ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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藍染編は次回の交渉で終わります。
『死神代行消失』編はあの刀の製造で関与してそれ以外はどうするかは悩んでいます。


『解放 - catharsis -』

到着するとそこには膝をついている藍染が居た。

ギンもひよ里さんも驚いている。

黒崎君が圧倒的に凌駕しているという事だから。

だがその強さの源泉を見た俺は哀しみを感じていた。

 

それは自分が死神である事を捨てた故にたどり着いた境地。

つまり、彼にそれだけ我々は背負わせてしまったのだ。

たとえこの場所が彼にとっての故郷でも、元は護廷十三隊に所属する男の反乱。

我々が食い止めるべきであった事象に他ならない。

 

「刀が体に取り込まれていやがる……」

 

ギンから降りて呟いた。

徐々に藍染の体へ融けていく。

まるで一体化するように。

 

「ようやく追いつけたッスね」

 

喜助も隣にいた。

藍染がニヤリと笑って黒崎君を指さした。

 

「実に見事な一撃だ、黒崎一護」

 

だが、とどめを刺さないといけないのではないか?

そう問いかけた藍染に対して黒崎君が首を振った。

 

「あんたと刀を交わして理解した、もうあんたに敵意は無いだろう」

 

その黒崎君の言葉に藍染は微笑んでいた。

そして喜助に仕込まれていた拘束が発動する。

 

「全て知ったが故の暴走だったんだ」

 

喜助を見ながら言う藍染。

その眼は穏やかだった。

百年前のまだあの事件が起こる前の眼差しだった。

 

「後ろを振り向けばよかったんだ、その末にあの日の光は無いというのに……」

 

こちらに視線を向ける。

苦々しい顔だった。

申し訳なさそうに。

まるで悪戯を見つかった幼子が最も見られたくない人に見られた時のような顔だった。

 

「お前は悪くない、そうさせたのは俺がお前に伝えるのが遅かったからでもある」

 

あの日にお前を信じすぎた。

心が揺れてしまう事なんてないと思ってしまった。

その奥でお前がどれほど苦しむかを考えずに盲目的だった。

あの日に関して言えば俺も理解を十分にできていなかった。

 

「ギン、君にも悪い事をした」

 

ギンに贈るものは懺悔だった。

悪だと分かっていた。

理解者も現れる事もないままに邁進した時の傷。

それを放置していたのはより強固な意志として根付いてしまったから。

 

「解決したから、ボクはもう恨んでまへん」

 

肩を竦めて拍子抜けだというように。

最後まで悪人を貫くと思ったのだろう。

藍染は憑き物が落ちたような顔をしている。

 

「少なくとも抜き出すのもあの日に伝えたら素直に返してもらえたんちゃうかと思ってます」

 

自分、命かけたけど滅茶苦茶勿体ない事しましたわ。

頭かきながらあの蛇のような笑みではなく交じりっ気のない笑顔で呟いていた。

 

「喜助、拘束解いて良いだろ?」

 

その提案に頷く喜助。

解放をしたがそれでも抵抗の意思を見せてはいない。

そして井上さんや茶渡君たちも来た。

後ろには朽木隊士もいる。

 

「悪いが約束はまだ終わってないから尸魂界に戻ってきてもらうぜ」

 

藍染にそう言うと立ち上がって空座町ではなく総隊長たちのいる空間へと向かう。

後で黒崎君への対応は喜助を経由して教えて貰おう。

 

「謝って許されることではないだろうが……」

 

藍染は頭を下げておとなしくしていた。

総隊長も訝しんでいた。

しかし邪気がないがゆえに、皆は尸魂界まで送る際に刀を抜くような真似はしなかった。

 

「さて……無罪放免勝ち取りますか」

 

『蛆虫の巣』に送られた藍染やギン、そして関係が有った東仙を見送りながら肩を回してそう言う。

ここからは裁判が後日待っている。

しばらくは体を癒すために日時は必要だろう。

藍染の力は今後も必要。

ましてや憑き物が落ちた藍染であれば有難いことこの上ない。

 

