皆さん、よろしくお願いします。
『助力 - Helpers Power - 』
「なんと……そうか」
総隊長は俺の進言を聞くと顎に手を当てて思案する。
悩むこと以前の問題。
敵の第一の矢は既に放つ所まで来ている。
「総隊長命令で全員臨戦態勢を取るようにしないと、手遅れになるやもしれません」
相手の奥の手は分析するが其れには第一の進軍をある程度食い止める必要がある。
それが出来ないと意味は無いだろう。
「憶測で飛ばすにもなかなか難しいがな」
出所も何も予兆はそれのみ。
もし気のせいであれば、無闇な気構え。
「しかし、その初動の遅さが恐ろしい事態に発展する事も肝に銘じてください」
それだけ言って去って行く。
とりあえずはあいつらにも声はかけておくか。
その為、技術開発局へと足を踏み入れて探す。
お目当ての人物はすぐに見つかった。
「三人とも今話すことはできないか?」
そう言うと三人とも頷く。
そして俺の家に呼んだ。
次期当主である以上、扱いは悪くない。
「緊迫した状況なのでしょう?」
藍染の言葉に肯定する。
顔を変えていないのによく分かったな。
「気のせいならばいいが滅却師の侵略が近々に起こる場合がある」
そこで俺の指示はこうだ。
相手も一回で出来るなんて想定しないだろう。
「十二番隊に潜むのが藍染、ギンと東仙は三番隊と九番隊の援護を担当してほしい」
相手がこちらの卍解や始解に対する策を用意しているはずだから鬼道を中心に展開してほしい。
正直練り上げた十二番隊隊士を多数配置する事になる。
彼等には『死』を覚悟させている。
「十二番隊舎や施設の内部が輝いているのもその対策?」
ギンが言ってくるので頷く。
予兆がないならば考えられるのは中身から。
つまりは瀞霊廷を隠れ蓑にした潜入。
「俺に万が一の事があればそのままお前らは各自、かつての所属隊士たちを協力して守れ」
十二番隊はマユリがいる。
だが致命的なのは三番隊。
鳳橋さんしか際立った戦力がない。
吉良君は相手を斬らないと無理なのに、さらには遠距離攻撃が可能な相手。
「井上昊と黒崎真咲の二名に関しては『遊撃』の指示を出す」
瀞霊廷かもしくは『虚圏』での援護。
つまりは自分の大事な相手を守る為の指示でもある。
「指示についてはそれだけだ、各自全力を尽くせ」
ここで貢献すれば無罪放免だってあり得る。
杞憂であれば問題ない。
しかし襲撃されて疎かにしてて死ぬなんて一番情けない。
皆の誇りに問いかけるという形だった。
「これから注意喚起を行う必要があるから俺は色々と出かけてくる」
そう言って訪れるのは二番隊の隊舎から順番に十三番隊の隊舎。
砕蜂隊長は取り合ってくれたがあまり興味が無いといった感じだった。
あるいはすでに常に覚悟しているといった感じか。
三番隊は聞き入れてくれたもののやはり小粒の為、配置等を考えた防衛策を取る形になるだろう。
出来る限り被害を抑えた形。
死者でなければ四番隊と十二番隊の力でなんとかなる。
四番隊に関しては治療の為、前線へと出ずに皆の治療に当たっていただけるように進言。
ここが壊滅したら我々の病や傷は癒されずに死んでゆく事だろう。
五番隊にも伝えるが緩い感覚だった。
心配ではあるがなんとかなるだろう。
六番隊にも言うが元々隊長格が強いためあまり心配はしていない。
相手の出方によれば卍解の使用ができない可能性も伝えておく。
七番隊にも伝えはしたものの卍解抜きの戦いを行う事、そして『ある事』に対して行うべからずの念を押した。
八番隊ではすでに伝わり始めていたのか話を聞いて頷いていた。
九番隊にも伝えてはいたが檜佐木の卍解が完成していないため久南さんと拳西さんが主体となるだろう。
忘れないように綱彌代には禁止の旨を伝えておいた。
因みに鳳橋さんと平子と拳西さんに関しては卍解不可の可能性は言っていない。
何故ならば霊圧に虚が混じるからだ。
十番隊も未だに卍解には至らず。
しかしきちんと聞き入れてくれたことで配置等の見直しを行うらしい、ありがたい限りだ。
十一番隊には伝えたが卍解が無いので『強い奴が来る可能性がある』としか言わなかった。
十三番隊も二人が卍解が可能なため、十分に気を付けて戦う事を伝える。
「外部の協力も必要だ」
そう言って俺は現世に降り立つ。
そして愛川さん達がいる所へ向かった。
皆さんが居たので座って貰って大事な話が有ると前置きをした。
「で……どんな話だよ?」
微笑みながら愛川さんが言ってくる。
さて、単刀直入に行くか。
「尸魂界と現世を巻き込む戦いが起こるかもしれません」
俺がそう言うと矢胴丸さんが口を開いてきた。
愛川さんは驚いた感じの顔だったが。
「それは速い話ひよ里や拳西達にも被害及ぶから協力してくれ言っとるんか?」
その問いに俺は頷く。
面倒な話かもしれませんが。
「まあ、お前でも難しい相手ってわけか、しゃあないな」
相手の強さはどのくらいや?
