ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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今回から斑鳩メインになります。
遂に卍解の能力公開します。



『慣らし運転 - Test Drive - 』

遂に来やがったな。

淀んだ空気を感じ取った俺はすぐに向かっていた。

後で向かうといった喜助を尻目にひよ里さん達を集める。

結界を張っているのも分かる。

だがそういう際に誰を巡回に出すのか?

それは答えとして分かっている。

総隊長が一番信頼を置く雀部副隊長だ。

当然、一刻を争うので霊圧探知で即座に見つける。

 

「入らせてもらいますよ」

 

そう言って総勢八名の助っ人を連れて戦場へと入る。

まだまだ開戦とはなっていなかったようだ。

狼煙はいつに上げるんだ?

 

「各々散開してくださいね」

 

ひよ里さん達にそれだけ告げて刀を抜く。

じりじりと殺気を放ちながら藍染へ近寄っていく。

当然、他の面子は驚いている。

総隊長を差し置いて平然と歩み寄っているのだから。

 

「困りましたね」

 

藍染がそう言うと次の瞬間、俺の行く手を阻むように斬撃が煌く。

斧の一撃とはまた豪快なものだ。

 

「こんな奴でも儂らの大将なのでな」

 

よく言うぜ、この爺さん。

微塵もそんな殊勝な事を考えてはいない。

隙あらば首を掻っ切ろうとしている目だ。

 

「邪魔立てするならば斬る」

 

ここで味方だと思わせる気か。

随分と計算高いな。

しかしその計算は既に破綻している。

何故なら俺が相手だからだ。

 

「やれるものならやってみろ」

 

敵もさるものでこっちの目論見を見破ってきた。

『転界結柱』を狙いに行く。

しかしそれも穴が有るな。

 

「重要な所に誰も配置しないわけないだろ、お前は馬鹿か?」

 

相手の手先に対してこちらも副隊長かそれに匹敵する手練れを置いている。

まあ、あのティア・ハリベルの従属官たちと言った強敵もここにいるが割愛しよう。

 

「まずは一番首でも貰おうか」

 

俺は殺気も漲らせて進んでいく。

すると相手の前に立って震えながらも守ろうとする従属官が二人。

その忠誠心に免じて即座に殺そう。

お前ら程度に手間取る暇もないのだ。

 

「お前ら程度の相手に本気になるなんていつぶりだ?」

 

俺はそう言って振り上げた刀で一閃。

それだけで一人は片が付いてしまった。

血飛沫をあげてから二つに分かれていく。

まるで花が咲いていくように。

 

「なっ……」

 

怯えた相手の胸を一突き。

俺はそこから腕を捻じ込んで心臓を抜き取ると見せつけるように握りつぶした。

相手は崩れ落ちてしまう。

これであっという間に従属官が消えた。

 

「おいおい、爺は何を寝ぼけているんだ」

 

あそこは部下もろとも『刀剣開放』して俺を攻撃する場面だろ?

堂々とした立ち振る舞いをしても初動が遅れた時点でお前は二流だよ。

 

「小僧が……」

 

そう言って相手が斧を振りあげる。

勢いよく振り下ろすが、俺はそれを片手で受け止める。

それを見て、相手の髭が僅かに震えている。

 

「なん…じゃと…」

 

其れだけ俺とお前の霊圧の差が顕著なんだよ。

前回のティア・ハリベルは見てからじゃないと難しいから喰らったんだ。

ただ、普通の一撃なんてこの通りだ。

 

「ならばこの力で潰してやる」

 

そう言うと手を伸ばしてくる。

当然のように警戒心を剥き出しで下がった。

ほんの僅かに指先に掠った服の裾が崩れ落ちた。

 

「なるほどね……」

 

考えれば思いつく能力。

確かにそれは強力無比なものだ。

 

「腐敗するならほんの僅かに匂いがするがそれもなかったからな」

 

距離を取ると霊圧をあげてくる。

どうやら『刀剣開放』を行うようだな。

 

「『朽ちろ、髑髏大帝(アロガンテ)』」

 

解放が終わった時に見えたのは髑髏の肉体となった相手。

こちらは様子見をする気なんて毛頭ない。

例え十刃相手でも即座に決めさせてもらう。

所詮は慣らし運転程度の相手としか俺は思っていない。

 

「『鯨呑』」

 

敵の吐き出した黒い霧ごと呑み込む。

徐々に崩壊していくが特に問題ではない。

上からの攻撃に対応しているか?

