ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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あれから悩んだ結果、ノイトラ戦は少し剣八を参戦させながらの記述に決定。
ですので新手との勝負です。
一話完結と言う無味乾燥にも近い無双回です。


『愛拒む者 - DisLike -』

近づいて来ていた霊圧の正体。

それは人型の虚。

この霊圧から考えて蟷螂野郎と同じような序列持ちか。

そんな事を考えていると目の前から消える。

 

「名前を名乗らねえとは礼儀の無い奴だ」

 

相手の気配を感じてすぐに飛び退く。

眼で追えないというよりはあの距離からこんな近くまで一瞬で移動したのが驚きだ。

 

「これは失礼、私の名前は『ゾマリ・ルルー』と言う、『第七十刃(セプティマ・エスパーダ)』だ」

 

 

「そうか、俺の名前は英雄喜、ただの高校生の人間だ」

 

その言葉の瞬間、またもやゾマリ・ルルーは目の前から消えるように動く。

しかしその場所を分かっている。

俺は薙刀を後ろに向けていた。

 

「私の『響転(ソニード)』は十刃最速ですが、よく反応しましたね」

 

やはり予想通り後ろに回り込んでいた。

薙刀分の距離を取って言葉を発してくる。

最速だったり最硬だったり面倒な相手ばっかりだな。

少しは息が抜ければいいのに。

 

「速いからってそれで勝てると思ってないよな?」

 

後ろにいたゾマリ・ルルーに振るう。

しかし次の瞬間、目の前に現れる。

爪先で砂漠を蹴ってゾマリ・ルルーに向かって砂をかける。

するとそれはすり抜けていった。

さらに驚く事が目の前で起こっていた。

 

「『双児響転(へメロス・ソニード)』」

 

ゾマリ・ルルーが目の前で二人になった。

推測すると独特の歩法と今の動きを組み合わせた技術だな。

 

「手品のようなくだらないものだ」

 

俺は動揺を隠すように言い放つ。

冷静になるとこの技術には穴がある事に気づいた。

片方には全く霊圧を感じない。

言ってしまえば蜃気楼のようなものだ。

そうなると必然的に実体は分かる。

 

「で……こういう手合いは決まっているんだよ」

 

そう言って俺は独楽の様に回転しながら薙いでいく。

すると二つの影以外に衝突した感触が有った。

つまりこれで言える事は……

 

「二人より多く分身出来るとは思ったよ」

 

見せている以上の動きができるという事。

その結果、後ろに忍び寄っていた本体へ一撃を加える事が出来た。

 

「馬鹿な、気配も完全に消していたというのに」

 

相手が後ずさりしてこちらへ視線を向ける。

そう簡単に騙せると思うなよ。

 

「こっちの霊圧探知能力を低く見積もっているからそうなるのさ」

 

そう言うと再度距離を取りに図る。

それに対して俺は指を向ける。

 

「雷鳴の馬車 糸車の間隙 光もて此を六に別つ 縛道の六十一『六杖光牢(りくじょうこうろう)』!!」

 

六つの帯状の光が胴を囲うように突き刺さり動きを奪う。

見事に決まって安堵する。

拳西さんから教えて貰ったたった一つの縛道。

破道も教えてもらったがこれも一つだけである。

 

「これは死神の……」

 

体を縛られた状態ではろくに動けない。

俺は無抵抗な相手に対して薙刀を構えた。

 

「手札を増やす為に教えて貰っておいてよかったよ」

 

そう言って俺は勢いをつけて切り裂く。

腹に横一文字の一撃。

血が噴き出しても緩めない。

追撃で脛に一撃。

ゾマリ・ルルーが膝をつく。

その顔面に膝蹴りを見舞う。

ゾマリ・ルルーは後ろに倒れ込んだ。

見事に三連撃を決めて、確実にゾマリ・ルルーの戦意を削いでいく。

 

「流石に蟷螂野郎みたいに硬くはないな」

 

切っ先を向けてニヤリと笑う。

その態度が気に食わなかったのだろう。

憤怒に満ちた眼で俺を見る。

 

「許せん」

 

ゾマリ・ルルーがそう言って起き上がると両手を妙な形に変えて目を瞑る。。

そして首をゴキリと音がするように90度曲げていった。

この一連の動作で霊圧が徐々に上がり始める。

 

