ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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今回は零番隊の部分を詰め込みました。
強化でゴリゴリやってますが、相性等も踏まえているということは書かせていただきます。


『全力 - Full Power - 』

「危ねー!!」

 

空高く打ち上げられて次の目的地まで飛んでいる俺達。

黒崎君が高さに驚いて危険だという。

 

「なんでこんな事ばかりなんだよ!!」

 

阿散井君も不満を漏らしていた。

この二人は鬼道が駄目なんだったな……

 

「『吊星』」

 

何か獅子のぬいぐるみが黒崎君の死覇装から出てきたが問題ない。

彼を下敷きにするのは忍びないだろう。

 

「うおっ!!」

 

背中から受けとめられて驚く黒崎君。

強度もいい感じだ。

 

「わっ!!」

 

阿散井君も受けとめられる。

そして一拍置いて二人とも着地した。

 

「霊圧が元に戻ったら凄いんすね」

 

阿散井君が言ってくるので頷く。

少しは見直したか?

 

「なんで彼はついてきたんだ?」

 

俺は獅子のぬいぐるみを指さす。

すると黒崎君が説明してくれる。

なんか助平らしく女の方が入っていると期待したようだ。

 

「でもひよ里さんも朽木四席もいただろう?」

 

俺があの場面に居た女性をあげる。

するとぬいぐるみが溜息をついた。

 

「姉さんはともかくあんな貧相な体は俺の趣味じゃないっての」

 

その言葉は喧嘩を売っているんだね。

よろしい、買ってやろう。

 

「腕力が戻ったかどうかをお前を引き裂いて確認するか」

 

頭を掴んでぐぐぐと横に引っ張る。

段々引き延ばされていき、危険と悟ったのだろう。

 

「俺が悪かったです、許して許して!!」

 

俺は聞く耳を持たず力を入れて引き裂こうとした。

しかし、次の瞬間衝撃を感じてぬいぐるみを離した。

 

「ぐだぐだせんとこっちにこんかい、ハゲ!!」

 

ひよ里さんが死覇装の上に割烹着を着た状態で出迎えてくれた。

玄関の方には曳舟さんがいる。

 

「一護ちゃんに恋次ちゃん、そして傑ちゃん……ようこそ『臥豚殿』へ!!、おもてなしするよぉ!!」

 

そう言って厨房へと戻っていった。

ここから始まるのはとてつもない食事だろう。

湯治に食事と療養の行為だ。

そうしないと修行なんてついていけないからな。

 

「ほいさ、ほいさ、よっと!!」

 

忙しなく音を立てて調理していく。

ひよ里さんはその速度についていっている。

どことなく生き生きしているのが分かる。

 

「料理置いてくで、じゃんじゃん食いや!!」

 

そう言って両手で天まで登るほど盛った料理を運んでくる。

それからしばらくすると、料理を置く机は埋め尽くされた。

 

「ひよ里ちゃんもあとはデザートだけだから一緒にお食べ」

 

曳舟さんにそう言われて、ひよ里さんも割烹着を外してこっちに来た。

久しぶりに食べれるからワクワクしているのかな?

そう思っていると口元に何かついてる。

 

「もしかしてつまみ食いしました?」

 

そう言うと首を振るひよ里さん。

理由があるのだと前置きをして問いに答えてくれた。

 

「味見や、味見」

 

仕上げというか根幹の部分は曳舟さんや。

でも、味付けとかはウチも手伝った。

美味しいもん出す気やったら味見はせなあかんやろ。

 

「それもそうですね」

 

箸を取り、皿を持って俺は料理の内容を見る。

盛り付け方が違うのは二人で協力していたからだろう。

山盛りでも見せ方が違うのだ。

 

「俺も食べないとな」

 

久々に食べる曳舟さんの料理。

それは普通の料理と違う霊圧を感じる。

成程、ここの目的は察した。

 

