという算段。
住民たちに被害を及ぼすことなく戦える。
気兼ねがないのは大きな利点ともいえる。
相手はそんな事は気にも留めやしないだろうが。
「半年の予定が一ヶ月半ぐらいになりますね」
私一人なら半年が三ヶ月になりますけど、あなたと二人ならさらに半分になりますよ。
そう、喜助が言ってくる。
速いに越した事は無い。
相手に対する対策を立てる時間も欲しいからな。
「お前も今回は前線に出るよな?」
俺の問いに喜助は頷く。
どうやら鉄斎は出ないらしい。
しかし『仮面の軍勢』と呼ばれるひよ里さん達。
そして喜助と四楓院さん。
また、浅からぬ因縁がある者。
そういった人が総出になるとは言っていた。
「人材が確保できているのは救いだな」
人海戦術で押しつぶすのは、当初よりは容易ではなくなったという事だ。
ただ、そうは言ってもこれには質も関係してくる。
大多数が『下級大虚』ならば今の考えで問題は無い。
しかしこの前襲撃してきたティア・ハリベルやグリムジョーほどの『最上級大虚』ばかりならば問題だ。
「俺は勝てたがあれも本気じゃないからな」
本気となった相手。
その質と同等の存在が十三人以上となると難しい。
隊長とさほど変わらないだろう。
「しかもあくまで予想だがその先が有ったらお終いだ」
勝てる水準が跳ね上がるというわけだ。
そうなると長くいる京楽隊長や浮竹隊長。
均整の取れた強さである朽木隊長。
更木と卯ノ花隊長。
辺りは安心だが他がどうもな。
まぁ、狛村と東仙はただの心配性なだけだと思う。
「いくら成長性が有ったとしても可能性は低いでしょ」
喜助が言ってくる。
確かに『始解』ができたから皆が『卍解』できるのかと言われれば別だもんな。
「ただ、考えといて損はない」
どんなときにも最悪を想定する。
敗北は死。
それを覚悟するのであれば、警戒心は常に高い状態を維持しておく必要がある。
「差し入れやぞ」
扉が開く。
お握りを入れた袋を持ってひよ里さんが来ていた。
こっちの機械を見て驚いていたが。
「ありがとうございます」
袋を受け取ってお茶を入れる。
防水性も十分保証されていますので心配しないでください。
「これで一応渡航させるんやな」
人体実験みたいになるんちゃうか?
そう言われると弱い。
実際、みたいというよりそうなりますからね。
「こちらも事前に行ける方法が確立していたら安全な方法を提供できたんですけどね」
それについては反省していますよ。
無理だと分かっているのに犬死させる様な真似はしない。
彼等は駒でもないですから。
「正直、今の一護が相手の上位とやりあって勝てる可能性はどれくらいや?」
現世の言い方だと『パーセント』だったな。
いい加減現世に合わせろと言われたし、やってみるか。
「30%あったらいいんじゃないですか」
まだまだ発展途上。
戦いの中ですら成長するような男。
今の試算を越えていくだろう。
あとは彼の中にある虚の力。
あの奥底は確実に前回攻めてきたティア・ハリベルよりは強大。
「まだましやな、30どころか10って言うやろうと思ってたで」
勝てないと言い切れるほどの差はない。
ただ、厳しいのは事実。
助っ人で行くのは良いんだが……
「そうなるとあいつが絶対に出てきますよ」
言い方が悪いのは否めないが、足手纏いを複数抱えて藍染と戦う余裕はない。
だから、一対一で戦える環境が欲しいのだ。
「本末転倒になるやんけ」
行ったらあかんな。
ひよ里さんに言われる。
あいつらに任せるしかない。
「井上さんが巻き込まれてなければまだこっちの問題で片づける事が出来たのに……」
連れていかれないようにもう少し考えておけば良かった。
後悔のため息が漏れる。
今すぐ、どうという事は無いが面倒ではある。
「今は開発をして準備することが最優先だな」
その後に解決に動こう。
自分の力を発揮するべき場所を間違えてはいけない。
そう思いながら、再度手を動かし始めたのであった。
後手に回っているし、自分が出ていけば最悪の結果になるというジレンマ。
到着直後に遭遇したらはんぺん藍染より前の段階でも一護たちはボロボロでしょう。
その為、空座町でしか戦えないし出ていけないという状態。
指摘などありましたらお願いします。