ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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今回で英の部分は一旦終わりです。
次回からは斑鳩です。


『思惑の檻 - Jail Of Speculation - 』

「どいつもこいつも手応えがねえな」

 

滅却師を切り裂きながら呟くノイトラ。

落ちてきた方向には行かずに何とかして相手の居城へ乗り込む道を探している。

あちらに向かうスタークさんが見えたというのも一つだろう。

 

「そっちの方が滅却師には強いだろうから先に突入して良いぜ」

 

そう言いながら進んでいくと見たところ幹部級の滅却師が一人。

三人の虚を相手にしようとしていた。

 

「ありゃあ、ハリベルの所の従属官だな」

 

其れならば助太刀しないわけにはいかないな。

ノイトラには悪いが横槍を入れていく。

 

「あいつの斜め向こうに階段が見えているから頼むぞ」

 

そう言うと笑顔が浮かんでいた。

強い相手との戦いを望んでいる。

こいつに殿やらせるのは悪手だからな。

 

「あの二人もてめえも歯牙にかけねえ強さ……楽しみだな!!」

 

そう言って突撃をしようとするノイトラを止めようとする相手。

その攻撃を防いで道を作った。

俺の姿を見ると相手は嘲った笑いをしてきた。

 

「おやおや、恐れ多くも陛下から逃げた負け犬ですか」

 

痛い所を突いてくる。

でもあんたに喧嘩を売るかどうかにそれは関係ない。

 

「折角ティア・ハリベルのおかげで拾った命、もう少し有意義に使ってはいかがです?」

 

そう言いながらも矢を番える相手。

三人ともこちらに視線をよこしていた。

 

「ハリベルさんの関係者を見捨てる理由にはならないし、馬鹿げたもんだがこれも有意義な使い方さ」

 

そう言って薙刀を構えた。

それを皮切りに矢を射出する相手。

その速度は前に戦った幹部級の滅却師である蒼都を凌駕している。

 

「はっ!!」

 

矢を打ち払うがその後にも迫る物量。

あいつが弱かったのか、この人が特別強いのか。

一体どちらなんだろうか?

 

「そちらの考えは読めていますからお答えしましょう、彼は強い滅却師でした」

 

矢を放ちながら話し始める滅却師。

俺の考えが相手に分かりやすいほどに顔に出ていたのだろう。

それをあえて考えが読めるという嘘で少しでも優位性を保とうとしているのだ。

 

「しかし慢心も有りましたので敗北したのです、このキルゲ・オビーにそういう期待はしても無意味ですよ」

 

確かに隙らしいものは見えない。

矢を番えてこちらに狙いを定めてきりりと弓を引いている。

俺に集中して虚の三人は眼中にないようだが、それは危ういんじゃないのか?

 

「虚に救われたからと言ってもう一度捨てようなど滑稽極まりない」

 

矢が徐々に本数が増えてこちらの接近を許さないようになっている。

黒崎の奴も来ているが、横槍を入れるのはまずいと判断したのだろう。

茶渡や井上と一緒に体勢だけは整えていた。

 

「恩を返さなければここで生き延びても、いつかは脳裏によぎって苦しむんだよ」

 

其れも分からないのならあまりにもあんたらは仲間意識がない。

結局は陛下という存在に首を垂れる以外は団結力が無いんだろう。

 

「情の深さは心の弱さと知りなさい、負け犬さん!!」

 

矢を再度打ち払って接近していく。

あまり上手くいくとは思っていないが……

 

「はあっ!!」

 

俺は顔面に向かって飛び膝蹴りを放つ。

相手はそれをほんの僅かな回避でものともしない。

それどころか笑っている。

 

「まだまだ!!」

 

着地後、俺は即座に石突で顎を跳ね上げようと放つ。

相手は其れも平然と捌いていた。

接近した事で矢は撃てなかったようだが、本来ならば隙の大きな技なんてやるものではない。

 

「撃たせなければ勝てるというのは浅知恵ですねぇ」

 

そう言う相手に再度打点の高い攻撃を繰り出す。

其れこそ馬鹿の一つ覚えの様に。

相手は回避をするが矢継ぎ早に繰り出し続ける。

 

「愚かしい事です、顔面を切り裂いて視界を奪いたいんでしょうけど……!?」

 

相手は最後まで言葉を言えなかった。

何故ならば体勢を崩されて驚いていたからだ。

 

