あと数話で終わりとなります。
最近、とぎらせずに書いていて5000ほどになるのを反省。
「真咲が居るのは驚きだ、誰の仕業なんだよ」
そう言ってこちらに視線を向けてくる。
きっと喜助から俺の事を聞いているのだろう。
少々睨んでいるような感じだった。
驚いた黒崎君の顔を見て悟った。
成程、彼は滅却師と死神、それに虚の霊圧と人間もある。
あってはならない存在かも知れない。
有ったとしても、秘匿するべき存在。
「俺の事をどう説明したわけだ、喜助?」
隣にいた喜助に聞く。
肩を竦めている。
相変わらずこっちの流れを崩す奴だ。
「『
黒崎十四席が卍解の一撃を放つ。
それを掠るにとどめる藍染。
しかし服が燃え盛っていく。
「攻防一体型の卍解……」
羽織を脱いで火傷を防ぐ藍染。
その推察で間違いない。
護心弓は精神や幻覚から守る結界を生成する。
夏遊弓は当たった瞬間に発火。
其の恐ろしさは今、実感したはずだ。
「割り込めなくなっちまった」
頭を掻いて溜息をつく。
このでかい刀が仇になる。
黒崎君の父親は喜助や四楓院隊長も信頼できるだけ強いのだろう。
実際に藍染を切り裂いた。
良い状況ではあるが徐々に霊圧が増幅している。
これはまずいと思い前線に出る。
「少々強引ではあるが……」
喜助の頭を掴んで放り投げる。
十分に仕込みを終えているだろう。
俺は藍染に対して突きを放つ。
「くっ!!」
藍染は防御せずに後ろに飛んで回避する。
この速度には対応できていないのか。
「がら空きだぜ」
黒崎君の父親がそう言ったが更なる深手にはならずに刀が弾かれている。
藍染の方を見ると姿が変わっていた。
白い鎧のようなもので包まれて目だけ見えている。
防御面だけが上がったとは思えないな。
「四楓院元隊長、藍染の奴をその鉄甲が壊れるぐらいの勢いで殴ってくれます?」
多分連打して壊れる事も有るだろう。
しかしこいつの防御が未知数な今ではどうしようもない。
「仕方ないのう」
そう言うと四楓院元隊長が肩を回して駆けていく。
俺はその後押しをする。
「独自破道の壱『水帯』」
直線状に放たれる破道。
さらにそれを足場として四楓院元隊長に使わせる。
「七十番代のものとほぼ同じものでは意味が有りませんよ」
腕を交差してやり過ごす藍染。
隙を作るためのものだし、ここから繋げられないとでも?
「独自縛道の壱『雷光鞭天』」
痺れさせる縛道。
さらに俺が手綱を握る以上、ある程度の自由が利く。
「初めから喰らうが良い!!」
四楓院さんが『瞬閧』の一撃を叩き込む。
藍染の鎧に罅が入っていく。
こちらの縛道を破り反撃に転じようと試みる藍染。
「そうはいかないっすよ」
浦原の『紅姫』による連続技でさらに動けなくなる藍染。
その隙に黒崎君の父親の一撃が入る。
「駄目だ……」
割ってはいけなかったと瞬時に察した。
まだ羽化途中の存在にむやみやたらにここで留めようとしたのが災いだった。
「皆下がってくれ!!」
全員が安全圏に逃れる時間を稼ぐ。
今までの技術を全てここで使いに行く。
「独自縛道の弐『寒晒』」
外の殻ごと凍結させる。
ここで終わらせはしない。
「独自破道の弐『蝕牙』」
内部から突き刺すように破道の針が飛び出る。
しかしそれでも出てこようとする。
「独自縛道の参『檻包』」
網状に張り巡らせた霊圧の帯が藍染を取り囲む。
それを収縮させるが其れも軋んでいくのがわかる。
「独自縛道の肆『日輪縫』」
太陽の力と霊圧と縛道の掛け合わせたもの。
太陽が有る限り動けない。
これを破るには日が落ちるか霊圧で無効化するしかない。
「時間は稼げたようだな」
全員が離れていく。
『崩玉』が藍染の望みを叶え始める。
だがお前らしくもない。
「俺が上段に構えているのに慌てないのはな」
後ろに下がったようだがそんな程度でどうかできるほど軟じゃない。
浅いが頭から股にかけて一本の縦筋がはいる。
そこから血が噴き出している。
「流石ですが……持つんですか?」
そう、藍染が言った瞬間、体が疼く。
見られる訳にはいかない。
誰にも知られるわけには……。
特にあの人の前で弱い姿を見せるわけにはいかない。
「てめぇに仕置きするぐらいでくたばるかよ」
たかだか高位の破道の六連発。
卍解による斬撃。
これで勝負がつくなんざ思っていない。
まだこの身を燃やす覚悟はある。
「もう私は向かわせてもらいます、嘘ではない空座町へ」
だから追わないでほしい。
そう言って足を向かわせる藍染。
俺はその肩を掴んで睨み付ける。
あの日の約束を反故にするなんて思ってんのか?