「でもそうなると流石に五番隊の隊長は空席になるかもな」

 

其れだけが悩みだ。

そう呟いて皆が各々この激戦での傷を癒すために眠った。

 

次の日、四番隊から呼ばれる。

卯ノ花隊長の呼び出しには迅速に対応。

無駄な事など微塵もないのだから。

 

「失礼します」

 

四番隊隊舎の前に来て頭を下げる。

虎徹副隊長が開けてくれたので、そのまま進んでいき隊長部屋に入る。

 

「呼ばれた理由は分かりますね?」

 

その問いに頷く。

今の体の状況が非常に危ないという事だ。

今でこそ落ち着いてはいるが、顔色が悪いのは分かっている。

 

「貴方の体は非常に危うい状態です」

 

傷んだ霊圧が体中にはびこっている。

それを開放する際に、健康な霊圧まで攻撃してしまう。

その結果として体に痛みが走り、徐々にその健康な霊圧まで傷んでいくという事だ。

時間経過でも蝕まれていたが藍染との戦いで一気に加速した。

 

「次に全力で戦うようなことが有れば、あなたの命の保証はできませんよ」

 

この状態は卯ノ花隊長でも治せない。

それを分かっているからか辛い表情を浮かべている。

治すには根本的な治療になってしまう。

そんな環境は護廷十三隊にはありはしない。

 

「ただ、そんな時が来ない限り、今の貴方を治せないのが皮肉でなりませんがね」

 

その言葉に頷く。

そして俺は隊舎から出ていった。

どうやら緊急の隊首会が行われるようだ。

無理もないだろう。

 

東仙も昔の罪状が有るし、ギンもそういったものは存在する。

藍染の理由が明らかになれば俺も駆り出されるだろう。

つまり言えるのは…

三番隊隊長、五番隊隊長、九番隊隊長、十二番隊副隊長。

この四名が場合によっては抜けてしまう。

 

「お前が代わりに行ってコイ」

 

マユリがそんな事を言うので仕方ない。

即座に全てを打ち明けて、その上で面子の選抜を行う。

とは言っても『仮面の軍勢』に頭を下げるしかないけれどな。

 

「……なるほど、そういう訳じゃったか」

 

隊長はいつも通り全員が集まっていた。

その上で藍染が何故あのような行動に出て皆に百年もの間迷惑や罪を犯したのか。

その真意を聞くと総隊長が溜息と同時に額を押さえていた。

 

「僅かな掛け違いがこじらせたというか、信頼があだになったというか……」

 

頬を掻きながら京楽隊長が言ってくる。

この体の原因もそれが理由であった事も周知の事実になった。

 

「しかしそれを聞いたところで無罪放免は非常に厳しいと思うぞ」

 

砕蜂隊長が言ってくる。

日番谷隊長と浮竹隊長も頷いていた。

 

「百年前の過ちの判決はそんなちゃちな取り消し程度では済まない」

 

むしろあいつらの無能さが白日の下へ晒される。

それを払拭するためにはどんな代償だって払うだろう。

 

「俺が暴れればこの体と言えど四十六室はさらに壊滅に追いやられます、そんなのあちらも嫌でしょう」

 

百年前に喜助が止めなければ総隊長が卍解を出したり更木が本気にならなければいけなかった。

今回はおそらく止める理由すらない。

そうなれば奴らに待ち受けるのは死だけだ。

 

「脅迫ではないけれど過去の恐怖心のせいで向こうが譲歩する可能性は有り得ますね」

 

雛森副隊長が代理で言ってくる。

因みに吉良と檜佐木も代理でここにいた。

その二人も頷く。

 

「大罪人の扱いこそあるが、力を今後善意に向けられるのであればこれ以上の心強さはない」

 

総隊長も藍染の強さは認めている。

だからこそ、本当に問題が無ければ『敷居を跨がせない』発言を撤回しても良いという事だ。

この柔軟性はきっと黒崎君と出会ったからだろう。

 