「俺達こんな事やってていいのかよ……」

 

食事の最中、黒崎君が呟く。

こんな事をやって強くなれるのかを思案するんじゃない。

自分達の体を考えればごく自然の流れだ。

 

「傷付いたから湯治をして、腹が減るから飯を食って蓄える、それもなしに修行なんてちゃんちゃらおかしいよ」

 

俺の言葉に阿散井君やひよ里さんも頷く。

既に二人とも食事を始めている。

 

「向こうもこっちも準備や備えの時だ」

 

慌てた所で意味はないぞ。

ここで相手より上に立つかどうか。

それがそのままこの争いの結果に繋がりかねない。

 

「分かったらちゃんと食べろ」

 

次に行く場所が場合によっては最悪だからな。

英気を養っておいて損はない。

その言葉に安堵したのか、黒崎君も食事を始めた。

 

途中、味の感想を拙く言う阿散井君に苦笑いを浮かべながら食べていく。

すると変化が目に見えて起こってきた。

 

「んっ?」

 

痩せていた肉体が徐々に厚みを増していく。

贅肉ではなく筋肉の鎧を纏っていくのだ。

食べれば食べるだけ増えていく。

 

「一体何が起こってるんだよ、これ……」

 

阿散井君が驚いている。

この食事に何が詰まっているか分かっていないのか?

まあ、こういう道じゃないから仕方ないか。。

 

「あんた、本当はそんな体だってのか……」

 

黒崎君が言ってくるので頷く。

そして仕上げというように一口を嚥下する。

筋肉が脈動して繊維が詰まったような感覚を覚える。

全てが均等に厚みを増した時、そこにはあの日よりも逞しい肉体があった。

 

「これで完全復活やな」

 

ひよ里さんが背中を叩いてくる。

痩せてた時はこれでも背中から前に衝撃が抜けていた。

今はそんな事もなく筋肉が吸収している。

 

「さっきの口上は御見事だったよ、流石は元隊長、よく分かっているじゃないか」

 

曳舟さんが出てくる。

その姿はよく知っている姿だった。

やはりこの料理を作る際に霊圧を使用しているのだろう。

其れゆえにあり得ない速度で痩せている。

 

阿散井君と黒崎君は誰だという。

そして一拍置いて俺を見てる。

 

「あんたとひよ里は何で驚かないんだよ」

 

まあ、普通に初対面ならその反応になるだろう。

でも、この人の事を俺はよく知っているんだ。

 

「俺がまだ隊長やっていたころはあの体型だったからな、逆に見慣れているんだよ」

 

そう言ってデザートを食べ始める。

しばらくして全てを食べ終える。

すると次の場所への移動という事でまたもや盆に乗る事になった。

 

「私の作った功績を知っているから分かっているんだろ」

 

俺はその問いに頷いて答える。

『仮の魂』と『それを体内に取り込む技術』。

いずれも俺にも出来る内容だったし、『義魂丸』の始祖でも本来ある。

流通させたりなど歴史の中に反映可能なのが曳舟さんだった事も有った。

 

「そっちに妥協する気持ちがあれば立場は入れ替わったかもね」

 

笑いながら言ってくれるが研究者としての妥協および、完璧な製造物が生まれる事は死刑宣告にも等しいよ。

じゃあ治せたんじゃないかと黒崎君は見てくる。

既に格が変わった曳舟さんと比べれば所詮は一死神。

 

「全く違った霊圧を取り込み、力の次元を引き上げる」

 

無論、それは普通の死神で出来る芸当ではない。

零番隊となったが故に可能となった内容。

その技能によって、俺はようやく全盛期ともいえる肉体の状態に見合った成長が出来たというわけだ。

 

「ウチも今までの自分とは違う感じするけど、体格変わらんな」

 

ひよ里さんがそう言うと曳舟さんは笑っていた。

思っているよりも即効性はきっと無いんだろう。

俺のように成長した体が先に有って霊圧の乱れがあったような奇特な形ではないのだから。

 