矢胴丸さんがそう聞いてくるので最悪を想定した強さを伝えよう。
「隊長が複数名と考えてもらえれば」
さらにそこで上下があるので油断はできない。
こっちに斬魄刀がある以上、向こうにも能力はあると仮定する。
大物狙いに特化したものや状況を問わず強い能力も想定した方がいい。
「これだけの情報しか今は仮定でしか話せませんし死ぬ危険もあります」
しかしそれでも戦力が必要なんです。
そう俺は言って椅子から降りると膝を折り地面に座る。
誠意とは安く見えるがこういう形だ。
「どうか俺達に力を貸してください」
土下座をして三人に頼み込んだ。
皆無言だったが数秒後にこちらが顔をあげる。
「そこまでされる覚えはねえよ」
お前に大きな恩があるのに返せてないんだ。
そう、愛川さんに言われた。
「そこまでするほど安い絆ちゃうで」
誠意は見せてもらったけどな。
そう、矢胴丸さんにも言われた。
「私も全力でやらせてもらいます」
有昭田さんが言ってくる。
そして俺はお礼を言って次の目的地へ向かう事にした。
次の行先は『浦原商店』だ。
数分も歩けば店に着いた。
「おーい、喜助」
俺は呼びかけながら扉を開ける。
するとパタパタと音を立てて喜助が出てきた。
「いきなり来て……どうしたんっすか?」
無駄口叩くために来るような男じゃない。
それが分かっているのか、聞いている間に喜助の目が真剣なものに変わる。
「昨日から虚の消滅が加速度的に始まっている」
それを聞いて喜助は頬を掻く。
『魂葬』ではない。
其れで理解したのだろうか、喜助から溜息が出た。
「つまり尸魂界に未曽有の危機が襲ってくるし、場合によっては現世も厳しい」
だから力を貸してくれ。
そう言って俺は土下座をする。
「分かりましたが相手については?」
俺は相手が滅却師であること。
そして今までとは違う力を有して攻め入る可能性が非常に高い事。
虚に対する免疫が皆無の為、虚圏の侵略を優先するだろうという事。
「なるほど……」
その上で助力が必要だ。
生憎相手は史上最強と言って差し支えは無いだろう。
隊長並みの相手が複数人。
前回の十刃なんて目じゃないぞ。
「頭領については不明だが危険度は総隊長、もしくは零番隊と見ていい」
矢胴丸さん達には言えてない。
だが喜助には伝えておかないといけない。
この情報を基に対策を用意するだろうから。
矢胴丸さん達に言って行う対策よりも、実績が上がるのは喜助の対策だ。
「ひよ里さんについてはどうするつもりですか?」
それを聞いてくるか。
ここに残って貰えば一番問題はない。
しかしそれを伝えても首を縦に振る事は無い。
「あの人も覚悟ありきで護廷の任に戻ってくれた」
俺が誘ってきたのがひたすらに甘い時間を過ごしたい。
もしくは鍛錬であの日のような日常を謳歌したい。
そんな願望だけではなく戦力としてみている事をあの人は分かっている。
今更言葉を出して『護って死んでくれ』という必要なんてないはずだ。
「それはただ誤魔化しなんじゃないっすか?」
喜助が咎めるような視線をこっちに向ける。
……全く敵わないな、本心で言っている訳が無いのを見抜かれた。
「俺が必ず護る、あの日から変わらない誓いを持って」
握り拳を作って俺は言う。
あの人は避難もしない。
ならば共に戦うまで。
死なぬようにこの身を盾として粉骨砕身するのみ。
「あの人が笑う未来が手に入るならば俺はこの命さえ惜しくないさ」
喜助にそう言って去って行く。
そして帰って早々とんでもない状況を見る事になるのだった。
それが後の『霊王護神大戦』あるいは『千年血戦』と呼ばれる戦いの幕開けとは知らずに。
今回から千年血戦編に入っていく予定です。
実際は100年前にすでに言っていたけど、あの時はまだ動いてなかったのが動き始めたという事。
山じいの処遇はもう確定しています
指摘等ありましたらお願いします。