「あの三名に関してはお主に任せる、そして藍染の手綱を握れるのはお主しかいないから不問とする」

 

つまり他の誰もあいつの目線にはまだ立てそうにないという事か。

信頼を今からとるのも難しい。

ましてや理解となるとな。

 

「裁判の交渉も俺に任せてもらえるんですね?」

 

その問いに頷く。

言質は取った。

なんとかしてでもあいつらを無罪放免させてやる。

 

「何なら空席の隊長の交渉もしておいてよ」

 

京楽隊長が言ってくる。

この人丸投げするのがお好きだね。

山本総隊長からも一任するからやってくれと言われた。

異常な奴用意するかもしれないのに……

 

「後悔しても知りませんよ」

 

そんな事するわけないと分かっているのか。

京楽隊長に優しい眼差しで見られていた。

 

「交渉と裁判はどっちが先に来ますか?」

 

時間については把握できていない。

優先は藍染の方だ。

まだ隊長職については代理を立てておいて問題はない。

 

「裁判じゃのう」

 

そうですか。

それだけ聞いて去っていく。

 

「ほぅ、豪気なものダネ」

 

十二番隊に戻ってその事をマユリに伝える。

内容を笑いながら聞いていた。

隊長の任命権を一任。

それ以外にも大罪人の処分を一任。

ここで示されるのは俺は認められていたという事。

 

「俺の解任はあいつらのおかげで無くなったというのが、まるで硬貨の裏表のようだよ」

 

正直あいつの手綱を握れる人材が他に居たらそいつに任せただろう。

……俺一人を解任するとなるとまたこじらせて暴れるのが目に見えている。

格好つけたけど裏表以前に一蓮托生じゃないか?

 

「死なない実験体という面では魅力的だが、さすがに『崩玉』を取り込んだのを軽率には扱えないね」

 

溜息をつくマユリ。

死を克服する以上、ほとんど意味がない。

麻酔をして克服したら麻酔無しの手術。

そして皮膚を斬られない強度にしたらもう手を付けられない。

 

「失敗する確率が大きいものは意味が無い」

 

前提として手術や実験は不可能と言えるだろう。

しかも途中経過すら怪しい。

 

「十二番隊預かりにするしかないからな」

 

今のあいつらをそのままの場所には行かせられない。

そうなると一任された俺の所に来るしかない。

 

「あれだけ恐ろしい人材が末席というのも解せないがね」

 

鼻を擦りながら言ってくるマユリ。

実力主義ではあるからな。

それに隊長だから元々有能だし。

 

「席次を与えるにも早急にはできないだろ」

 

まずは裁判の判決。

その上で身柄の引き取り。

そして無能な奴らを放逐。

四人分の席は確保してもらいたいね。

 

「あいつらの為とはいえ四十六室に遜るとか虫唾がはしる」

 

確執はたぶん取り除けはしない。

明日で即日判決だろう。

 

.

.

 

そして翌日。

三人を『蛆虫の巣』から解放して裁判所に着く。

騒動前にも入ったがこんな雁首揃えているのは百年ぶりだな。

前回は無様にそこら中に転がっていた。

いやあ、あれは傑作だったな。

 

そんな事を考えていると下らない罪状ばかり読み上げていく裁判長。

この間中、何もしてなかった奴らがでかい顔をしてんじゃねえよ。

そして一方的に判決を言おうとした時に俺は手を前に差し出した。

 

「何のつもりだ?」

 

その行動に何か思う所が有ったのか。

一瞬止まる裁判長。

そこに俺は異議を申し立てるように判決の変更を申し出た。

 

「こいつらには条件付きで無罪の判決をして貰いたい」

 

俺の申し出に怒気でも発したか。

空気が少しばかり緊迫する。

だがこの程度へ退く男ではない。

百年近くも前だから忘れてしまったか?