「全盛期の体に成長するのはそんなにすぐじゃないんだよ」

 

この子は元からそれになる成長した体があったからなれたんだよ。

曳舟さんは俺を指差しながらそう言ってひよ里さんを諭していた。

曳舟さんは大人びた別嬪さんになるよと言って頭を撫でていた。

 

「じゃあ、行っといで!!」

 

そう言って次の目的地へとまたもや飛ばされるのであった。

因みに獅子のぬいぐるみは曳舟さんの所に残りたがっていた。

しかし、最悪の事態が起こったら塵も残らないと伝える事で諦めてもらった。

 

.

.

 

着地したら煌びやかな光に囲まれる。

そして煙とともに現れたのは二枚屋さん。

さっきの二人に比べたら随分と派手だな。

口上が始まっていき、二人と話をしていたりおふざけをしていた。

 

「いらっしゃい、着いておいでYo」

 

一段落したら俺とひよ里さんにも声をかける。

そう言って案内されたのは色街とかに有りそうな派手な建物。

俺が最も嫌いな建物だ。

そこでは大勢の女性が出迎えている。

黒崎君と阿散井君が囲まれている。

 

「で……何がしたいんですか、二枚屋さん」

 

これはあまりに茶番が過ぎる。

一体何のつもりなのか。

見抜けるかどうかの試験なのか?

 

「何がしたいってどういう事かな、ちゃんタケ?」

 

いや、こんなバレバレの事して分からないと思っているのか。

俺が答えを言おうとするとひよ里さんが遮っていた。

 

「この子らは皆……斬魄刀ですやん」

 

ひよ里さんがそう言うと二枚屋さんがニヤリと笑う。

手を叩いて俺たち二人を称賛していた。

 

「いやぁ、流石に『屈服』や『具象化』で白黒つけただけの事はあるお二人さんだ、見抜かれちゃうか」

 

語る事もないから修多羅の所行っといで~。

そんな軽い言い方で一足先にひよ里さんを飛ばす。

何故俺は一緒に行けなかったのか。

その心当たりは十分にあった。

 

「僕に謝る事あるだろ?」

 

おちゃらけた感じとは違う真剣そのものの目。

それを真摯に受け止めて頷く。

一拍置いて頭を下げて思い当たる事を一息で言う。

 

「『刀神』二枚屋王悦を差し置いて、違法と言って差し支えの無い斬魄刀の製造を私は行いました」

 

普通は作れるはずが無いもの。

それを眠六號に与えている。

あの子に守れる術を与えたいという一心で乗り越えたのだ。

 

「Soう、違法鋳造斬魄刀の件、『憧憬』だっKe?」

 

名前もご存じとは……

自分の領分を脅かす行為に対しては監視を怠らないのだろう。

 

「あの子が特異なのはわかってるよ、それでも違法行為は咎めないと示しがつかないでしょ」

 

眠六號自体が正規の死神ではない。

故に『浅打』の授与もされないので、普通にやれば『盗む』しかなかったのだ。

いずれにしても違法の道でしかない。

 

「出来た物はちゃんボクも壊したくないんだよ」

 

自分達の魂魄をわずかとはいえ削って、誰かを想い丹念に作り上げた一振り。

心が宿った物を壊すのはとても辛い。

二枚屋さんはそう言ってこっちの手を握ってきた。

 

「この騒動終わったら打ち直してやっかRa持っといで」

 

その優しさに頭を下げる。

あの子を守る為の行動を理解してくれた事、その寛大さに。

あの二人は放っておいて仕立てて貰っちゃいなよ。

そう言うとまたもや盆から飛んで次の場所へ向かって行った。

 

.

.