 

「『豪脚乱蹄』」

 

馬の蹄の鬼道が延々と降り注ぐ。

相手はそれを鼻で笑っていた。

 

「笑止」

 

黒い吐息で防ぐと到達前に勢いが落ちて霧散する。

こちらの攻撃にも耐性が有る。

だからこそ相手はほくそ笑んでこちらを見ていた。

 

「小僧、貴様も卍解とやらをやってみろ」

 

良いぜ、あの時の隊首試験以降明かさなかった俺の卍解の能力を。

この満座の席でお披露目してやろう。

その代わり少しは持ってくれよな。

 

「『印せ、年輪重唄』」

 

そう言って振るう。

相手の黒い吐息に向かって俺の放った黒い斬撃が飛ぶ。

 

「無駄だ!!」

 

相手がそう言って回避する素振りも見せない。

別に構わないぞ。

その能力にかまけて痛い目を見るといいさ。

 

「むっ!?」

 

相手は変化が見られない斬撃に一瞬だけ驚愕の顔になるが、後ろに下がって息を吸い込んでいく。

そして息を吐いて、さらに斧を振り下ろす。

其れでなんとかやり過ごした。

……とでも思ったか?

 

死の息吹(レスピラ)

 

そんな事は露知らず。

黒い息を吐き出していく。

霊圧で盾を作り出して防ぐ。

朽ち果てていく隙に体勢を整える。

 

「その程度で防げるとでも思ったか、小僧!!」

 

笑いながら斧を振り下ろしてくる。

吐息で視界が悪いのか防御、もしくは回避されているかどうかも視認できていない。

これで上位とは笑わせるぜ。

 

「油断しているんじゃねえよ」

 

平然と俺は相手の前に立っていた。

余裕を持って回避する事ができたんだ。

隙だらけの相手に突きを放つ。

 

「何!?」

 

勝利を確信していたのか、相手の反応が遅れる。

本当に藍染が認めた技量の持ち主なのかと疑いたい。

俺の刀の切っ先が相手の左腕を貫いていく。

そのまま相手の左腕がボロボロと崩れ落ちて霧散する。

相手は信じられないものを見るようにこちらを見ていた。

 

「うがああああ!!」

 

叫び声をあげて左腕を失う相手。

そして恐る恐るこちらを見て声をあげていた。

 

「貴様の力はもしや……」

 

察した相手が問いかける。

その考察通りさ。

 

「ご名答、俺の能力もまたお前と同じ『老い』を司る」

 

しかもお前より遥かな練度で操る。

相手がまたもや噴き出すが無意味。

相手の『老い』の力をさらに強い俺の力で覆いつくす。

それを無効化して切り裂く。

 

「嘘だ……」

 

斧も砕かれて徐々に左腕が崩れていく。

もう完全にお終い。

敵は消えゆく恐怖に身を震わせていた。

 

「儂は消えるのか?」

 

その言葉に対して俺は死刑宣告のように準備を始める。

力を凝縮した黒い球体を作り出す。

さらに『廃炎』を纏わせる。

 

「その通りだ、跡形もなく終わりを迎える」

 

もう塵一つとして残さないと返答をする。

作り出したものはまるでどす黒く煌く太陽だった。

それを躊躇もなく叩きつけた。

抵抗もできない相手を無慈悲に燃やし尽くす。

相手の最期の呻き声や叫びは俺の心に響く事もなく揺らぎもなかった。

 