 

「なぜこいつらを無罪にしなければならぬ?」

 

自分達の決定が全てと言わんばかりの声色。

相変わらずすぎて反吐が出る。

理由なんてこれで十分だろうに。

 

「貴方たちは百年前ですらろくに判決を出していないからな、それに条件付きという言葉を頭に付けたはずだ」

 

四楓院夜一、鳳橋楼十郎、愛川羅武、矢胴丸リサ、六車拳西、久南真白、浦原喜助、猿柿ひよ里。

有昭田鉢玄、握菱鉄裁。

発端となった平子真子に関しては有罪で良いと思えた。

 

ただ、言わないのは言ったとしたら関連している奴らが元々悪だとなってしまう。

それは避けねばならなかった。

あいつの残した火種のせいで正直に言う事すら困難だ。

面倒ごとばかり残しやがってあのおかっぱ野郎が。

 

「こいつらの面倒は俺が見ます」

 

元々部下だった東仙。

気心知れた藍染。

子供時代から知っているギン。

こう列挙したら適任は俺しかいないだろう。

 

「また問題を起こしてしまったら……?」

 

四十六室が聞いてくる・

そんなもの決まっているだろう。

責任は一度言った以上とるものだ。

俺が見て問題を起こしているのだから俺も含めてな。

 

「こいつらと俺の四人とも『無間』に行くなり、現世永久追放されてやるよ」

 

二度と出てこれない場所に行く。

もしくは霊圧を全て剥奪されて現世行き。

それで問題ないだろう。

実際これ以上となると俺やギンと東仙を殺したうえで藍染を閉じ込めるという事だ。

藍染は俺達と違って『崩玉』のせいで死なないし、剥奪しても復活しそうだからな。

 

「ただ皆を謀った年数分、無害で居続ける事、もしくは尸魂界に多大な貢献をした時は無罪放免にしろ」

 

それぐらいの見返りがないと困る。

これが飲めないのならどうなるか。

自分達の要求とこっちの悪い譲歩だけ飲み込んでいる。

それを許すとは思わないだろう。

 

その証拠に辺りを見回しているのは止めてくれる人材がいないか探している。

生憎誰もいない。

隊長が四人もここで暴れてしまったら壊滅。

しかもそのまま貴族の屋敷を襲撃して一族郎党まで潰しまわる非道を行いかねない。

 

「……仕方あるまい、その条件で執行猶予の解放を判決としよう」

 

それを聞いて刀で三人の拘束を切り裂く。

自由の身となったってわけだ。

 

「行くぞ」

 

手を振りあげる。

その動作に応じて去っていく。

 

「申し訳ございません」

 

自分達を開放してくれた。

それどころか連帯で責任を取る。

己の首まで差し出した俺に藍染は深々と謝罪をする。

 

「謝るくらいなら初めから俺本人に聞きに来いっての」

 

その返答にギンと東仙が笑っていた。

確かにその通りだと思ったのだろう。

其れさえやってればこんがらなかったのだから。

 

ただ、そうなるとある意味酷い有様だっただろう。

黒崎君は志波一心次第でなんとかなったが虚の霊圧は無かったかもしれない。

あとは日番谷は俺の下で働いていた。

そう言った今あるものの根底が覆っていただろう。

 

「明日からは馬車馬の如く働いてもらうから覚悟しとけ」

 

引き連れながら十二番隊に向かって行く。

それについてくる三人。

あの日のような瀞霊廷が戻ってくればいい。

そう思うと足取りも軽い。

長きに渡った騒動の終わりを今、俺は実感したのだった。




藍染は元々無罪放免ルートを考えていました。
正直、本作の藍染は原作とは違って人間味取り戻した所での失態の為、全員が強く言えなくなります。
それに斑鳩の存在が当時大きいのも現役の隊長たちには理解されやすかった為です。
ご都合主義ですがあまり悲しいのをかくのは辛いので。
そして唐突な斑鳩さんへの宣告。
まあ、今後の強化の為なのでやむなしです。

何か指摘などありましたらお願いします。
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