 

落ちた先は『大織神』である修多羅千手丸の御殿。

とは言っても測量に秀でた者。

三界の均衡が崩れる危険度を表す単位を創造。

それによって線引きが明らかとなっている。

今回の前兆をかぎ取れなかったら敵の正体も不明となり、後手後手になっていただろう。

 

「失礼します」

 

玉座に座る修多羅さん。

反物も吊るされていてさっきの三人とはまた一つ違った感じの印象だ。

 

「わらわの所に来る時点で褌だけとは用意が良いのう」

 

顎に手を当てて微笑む修多羅さん。

俺が好き好んでこの格好できたと思っているのだろうか?

 

「服なんて今は必要ないと言われて麒麟殿からここまでこの格好なんですよ」

 

理由を言うと頷く修多羅さん。

そして顎から手を退けて玉座から立ち上がる。

取り出してきたのは巻き尺だった。

 

「褌も脱げ、一寸の狂いも許されぬのでな」

 

俺はすぐに測量できるように褌を脱いだ。

断わる事は出来ない。

この人が言った瞬間の目を俺はよく知っている。

俺やマユリ、喜助や曳舟さんなど研究畑ならなおさら。

妥協を許す事はない、その障害になるならば切り捨てる。

つまりここで局部を見せたくないと言ったら……。

 

「ふむ、厚みのある体ゆえに頑丈な生地で作っておいた方が良い」

 

測量した胴回りや足の太さ、胸板の厚さや腰の細さを計算して呟く。

色の組み合わせを考えて布や刺繍の糸などを取り出す。

途轍もない速度で縫われていく。

黒や白を基調としているが裏地や細部に色を交えさせていく。

 

「出来たぞ、試しに着てみよ」

 

早業に感動している間に死覇装を完成させていた。

それを手渡される。

手で取った時点で馴染んでいた。

 

「基本は白と黒ではあるがよく見よ、縁に茶色、袖に赤色、裏地は柿色である」

 

羽織ってみると体に吸い付くようにぴったりとしていた。

しかし、動きにくくはない。

機能性も凄まじく防御性能も優れている。

 

「うむ、出来は聞くまでも無いのう」

 

次の和尚が最後じゃ。

もう既にあの娘は向かった。

そう言われて盆に案内される。

 

「全てが満たされたお主ならばあの環境もきっとつまらんだろうな」

 

そう言って打ち上げられる。

体が軽く気分が高揚していた。

 

次に落ちた場所はお寺だった。

 

「おおっ、よく来たのう」

 

立ち上がって出迎えてくれたのは零番隊の首領。

確か名前は……

 

「ご無沙汰してます、兵す……」

 

名前を言おうとしたら止められる。

何故かと思ったが次に理由を話してくれた。

 

「喉が潰れるからその名で呼ぶな、『和尚』で良い」

 

名前に呪いを埋め込んでいるのか。

敵意を持った者なら名前は呼ぶだろう。

その時点で相手は重要な力を奪われる事になる。

 

脱線したが到着した以上、ここでも何かしらあるはずだ。

ここではどういう事を行うのか聞いてみる。

 

「ここでは、この環境で十全に動けるように鍛錬を行う」

 

そう言って指を差す。

その方向へ視線を向けると複数の相手と組手をするひよ里さんの姿があった。

汗をかいているが動けている。

俺と同じように死覇装も新しくなっていた。

 

「構えよ」

 

そう言われて始解状態とは言え構える。

和尚も刀を抜いている。

 

「おんしに関しては儂との手合わせで確かめんとな」

 

そう言って途轍もない速度で迫ってくる和尚。

しかし回避は出来るだろう。

俺はそう考えて『いつもの』歩幅で下がる。

すると体が勢い良く動いた為、ぐらりとよろめいてしまい踏ん張って転ばぬようにする。

 

「むっ!!」

 

よろめいてしまうとは意外だった。

和尚にはその隙に乗じる形で浅く斬られた。

すると和尚は歯を剥き出しにした笑みを浮かべて言葉を発した。

 