「水面蹴りを頭の中から想起させないように執拗に顔面を狙ったんだよ」

 

崩れた相手に体当たりをする。

その際に地面についていない片足をもって受け身を取れないようにする。

砂漠だから衝撃はない。

しかしこいつへ傷を負わせるためにはこれが良い。

 

「刺され!!」

 

相手が倒れ込む軌道上に薙刀を出現させてやる。

刃が深々と肩へと刺さっていく。

抉れていくのもはっきりと分かるほど勢いがついていた。

 

「がはっ!!」

 

ノイトラの勝負で使った技術を再利用してみたのだがうまくいったな。

流石に片腕が使い物にならなければ相手も力を落とすだろう。

矢を単体で放っても、使えない片腕の方に回れば倒せるのだから。

 

「中々やってくれるではないですか…全力で倒して差し上げましょう」

 

そう言うと相手は立ち上がる。

全力で倒すと言いながらこちらに攻撃する為の矢も弓も出さない。

一体何をするつもりなのだろうか?

代わりに出てきたものは滅却師としては想像を外れたものだった。

 

「やっと……こっちの土俵に上がりこんできたなあ!!」

 

矢を放つため、滅却師には似つかわしくない刀を構えた瞬間、満面の笑みを浮かべた。

お前らの陛下も刀を持てば逃れられない不文律。

それを叩きつけてやる。

 

「『剣道三倍段の枷』」

 

そう言った瞬間、雰囲気が変わる。

相手もそれを感じたのか、こちらを見てきた。

現状、矢も小さくなっているのが分かるはずだ。

 

「これは強力になった俺の力だ、よく聞けよ」

 

あれから強さを求めた。

血の滲む努力はあった。

再戦を夢見ていた事と、黒崎達ばかりに頼れないから。

 

「俺の選別で対象となった場合、戦闘力や能力及び技術の規模に至るまで『三割』の力しか発揮できない」

 

無差別で発動していた可能性も考慮した。

その為、区別して味方の力の減衰をさせないようにした事。

前回は戦闘能力に限られていた部分。

今回で言えば恋次さんの蛇尾丸の節の数や攻撃の範囲も対象となる。

 

「あんたならこれがいかに恐ろしい事かわかるよな?」

 

相手は憎々しげにこちらを見る。

もうこうなったら逃れられないぜ。

覚悟してもらおうか。

 

「くっ!!」

 

弓を打つ速度も遅れている。

俺が接近をして切り上げるが、さっきに比べたら手応えも全然違う。

刃が体に弾かれることもなくそのままめり込んでいく。

振り切った際に血飛沫が舞う。

 

「流石に三割の硬さならこうなるわな」

 

白い砂漠へ相手の血が滴っている。

前回戦った蒼都の時には見れなかったが、相手も死神の卍解に相当するものを持っていたんだな。

そんな手があるのならば、慢心してなければ普通にやるよな。

慢心が理由で死んだら後で何を言われるか。

死に恥の可能性すらありうる。

 

「吸収する速度も何もかもが三割とはこんな不自由とは…」

 

そうは言うが相手の実力もさるもの。

解放する時に刀を抜かずに弓矢を普通に使っていればこんな事にはなっていない。

 

「一手違いは致命的になる、幹部の貴方でも例外じゃない」

 

決着を付けましょう。

俺はそう言って接近する。

相手は矢を番えて放つ。

諦める事をしないのはお互いさま。

 

「はっ!!」

 

打ち払って跳躍をする。

それを狙って撃とうとするが指を俺は向けていた。

 

「雷鳴の馬車 糸車の間隙 光もて此を六に別つ 縛道の六十一『六杖光牢(りくじょうこうろう)』!!」

 

捕えられた相手が砕こうとする。

しかし、ここでも三分の一に減衰させられた事が大きく作用する。

 

「くっ、刀さえ出さなければこのような脆弱なもの……」

 

罅は入るが無防備を晒してしまう相手。

そうなってしまうと待っているのは致命傷の斬撃。

 

「かあっ!!」

 

俺が繰り出すのは唐竹割りの一撃。

今の相手の防御力ならば、喰らってしまうとそのまま真っ二つにもなりかねない一撃だ。

無論、相手もその危険度を分かっているのだろう。

満足に動けないながらも回避行動へ移る。

 