「舐めてんじゃねぇぞ!!」
片手で放り投げようとする。
しかし、次の瞬間嫌な音がする。
ボトリという音。
掴んでいた手首が斬り落とされていた。
「あの子を振り切るのは疲れますって、藍染隊長」
ギンが珍しく汗をかいていた。
『神槍』で俺の腕を斬り落としたのか。
「追いつかれそうという訳かい?」
こっちに目もくれず黒腔を使って向かう藍染。
その間にも英くんの接近が感じ取れる。
「速くいかんと面倒ですわ」
そう言うとギンと藍染は消えていく。
追いかけないとまずい。
「不格好だが……」
片手で手術をしてつなぎ合わせる。
もう少しでも時間が有れば、綺麗にできたが四の五の言ってられない。
「行くんですか?」
喜助が聞いてくる。
当然だろう。
ここまで関わってほったらかすような性分じゃない。
「貴方……下手したら死にますよ」
分かってるさ。
無茶をすれば毒が蝕むように体を壊すというのは。
でも俺もお前も護廷十三隊。
「護ると決めた以上、命はあの場所に捧げたんだ」
そして約束した以上は見捨てない。
あいつの目の迷い。
あれは救いを求めている。
負けたいとどこか奥底で願っている。
そうなれば『崩玉』が認めない。
今の力が減衰すれば捕縛も可能となる。
「それに行かなくても死ぬ」
まずは空座町が無くなってしまう。
その後に護廷十三隊に攻め入られてやられるだろう。
そして零番隊と戦う。
そんな敗北や終わりを受け入れられるような男でもない。
だったらせめてしぶとく抵抗した方が良い。
その方がカッコ悪くはない死に方だと俺は思っているよ。
「ついて来たい奴が来ればいい」
そう言って俺は向かう。
後ろに感じる気配はない。
徐々に奥に入っていくと遮断されているのか霊圧も感じない。
「もし死ぬとしたらお似合いな終わり方かもな」
そう呟いていると猛烈な速度でこちらに向かってくる影が一つ。
ああ……この人はやはり自分にとって最高の人だ。
俺は進めていた足を止めて待つ。
この人にはきっと最後の姿になるとしても見てもらいたい。
そんな深層心理が有ったのだろう。
「お前を一人で死なせたら目覚めが悪いからな」
ひよ里さんがそこには居た。
気を遣わせてしまったな。
藍染が壊したのだろうか、『拘突』が一向に来ない。
そしてもう一つの気配。
「英くんか」
傷付いてこそいるが継戦できるだけの力はまだ残っているんだろう。
それに彼の目的はまだ果たせていないようだ。
あの場面でも聞こえていた壮大な目的。
ギンを止めるという事。
それは並の人間が努力した所でどうこうできるものでは決してない。
「市丸さん、死ぬつもりですよ」
俺と同じように憎しみを目の奥底に秘めています。
年季は全く違いますが。
そう付け足してこちらに言っていた。
「そうか……」
やはりそう言った因縁が昔からあったのだな。
おおよそ、あの日の反応を思い返すにあいつの昔なじみの女性。
そいつの魂魄を藍染は『崩玉』の作成をする為に削った。
それによる恨みをギンは秘めて藍染に百年以上付き従った。
凄まじい執念だな、あいつには感服するよ。
「そろそろ着くで」
そう言ってひよ里さんと英くんと共に降り立つ。
すぐに藍染たちは見つかった。
これが最後の決戦だろう。
気合を入れなおして藍染の背中を見て進むのだった。
自分と同格とも言うべき相手。
そんな相手なので全力投球となります。
独自破道は基本的に威力がまちまちですが相殺しにくいものとして改変を加えております。
指摘などありましたらお願いします。