「今より、おんしの名前は『いかる』じゃ」

 

その言葉を聞いた瞬間、体に違和感が訪れる。

まるで力が削がれたような……

 

「これでおんしの力は半分」

 

名前を斬る事がそれならば、それから腕の名や足の名を斬れば更なる弱体化という事。

好々爺の振りしといて随分と恐ろしい能力を扱うものだ。

 

「ありとあらゆる不測の事態に備えていないとでも?」

 

臓器に力を入れて吐き出す。

そこには機械で出来た腕輪だった。

 

「増幅装置です」

 

これで形勢を持ち直す。

そう言って切り結んでいく。

 

「ぐっ!!」

 

刀をぶつけて力ずくで押しのけて強引に距離を作る。

そして指を向けて鬼道を放つ。

 

「『五龍天滅』」

 

六連続の鬼道をいつも通りに放つ。

すると今までとは違う大きな龍が出てきた。

さっきのよろめいた事やこの鬼道で確信できた。

元通りとなったり強くなった分に対応が出来ていない。

 

「ほっほ!!」

 

それを避けてはいるがこれで仕留めるつもりは毛頭ない。

あと、始めは回避できていてもあとは厳しくなる。

そんな事を思っているといきなり空間に手が現れた。

 

「『千里通天掌』」

 

和尚が鬼道かどうかわからない技を使う。

多くの龍をその一撃で押し返す。

和尚はそこにできた隙間に体を捻じ込む形で回避した。

 

「隙だらけです」

 

そんなやり方ではこちらの接近への対応はできない。

卍解で一気に追い込む。

とは言ってもさっきまでの調子でいくと、この卍解ももしかしたら……

 

「『印せ』」

 

俺はそう言って抜刀をする。

ただ、抜いた瞬間に『全力』とは思えない違和感があった。

そして次の瞬間、恐ろしい事態が発生する。

 

「これは……!?」

 

卍解していたはずの俺の黒い霧が全て和尚に奪われていく。

その光景を見て笑う和尚。

 

「この世の『黒』は儂のもんじゃ」

 

お主のこの切り札も無意味。

そう言ってこちらに攻撃をしようと進む和尚。

それに対して俺も微笑みながら言葉を返す。

 

「いつ、俺の卍解の霧の色が『黒』だと『錯覚』していた?」

 

あの隊首試験で見せたのも樽に突き刺しただけ。

卍解の能力は封印していて、その時も俺は見てはいない。

つまり、ボロボロになってから使ったので本来の実力になった今は……。

 

「ようやく全快になった体に慣れてきた事、報いる形で卍解を全力で使わせてもらいます」

 

想定した通り、霧が再度噴出していく。

そして色は黒ではなく、深い柿色の霧であった。

俺の体が最高の状態になっている事が本能で分かる。

また、卍解はどこまでも俺の心の在り方を示していた。

 

「奪い取れん色じゃな、それは……」

 

和尚もようやく本調子になった俺を見て自分たちの処置が間違っていない事が分かったのか微笑む。

髭を撫でて卍解を無効化できない事を認識する。

そして一拍置いて呟いた。

 

「負けてはやらんがな」

 

和尚が凄惨な笑みを浮かべる。

この人もこちら側かよ、存分にやろうじゃねえか。

 

「ああっ、更木以来のこの光景だ!!」

 

相手が徐々に煌いていく。

ご馳走に見えてくるのだ。

相手が真なる強者以外では見えないこの景色。

卯ノ花隊長の時は死を覚悟して高揚感も何もないので見えた事は一度もない。

藍染とユーハバッハの時は激痛でろくに見えてない。

 

「恐ろしい笑みを浮かべおって……」

 

和尚が己の事を棚に上げて呟く。

そして、一拍置くと和尚が先ほどよりもさらに速い速度で攻撃を始めた。

しかしその速度は眼で追えるし、捻った動きはしてない。

王道な動きであれば回避も不可能ではない。

切り裂かれたら関係なく半減というのは恐ろしい。

 