「で、準備運動は終えたがどうする?」

 

笑顔で藍染の方を向いて言ってやる。

俺の視線を受けて『黒腔』を開く。

残りの十刃を引かせるつもりだな。

無理もない。

あいつらをかき集めたところでお前の方が強いからな。

 

「待っておいてやるよ」

 

送られていく十刃。

そしてそいつらは即座に敵に見つからないように去っていく事を告げられていた。

まあ、あいつに見つかったら終わりだもんな。

そして藍染が俺の方へ向きなおして意地悪な笑みを浮かべる。

 

「多くの隊長格から狙われてください」

 

そう言うと後ろから襲い掛かってくる影が一つ。

それは日番谷隊長。

更にその両脇からは檜佐木副隊長、射場副隊長。

『鏡花水月』の術中に既に嵌まっている。

彼等には俺が藍染に映っているのだろう。

 

「無駄だぞ」

 

『年輪重唄』の能力を解除して日番谷隊長の攻撃を受け止める。

そして後ろから迫る二人の副隊長の攻撃を狛村と東仙が止めた。

お前らだって立場が悪くなるというのに。

 

「「なっ!?」」

 

二人が驚いて下がる。

他の隊長からも怪訝な顔で見られている。

 

「どうして邪魔をするんですか、東仙隊長!!」

 

檜佐木副隊長の問いかけに東仙は微笑む。

それは無理な場所に行かせまいとする優しさに満ちているものだった。

 

「単純な話だ、檜佐木、お前では藍染隊長には勝てない」

 

そう言うと檜佐木副隊長は不承不承と言った形で刀を収める。

流石に俺も切り裂きたくは無いからな。

 

「狛村隊長も同じ意見ですか?」

 

射場副隊長の問いかけに狛村も頷く。

実は狛村にも『鏡花水月』は効いていない。

手甲に破片を忍ばせたものを贈っていたからだ。

 

「儂らは副隊長をむざむざと死なせる訳にはいかんからな」

 

その言葉に射場副隊長は歯噛みしながら刀を収めていた。

ちなみにこっちは切り札を一枚既に切っている。

そのお陰も有って他の奴等の追撃は無い。

とは言えども『仮面の軍勢』にだけ効果は留まっているので残りの隊長は来るんだろうが。

 

「『懐刀』の卍解がその場しのぎとは言え、こうもいい方向になるのは予想外だったぜ」

 

かなり詰め込んでやってもらっていたからな。

もう一人の方は防衛で力を使ったから今は休んでいる。

 

「彼らに恨まれますよ」

 

自分の『鏡花水月』を逃れる卍解を見つけてきた事には驚いているはずだ。

しかし、それでも態度を崩さずこちらに苦笑いを向ける。

 

「彼らにとって最も大事な人を戦場に送り込んだのですからね」

 

確かに言われてしまえばその通りだな。

でもそれが何か問題なのだろうか?

使えるものは何でも使うのが筋だろう?

 

「それについては悪いと思っているよ」

 

まあ、良心が痛まないのかと言えば嘘になる。

人の絆を弄んでいるのだからな。

しかし、仮にこんな場面になれば総力戦になるので仕方ないさ。

 

「『黒崎真咲』十四席にはな」

 

視線の先にいる女性は弓を番えながらこの戦況を見守っていた。

お前にはこれだけあっても足りないかもという不安が有るよ。

 

「最後に立っているのは護廷十三隊だぞ、藍染」

 

しかしその気持ちを隠して藍染を煽る。

それを受けて立つという顔で藍染は俺を見ているのだった。




十刃を即撤退させる事で冗長な戦いは消しました。
藍染の無双も少しづつ書いていきます。
書いていて思ったのが日番谷が『大紅蓮氷輪丸』使っても、千年決戦編の大人状態じゃないと倒せそうにないという事。
そして『懐刀』の一人が判明。
またプロフィール部分を更新します。

何か指摘などありましたらお願いします。

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