「くっ!!」

 

相手はあえて後ろに倒れる事で回避をする。

手が自由ならば弓矢を使って反動を活かす事も出来ただろう。

しかし、それをできるほどの時間の猶予もなく、壊れてもいなかった。

だからこそあの動きだったのだろう。

 

「次も回避できるのか?」

 

俺がそう問いかけると無言になってしまう相手。

相手は地面に倒れ込み腕と足が満足に動かせない今、次も回避するのならば転がる以外に手段はないはず。

転がる為の筋力や速度も三分の一では望みはもう無いだろう。

そんな事を考えながら近づいていくと大きな声が聞こえた。

いけない事だとは思っていても本能なのだろうか、視線がそちらに向いてしまった。

 

「おい、行って見たらもぬけの殻じゃねえか!!」

 

戻ってきたノイトラの言葉を聞いた瞬間、相手を見ると笑っていた。

既に鬼道も砕けている。

まさか、ここはただの試運転の為に侵略するつもりだったのか?

あの頭領が次に攻め入る場所は……

 

「黒崎、速く尸魂界に行くんだ!!」

 

俺がそう言うと黒崎は走り出す。

浦原さんが作り出した穴に入っていく。

しかしその瞬間、黒崎は檻でとらえられていた。

 

「遅い!!」

 

相手は俺が視線を外した時に、俺を倒すのではなく自分の役目の全うを選んできた。

相手が全力を尽くして黒崎を檻の中に閉じ込めようとする。

しかし、俺の反応を遅いとは言うが今のあんたの状態を忘れたのか?

其れとも必死すぎて余裕がなくなったか。

 

「それはこっちの台詞だ!!」

 

背中に斬撃を見舞う。

何度も何度も血飛沫を浴びようとも構わずに振るい続ける。

こちらには目もくれず黒崎を行かせまいと維持し続けている。

 

「あぐぐぐ……!!!」

 

これだけ斬っても檻を破る事は出来ていない。

こいつらの信念はおかしいからな。

速く命を削り取らないと。

焦る俺の肩に手を置く虚。

ハリベルさんの従属官の三人が協力しようとしてくれた。

 

「ここはあたいらに任せろよ」

 

そう言うと三人がかりで虚閃を放つ。

更に体を引きちぎっていく。

それは怪物となって一気に滅却師に襲い掛かる。

 

「我々がそちらへ残存戦力を割かない無能とでも?」

 

血を流し、死に体となろうとも解除をしない。

凛とした顔と諦めを知らない眼差し。

相手がそう言うと化け物の上に雷が落ちてくる。

その攻撃に気を取られていると、強い衝撃を感じて飛ばされていく。

 

「あっちの虚たちよりもお前を倒さねえとな」

 

邪魔な化け物は仕方ねえけどよ。

そう言って目の目には女の人が二人。

想定すれば雷撃使いと筋力増加の能力者。

単純で強い相手だ。

 

「おい、手伝えよ」

 

ノイトラに言うと頭を掻いて興味なさげにこっちを見る。

立ち上がって背中を向けてきた。

まさか、こいつ……

 

「ハリベルがどうなろうと知った事じゃねえし、目当ても外れたんだ、やる意味はねえよ」

 

まさかの予感が当たってしまった。

ノイトラはそう言うと去って行きやがった。

マジであいつ自分勝手すぎるよ。

井上と茶渡がいるから何とかなるかなぐらいに思うか……。

 

「あいつは後で言っとくからよ、やろうじゃねえか」

 

スタークさんが隣に来る。

なんとかなるだろうが多い方が助かるんですよね。

そう思っていると霊圧が一つ消えていた。

 

「キルゲの奴も死んだかよ」

 

相手がそう言いながら視線を横に向けたのでつられて見る。

霊圧の消失は違和感ではなく、あの滅却師が息絶えていた。

強靭な精神と度胸には感嘆せざるを得ない。

なんとか黒崎の拘束を解く事は出来たようだ。

速く到着してくれ。

俺はそれを願いながら相手に向かって薙刀を構えた。




原作を見たらユーハバッハもキルゲも刀出ちゃっているんですよね。
活かせる相手は限られているけど、活かす形で今回は英を活躍させました。
蒼都は完聖体でやらなかったのは慢心してたで片付けてます。

指摘等ありましたらお願いします。
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