「はっ!」

 

俺は警戒していた分、その攻撃を余裕をもって回避する。

和尚は俺を切り裂く事が出来ず空を切ってしまっていた。

そしてその隙を逃すほど俺も間抜けではない。

即座に懐に入っていき刀を振るう。

 

「ひゃあ!!」

 

ほんの僅かに和尚が後退するも遅かった。

胴に一太刀を入れて振り抜く。

すると肉も臓器の一部分もそこに無かったように骨が露出される。

そこから一拍を置いて血が噴き出していた。

全力でやれば零番隊にも通用するのだと手応えがあった。

このままやられるつもりもない和尚も始解を発動していく。

名前を斬るのはやめたのだろうか?

 

「『黒めよ』」

 

筆の先が刃となる。

墨をまき散らすが意味はない。

柿色の霧が壁となり、阻んでいく。

 

「老いたら墨も乾燥していきますよ!!」

 

ボロボロの板状になって地面へと落ちていった。

身に纏い、一気に距離を詰める。

 

「これで終わらせる」

 

通りすぎたり突っ込むなんて野暮な真似もしない。

相手の眼前できちんと止まる。

すぐに順応できたのはありがたい。

 

「ぬんっ!?」

 

和尚もその速度に対応する形で刀を振り下ろす。

だが単純に俺の方が速い。

このまま終わらせてしまおう。

 

「はあっ!!」

 

貰った、その確信と共に首筋へ刃を走らせる。

するといきなり和尚の目から闘志が消えた。

 

「霊王様が止めよと言っておる、やめじゃ」

 

そう言って和尚は攻撃を止める。

俺もそれに倣って攻撃を止めた。

 

「いやはや、全力だったらこの霊子の濃さもお構いなしとは」

 

解除されたので霊圧が元へ戻る。

その拍子に増幅装置が耐え切れずに壊れてしまった。

正直、相性を踏まえると名前を斬った方が俺に勝てたのでは?

 

「おんしはやはり凄まじい」

 

和尚が豪快に笑って俺の背中を叩く。

嬉しくて頷くとにやりと笑って頬を掻く和尚。

そして負けず嫌いなのか次にこう呟いた。

 

「こっちもまだまだ手はあったがな」

 

確かに卍解や鬼道も使ってはいかなかった。

小手調べと言われても差し支えないほど。

 

「こっちも終わったで……」

 

片膝をついて息を切らすひよ里さん。

卍解を使わずに『神兵』を打ち倒していた。

霊子を取り込む事で曳舟さんの所の食事の効果が速く出る。

逐一強くなって相手に備える為の行動らしい。

 

「言い忘れておったがここが完全になじむまでが修行じゃ」

 

今のまま進めば、阿散井恋次が来るまでには尸魂界に戻れるじゃろ。

そう言って腰掛ける和尚。

俺はどうすればいいんでしょうか?

 

「あの娘の身の回りの世話をしたらいいじゃろ?」

 

それ……俺に教える事ないって言ってるようなものではないのか。

その視線に気づいた和尚は肩を竦める。

 

「だって、おんし此処息苦しくないだろ?」

 

その問いに頷いて答える。

だからこの身の回りの面倒を見るように指示をした。

それだけ言って和尚は欠伸をしていた。




駆け足気味に零番隊巡りを書きました。
ひよ里は身体面の成長が今後有るようになった(全盛期がようやく来る)が、其れでも最強にはなれません。
斑鳩も全力が発揮出来るよう治療されたので、それに合わせた形で『卍解』に変化が有ったという感じです。
あと、和尚より強そうな動きしてましたが、墨が乾燥するので始解と卍解は相性が悪く、半分にしていったら普通に勝ち筋があります

何か指摘がありましたらお願いします。
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