「鎮まれ、『呪眼僧伽(ブルヘリア)』」

 

刀が菱形に折れ曲がる。

そしてそこから噴き出した液体がゾマリ・ルルーの体を包んでいった。

 

「また珍妙な姿になったもんだな」

 

包んでいた液体から頭を出して服などが露わになる。

下半身がまるでカボチャのようなものに変貌した。

さらにそこには顔が沢山ついていて、不気味さが際立ったものとなっている。

 

「はっ!!」

 

手を前に出した瞬間、体を大仰に動かして回避する。

しかし左腕が違和感に包まれていた。

 

「なんだ、これ?」

 

そう言うと最近起こったのと同じ現象を想起する。

首を絞めあげようと動き始めていたのだ。

 

「これが私の『(アモール)』です、支配権を手中に収める力、既に貴方の左腕は私のものです」

 

成程ね。

前回は治療の術とか無いし闇医者の知り合いとか居なかった。

でも、今ならば躊躇うことなくこの行動を行える。

 

「ふんっ!!」

 

何食わぬ顔で俺は左腕の腱を斬る。

痛みに呻く事もなくゾマリ・ルルーを見続けながら呼吸を整える。

俺の行動に目を見開いて一瞬硬直する。

その間に俺はゾマリ・ルルーの懐に潜り込んで高々と薙刀を掲げていた。

 

「わざわざ丁寧な説明を有難うとだけ言っておくよ、カボチャ」

 

そう言って俺は右腕を一気に振り下ろす。

ゾマリ・ルルーの左肩から胴体にかけての袈裟切りを放つ。

その攻撃をゾマリ・ルルーは回避もできずに深々と切り裂いた。

血が噴き出してさらに俺の服を染めていく。

 

「何故腕の腱を平然と斬るのだ?、何故私の愛を受け入れようとしない!?」

 

ゾマリ・ルルーは驚愕した顔のまま、こっちを見ている。

そんなもの答えは簡単だろう。

 

「お前ら、虚に対する愛なんざ微塵もねえからだよ」

 

その発言はゾマリ・ルルーを著しく傷つけたのだろう。

俯いてギリギリと歯軋りをしている音が聞こえる。

顔をあげた時は憎悪に満ちたような顔でこちらを見ていた

 

「……この不届きものがぁ!!」

 

ゾマリ・ルルーが支配の力を放つよりも速く俺は動く。

砂を巻き上げて支配が及ぶ範囲から逃れる。

砂のせいで見つめる部分にフィルターがかかって俺には到達しない。

制限の条件である刀を失っているから怖いと思ったか?

この程度は無意味でしかない。

 

「それに……光には弱いだろ」

 

俺は閃光弾を放つ。

それによってゾマリ・ルルーは目を瞑ってしまう。

そして同時に駆けだした俺は跳躍する。

 

「ふんっ!!」

 

ゾマリ・ルルーは反応できていない。

蟷螂野郎の方がてこずる相手だ。

俺はゾマリ・ルルーの脳天から一気に突き刺す。

 

「ぐあああっ!!」

 

ゾマリ・ルルーはビクンと動くが体が徐々に変わっていく。

俺は容赦なく何度も切り裂く。

一つ一つの目がもう二度と見えなくするように。

仮に死ななかったとしても二度とは向かうような心を持たないように。

ただひたすら、残虐に、徹底的に攻撃を続ける。

 

「……」

 

言葉も言わずにゾマリ・ルルーは徐々に消えていった。

そして蟷螂野郎の元へと向かう。

段々、あいつの方向へ黒崎が近づいているのが分かる。

霊圧から察するに井上さんもいるから一応問題なく作戦は成功したんだな。

付け加えるならば虚との交戦の結果ではあるが。

無駄な戦いを二回もしてしまった。

一つは横槍で一つは無視してくれれば良かったのに来やがった。

速くあいつと決着をつけよう。

首を鳴らして歩を進めるのだった。




ゾマリさん、成す術無く退場。
操る系統の弱点見抜いたり鬼道使えたりと、徐々に強くなっています。
ちょっと前にも言いましたが尸魂界編だけで五回も死にかけています。
そして魂魄がそのたび強くなってたからそれ相応には伸びています。

何か指摘などありましたらお願いします。

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